ボランティアみたいな仕事とは?
ボランティアというのは、「voluntas」というラテン語が由来となっており、「志願者」「有志者」という意味で、自らの意志によって公共性の高い活動を無償で行うことを指します。
ボランティアには、災害ボランティアや通訳ボランティア、ごみ拾いや街のパトロールなど、社会貢献や福祉的な活動が多く、様々な立場の人が活動をともにすることで地域社会づくりが進むなどの、大きな意義を持つものとなっています。
ボランティアは無償であることが前提となっているため、ボランティアを仕事として金銭を稼ぐことはボランティアの概念とかけ離れてしまいます。誰かのために役立ちたい。その気持ちは人として立派なことですが、自身の生活ができなくなってしまっては困ってしまいます。
そこで、おすすめなのが人の役に立てる仕事に就くことです。
ボランティアではなく、仕事として社会貢献していくという方法です。
ではボランティアみたいな仕事とはどのようなものがあるのでしょうか。
■社会貢献ができる仕事の例
- 人の命を守る仕事
- 人の安全や人権を守る仕事
- 人の社会権を守る仕事
- 国際社会や地域社会に関わる仕事
例だけ見るとパッと職業を思い浮かべるのは難しいかもしれません。
でも興味が湧き、気になってきたという方もいることでしょう。
では、次からボランティアみたいな仕事やメリットとデメリットを見ていきましょう。
ボランティアみたいな仕事3つ
①民間企業
利益を上げることが大事である民間の企業でも、社会貢献を行うことのできる仕事がありますが、どのような企業であればボランティアのように社会問題に向き合う仕事を行うことができるのかを確認しておきましょう。
企業のCSR部門
CSRとは、英語の「corporate social responsibility(企業の社会的責任)」の頭文字を取った略称であり、企業は利益を追求するだけではなく社会的責任を担っているため、従業員や消費者、投資者、環境などに対して、自社の課題を見つけ、取り組んでいくという考え方が広まっています。
産地偽装問題や消費期限の偽装など不祥事に対して消費者が敏感になり、世界中から環境破壊や人権問題についての厳しい目が向けられている現代では、インターネットを通じて情報共有がすぐに行われることから、日本でもCSRが重要視されるようになりました。
企業のCSR部門では、被災地支援や人材が活躍するための取り組み、環境問題への取り組みなど、社会貢献を仕事として行うことができます。
社会的企業
障害者を積極的に雇用したり、地方活性化や地産地消を目指す農場の経営、児童養護施設の退社者の就職支援を行うなど、利益を追求するだけではなく社会的な問題解決を目指す企業のことを社会的企業といいます。
社会問題の解決に重点を置いてはいますが、利益を度外視するようなことはなく、事業として成り立つように収益確保と社会的問題の解決を両立させた経営を行っているため、利益を上げながら社会問題解決を目指す仕事を行うことができます。
②公的機関
公的な機関では社会問題に取り組むことが多く、利益を上げる必要はなく問題解決を追及していくため、ボランティアのように社会貢献のことを考えながら収入を得ることができます。どのような仕事があるのかを確認しておきましょう。
政府機関
政府機関とは、国や地方の政府の機関や、政府から権限の一部を与えられた一定の組織のことを指し、外務省や農林水産省、地方創生推進事務局などさまざまな問題解決に向けて社会へ奉仕していく仕事を行っています。
環境問題に関心があるなら地球温暖化対策推進本部、国際問題に関心があるなら国際平和協力本部など、自分が興味を持っている問題に取り組んでいる組織に属することで、ボランティアのような公共性の高い活動を行うことができます。
国際機関
国際機関では、大きく分けて2つあり、国際連合(UN)や国連システムの機関である世界保健機構(WHO)など、構成員が国家である「政府間組織」、国際NGOとも呼ばれ、赤十字国際委員会、国境なき医師団、セーブ・ザ・チルドレンなどの「国際非政府組織」があります。
国内だけでなく、紛争や人権問題、貧困などの世界で起きている諸問題を解決するための仕事であり、語学はもちろん、深い専門的知識や高度なスキルを身につけている必要がありますが、困っている人を助けたいという意志を発揮することのできる仕事です。
国際非政府組織は非営利の運営となっていますが、寄付によって成り立っており、収入を得ながら活動を行うことができます。
③NPO法人
NPO法人とは、営利を目的にしていない「特定非営利活動法人」のことを指し、「保健、医療又は福祉の増進を図る活動」「学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動」「人権の擁護又は平和の推進を図る活動」「職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動」など、20分野に該当する活動を行っています。
NPO法人にはどのような団体があり、どのような活動をしているのか、どのように収入を得ることができるのかを確認しておきましょう。
事業型NPO
1998年の12月に社会貢献活動を行う団体が活動をしやすくするために「特定非営利活動(NPO法人)制度」が施行され、2012年4月には申請の手続きの簡素化や認定基準の緩和など、NPO法人に関する法改正が行われました。
法人NPOは一般企業と同様に事業展開をするなどビジネスを行うことができますが、その目的が営利ではないので、一般的な企業のように儲けたときには出資者や従業員へ配当金やボーナスといった利益を再分配することをせずに、活動の運営に充てます。
自ら資金を調達していくことで、従来のNPOよりも積極的に活動を行うことができるため、ボランティアに近い活動を仕事として行うことができます。
寄付型NPO
自ら事業を行うではなく、個人や企業からの寄付や会費などによって運営している寄付型NPO法人は、利益を生み出す事業を行うことはありませんが、一般企業のようにマーケティングやニーズの把握などの経営が行われ、法人であることによって社会的信頼性の向上や、寄付金に対する税の控除といった、寄付金を集めやすい仕組みになっています。
