中には残業70時間くらい普通なんていう人もいますが、本当にそうなんでしょうか。
残業70時間もしていると、さすがに仕事が楽、仕事は余裕なんて言ってられません。
30時間ならまあ普通にこなせていたものの、50時間、70時間を超えるとどんな状態になってしまうのでしょうか。
目次
残業が70時間、これって普通?
残業70時間が普通。果たして本当にそうでしょうか。
もちろん会社によっては普通かもしれませんが、一歩外を見渡してみれば、決して普通とは言えない数字です。
70時間はかなり多いと言える残業時間
残業の平均時間に関するデータは様々あります。
例えば厚生労働省が発表している調査結果だと、短時間労働者を除いた一般労働者で15時間程度。
しかしこれは会社に調査した結果であるが故に少なくなっているのか、他の調査では40時間を超えるというデータのものもありました。
1ヶ月の特別延長時間の分布(特別条項がある事業場、企業規模別)
合計 | 大企業 | 中小企業 | |
45時間以下 | 1.7% | 1.5% | 1.9% |
45時間超50時間以下 | 2.3% | 1.5% | 3.5% |
50時間超60時間以下 | 23.5% | 23.6% | 23.4% |
60時間超70時間以下 | 14.8% | 15.0% | 14.5% |
70時間超80時間以下 | 36.2% | 33.5% | 40.1% |
80時間超100時間以下 | 16.0% | 18.3% | 12.7% |
100時間越え | 5.5% | 6.6% | 3.9% |
引用 厚生労働省
平均残業時間推移
2012年 | 2014年 | 2016年 | 2018年 | |
平均残業時間 | 46時間 | 44時間 | 35時間 | 28時間 |
引用 マイナビ
ただ、どちらにしても残業70時間というのは相当多い時間だと言うことは間違いなく言えるでしょう。
残業30時間程度ならばよくあることなんて言えるかもしれませんが、さすがに残業70時間は普通と言える残業時間ではありません。
そもそも残業時間は原則1ヶ月45時間以内、1年360時間以内
そもそも残業時間には限度時間が定められており、そしてそれは1ヶ月45時間、1年360時間です。
これを上回る為には、特別条項付きの36協定を締結しなくてはなりませんが、それはあくまで恒常的なものではなく一時的・突発的なものであることが条件となっています。
1ヶ月70時間、そしてそれを1年続けたら840時間です。
本来は普通にやっていい残業時間ではないんですよね。
突発的ならあるが慢性的なら要注意
何かしらの理由で突発的に残業が増えてしまって70時間程度になってしまうというのは、ホワイト企業であってもあることです。
100時間を超えるような残業なら突発的でもやっていいとは思えませんが、70時間ならまあ仕方がない場合もあるのかなとは思います。
ただ残業70時間が慢性化しているなら要注意。それはどう考えても普通の残業時間ではありません。
理想の残業時間はどれくらい?
理想の残業時間は業種によっても個人によっても様々でしょう。
そもそも残業時間が0時間であることが一番理想ですが、残業代を生活の足しにしている場合、毎日少しだけ残業をしないと生活に困ってしまう人もいます。
では、何時間の残業時間までなら身体や精神に影響がないのでしょうか。
残業時間別ワークライフバランス
残業時間が0時間、20時間、40時間、70時間の場合、自由時間はどのように変化していくのかを見ていきましょう。
条件は通勤時間は片道1時間、基本勤務時間は9時~18時、1ヶ月の稼働時間は20日間とします。
残業時間0時間の場合
- ・7時:起床
- ・8時:出勤
- ・9時:仕事開始
- ・18時:仕事終了
- ・19時:帰宅、自由時間~
残業がない場合は夜の7時から自由時間になるため、時間に余裕をもって生活できるでしょう。
睡眠時間もしっかりとれ、趣味や何かしたいことがあっても充分に時間を使うことができます。
残業時間20時間の場合
- ・7時:起床
- ・8時:出勤
- ・9時:仕事開始
- ・19時:仕事終了
- ・20時:帰宅、自由時間~
1ヶ月の残業時間が20時間の場合、20時間÷20日=1時間になるため毎日1時間の残業があります。
自由時間は2,3時間ほど確保できるため、残業時間が0時間と大きな差はありません。
しかし残業20時間では、残業代が心もとなく感じる人もいるようです。
残業時間40時間の場合
- ・7時:起床
- ・8時:出勤
- ・9時:仕事開始
- ・20時:仕事終了
- ・21時:帰宅、自由時間~
1ヶ月の残業時間が40時間の場合、40時間÷20日=2時間になるため毎日2時間の残業があります。
夜の9時に家に着くため、自由時間が目に見えて減っていきます。
このあたりの残業時間から趣味の時間をとることが難しくなり、帰宅時間に合わせた買い物もギリギリになっていきます。
睡眠時間も人によっては足りず、疲れがたまりやすくなってしまうかもしれません。
残業時間70時間の場合
- ・7時:起床
- ・8時:出勤
- ・9時:仕事開始
- ・21時半:仕事終了
- ・22時半:帰宅、自由時間~
1ヶ月の残業時間が70時間の場合、70時間÷20日=3.5時間になるため毎日3.5時間の残業があります。
平日の自由時間はほぼほぼ無いため、やっと仕事が終わって家に帰ってもすぐに寝なければ、次の日に備えることができません。
ではこのような残業70時間が日常になってしまうと、具体的にどうなってしまうのでしょうか。
残業70時間していると、体を壊してもおかしくない
多すぎる残業時間は、心にも体にも大きなダメージを与え、時に過労死という最悪の事態を招くことになります。
