就職する前や転職する前は、「正社員なら賞与や退職金があるのは当たり前」と考えていた人も多いでしょう。実際、多くの会社が取り入れている制度ですからね。
しかし、賞与も退職金もない会社が存在するのも事実。
もし、それらがないことで給料が低くなって不満を抱えていたり、将来への不安を感じているなら、いさぎよく転職に踏み切った方が良いかもしれません。
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実は多い正社員でも賞与なし、退職金なしの会社
正社員として働いている場合、大多数の会社では毎年1~2回の賞与があり、退職時にまとまった金額を貰うことができる制度が導入されています。
しかし、それは絶対ではありません。
賞与がない会社、退職金がない会社、そしてどちらもない会社というのは意外にも多いのです。
賞与なし、退職金なしでも違法ではない
労働の対価として支払われる毎月の給料は、法律上でも支給することが義務付けられており、各地方ごとに定められている最低賃金を上回らなければ違法となります。
しかし、賞与や退職金というのは支給が義務付けられているものではないため、正社員であっても支給しないことが違法とならないのです。
そのため、業績不振を理由に賞与のカットが行われることは少なくありませんし、退職金も自己都合退職の場合、定年退職する場合に比べて大幅に減額されることがほとんどです。
賞与なしの会社の割合
厚生労働省の年末賞与の支給状況調査によると、令和3年11月から令和4年1月までに賞与を支給された会社の割合は70.2%、平均支給額は1人あたり380,787円となっています。
これを見ると、およそ3割の会社は冬ボーナスの支給がないということが分かります。
賞与支給の割合は当然ながら大企業が高く、500人以上の会社だと96.8%(支給額621,724円)もありますが、5~29人の会社だと67.2%(支給額273,064円)しかありません。
退職金なしの会社の割合
厚生労働省の「就労条件総合調査」によると、退職金制度のある会社は80.5%。
つまり、5社に1社は退職金制度が存在しないということです。
こちらも当然ながら大企業の方が支給される割合が高く、1000人以上の会社で92.3%であるのに対し、30~99人の会社だと77.6%。
恐らく、それ以下の会社であればさらに支給割合が低くなることでしょう。
大卒で定年まで働いた際に貰える退職金の平均は1,983万円。これがあるとないとでは全く違いますよね。
賞与なし、退職金なしでも必ずしも悪いわけではない
賞与や退職金の制度は、あった方が良いものであることは間違いないでしょう。賞与や退職金で貰える額は結構大きいですからね。
ただ、場合によっては、賞与なし、退職金なしであることがむしろメリットなることもあります。
賞与なしの会社のメリット
毎月の給料が全く一緒で賞与がある会社とない会社を比べれば、明らかに前者の方が貰える金額が大きいので、前者の方が良いに決まっています。
しかし、賞与がない代わりに各月給にその分を振り分けている会社の場合、賞与ありの会社よりも年収が高くなることがあります。
例えば以下のような場合を考えてみましょう。
- 基本給30万円、賞与120万円
- 基本給40万円、賞与0円
合算するとどちらも1年間480万円。
ただ、後者は前者に比べると残業代の元となる金額が高いので、残業をすればするほど残業代が高くなります。ですから、もし仮に1ヶ月に30時間残業をした場合、月給2万円程度、年収24万程度の差が生まれるのです。
また、給料の安定性という面でも後者が有利です。
賞与は業績に応じてカットされてしまうことが多いのですが、基本給は賞与ほど簡単に減額されません。
というのも、会社側が告知もなしに基本給を下げてしまった場合、違法となってしまうからです。会社側も法を犯したくはありませんので、「カットするなら賞与」となるわけです。
前者が賞与がカットされて年収360万円となってしまうリスクを抱えている一方で、後者は相当な理由が無い限り年収480万円がほぼ確定しているといえますね。
退職金なしのメリット
退職金なしに関しても賞与と同様のことがいえます。
40年働いて2000万円貰える代わりに、年間50万円給料が高いことによって支給される残業代が増えるのです。超過分の給料が高くなるのは嬉しいですよね。
