60時間以上の残業は実際やってみると中々大変。
精神的にも身体的にもかなり辛いと感じる人が多いのではないでしょうか。
残業は多くなればなるほどに健康へのリスクは高くなります。
ですから法律でも残業に関するものがあり、会社側が何時間でも自由にやらせていいというものではありません。
そして残業60時間でも違法となる場合があるので注意が必要です。
残業はいくらでもできるわけではない
60時間、80時間、中には100時間以上、さらにひどい場合だと200時間以上残業があるなんて話も聞きます。
ただ残業というのは会社が勝手に、そして無制限にいくらでも従業員にやらせて良いというものではありません。
原則は1日8時間、週40時間まで
まず労働時間は1日8時間、週40時間までということが労働基準法第32条で定められています。
労働基準法第32条
- 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
- 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。
まずはこの原則を守らなくてはいけません。
36協定を結べば月45時間まで可
ただし、労使間で協定を結び行政官庁に届け出をすれば、この上限以上を超えて労働時間を延長することが可能となります。
労働基準法第36条
- 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第32条から第32条の5まで若しくは第40条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。ただし、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、一日について二時間を超えてはならない。
- 厚生労働大臣は、労働時間の延長を適正なものとするため、前項の協定で定める労働時間の延長の限度その他の必要な事項について、労働者の福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して基準を定めることができる。
いわゆる36協定というものです。
もしあなたの会社で残業をすることが可能であるならば、この36協定が結ばれ届け出されているはずです。
ただ36協定を結んだからと言って、無制限に残業させることができるかと言うとそういうわけではありません。
36協定では以下の上限が設定されている為、基本的にはこれを超えることはできません。
期間 | 限度時間 | 限度時間(※) |
1週間 | 15時間 | 14時間 |
2週間 | 27時間 | 25時間 |
4週間 | 43時間 | 40時間 |
1ヶ月 | 45時間 | 42時間 |
2ヶ月 | 81時間 | 75時間 |
3ヶ月 | 120時間 | 110時間 |
1年間 | 360時間 | 320時間 |
※1年単位の変形労働時間制をとっている場合
1年間の上限から考えると、月平均30時間がこの守らなくてはいけない残業時間です。
それ以上残業する為には
この上限を超えて残業するには、36協定を結ぶ際に「特別条項」を付けることで可能になります。
ただし労働者にとって健康を損なう恐れがある為、以下のことを定める必要があります。
- 原則としての延長時間(限度時間以内の時間)
- 限度時間を超える特別の事情
- 原則としての延長時間を延長する場合に労使がとる手続き
- 限度時間を超える一定の時間
- 限度時間を超えることができる回数
上記の中ででてきた特別な事情は具体的に定める必要があり、さらに臨時的なものに限られます。
慢性化することは許されず、1年の半分(1ヶ月単位なら6回まで)に抑えなくてはいけません。
参考:厚生労働省「改正労働基準法のあらまし」
月の残業60時間以上が違法となる場合
では具体的に残業が60時間以上が違法となる場合について紹介していきましょう。
36協定が結ばれていない
36協定が結ばれていないと、そもそも1日8時間、週40時間を超えて残業することはできません。
週5日勤務で1日の労働時間が7時間の場合はさらに1時間働くことは可能ですが、それを上回ると違法、60時間どころか1時間だってだめです。
なお厚生労働省の資料によると、36協定を結んでいる事業所の割合は55.2%と約半数。
半分の会社はそもそも残業自体することができないのです。
ただ実際のところ、36協定を結んでいなくても残業がある会社というのは多いのかもしれません。
以下は会社が36協定を結んでいない理由。
- 時間外労働がない・・・43.0%
- 時間外労働に関する労使協定の存在を知らなかった・・・35.2%
- 就業規則で十分だと思っていた・・・1.0%
- 適用除外だと思っていた・・・1.2%
