社会人になりボーナスが最大の楽しみという方も多いでしょう。ボーナスで欲しいものを買ったり、ローンに当てたり、将来のために貯蓄したりと色々な使い道があります。
しかし、その金額は自分に相応しいものでしょうか? 仕事っぷりから考えても、思ったよりも少ないと感じている方や、中にはボーナスを支給されていないという方もいることでしょう。特に30代の方はこれからよりお金が必要になる場合が多いので、ボーナスはとても重要です。
今回はボーナスについて法律の観点や多くもらえる業種、男女での平均、そして少ない場合の原因や対策などを紹介いたします。
目次
企業にボーナスを払う義務はあるか?
夏期手当や年末手当、期末手当、そして賞与など様々な呼び方があるボーナス。
「賞与」については“定期又は臨時に労働者の勤務成績、経営状態等に応じて支給され、その額があらかじめ確定されていないものをいう”と厚生労働省のホームページ『平成21年就労条件総合調査結果の概況:主な用語の定義』に記載されています。
厚生労働省のホームページにも記載がある「賞与」こと「ボーナス」ですが、法律ではどのような位置づけをされているのでしょうか。
そもそもボーナスを企業は払う必要があるのか?
労働基準法などの法律にボーナス(賞与)に関する規定はありません。
法律で定義されていないためボーナスの支給条件(支給の有無・金額など)は会社の裁量で決めても問題はないのです。
※参照ページ
e-Gov「労働基準法 第三章 賃金」
厚生労働省「毎月勤労統計調査で使用されている主な用語の説明」
※就業規則で支給方法や算定の条件が定められている場合はそちらが優先されるので注意が必要です。
賃金に関する法律
賃金については、以下のように労働基準法で定められています。
この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。
ボーナスや賞与が労働契約や就業規則で支給基準などが明らかにされている場合は、契約によって支払われる賃金の一部とみなされるため、会社はその内容に従って支給する義務があります。
ボーナスにかかる税金
ボーナスは法律で規定がありませんが「給与所得」としてしっかり課税されます。社会保険料と所得税に大きく分けることができるので詳しく確認してみましょう。
社会保険料
社会保険料に関わる税金に関しては下記の3つが当てはまります。
1.健康保険料:ボーナス×健康保険料率÷2
ボーナスの1,000円未満は切り捨てで計算。健康保険料は企業と社員が半分ずつ負担することになっています。加入している組合や勤務地によって健康保険料率が異なるので、加入組合のホームページなどから確認してください。また、料率は39歳以下と介護保険料も払う40歳以上で異なる点も注意が必要です。
2.厚生年金:ボーナス×厚生年金保険料率(0.183)÷2
ボーナスの1,000円未満は切り捨てで計算。保険料率は18.3%(2019年1月時点)で固定されており、企業と社員が半分ずつ負担することになっています。保険料率は変更になる場合があるので、厚生年金機構のホームページなどから最新のものを確認してください。
3.雇用保険:ボーナス×0.003
事業内容によって料率が異なりますが、多くが0.3%です。労働者負担率が0.3%、事業主負担率が0.6%で合計負担率が0.9%となっています。
雇用保険料率は、毎年変わる可能性があるので、定期的に厚労省のホームケージを確認するのが良いでしょう。
雇用保険料率について|厚生労働省
所得税
ボーナスに対する源泉徴収税率は、ボーナスが出る前月の給与から社会保険料を引いた額と、扶養人数によって決まります。
こちらも変動するため、最新の情報に関しては国税庁のホームページを確認するのをおすすめします。
社会保険料と所得税は発生するボーナス、しかし住民税はかからないというメリットがあります。
ボーナスと法律の関係を確認してきましたが、法律で定義されていないため会社次第というのが実情です。しかし、支払われる以上は社会保険料と所得税の対象になります。
30代のボーナスの平均額はいくら?
ここでは30代のボーナスにスポットを当てつつ、年代別、業界・業種別などでもらえる金額の差などを分析します。
30代でボーナスを多くもらえる産業についてや平均額を確認するので、自分が受け取っているボーナスの金額と比較してみてください。
年代別
平成30年の20代、30代、50代のボーナスの平均を、社員数の規模ごとに分けて比較します。
年代 | 10~99人 | 100~999人 | 1,000人以上 |
20 代 | 36万円 | 51万円 | 55万円 |
30 代 | 56万円 | 81万円 | 118万円 |
50 代 | 63万円 | 109万円 | 189万円 |
比較結果
1.ボーナス額は年齢ごとに増えていき、50代がピークで1番高い
2.大規模な企業ほどボーナスの上がり幅も大きい
結果から大企業で年齢が高くなるほどボーナスの金額も増えて行くことがわかります。
業界・業種
次に業界・業種でボーナスが高いところはどこか確認してみましょう。
年間ボーナスの支給額が高い業界
1位 金融・保険業(145.5万円)
2位 電気・ガス・熱供給・水道業(136.8万円)
3位 情報通信業(102万円)
一方、ボーナスが最も少ない業種はどこでしょう?
