残業を8時間やったら代休をとって相殺しても違法ではないが、割増賃金は必要

休日出勤した場合に代休取得を命じる会社は少なくありませんが、それを普段の残業に対して行う会社もあります。

たとえば8時間分の残業に対し、1日代休をとると相殺して残業を減らすという形です。

今回はこの場合に気を付けなくてはいけないルールや問題点について紹介していきます。

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残業8時間分を代休で相殺することは違法ではない

残業代を減らす目的で、残業を8時間以上した場合に代休を指示し残業と相殺するということを行う会社があります。

このこと自体は基本的には違法ではありませんが、いくつか注意しなくてはいけない点があります。

代休を取ることで、残業時間を減らすことが可能

所定労働時間が8時間の会社において、代休をとることによって8時間分の残業と相殺し、総労働時間を合わせるというのは可能です。

労働基準法第37条の1項から3項では以下のように定められています。

労働基準法第37条

  1. 使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
  2. 前項の政令は、労働者の福祉、時間外又は休日の労働の動向その他の事情を考慮して定めるものとする。
  3. 使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項ただし書の規定により割増賃金を支払うべき労働者に対して、当該割増賃金の支払に代えて、通常の労働時間の賃金が支払われる休暇(第三十九条の規定による有給休暇を除く。)を厚生労働省令で定めるところにより与えることを定めた場合において、当該労働者が当該休暇を取得したときは、当該労働者の同項ただし書に規定する時間を超えた時間の労働のうち当該取得した休暇に対応するものとして厚生労働省令で定める時間の労働については、同項ただし書の規定による割増賃金を支払うことを要しない。

時間外労働(残業)や休日労働した場合に、その通常の労働時間を超えた分の休暇と対応させることが可能と書かれています。

代休と言うと、休日出勤をした場合にとるものであると一般的に理解されていますが、そんなことはなく残業時間に対しても利用できるものなのです。

ただし割増賃金の支給は必要である為、残業手当はでる

労働時間の上限は1日8時間、1週間で40時間と定められています(労働基準法第32条)。

そしてこれ以上の残業を行った場合には、1時間につきその人の1時間あたりの通常賃金に加え、0.25倍の残業手当が支払われます。

そして残業の代わりに代休をとった場合、その通常賃金分は相殺されますが、0.25倍の残業手当は相殺されず支給されます。

たとえば1週間で8時間残業し、週の労働時間が48時間となった場合、残業手当は以下の通りになります。

  • 代休をとらない場合:(1時間あたりの通常賃金)×(8時間)×1.25
  • 代休をとった場合:(1時間あたりの通常賃金)×(8時間)×0.25

たとえば1時間あたりの通常賃金が1,500円だとすれば8時間の残業を代休と相殺したとしても、3,000の残業手当は支給されるということです。

その手当が支払われないようであれば、それは違法です。

法定外休日の休日出勤と同様の扱い

この扱いは、法定外休日に休日出勤をして代休を取った場合と同様です。

たとえば土日が休みの会社の場合、2日のうち1日は法定外休日となり、もう1日が法定休日という扱いになります。

法定休日に休日出勤をした場合、手当は通常賃金に加え0.35倍以上の割増が必要となります。扱いとしては休日労働です。

しかし法定外休日に休日出勤をした場合、扱いは普段の残業と同様の扱いとなり0.25倍以上の割増賃金で良いということになっています。

よって、残業を8時間してその代わりに代休をとる場合と、法定外休日に出勤して代わりに代休を取る場合というのは、扱いとしては同じということなのです。

会社が認めなければ代休はとれない

残業を8時間以上したからと言って、必ずしも代休をとって良いというわけではありません。

会社側には残業が多くなったからと言って代休をとらせなければいけないという義務はないし、代休を取りたいと言ったことに対して認めなければいけないという義務もありません。

あくまで代休を取れるのは会社が認めた場合です。

所定労働時間が8時間未満の場合の注意点

会社によっては所定労働時間が8時間ではなく7時間半など短く設定している場合もあります。

その場合は上記で説明した内容が少し変わってくる点があるので注意が必要です。

相殺されるのは所定労働時間と同じ分の時間

相殺されるのはあくまで所定労働時間と同じ分だけの時間になります。

たとえば所定労働時間が7時間30分で残業を8時間にして代休をとった場合、7時間半分の残業は相殺されますが、30分は相殺れず残ります。

割増賃金が支給されない場合もある

割増賃金を支給する義務が生じるのは、1日8時間、1週間で40時間という上限を超えた場合です。

たとえば1日7時間の会社で1日1時間ずつ1週間に5時間、2週間で10時間残業して翌週に1日代休をとったとしましょう。

この場合だと1日の労働時間は8時間、1週間の労働時間は40時間となり上限を超えません。その為、10時間分の残業に0.25倍の割増賃金は必要なくなり、通常賃金分の手当のみでよいとなります。

そしてもし代休をとって相殺したとしても、相殺した分の時間に0.25倍の手当も発生しません。

有給休暇が取れない・取りにくい場合は労働者にとって悪い制度

この残業を代休で相殺する制度。少なからず導入している会社もありますが、これがあるせいで全く有給休暇が使えないなんて話をよく聞きます。

代休で休まなくてはいけないせいで有給休暇を取るタイミングがなかったり、休みを取りたい時は代休を使わせられるそうです。

有給休暇が使えなければ、この制度は労働者にとってみるとかなり悪い制度。

有給休暇を使って休めば残業分の給料が相殺されず少なくなることはないのに、有給休暇の代わりに代休を使うと給料は減ってしまいますから。

会社によっては有給を使わせず人件費を減らす為に都合よく代休を強要している会社もありますので、注意が必要ですね。

割増賃金が支払われず、会社の都合で好きに行われている会社は注意

まず代休をとらせるからという理由で、一切の割増賃金を支払わないような会社は問題外です。

また、会社の都合で好きに利用するような会社も注意。有給休暇がとれないなど不都合が多いですから。

もしそういった問題が今働いている会社があるならば、もっと働きやすい会社への転職を考えてみましょう。

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