- 事業場ごとに締結する必要だとは思っていなかった・・・3.5%
- 過去の労使協定が有効だと思っていた・・・3.6%
- 締結、届け出を失念した・・・14.0%
残業がないからという理由であるのは半数にも満たないのです。
特別条項付きの36協定が結ばれていない
36協定は無済まれているけれどそれには特別条項がないという場合、残業時間の上限は月45時間まで。
特別条項がないのに月60時間以上残業させられていればそれは違法です。
なお厚生労働省の資料によると、特別条項付きの36協定を結んでいる会社の割合は、36協定を結んでいる会社のうち40.5%だけ。
全体からみると22.4%、4社に1社もありません。
そもそもほとんどの会社では月60時間以上も残業することはできないはずなのです。
なお企業規模別に見た特別条項付き協定の締結割合は以下の通り。
- 大企業・・・58.6%
- 中小企業・・・11.3%
大企業は半数以上が結んでいますが、中小企業だと9社に1社程度となっています。
特別条項付き36協定で定められている残業を超えている
特別条項付き36協定では、限度時間を超えて延長できる時間について定めなくてはいけません。
そしてこの定めた時間を超えてさらに延長することはできません。
なお1ヶ月の定めている延長時間の分布は以下の通りになっています。
- 45時間超~50時間・・・2.3%
- 50時間超~60時間・・・23.5%
- 60時間超~70時間・・・14.8%
- 70時間超~80時間・・・36.2%
- 80時間超~100時間・・・16.0%
- 100時間超・・・5.5%
例えば延長時間を60時間以下の会社が26%程度ありますが、その会社は60時間を超えて残業をすることはできません。
一方100時間超えの会社も5.5%。例えば200時間と設定していれば、200時間しても違法ではありません。
限度時間超えが年7回以上ある
特別条項付き36協定では限度時間を超える回数についても定めなくてはいけませんが、その回数は年の半分までとされています。
1ヶ月単位で考えると、超えることができるのは6回までということです。
ですから例えば残業60時間超えの月が1年間で7回もあれば、特別条項で定めた時間以上の残業を行っていることになるので問題となります。
残業60時間を超えた分の割増賃金が50%以下
残業代の割増賃金は通常25%以上。
ただ残業60時間を超えた分の残業代に関しては50%以上でなくてはならないと定められています。
サービス残業は問題外ですが、60時間を超えているのにそれ以下の残業と同様に25%割増となってしまっていたら、それは違法ということになります。
ただし中小企業は現在のところ免除されており、60時間超えになったからと言って25%割増でも問題はありません。
中小企業は2022年4月1日から50%以上の割増賃金が必須となります。
大企業、中小企業の定義については下記記事を参考にしてください。
残業60時間以上と過労死ラインとの関係
では最後に残業60時間以上の過労死ラインとの関係について紹介します。
過労死ラインは80時間以上から
健康障害のリスクが高まるとされる過労死ライン。
実際に健康障害が発生した場合に労働との因果関係判定に用いられる目安になっています。
現在その目安は80時間。発症前2~6ヶ月間で平均80時間を超える時間外労働があると、健康障害の原因が長時間労働にあると認めやすいとされています。
時間外労働が100時間にもなれば、発症前1ヶ月だけでも因果関係があるとされます。
あくまでこの指標は時間外労働なので、残業が60時間に加え8時間の法定休日出勤が3日あり80時間以上の時間外労働をした場合も含まれます。
45時間以上が続くと健康障害のリスクが増える
残業60時間だけでは一応は過労死ラインには届いていません。
ただ発症前1ヶ月~6ヶ月間にわたって45時間以上の残業を行っている場合、残業時間が増えるにつれて業務と健康障害の関連性は強まっていくとされています。
過労死ラインを超えていないから大丈夫というわけではないのです。
もし残業60時間以上が頻繁にあるならば、自分の体調には良く気を付けなくてはいけません。
多すぎる残業が辛い場合は転職も考えよう
正社員として働いているなら、なかなか残業ゼロとはいきません。
それに残業は残業代によって給料が増えるという良い側面もあります。
ただそれもある程度まで。
多すぎる残業はあなたの健康を害します。
もし自分にとって辛いと感じるほど残業が多いのであれば、無理をせず転職することも考えてください。
今はかなり転職がしやすい売り手市場。
自分を守ることができるのは自分だけ。いまいちど自分の現在の働き方について考えてみてください。
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