最も少ない業界
宿泊・飲食サービス業(14.3万円)
標本調査 平成30年民間給与実態統計調査結果 『第9表 業種別及び給与階級別の給与所得者数・給与額』(国税庁)
お金を扱う「金融・保険業」と生活に欠かせない光熱費の「電気・ガス・熱供給・水道業」が高く、「情報通信事業」も現在最も注目される業種の1つなので3位になるのも納得の結果といえます。
「宿泊・飲食サービス業」については景気が良いとする政府見解とは異なり、従業員にその恩恵が届いているとはいいがたいです。
30代で高額のボーナスがもらえる産業
厚生労働省の産業種別より比較します。
産業 | 30~34歳 | 35~39歳 |
金融業、保険業 | 138.7万円 | 156.9万円 |
学術研究、専門・技術サービス業 | 104万円 | 124.6万円 |
鉱業、採石業、砂利採取業 | 104万円 | 100万円 |
30代の産業でも「金融業、保険業」がボーナスの額が一番高く、学術研究、専門・技術サービス業が続きます。「鉱業、採石業、砂利採取業」は30~34歳では「学術研究、専門・技術サービス業」と差がないのですが、35~39歳では約25万円の差が生じています。
また、「学術研究、専門・技術サービス業」は30~34歳と35~39を比較したときに、30~34歳の方がボーナスは多くなるのも特徴です。
民間企業のボーナス「平均値」は?
「厚生労働省 毎月勤労統計調査 全国調査 各年の『夏季賞与』『年末賞与』」を参照して民間企業のボーナス平均値を確認します。
夏:38.4万円
冬:39万円
夏と冬を合わせ77.4万円が年間平均となります。
参照サイト 厚生労働省 毎月勤労統計調査 全国調査 各年の『夏季賞与』『年末賞与』
ただ、ここの平均値より低いからといってあまり悲観的になりすぎることはありません。
民間企業の中にはそもそもボーナスがないところもあれば年間数百万という金額を支給するところもあるので、あくまでも均等に割った時の数値が77.4万円ということになります。
そのため、実際に多い層は中央値は平均よりも少し低めに出る傾向が多いです。
ボーナスが高い企業ベスト5
どういった業界・業種のボーナスが高いかや平均値を調べてきましたが、具体的にボーナスが高い企業を見てみましょう。
第1位 東京エレクトロン
→平均546.8万円支給。前年比34%増。
第2位 ディスコ
→平均482.7万円支給。前年比27.2%増。
第3位 アドバンテスト
→平均415.7万円支給。前年比36.9%増。
第4位 双日
→平均370.5万円支給。前年比14.8%増。
第5位 大本組
→平均366.8万円支給。10.9%増。
『会社四季報』2019年2集春号 東洋経済新報社
1~4位までの企業を見てみると半導体関係の企業、あるいはそれに関わる商社で固まっています。
ビッグデータなどの活用が様々なところで注目されたことや、IOT(Internet of Things)と絡めた製品やサービスの開発で需要が伸びてきたことが要因の一つです。
5位の大本組は2017年から民間企業だけではなく官公庁関係の受注数が増えていることが理由の一つとして上げられるでしょう。
男女のボーナス平均額を比較
日本では現在も男性のほうが女性よりも賃金が高く、それはボーナスも同じだと言えます。特にその差が大きくなるのが30代です。
ここでは2018年のデータを参考に男女の年代別のボーナスの金額について比較しその原因を考えます。
20~50代男女の年間ボーナスの比較(2018年)
年代 | 女性 | 男性 | 女性の男性に対するボーナスの割合 |
20~24歳 | 36.1万円 | 42.3万円 | 約85.3% |
25~29歳 | 60万円 | 73万円 | 約82.2% |
30~34歳 | 64.9万円 | 91.9万円 | 約70.1% |
35~39歳 | 67.9万円 | 107.1万円 | 約63.4% |
40~44歳 | 73.6万円 | 122万円 | 約60.3% |
45~49歳 | 76.5万円 | 141.1万円 | 約54.2% |
50~54歳 | 76.4万円 | 155.3万円 | 約49.2% |
55~59歳 | 72.8万円 | 145.8万円 | 約49.9% |
