零細企業はブラックばかりだという認識を持ち、就職や転職活動時に選択肢から外してしまっている人も多いように感じます。
ただその判断は実際のところどうなのでしょう。
そこで今回は零細企業に転職することのメリット・デメリットを紹介していきます。
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日本のほとんどの会社は零細企業
まずは日本の会社のうち、零細企業と呼ばれる会社がどれだけあるのかを紹介します。
零細企業で働いている人の割合は実は思いのほか多いのです。
日本の会社のおよそ9割は零細企業
日本では中小企業の定義を以下のように定められています。
業種 | 資本金、従業員数 |
製造業その他 | 3億円以下または300人以下 |
卸売業 | 1億円以下または100人以下 |
小売業 | 5千万円以下または50人以下 |
サービス業 | 5千万円以下または100人以下 |
そしてこれに該当する企業の割合は、99.7%。実は大企業と呼ばれる会社はたったの0.3%しかありません。
さらに、小規模企業、いわゆる零細企業と呼ばれる会社の定義は以下の通りになります。
業種 | 従業員数 |
製造業その他 | 20人以下 |
卸売業 | 5人以下 |
小売業 | 5人以下 |
サービス業 | 5人以下 |
この小規模企業の定義に当てはまる会社の割合は87%。日本の会社のおよそ9割は、零細企業ということになっているのです。
参考:中小企業庁
4人に1人が零細企業で働いている
大企業は従業員は多く、零細企業は従業員数が少ないわけですから、87%の人が零細企業というわけではありません。
従業員数別に見ると、大企業が31%、中小企業が69%となり、7割の人は中小企業で働いています。
さらに小規模企業に絞ると23%です。実はおよそ4人に1人という高い割合の人が零細企業で働いているのです。
就職・転職市場規模として考えれば、決して馬鹿にはできない割合となっており、当然目を向ける必要性がある人もでてくることがわかります。
零細企業のデメリットは?
零細企業は嫌、できれば大企業、中小企業だとしてもできるだけ大きい企業の方が良いということを考えている人は多いかと思います。
では零細企業にはどういったデメリットがあるのでしょうか。
待遇や労働条件は平均的に見ると悪い
給料、ボーナス、休日数、有給休暇取得率などの平均を見ると、企業規模が大きくなるほどに良くなり、企業規模が小さくなるほど悪くなっているのは明らか。
国税庁の民間給与実態統計調査によれば、企業規模別の平均年収は以下の通り。
- 9人以下・・・357万7千円
- 10~29人・・・420万7千円
- 30~99人・・・434万4千円
- 100~499人・・・433万3千円
- 500~999人・・・473万3千円
- 1,000~4,999人・・・497万2千円
- 5.000人以上・・・511万4千円
10人未満の会社と5,000人以上の会社では150万円以上の差があります。
次に厚生労働省が発表している就労条件総合調査結果の概況から年間休日数と有給休暇取得率の結果を見てみましょう。
まず年間休日数は以下の通り。
- 1000人以上:119.1日
- 300~999人:115.7日
- 100~299人:112.5日
- 30~99人:109.0日
データが従業員数30人以上の企業しかないのですが、さらに少なくなれば日数が減るであろうことは容易に想像がつきます。
そして有給休暇の平均日数は以下の通り。
- 1000人以上:10.9日
- 300~999人:9.0日
- 100~299人:8.7日
- 30~99人:8.2日
こちらも従業員数が増えるほど日数が増えると言う結果。
感覚的に大企業の方が色々と恵まれているということがわかっている人は多いですが、数字としてもこれほど明らかに差があるのです。
他にも退職金、福利厚生など色々な面で零細企業になるほど恵まれなくなっていく傾向があるのが事実です。
大企業に比べて倒産リスクが高い
大企業であっても倒産やリストラといったことは起こりえますし、実際に起きています。絶対に安定しているなんてことはありません。
しかし大企業と中小企業を相対的にみれば、倒産リスク、リストラリスクが低いのはやはり大企業。
零細企業は倒産してしまい、仕事を失ってしまう可能性が非常に高くなります。
労働基準法が守られていないブラック企業も少なくない
大企業にもブラック企業はありますが、割合としてみればやはり零細企業の方が高いです。
理由として、経営的に不安定であること、労働組合がないこと、外部からの監視が少ないこと、指摘されることがないことなどが挙げられます。またそもそも経営者自体が法律を良く認知できていないなんてことも多いです。
異動などの逃げ道がない
人間関係が上手くいかない、仕事が向いていないなど、仕事を続けていれば辞めたくなることだってあるのは当然。
そんな時、大企業であれば異動という逃げ道があります。必ずしも希望通りの異動ができるとは限りませんが、小規模なものであれば自分や周りにはよく起こり人間関係だって変わっていきます。
しかし零細企業になれば、そんなことはありません。変わらない人間関係、変わらない仕事を続けていくという選択しかできない場合がほとんどです。
もし不満を抱いてしまった場合、抜け出す為には辞めるという選択しかないのです。
零細企業のメリットは?
