Z世代と呼ばれる1990年後半から2010年前半に生まれた人が社会人デビューする昨今、世代の違いから社内教育に悩む方が増えています。
Z世代を教育する立場の人はミレニアム世代よりも上の世代がほとんどで、社内教育する上でやりにくさを感じている人もいることでしょう。
世代が違えば価値観が異なることは当然のことでも、特にZ世代は今後の会社の担い手として大切に教育していかなければならず、世代の違いを理解しないで教育してしまうと、離職やモチベーションの低下など会社にとって良いことがありません。
今回は、Z世代の特徴と戦力化するための社内教育のポイントを紹介していきます。今まさに教育や育成で悩んでいるという方は参考にしてみてください。
Z世代の特徴とは
Z世代は、1990年代中頃から2010年代中頃に生まれた人を指し、生まれたときすでにネットやスマホ、パソコンなどのデジタル機器があった世代です。
ほかの世代に比べてネットやデジタルデバイスの利用頻度が高く、自分の価値観を大切にするために自己学習などにも意欲的な面を持っています。
はじめに、Z世代の特徴について見ていきましょう。
Z世代の特徴
Z世代は、ネットやデジタル機器が生活のあらゆる部分で浸透しており、Web上のコミュニティ形成に長けています。
SNSの活用に代表されるように共感できることには反応が早く、ほかの共感者とのコミュニケーションを楽しむ傾向があります。
こうしたコミュニケーションは仕事上でも役立ち、自己学習や資格取得のきっかけとなるケースも珍しくありません。
また、共感を大切にしているといっても、人種や性別など他との違いを認め個性を重視する考えを持っており、自分と違う価値観だからといって排除するようなことはありません。
世界を含む社会問題やエコ、社会貢献に対する意識も高いので、例えば、何らかの問題が起きたときにSNSから情報を得て、それに対して何ができるかどうすれば良いかを考えたり、情報を拡散して協力を求めたりするのはZ世代ならではの特徴と言えるでしょう。
自分の個性を大切にしながらも、多様性ある生活を好むという個性と多様性の融合した世代と言えるものがあります。
Z世代の特徴について大きく分けると次のようなものが挙げられます。
<Z世代の主な特徴>
- デジタルネイティブ
- 自己成長や実力重視
- 自分の価値観を大切にする
- 個性を受け入れ認める
- 社会問題に関心が高い
- 助け合いの精神
- 多様性と個性が融合した世代
Z世代の仕事や働き方に対する考え方
Z世代が生まれ育った時代は、世界的な大不況や甚大な災害が起こるなど、経済的・社会的に不安定な状態だったことから、仕事や生活に対し安定を求める傾向が強いです。
ワークライフバランスを取り、プライベートを優先・充実したい人も多いといえるでしょう。
同時に、わからないことはネットで調べて解決する行動力があり、安定した収入を得るためにスキルアップや資格を取得するなど現実的かつ実力重視の考え方を持っています。
自分で考えて行動できる反面、自分の価値観を否定されるような厳しい指導や価値観の押し付けを嫌い、組織の歯車の一部として働くよりも個性を重視した多様性ある働き方に関心が高い傾向があります。
また、仕事上の社会貢献度やどれほどやりがいがあるかという面も重視する傾向があり、場合によっては常識にとらわれない働き方をするケースもあるでしょう。
<Z世代の仕事や働き方への考え方>
- 安定重視
- 社会貢献
- ワークライフバランス
- 常識にとらわれない
Z世代の強みとは
Z世代は今後の社会を支える存在であり、貴重な労働力としても注目を集めています。
そんな中でZ世代を教育していくには、世代の特徴はもちろんポイントを押さえた接し方が重要になるでしょう。
ここでは、Z世代の強みについて確認していきます。
Z世代の強み
Z世代が仕事に活かせる強みといえば、なんといってもデジタルネイティブでITリテラシーを心得ていることが代表的です。
AIを駆使した作業の効率化や、ネットを活用した情報収集・拡散力は、Z世代の最大の強みと言えるものがあります。
それに付随するように自己成長にも労力を惜しまない傾向があるので、Z世代の人が興味ある分野の中でうまく育てていけばどんどん伸びる可能性があるでしょう。
