現在は、派遣社員や契約社員、嘱託社員、パートやアルバイト、さらにはフリーランスとして個人事業を行うなど正社員以外にも様々な形態で働く収入を得ることが可能となっています。
また派遣の中にも正社員として常時雇用される常用型派遣や、正社員や契約社員として雇用されることが前提となっている紹介予定派遣というものもあります。
だからこそ、無理に正社員にこだわるのではなく、もっと広い目で仕事を探すというのは一つの選択肢です。
ただいくつか注意も必要。
正社員にこだわらないことにはメリットがある反面、やはりデメリットもあるのです。
転職時に正社員にこだわらないメリット
正社員にこだわらないというのは決して悪いことではありません。
そこには、実際様々なメリットがあるのです。
選択肢が増え、自分の希望に合った仕事を見つけやすい
正社員に限定して仕事を探す場合と、特に限定せずに派遣社員や契約社員でもいいと思って仕事を探す場合とでは、当然正社員に限定しない場合の方が母数は増えます。
母数が増えるということはその分選択肢が増え、自分に合った仕事を見つけやすくなるということです。
また正社員ではないからこそ見つけやすいというケースも少なくありません。
週3日休みの仕事がいい、1日6時間の仕事が良いなど労働時間に関するものはもちろんですが、残業が全くない・異動や転勤がないといったことも正社員だと無理ということではないものの派遣や契約社員として働く方が実現しやすいです。
職種に関しても同様。
たとえば事務職というのは非常に人気がある仕事で、厚生労働省の一般職業紹介状況によると、有効求人倍率はたったの0.47倍しかありません(全体は1.6倍程度なのでおよそ3分の1)。
特に正社員としての募集はかなり少なく倍率も高いので、未経験の人はもちろん経験がある人ですら転職することが難しい状況となっています。
ただ派遣や契約社員であれば、派遣会社のサイトで求人を見るとわかるようにかなり豊富。
未経験からでも仕事に就きやすく、そこで経験を積むことができます。
職種によって、未経験からでは正社員は無理だけど派遣や契約社員なら働くことができるというものは多いです。
そもそも仕事自体につきやすい、転職活動の苦労で苦労しない
現在は転職市場がかなりの売り手市場となっている為、正社員への転職もしやすくなっています。
厚生労働省の一般職業紹介状況によれば、正社員に限定した場合の有効求人倍率は1.13倍。2011年の同時期が0.42倍なので2倍以上にあがっています。
ただそれでもまだ1.13倍。決して簡単になれるわけではありません。
正社員の求人の倍率はやはりそれなりに高く、20社、30社受けても採用されないなど転職活動で苦労する人も数多くいます。
一方で正社員にこだわらなければ有効求人倍率は1.6倍。数字だけみても仕事の就きやすさがすぐわかります。
契約社員の倍率は正社員ほど高くはないし、派遣社員であれば派遣会社に登録すれば仕事を紹介して貰え、簡単に仕事に就くことができます。
正社員への足掛かりとなる、大手企業の正社員になれたというケースも
給料は高いし安定しているし労働管理もしっかりしているからという理由で、大手企業で働きたいと考える人は多いでしょう。
ただ大手企業に正社員として転職することは簡単ではありません。
第二新卒(入社1年目から3年目)でない限りは経験やスキルなどの応募条件があるので未経験ではほぼ採用して貰えないし、条件を満たしていたとしても倍率が非常に高いので、内定を貰える人はほんの一握りです。
しかし、派遣からの直接雇用や契約社員からの正社員登用という手段を使えば、未経験から大手の正社員になれる可能性がでてきます。
実際、派遣や契約社員として超大手企業で働き、上司の推薦を受けて正社員登用試験に挑み、無事正社員として採用してもらえたという人を何人もしっています。中にはそれで年収が200万円以上あがったと言っていました。
また直接その会社でなくても、子会社やグループ会社(それでも十分大手)を紹介して貰えて採用してもらえた人もいます。
普通に転職活動をしたら職歴や学歴などから書類選考で不採用とされてしまうような人が、派遣や契約社員を間に入れることで大手の正社員になれたわけです。
もちろん正社員として採用されるのは簡単なことではありません。ほとんどの人は正社員登用試験も受けることができず、他に紹介して貰えることもなく、契約期間満了となって終わります。
ただたとえわずかでも、可能性として増え、それを掴んだ人がいるというのも事実なのです。
正社員より給料が高いというケースも少なくない
未経験から正社員として就職した場合、給料は20万円以下、ボーナスをいれても年収300万円以下なんてことも珍しいことではありません。
基本給20万円、ボーナス年間3ヶ月分だとすると年収は300万円です。
基本給18万円、ボーナス年間2か月分だとすると年収252万円です。
では派遣だとどうでしょう。
もし時給が1,200円だとすると、月21日、1日8時間勤務で月収20万1,600円、年収242万円です。
もし時給が1,500円だとすると、月21日、1日8時間勤務で月収25万2,000円、年収302万円です。
時給は職種や地域によっても異なりますが、下手に正社員として働くよりも高いというケースが多々あります。
副業をしやすい
現在は正社員でも副業を解禁する会社が増えてきています。