その他にも、退職金なしには以下のようなメリットがあります。退職しないと経験することもないようなメリットなので合わせて見ていきましょう。
退職金が支払われないというリスクを避けられる
退職金が貰えるのは数十年先の話ですから、確実に貰える保証はありません。経営不振によって大幅に減額されてしまうこともありえますし、倒産して貰えなくなってしまうこともありえるでしょう。
会社が倒産し、退職金を払ってくれない場合には「未払い賃金の立て替え払い制度」というものがありますが、貰うことができる上限は88万円~296万円。元々貰えるはずであった2000万には程遠い金額になってしまいます。
であれば、毎年退職金を分割した金額が給料に上乗せされて貰えるほうが確実性が高いといえます。
ただし、退職金にかかる税金はかなり優遇されるため、分割されて支給される場合の方が支払う税金が高くなるということは覚えておきましょう。
確定申告をしなくてもよい
退職金を貰うと、その年に確定申告をしなければいけません。
その際、確定申告に必要な領収書などの管理や退職金から控除されるお金の計算、内容を間違いなく書類に書き税務署に届ける必要があるのです。
確定申告をするために税理士に依頼する手もありますが、せっかく退職金が貰えたのにお金がかかってしまうのは嫌ですよね。
一方、退職金なしであれば、確定申告をする必要はありません。
確定申告は結構大変な作業といえるので、その負荷がかからないのは、面倒なことを避けたい人にとってメリットとなるでしょう。
退職金に対する税金が発生しない
退職金には所得税と住民税がかかるため、退職金自体総額からこの2つの税金が差し引かれた金額を受け取ります。
優遇された税制になっていますが、税金がかかることには変わりありません。
しかし、退職金がなければ所得税も住民税もかからないため退職金に対する税金は発生しませんし、納税の必要もありません。お金を受け取っていないので当たり前ともいえますが、この点もメリットではあるでしょう。
賞与なし、退職金なしの会社で働くことのリスクは高い
このように、賞与なし、退職金なしの会社であっても、その分が毎月の給料に上乗せされているのであれば必ずしも悪いと言えません。上記に示したようなメリットもありますし、そっちの方が良いと感じた方もいることでしょう。
しかし、「上乗せされている」と言えるほど給料が高くないのであれば、今の会社で仕事を続けるか否かを改めてよく考えてみる必要があると思います。
やはり、賞与なし、退職金なしの会社でそのまま働き続けることによるリスクは高いです。
賞与なしのデメリット
まずは、賞与なしのデメリットから確認していきましょう。
仕事へのモチベーションが上がらない
人によっては、賞与が無いことで仕事へのモチベーションが上がらないということがあるでしょう。
大きな成果をあげれば、その分高額な賞与が貰える…といったように、自分の頑張りに応じて賞与額が増えていけば、仕事に対するモチベーションも自然に上がっていく人が多いですからね。
努力して大きな成果をあげたのに、何も成果をあげていない同期と同じ年収しか貰えない…なんてモチベーションが下がってしまうのも当然です。
仕事内容に対する評価がされているのか見えにくい
仕事へのモチベーションが上がらないに似ている部分もありますが、自分の仕事内容や勤務態度が社内でどう評価されているのかどうか、いまいちよく分からないこともデメリットだと思います。
自分は仕事を通して成長できているのか、新しい能力は身についているのかなど、他者視点からの評価を知ることは自身の成長のために必要不可欠です。
賞与の金額は、自分が社内でどう評価されているのかを正確に把握できる手段でもありますので、それがないと自己分析をするのが非常に難しくなります。
また、そのような会社では、昇給もあまり期待することができませんよね。
退職金なしのデメリット
続いては、退職金なしのデメリットを確認していきましょう。
転職活動をすぐに始めないといけないかもしれない
退職金を支払わない会社を辞めた場合、すぐに次の会社を探すための転職活動をしなければ生活が苦しくなってしまうことはデメリットとして挙げられるでしょう。