次に、社会問題や社会貢献に関心が高く、国際問題などとも距離が近いことや、これらの問題に対しSNSなどを介して情報発信できることが挙げられます。
他の世代に比べてグローバルな視野を持つので、さまざまなステージで俯瞰して考えることができます。
また、個性や自分の価値観を重視する傾向から、これまでの常識にとらわれないところも強みと言えるでしょう。
他との違いを認めて受け入れることができるので、テレワークやフレックスタイムでの勤務なども受け入れやすい傾向があります。
助け合いの精神を持ち仕事上でも協働したい考えを持っているので、年齢差がある職場や男女比が同等の職場、部署間の連携などでも良い影響を与える可能性が期待できるでしょう。
ただ、Z世代のすべての人がこれらの強みに共通しているとは限らず、デジタルネイティブでもSNS上で炎上させてしまうなどITリテラシーが高いわけではない人や、社会問題に関心があったとしても何をすれば良いかわからない人、テレワークに上手く対応できない人もいます。
あくまでZ世代の強みには、こうした傾向があるという認識のもとで解釈するようにしてください。
次は、代表的なZ世代の強みを活かせる業界について触れていきます。
世代の特徴が強めの人に向いている業界
Z世代に向いている仕事といっても多種多様なものがありますが、世代の特徴が強めの方に限定すると向いている業界がいくつか挙げられます。
インターネット・通信・ソフトウエア
主に、インターネット・通信・ソフトウエアなどを扱う業界で、デジタルネイティブのZ世代には身近な業界といえます。
デジタルツールを使いこなすことが重要なポイントになり、変化の速い業界でもあるので自己成長や自己学習の部分でもぴったりの業界でしょう。
商社
商社業界は物を動かして利益を得るという役割を担い、専門商社や総合商社などがあります。
どちらも国内・海外の動向を見極める先見性や広い視野、俯瞰力が必要となり、ときには社会問題や社会貢献にも役立つ分野です。
担当する物やサービスにより興味関心の高低はあると思いますが、自分に合うものを担当するならやりがいを得られる業界といえます。
マスコミ
マスコミ業界は、情報を大勢の人に一度に発信して利益を得る業界で、SNSの扱いに慣れているZ世代にはうってつけと言える業界です。
Z世代がなりたい職業のNO.1にインフルエンサーがランキングしているように、情報発信することが得意ならマスコミ業界がおすすめです。
これまでの常識にとらわれない働き方や、自分の価値観・個性を大切にする部分でもZ世代の特徴が強い人にマッチするでしょう。
参考:Z世代がなりたい職業1位は「インフルエンサー」! 憧れの人は「ふくれな」 – All About NEWS(最終確認2022/10/10)
その他
Z世代は仕事に対して安定した収入を求める傾向が強いです。そのため、公務員も向いていると言えるでしょう。
ただ、安定を重視するという条件のもとではおすすめですが、現状では古い体制のままなのですべてのZ世代の人にマッチするとは言い切れないものがあります。
例えば、役所関係で働いた場合その地域の限定的な仕事が中心になり、今までの常識ややり方に則った仕事をしなければならないこともあるでしょう。
「安定」という部分だけをクローズアップするならおすすめの職種です。
また、プライベートを重視しつつ自分の価値観を大切にしながら働くなら起業にも向いているでしょう。
インフルエンサーをはじめ、IT業界などデジタルネイティブであることを活かした起業、その他の業界でもやりがいを得られる仕事になる可能性が高いです。
Z世代を活かす育て方について
Z世代を教育するにあたり、Z世代の特徴を活かした育て方をすることが何より重要なポイントになります。
ここでは、上手くコミュニケーションを取るコツやZ世代の特徴を活かし伸ばす育て方を紹介していきます。
対話形式のコミュニケーションを重視する
Z世代は、双方に有用なコミュニケーションを好むので、傾聴の姿勢を持ちお互いが対話するようなスタイルのコミュニケーションが有効です。
上司や先輩だからといって一方的かつ上から目線ではなく、Z世代の考え方や思いを受け止めて会話することが大切なので、上の世代から見て常識から外れていると思うことがあったとしても、それを否定しないで諭すような説明があるとより良いでしょう。