こういったデメリットから零細企業は嫌だと感じている人は多いでしょう。
では逆に零細企業のメリットにはどういったことがあるでしょうか。
就職・転職難易度が低い
まず就職にしろ転職にしろ難易度が低いということです。倍率も低く、求められる能力もそれほど高くはありません。
未経験であっても大丈夫な会社も多く、キャリアチェンジもしやすいです。
大企業に転職しようとなれば、まず未経験は不可で、その職種での高いスキルや実績を求められますし、加えて学歴で足切りされてしまう場合だって多いです。
たまに大企業を超えるホワイト企業もある
平均的に見ると零細企業よりも大企業の方が待遇面では恵まれているものの、それはあくまで平均。零細企業でも良いところは数多く存在しています。
たとえば年間休日は130日以上で有給休暇取得率は100%で残業なし、年収もそこそこという零細企業を知っています。
大企業の中でもホワイト企業だと言われている企業をさらに超えた待遇ですが、意外にもこういった会社は多いです。
零細企業=待遇が悪いとは思わない方がいいです。確かに著しく悪い会社も多いですが、逆のパターンも実は少なくありませんから。
経営者の目の届く範囲で働くことができる
零細企業の場合は経営者との距離が近いです。実際に社長から指示や指導されることもあるし、社長が経営者としてどういった仕事をしているかを知ることができたり、どういった考え方を持っているかを学ぶこともできます。
また、経営者がしっかりしている場合に限ったことですが、上司や先輩からのパワハラに合うことが少なくなるという面もあります。
いくら経営者が絶対にやらないと決めていたり、会社として守るということを決めて人事が促進していても、大企業だと隅から隅までチェックすることができません。
実際、ホワイト企業と呼ばれている大企業であってもパワハラまがいのことをされて体を壊し、休職に追い込まれてしまった人を何人も知っています。
しかし零細企業で従業員数が少なければ、経営者がしっかりチェックできます。
パワハラや労働基準法違反等によって罰せられるのは経営者。だからこそ、雇用されている人よりも真剣に、そして厳しくチェックしてくれます。もちろんあくまで経営者がしっかりしている人の場合に限りますが。
会社が成長すれば得られるものも大きい
どんな会社も最初は零細企業。だめになってしまう会社もたくさんありますが、中にはどんどん成長して大きくなっていく会社もあります。
そしてもし自分が勤めている会社が成長してくれれば、大企業で働いている場合よりもずっとずっと大きいものを得ることができる可能性は高いです。
零細企業を選ぶ際の注意点
零細企業には確かにデメリットもあります。しかし、たとえ零細企業であっても優れた会社、従業員を大事にする会社、しっかりと将来に向けて成長している会社も実はたくさんありますから、一概にだめと決めつけるのはもったいないです。
ただ危ない会社、入ってはいけない会社がたくさんあるというのは事実。ですから、もし就職・転職活動を行う際には以下の点に気を付けるようにして下さい。
転職サイトや転職エージェントから求人を探す
転職サイトや転職エージェントはぜひ使うようにして下さい。数人の零細企業であっても普通に求人を出しています。
企業が転職サイトや転職エージェントを利用して求人を行うというのは、実は非常にお金がかかります。企業にとっては大きな負担です。
しかし逆を言えば、その負担を負えるということ、そして求人に対して積極的であるということが伺いしれるます。
利益をしっかりだしていて経営が安定している可能性が高いし、将来の為にお金をかけてでも優秀な人を採用しようという意思が強い可能性も高いです。
不安定で経営的に厳しいところも多い零細企業だからこそ、わざわざ高いお金を払って求人募集をかけている所に目を向けるようにしましょう。
個人のスキルを伸ばせるかどうかを重視する
零細企業で働く際、個人のスキルを伸ばせるかどうかはしっかり考えるようにしてください。
もし40代になってろくなスキルも身につかず、会社が倒産して仕事を失ってしまえばもう取返しがつきません。逆にスキルさえついていれば、たとえ会社が倒産しても他の会社で活躍することができます。
大企業に比べて倒産リスクが高い零細企業だからこそ、会社に守ってもらうのではなく自分で守るということを意識することが大切です。
企業研究を怠らない、会社・経営者についてよく見極める
大企業であればネットで調べると色々と情報がでてくるので企業研究等もやりやすいのですが、零細企業だと中々情報がでてきません。
ただそこで諦めてはだめ。求人票の情報だけを信じてなんとなくで入ってしまっては失敗します。
会社のHP、経営者の情報、あればブログ、商品やサービス内容、仕事内容や歴史など、もちろん得られない情報もありますが、できうる限りでしっかり調べてください。
また面接や会社訪問も有効です。零細企業の場合、社長が行うことも多いですから会って話す、そしてどういった人かを見極めるチャンスです。もしだめだと思ったら、たとえ内定がでたとしても断る勇気を持ってください。
会社訪問はお願いするとさせてくれる場合も多い(しかもホワイト企業ほどさせてくれる)ですから、積極的に行いましょう。
以前私が中小企業で中途採用を行っていた時、求人票に会社訪問可能と書いていたにも関わらず来たのはほんの数人でした。もったいないなと思います。情報を得られるチャンスは積極的に活用するようにして下さい。
零細企業のも良い会社はたくさんある
もし大企業を狙えるほどの実力、経歴があり大企業に入りたいと思っているならわざわざ零細企業を選ぶ必要はありません。やはり大企業の方が安定、待遇の良さは優れていますから。
ただ零細企業しか入れない、大企業を受けてるけど全然受からないとなっても悲観する必要はありません。
零細企業えであっても良い会社はたくさんあります。ぜひ探してみて下さい。
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