そして残業70時間というのは、十分多すぎる残業時間に該当します。
1日3、4時間の残業をしていればストレスは溜まる一方
残業70時間ということは1日3から4時間程度。
定時で帰れなくてはいけない日があると、1日5時間残業しなくてはいけない日もあると思います。
終業時間が18時だとするとそこから4時間も残業すればもう22時。家に帰れば23時です。
これがほぼ毎日となれば、仕事以外のことが何もできないのでストレスは溜まる一方だし、睡眠時間も少なくなってしまいます。
これでは体調を壊してしまうのも、全くおかしくありません。
過労死ラインは80時間でも、それ以下なら大丈夫というわけではない
健康障害リスクが高まるとする時間外労働時間を示す「過労死ライン」は以下のように定められています。
- 発症前2ヶ月間ないし6ヶ月間にわたって1ヶ月80時間を超える時間外労働
- 発症前1ヶ月間に100時間を超える時間外労働
これだけ見ると残業70時間なら大丈夫と思ってしまいがちですが、全くそんなことはありません。
仕事から与えられるストレスは人によって様々ですからね。
また過労死ラインとは別に、「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」では、以下のように定められています。
- 発症前1ヶ月間ないし6ヶ月間にわたって、1か月45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できる
残業70時間も継続的にしていれば、仕事のせいで体を壊すこともありえるというのが認められているのです。
多すぎる残業に慣れてはだめ
毎月かなり多い残業をしていると、徐々にその残業をすることに慣れてきます。
ついこれは普通のことだと勘違いしてしまうようになりますが、それではだめです。
仕事に慣れるのと、長時間労働に慣れるのとは全然違い、後者は自分をごまかし、自分の体・心をすり減らすことに目をつぶってしまっているだけです。
もし仕事が好きで好きでたまらず、毎月70時間以上残業があっても全く苦にならないのであればこのままでもいいかもしれません。
ただもし今の状況に苦を感じているなら、このまま多すぎる残業下で働き続けることはやはりおすすめすることはできません。
残業が少ない会社は思った以上に働きやすい
毎月残業60時間以上、多い時には100時間を超える残業をする会社で働いていたAさんという人がいます。
Aさんは当然残業時間に不満を持ち、数年働いたところで転職に踏み切り、転職後は残業20~30時間で、1年に1回40時間近くまでする場合もある程度の会社に就きました。
その結果、人生が変わったとまでAさんははっきりと言いました。
毎日何かしら仕事以外の時間を持つことができるってやっぱりかなり大きいのです。
仕事を選ぶ際、つい給料が高いかどうか、仕事内容にやりがいがあるかどうかに注目してしまいがちですが、残業時間も、それと同じくらい大事なものだということは忘れてはいけません。
残業時間と生産性
生産性とは投入した資源を活用して、どれくらいの生産が行われているかを指します。
では残業時間が長い場合、生産性はどうなるのでしょうか。
ワークライフバランスで確認した通り、働く人に残業時間が発生した分自由時間が削られていきます。
この自由時間で一番大重要なものは休息、睡眠です。
残業により自由時間が削られ、身体を休める時間と睡眠時間が減ってしまうことは、体や精神に悪い影響を及ぼします。
なぜなら充分に疲れがとれていないことから、集中力の低下、生産性が下がり、仕事の質を維持するために長時間労働、残業時間の維持を繰り返した生活になってしまうからです。
要するにただ長く働いていても疲労がたまっているならば、生産性が落ちる可能性が高くなってしまうのです。
また、労働者健康安全機構が発行している情報誌には「労働時間と労働生産性」という内容があります。
この内容には「年間総労働時間と労働生産性の相間」、労働時間と労働生産性には相間があり、労働時間が長くなればなるほど労働生産性が低下するという関係がみられることを図に表しています。
こういったことから残業時間と生産性に深い関係があることがうかがえるでしょう。
長時間の残業を我慢すべきではない3つの理由
長時間の残業が自分自身にどんな影響があるのか、経験したことがある人にはわかると思います。
明確に言えることは長時間の残業をすることを我慢してはいけません。
では改めて、長時間の残業をしない方が良い理由を確認しましょう。
健康リスクが高まる
充分な休息をとれないため、身体や精神へのリスクが高まります。
また、リスクが高まった後でも長時間労働が普通になってしまうと下げる方法がなくなってしまうのです。
ワークライフバランスの悪化
残業時間が増えれば増えるほど、自由に使える時間が減っていきます。
自分自身の自由時間は、休息はもちろんですが趣味や気分転換にも使える大切な時間です。
身体と精神の健康が保たれてこそ、仕事も効率よくこなすことができるので、もう一度1日のスケジュールを意識しましょう。
生産性が下がる
労働時間と労働生産性には相関関係があります。
長時間労働したから労働生産性が上がるのではなく、かえって労働生産性は労働時間が長くなるにつれて下がっていきます。
労働生産性は集中して蜜に仕事を行うことで上がるものなので、長時間の残業はおすすめできません。
長時間の残業には要注意!
広い目で見れば長時間の残業は会社にも、個人にもメリットはあまりありません。
むしろ慢性的に体を壊してしまったり、仕事で大きな失敗につながってしまう可能性さえあります。
無理な残業は控えつつ、効率よく仕事ができるような労働時間を意識しましょう。