事業型のNPOとは違い主に寄付金や会費、補助金などによって運営されているため不安定になることもありますが、解決したい問題に向き合いながら収入を得ることができます。
ボランティアみたいな仕事に就く方法
NPO特化の求人サイトを活用する
通常の求人サイトにNPOの求人募集が載っていることもありますが、NPOや企業のボランティアや社員・アルバイトに特価した求人サイトを活用することで、住んでいるエリアや自分の興味のあるテーマから求人情報を見つけることができるため、より自分の意志に添った仕事を見つけるチャンスに出会うことができます。
NPOサポートセンターなどの中間支援組織を利用する
NPOの支援をしているNPOサポートセンターでは、NPOの事業を運営するための知識やスキルを身につける「トライセクター・カレッジ」と、NPOで働くことを目指す「NPOキャリアカレッジ」という人材育成を行っています。
NPOキャリアカレッジでは、NPO・NGOへの就職・転職するために即戦力となる思考やスキルを身につける講座やキャリア支援、ソーシャルセクターの仲間との交流などが用意されているため、NPOで働くための準備を行うことができます。
社会貢献性の高い求人を探す
こどもたちの支援や地方活性化、農業や牧畜の支援など、社会的企業やソーシャルビジネスを行っている会社の求人を探すことで、ボランティアのように直接関わって働くことや企業として間接的なサポートをしているなどの仕事に就くことができます。
CSR部門がある企業を探す
NPOに入るほどの取り組みたいテーマがあるわけではないけど、幅広く人の役に立つことや社会貢献につながる仕事をしたいという場合には、企業のCSR部門で働くことを目指すことがおすすめですが、特化した求人サイトなどはないため、通常の求人サイトや検索サイトで「CSR担当 求人」といった検索を行うことで見つけることができます。
企業によって取り組んでいる課題はそれぞれ違ってくるため、自分のスキルや考えをもとに、募集している企業がどのような問題解消に取り組んでいるのかをチェックし、自分が働いていきたいかどうかを検討してみましょう。
ボランティアみたいな仕事で働くメリット・デメリット
企業のCSR部門やNPO法人など、ボランティアみたいな仕事で働くということにはメリットもありますが、デメリットと考えられる点もあるため、株式会社第一生命経済研究所による2007年の調査「NPOで働く若者の活動実態と生活意識」を見ながら、どのような特徴があるのかを確認しておきましょう。
参考:株式会社第一生命経済研究所「NPOで働く若者の活動実態と生活意識」
メリット
①やりがいや働く意味を感じられる
NPOでは支援を受ける方と直接触れ合う仕事が多いため、直接「ありがとう」と感謝を受けることや、自分たちの行っている支援がどのように届いているのかを自分の目で確認しやすいため、やりがいや充足感を見出しやすい働き方といえます。
活動に参加したきっかけは友人や知人からの紹介が多く、求人から応募したという方は有給従事者でも約1割と少ない結果になっていますが、日頃の生活における充実感を覚える時間としてNPOの仕事に従事している時とあげる方が最も多く、兼業をしている方についても、「NPOの仕事」と「NPO以外の仕事」では、NPOの仕事をしている時の方が充実感を覚えているという結果になっています。
企業のCSR部門では、社会に貢献しているという実感はNPOと比べると少ないこともありますが、社員がいきいきとやりがいを持って働いている姿や企業の社会的役割をどう果たしていくのかといった、大きなサポートをすることにやりがいを見出すこともできます。
②勉強になる
実際にその立場になったり身の回りにいたりしなければ、支援が必要な方が何に困っているのかということに気付くことは難しいため、NPOなどの活動を通して関わりを持つことで、今まで知らなかった世界を知ることができます。
③厳しい環境の中で成長できる
NPOの活動は解決が難しい問題に取り組んでいることが多く、幅広い仕事を少人数で行うこともあり、個人の裁量が大きく責任も重い仕事になりやすいため、着実に個々がスキルアップすることができます。
デメリット
①年収が低い
企業のCSR部門ではなくNPO法人では、NPOによっては無給の団体である場合や、給与の支払いがあっても賃金が安いということがあります。専業としてNPOで働くのではなく、本業として正社員などで働きながらNPOに関わっていたり、副収入を稼ぐことの出来る仕事をしている兼業者がいます。
第一生命経済研究所による「NPOで働く若者の活動実態と生活意識」の調査結果によると、回答者182人のうち、給与を受け取っている方は76.9%、無給で働いている方は22.5%となっており、有給従事者でも29.3%の方が兼業しており、兼業の理由としてNPOの収入だけではやっていけないから」というものが最も多い回答となっています。
②研修制度が充実していない可能性がある
少人数精鋭で活動している団体も多く、人手が足りないことやそれぞれの仕事についてその人にしかわからないという属人的な仕事である場合も多いため、手厚い教育や研修制度といったものが充実していないという可能性があります。
研修がなくても自発的にすべきことを見つけられる、問題に取り組んでいけるという方が求められており、NPOで働くことに向いているといえるでしょう。
ボランティアみたいな仕事で働くなら良い面も悪い面も理解しておこう
ボランティアみたいな仕事は、やりがいや働く意義を見出すことができ、自分を成長させることができるというメリットがあります。ただ、NPOの運営状況によっては給与がなかったり、あっても少ないということが考えられます。
スキルを必要とされたり自ら解決していく姿勢がないと難しい仕事でもあるため、メリットとデメリットを理解したうえで、自分の生活や働き方に向いているかどうかを確認して社会貢献をできる職場を見つけて行きましょう。