できれば1人のZ世代に対し1人の教育担当者がつくなど、集団での対話ではなくマンツーマン形式だとより良い印象を与えることができます。
行う業務の背景や業務を通して本人がどう成長するかを丁寧に説明
仕事の説明をするときは、業務の背景や意味、業務を通して本人にどんな成長や影響があるかを説明してみましょう。
Z世代は個性や価値観を大切にするので、1人の個人として説明を行い納得の上で業務に入ってもらうことがポイントです。
説明をするときも個人の特徴を良く知り、質問を上手く使いながらZ世代の傾向を掴むようにするとより良い対話になります。
また、業務内容がすでに決定事項だったとしても~だと思う、~した方が良い結果につながるといったように、Z世代からみて押し付けや否定と受け取られないよう、言い方にも気を付けることが重要です。
ワークライフバランスを考えた業務の依頼
Z世代はプライベートの充実を優先したいので、ワークライフバランスに配慮した業務依頼も大切な要素です。
例えば、多すぎる仕事量やタイトなスケジュールの依頼ではなく、残業したとしても法の定める範囲内で終わる仕事量や、Z世代に事前に予定がある日は業務を調整するなどの配慮があると良いでしょう。
また、いつでも相談しやすい環境を作り、かといってZ世代のプライベートを必要以上に詮索するようなことは避けるのがベターです。
自分の仕事が会社や社会にどのような貢献をしているのかを説明
Z世代は、社会貢献に強い関心があるので、その仕事がどれだけ会社や社会に貢献するかを知ることでモチベーションアップにつながります。
特に指示を出す際には、何をするのかよりもどうしてこの仕事をするのかを説明する方が効果的、意義や目的を知りやりがいを求めて取り組むようになるでしょう。
簡単な内容だったとしても一つひとつ説明していく方が、時間の経過とともに意欲的かつ自発的に考えて動いてくれるようになります。
Z世代を教育する際のNG行動
Z世代の教育はこれまでの感覚とは異なり、相手の嫌がることをしないようなスタンスが必要です。
そこで教育する際に気を付けたい注意点とともにNG行動を紹介するので、今後の社員教育の参考にしてください。
頭ごなしに怒る
Z世代は頭ごなしに怒られることに対し、価値観や個性の否定として受け取ります。
これはZ世代に限ったことではないものの、理由や説明もなく怒られたのでは関係性を悪化させてしまいます。
そのため、頭ごなしに怒りたくなるシーンがあったとしても、ぐっとこらえてどうしてこうなったのか理由を聞き、対等な立場で説明するようにしましょう。
業務に対しての説明不足
業務に関する説明が不足していると、Z世代はその業務に対する興味関心が薄れ、意義や目的がわからないとモチベーションの維持ができない状態になります。
そのため、簡単な内容で説明なしでも大丈夫だと思っても、念のために業務に対する説明をしっかりすることをおすすめします。
コミュニケーション不足
Z世代は協働意欲が強いのでコミュニケーション不足はマイナスに作用します。
自分で解決できない事例は、早く相談や確認をして解決したいので、そういった環境がないとモチベーションの低下や離職のきっかけになりかねません。
もちろん、コミュニケーション不足はZ世代に限ったことではありませんが、特に気を付けたいのがZ世代と言えるでしょう。
個性の否定
個性や価値観は誰が否定されても良い気持ちにはなりませんが、ほかの世代から見てもZ世代は自分の個性や価値観を重視する傾向があるので否定はNGです。
また、否定と受け取られるような強い言い回しや言葉使いもNGと解釈し、Z世代の個性や価値観に優しい対話を意識していきましょう。
一人のZ世代にここまでするのかと思うとなかなか大変ですが、これが今の世代の人と認識して行動すれば今後の社内教育にも役立つスキルになります。
世代の特徴を理解して会社の戦力に
世代により特徴が異なることは珍しいことではありませんが、社内教育の際にはそれぞれの世代の特徴を掴み適切な対応をしていくことが重要です。
若い世代として解釈するよりも、それぞれの個性や価値観を理解して接する方が離職者を減らし、会社の戦力として育てることに貢献するでしょう。
管理職や教育担当の方は、まず入社した新しい社員とコミュニケーションを取り、自分の世代と異なる価値観や個性・発言などがあたったとしても、一旦受け止めてから対応することが大切です。