ただいくら副業可であっても、残業が多くて結局やる時間も気力もないなんてことになっている人は少なくないでしょう。
一方で派遣社員や契約社員であれば、ほぼ副業はOK。
残業っもなしか、あっても少ない仕事を選べば、それに費やす時間も確保可能です。
副業で雇われているよりもずっと多くのお金を稼いでるような人も少なくありませんし、副業を通してスキルアップできたという人も多々います。
転職時に正社員にこだわらないデメリット
一方でデメリットがあることも忘れてはいけません。
正社員という働き方にこだわらならいことは、それ相応のリスクがあるのです。
将来的に給料が上がっていかない
未経験から仕事を始めた場合、仕事によっては派遣社員の方が給料が良いというケースがあるというのは先ほど紹介しました。
しかし、それはあくまで仕事を始めた時点での話です。
年齢、経験に応じて上がっていく正社員と、ほとんど給料が上がっていかない派遣社員や契約社員。あっという間に給料は逆転し、そしてどんどん差が開いていきます。
以下は厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」による正社員の年齢階級別賃金(残業代除く)です。
- 20~24歳・・・21万3,200円
- 25~29歳・・・24万5,700円
- 30~34歳・・・28万2,400円
- 35~39歳・・・31万3,300円
- 40~44歳・・・34万2,100円
- 45~49歳・・・37万2,800円
- 50~54歳・・・40万円
- 55~59歳・・・40万200円
年齢が高くなるにつれて給料も増えていき、最終的には2倍程度になっています。
しかし派遣社員や契約社員などの非正規雇用の場合、ここまでの収入アップはのぞめません。
派遣社員の場合、時給は上がっても100円や200円。
もし時給1,500円の人が時給1,700円まで上がったとしても、月収は25万2,000円から28万5,600円に、年収は302万円から343万円にまでしか上がりません(1日8時間、月21日勤務の場合)。
逆に途中で一つの派遣の仕事が終わって次の仕事を紹介して貰う時に時給が下がってしまうなんてこともあります。
契約社員の場合、もし毎年基本給が1万円上がっていけば5年で年収は60万円上がることになります。
しかしあくまで有期雇用。せっかく上がった収入も契約満了でリセットされ、また次の仕事を探す時はその上がった給料まで貰うことはできません。
長い目で見た時、収入面ではどうしても正社員に劣ってしまうのです。
目先のことだけの安易な選択をしてしまいがち
正社員にこだわり仕事を探す人は、長期的に働くことを視野に入れて深く仕事について調べる傾向が強いとともに、なかなか受からず転職活動に苦労することも覚悟の上で進める傾向にあります。
一方で正社員にこだわらない人は、目先のことを重視して長い目で見てどうかということやを軽視してしまったり、仕事のことを深く調べるに判断してしまいがちになる傾向があります。
転職活動がめんどうだから派遣でいいや、とりあえず今の仕事を辞めたいから楽な仕事ならなんでもいいや。
たとえばそのような理由で、安易な選択をとってしまうのです。
そして転職後すぐにであったり、1年後や2年後に、正社員にならずにその安易な選択をとってしまったことに後悔します。
正社員以外の働き方がだめというのではありません。しかし、正社員にはこだわらずに他の仕事に就くなら就くで、それを選ぶ理由や将来のことをしっかり考えておかなければなりません。
直接雇用や正社員登用はほんの一握り
メリット部分で、中途採用ではほぼ不可能な大手企業に直接雇用や正社員登用されて正社員になることができるという可能性があるという点をあげました。
ただこの点に関しては注意が必要。
確かに正社員になれた人もいるのですが、そういう人より正社員になることを希望してもなれなかった人の方がとてつもなく多いということを忘れてはいけません。
大手企業ともなれば正社員登用試験の倍率はかなり高いです。求められる能力も厳しく、試験を受けること自体上司に認めてもらえない人もたくさんいます。
正社員になることを目指して入っても、ほとんどの人はただ時間を費やしただけで終わってしまっているのです。
また直接雇用が前提である紹介予定派遣も注意しなければいけません。
通常の派遣と違って書類選考や面接などの選考があるにも関わらず、受かって働きだしても直接雇用されるのは約半数しかいません。
そしてその半数のうち、正社員として採用されるのはさらに半数。他は契約社員など他の雇用形態。
すなわち、直接雇用が前提で選考もある紹介予定派遣でも、正社員になれるのは4人に1人程度しかいないのです。
関連:紹介予定派遣とは何?実態は正社員になれるのはどれくらい?
正社員にこだわらなくてもいい、ただしっかり考えないと後悔するだけ
働き方は様々。正社員が優れているわけではありませんし、派遣社員や契約社員などの有期雇用が劣っているわけでもありません。
それぞれにメリットがあって、それぞれにデメリットがあるのです。
そしてどういった働き方を選ぶのが良いかは、自分次第。
正社員という働き方にこだわらなくても、自分がどうしたいか、どうなりたいかにはこだわり、しっかりと考えた上で選択をしましょう。