契約社員やパートといった有期雇用労働者は、身分が不安定。
不景気で真っ先に打撃を受けるのは、いつも有期雇用労働者、すなわち正社員以外の非正規雇用の人たちです。
そのため無期雇用になることは金銭的・精神的にも安心感を得られますが、実は正社員とまったく別の雇用枠である可能性があります。
もし無期雇用へ転換するなら、無期雇用の裏事情を知っておかないと損をしてしまうかもしれません。
5年働けば有期雇用から無期雇用へ
2013年に改正された労働契約法によって、契約社員やパートなどの有期雇用者が5年を超えて同じ会社で働いた場合、労働者からの申し出があれば無期雇用へと転換しなくてはいけないというルールができました。
ちなみに派遣社員の場合は、派遣元との契約が5年以上の場合に適用されます。
雇用期間に関しては2013年4月で一旦リセットされるので、最短では2018年4月から5年を超える人が出ることになります。
順次無期雇用への申し出が増え、企業も対応をしていくというのが現在の無期雇用転換の形です。
しかし、無期転換後の雇用区分については会社によって制度が異なるため、 どのような雇用形態になるかは一概に言えません。
どういうことかというと「無期雇用になる=正社員登用とは限らない」のです。
無期雇用と正社員は別物
これまでいつ契約を切られてもおかしくない状態で働いてきた人にとって、無期雇用への転換は大きなメリットになります。
ただ勘違いしてはいけないのは、あくまで変わるのは雇用期間に関するものだけ。
企業によっては無期雇用になるタイミングで正社員に切り替わることもありますが、場合によっては「無期である」以外の待遇はそのまま、宙ぶらりんな立場になってしまう可能性があります。
そもそも有期雇用とはどんな人?
ここで一度、有期雇用労働者の区分に入るのはどんな人かをおさらいしておきましょう。
パートタイマー・アルバイトの立場はわかりやすいものですが、準社員・メイト社員などの違いもはっきり理解しておく必要があります。
準社員は「準社員=契約社員」と扱っている会社が大半ですが、両者ともある場合は、非常勤などのより限定的な働き方を「契約社員」と定義することが多いです。
メイト社員は「勤務地限定社員」とも呼ばれ、転勤や職種転換を伴わない働き方ができるのが特徴です。
非正規雇用にこれだけ種類があるとなると、なかなかややこしいですよね。
無期雇用=正社員とは限らない
前述した通り、無期雇用になれたからといって必ずしも正社員と同じ待遇になれるわけではありません。
実際に2020年の厚生労働省の調査によると、非正規から正社員への登用率は60%に留まっています。
2019の段階でも63%なので、昨今の不況と相まって導入率の進み具合は芳しくないことがわかります。
無期雇用と正社員の待遇の違い
では、正社員とは異なる「無期雇用」へ転換した場合、実際どのような待遇差が生まれてくるのでしょうか。
給与面
正社員の場合は定期的に昇給があり、成果を上げれば昇格し、ボーナスもあることが多いでしょう。
ただ契約社員やパートとして働いてきた人が無期雇用になったからと言って、これらの対象に入るとは限りません。
文字通り「無期雇用」という扱いになっただけで、将来的に昇給や昇格などの見込みもなし、ボーナスも支給されない可能性もあります。
仕事内容
仕事内容は契約社員やパートの時から変わらない場合がほとんどで、正社員と同じ仕事、同じ責任を持つことにはなりません。
契約内容にもよりますが、転勤がない、異動がないという待遇も維持されます。
ただ、会社によっては無期雇用になったという理由で、給料は上がらないのにやたら仕事の責任だけ増えたり、仕事の幅が広がってしまったりするリスクもゼロではないので注意が必要です。
勤務時間・勤務日数
正社員同様のフルタイムである必要性はなく、多様な働き方が可能です。
パートの人であれば、週3日、1日4時間なんて働き方をしている人もいると思いますが、勤務時間を変える必要はありません。
こちらは、今までの「働きやすさ」を保てるという点でメリットが大きいといえるでしょう。
福利厚生・退職金
気を付けなくてはいけないのが福利厚生。
社会保険の加入や有給休暇、育休・産休など法律で定められているものは、有期・無期関係なくこれまで通り維持されます。
ただ会社独自の福利厚生に関しては、無期雇用になったからといって対象となるとは限りません。
例えば社食の割引や保養所の利用、カフェテリアプランのポイントの付与などは正社員と無期雇用者で差がつけられてしまう可能性もあるのです。
また一番重要なのが退職金。
定年時に老後の資金になってくれる退職金ですが、この退職金は正社員のみに適用、無期雇用では何も貰えないというケースも多いです。
ただし、中には待遇が良くなる場合も
無期雇用へと転換できたからと言って、このように契約期間以外が変わらないことが多いのですが、すべての会社が絶対そうではありません。
会社によっては「正社員登用」の契約を交わしてくれたり、正社員と区別はするものの、昇給やボーナスの対象になったりします。
法律上で決められているのはあくまで雇用期間の部分だけですが、全ての会社が最低限しかやらないというわけではないのです。
とはいえ正社員登用導入率60%の実態があるように、確率は半分程度だと理解しておかねばなりません。
同一賃金同一労働で無期雇用の待遇は改善される?
2020年4月から大企業、2021年4月から中小企業で導入される同一労働同一賃金。
まずこの制度の内容についておさらいしておきましょう。
同じ仕事に就いている限り、正社員、非正社員を問わず、同一の賃金を支給するという考え方。
非正社員を選択する労働者が増加している中、働き方改革の一つとして、両者間の不条理な待遇差を解消することが目的としている。
無期雇用労働者にとっては、待ってましたと言わんばかりの働き方改革。
しかし大企業での導入が始まって早1年が経とうとしていますが、残念ながらその浸透は遅々として進んでいないのが現状です。
2020年の厚労省の調査では、同一賃金同一労働導入率は52%。
さらにこの52%も、改善されたのは賃金などの一部に限ったものが多く、ボーナスや退職金は支払われないなどの問題点もまだまだ残っています。
不景気の混乱も相まって導入が遅れているとも解釈できますが、大企業でもこの状態、ましてや体力の無い中小企業での実現には時間がかかることが予測されます。
今すぐ同一労働同一賃金に期待できるかというと、素直にYESと言うことはできません。
正社員として転職するのが安全策
正社員に比べて仕事の責任が軽く残業も少ない、労働時間に融通が利くといったメリットがある有期雇用。
さらに心配の種であった雇用の不安定性が解消されるのなら、無期雇用も決して悪い働き方ではありません。
けれど「正社員登用」の明確な文字がない限り、待遇面は完全であるとはいえません。
それに無期雇用にするということは簡単に辞めさせることができなくなり、企業側も人員調整ができなくなるということ。
それを嫌がる企業は5年が経つ前に更新をしない判断を取るかもしれない、下手したら有期雇用のままで会社を転々とすることになるかもしれません。
同一賃金同一労働も浸透までに時間がかかると予測されことからも、長期的なリスク回避のためには転職して正社員を狙うのがベストです。
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