女性のボーナスを男性と比較してみると20代より80%と初めから性別による差が見られますが、特に30代は前半が70.1%なのに対し後半が63.4%と大幅に下がっています。さらに年齢が高くなるにつれ差は開き続け、50代では50%を切っています。
ボーナスの差が開いていく原因
昇進する女性が少ない
現在でも日本では育児を女性にまかせる傾向が強く、給料が高くなる管理職に女性が就くのが難しい状況です。
厚生労働省の調査では、2018年度の企業における課長職以上就く女性管理職比率は、10.9%と発表されており、男性と比較して女性管理職の割合がかなり少ないのが実情となっています。
30代、ボーナスが少ない原因と対策
ボーナスの金額を見て少ないと感じたことはありませんか? 支給された金額が自分のしてきた仕事に見合っていなかったときどうすればいいのでしょう。
まず必要なのはボーナスが少ない原因の究明です。ボーナスが少ない原因は3つに分けられます。そして原因がハッキリすれば後はそれを改善するだけです。
ここではボーナスが少ない3つの原因とその対処法3つを確認します。
ボーナスが少ない3つの原因
原因1.個人の評価が低い
個人の評価が低い場合、それに比例してボーナスも低くなります。
自分が会社に求められている業務とそれに対してどのくらい達成できているのかというアピールは重要です。
もししっかりと仕事はこなしていても、その努力がなかなか目に見えにくい部分だとしたら評価に結びつかないままになってしまうということも起こりえます。
原因2.会社の業績が悪い
会社の業績がボーナスに影響することは多々あります。
業績が良くて余裕があればボーナスは問題なくもらえますが、不足の自体で経営が傾きつつある、または経営を立て直すために人件費を削る必要があるという状況になったらボーナスのカットという施策が打たれるのは珍しくありません。
元々全国平均程度のボーナス、あるいは平均以上のボーナスを支給していたのに、急にボーナスカットとなったら少し経営が危険かもしれません。
原因3.業界の景気が悪い
業界の景気が悪いと内部保留を増やそうとする傾向があります。所属する業界が不況ならその影響はボーナスにも反映されるのです。また、2008年に起ったリーマンショックによる不況で多くの企業がボーナスの減額や支給の中止を行いました。社会状況がボーナスを下げる要因になる場合もあります。
ボーナスが少ない原因はこの3つが考えられます。では、ボーナスを増やすためにはどうすればいいのでしょうか?
ボーナスが少ないときの対処法
対処法1:個人の評価を上げる
目標設定やフィードバックをもらうことで、目標達成の度に評価が上がるのでボーナスももらいやすくなります。
営業職のように目に見えてわかりやすい数値がある場合はアピールがしやすいですが、例えば企業の情報システム部のような裏方業務が多い職種はなかなか評価につながらないケースがあるでしょう。
その場合は。自分の業務がどのくらいコスト削減、あるいはリスク回避に繋がったのかということを数値化することによって評価する側も判断しやすくなります。
対処法2:会社の評価基準の確認
会社の評価制度・基準を改めて確認し、何をどうすれば評価が上がるのかをしっかり理解します。
最近は定期的に1 on 1ミーティングなどをする企業も増えていますので、その時に「自分が会社に求められていることはどのレベルなのか」ということをしっかりすり合わせをしましょう。
対処法3:転職する
会社や業界のせいでボーナスが低い場合は個人で奮闘しても限度があるので転職も一つの方法です。
対処法1と2は自分の評価が低い場合の対象法となります。
ただし就職先がブラック企業の場合、1と2は意味がないので、ボーナスに対して不満を強く持っている場合は対処法3を選択するというのもおかしいことではありません。
もし転職を検討する場合は求人項目を確認してボーナスや給与査定の制度がどのようになっているのか聞きにくいこともしっかり確認するのが大事です。
ボーナスを確認して将来を考えるきっかけに
今回はボーナスが多く支給される業界・業種やボーナスが少ない原因とその対策などを確認してきました。
ボーナスは会社が自分をどう評価しているか確認する手段の1つでもあり、状況によってはボーナスの支給状況で会社の運営状況を知る手掛かりになる場合もあります。
特に30代は転職率が高い世代でもあり、ボーナスは今後の身の振り方を考える1つのきっかけになるかも知れません。改めて自分のボーナスを見直してみましょう。