退職金を貰って資金面に余裕があれば、次の転職先をじっくり探すことができますが、貰えなくて余裕が無い状態であれば、バタバタと焦った状態で転職先を探すことになってしまいます。
失業保険を貰うにしても退職をしてすぐに貰えるわけではないので、貯金や退職金がない場合は生活費が足りなくなってしまう…なんてことも起こりえるのです。
老後の資金が無くなる
退職金がないことの一番のデメリットは、老後の資金がなくなってしまうかもしれないということでしょう。
定年まで勤めた場合、貰える退職金はかなり大きな金額になります。
「老後までには2000万から3000万円くらいの貯蓄が必要だ」と言われている時代ですが、そんなにも大きな額を貯金できる人は少ないですよね。
きっと、この退職金があるかないかで生活が大きく変わってしまうという方がほとんどだと思います。
また、少子高齢化が急激に進行している日本において、一応65歳から貰えることになっている年金を頼りにするのは、あまりにもリスクが大きすぎます。自身の老後の資金は自分で稼ぐべきですね。
賞与、退職金がなくて給料も安い場合の対処法
賞与なし、退職金なし、給料も安いという会社に勤めている場合、何らかの方法でその環境を抜け出す必要があります。
ここでは対処法を3つ紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
スキルを上げてインセンティブでの収入アップを狙う
成果に応じて収入を加算してくれる「インセンティブ制度」を設けている会社であれば、スキルを上げてインセンティブでの収入アップを狙うという方法が有効です。
自身の成果に応じて収入が上がるという部分では賞与に近い制度ですので、積極的に仕事に取組み、とにかく成果をあげられるように頑張りましょう。
努力をする中で得られた成果やスキルは、必ず今後に役立ちます。前向きに取り組んでみてくださいね。
副業を始めてみる
副業を始めて収入源を増やすのも効果的でしょう。
近年、働き方改革の影響で副業を解禁する会社が増えてきています。
WEBライターやミステリーショッパーなど、スキマ時間に在宅でできる副業は沢山ありますので、自分に合った仕事を探してみてください。
ただし、本業がおろそかにならない範囲に留めておいてくださいね。時間的にも体力的にも無理をしすぎてしまって、本業での評価が落ちてしまったら本末転倒です。
賞与、退職金がある会社に転職する
もし給料に対して不満があり、収入面で将来に対して不安を感じているのであれば転職することを検討しましょう。
会社に期待しているだけでは何の解決にもならず、結局ずるずる時間ばかりが経っていくだけです。
お金を貯めることを考えればできるだけ早い段階から計画的に行った方がいいですし、退職金も勤続年数が長いほど貰える金額も高くなります。
そしてなにより若い方が転職しやすいです。
転職に対して不安を感じる人も多いと思いますが、安い給料で賞与も退職金もなしで働き続けることに比べればなんてことはありません。
特に最近は人手不足の会社が多く、転職しやすい状況となっていますので、ぜひ前向きに検討してみてください。
賞与、退職金ありの会社は転職エージェントで探そう
「賞与なし、退職金もなしなのに月給も安い」という悩みを抱えているなら、転職で解決できる可能性は非常に高いので、ぜひ転職を検討しましょう。
とはいえ、自分ひとりで賞与、退職金ありの会社を探す…となると、やっぱり難しいですよね。
口コミサイトなどを見ても、人によって書いている内容が全く違うことなんてよくありますし、正直あてにならない部分も多いです。
そこでおすすめしたいのが、転職エージェントの利用です。
彼らは、多くの転職者を支援してきた経験から企業側の雇用条件を熟知しています。そのため、賞与や退職金がしっかりと支給される会社をピックアップして紹介してくれるのです。
また彼らは、転職希望者がすぐに転職先から辞めてしまうと、クライアント企業からの評価が下がってしまいます。ですので、企業風土とマッチしているかという点もしっかり考慮して、その人に合っている企業を提示してくれます。
転職サイト等を利用して自分一人で転職活動をするよりも、格段に効率よく優良企業に転職できると思いますので、ぜひ積極的に利用してみてください。
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