「仕事環境が悪い」と感じる要因は?
多くの場合、仕事は楽なものではありません。
しかし、仕事環境が悪いと業務に直接関係しないところでストレスを感じることが多くなり、仕事のつらさは耐え難いものとなります。それは本来、感じる必要のない苦痛です。
では、一般的にはどういう場合に「仕事環境が悪い」と感じられるのでしょうか?
ここではまず、仕事環境が悪いと感じる理由となる要因について、よくありそうなケースをいくつか挙げてみましょう。
どのような場合に「仕事環境が悪い」と感じるか?
①業務上で社員が相互協力しようとしない
社員各自が自分のことばかり考えて行動しているような職場では、ストレスを感じさせられる状況が多く生じます。
特にチームプレーが重要な業務の場合、それを無視した個人プレーはどうしてもミスを誘ってしまいがちで、チーム全体にストレスを与えます。
②部署や社員同士の間で情報の共有ができていない
各自の認識に差が生じて、連絡漏れや提出期日の取り違えのような単純なミスが起きてきます。
こうしたミスが頻繁に生じる職場は非常にストレスが多いものです。
③仕事が多すぎて対応しきれない場面がある
人員に対して仕事の量が多すぎる状態が常態化していると、連日の残業を強いられることにもなり社員のストレスは増大します。
④上司が自分勝手な性格をしている
自分勝手な上司に振り回されるのは、言うまでもなく大きなストレスです。
特に直属の上司が自分勝手な性格だと、業務上のミスを部下のせいにしてみんなの前で責める、部下の話をろくに聞かずトラブルを起こすなど、信頼関係を築きようがない状況となります。
上司が非常識、無責任という場合も同様です。
⑤社員相互の人間関係に問題がある
悪口を言ったり噂を流したりする社員がいたり、社員間の派閥やグループのいずれかに属さないと業務に支障が出たりするといった環境では、仕事に関係しないところでのストレスが多大なものとなります。
また、問題というほどではありませんが、機嫌の悪さが表情や態度に出る社員が多かったり、自分とノリの合わない社員ばかりだったりすると、小さなストレスが積み重なっていきます。
⑥職場の作業環境が良くない
作業スペースや収納スペースが足りず散らかっている、パソコンのスペックが低すぎて作業に支障がある…… など、ハードウェアの面で作業環境が良くない場合もストレスが溜まっていきます。
⑦会社や部署の業績が悪い
会社全体、あるいは所属部署の業績が悪い場合、社内や部署内がギスギスした空気になるだけでなく、ボーナスカット、減給、リストラなどの可能性も出てくるため、落ち着いて仕事に取り組める環境ではなくなってきます。
仕事環境を悪くしている各要因への対策
仕事環境が悪いと感じたなら、何らかの対策をとったほうがいいでしょう。
社員の立場ではできないこともありますが、何もしないで手をこまねいているうちに状況が悪化するケースが多いのも事実です。
「仕事環境が悪い」と感じたときにできる対策は?
①業務上で社員が相互協力しようとしないときの対策
お互いのメリットになるということを強調して、社員相互の協力を求めてみましょう。
こちらから協力を仰ぐ形になる場合は、相手の協力がありがたい助けとなることを率直に伝え、必要な資料や書類をまとめるなど相手が協力しやすいようなお膳立てを心がけます。
決して一方的に利用するわけではない、ということがうまく伝わるようなコミュニケーションがキモとなります。
②部署や社員同士の間で情報の共有ができていないときの対策
情報の共有を容易にできるネットツールの導入を提案したり、すでに運用されているグループウェアがあるなら、そのさらなる活用を強く主張したりしましょう。
また、会議の場がそのまま情報共有の場となるよう、自ら率先して会議で発言して情報共有を実践してみせておくようにしてください。
③仕事が多すぎて対応しきれない場面があるときの対策
仕事が多すぎる場合、それに無理があることは当事者ならみな分かっているはずです。
そこで、人員増強や、一部業務の外部への委託を提案すると案外あっさり通ってしまう可能性もあります。
それが難しいなら、残業できない理由を何かしら挙げて、自分だけでも無理のない仕事量に調整し、それ以外の仕事は断るべきです。
④上司が自分勝手な性格をしているときの対策
自分勝手だったり非常識だったりする上司に対しては、必要以上に距離を縮めない付き合い方をすべきです。
いったん気を許してしまうと、プライベートにまで踏み込んでこられるかもしれません。
あるいは、すでに問題行動を取られているなら、そのさらに上の上司に相談して注意してもらったり、上司の異動をうながしたりするやり方もあります。
しかし、それでは相手を激昂させる可能性もあるため、その場合は、自身の異動を希望するという方法もあります。
⑤社員相互の人間関係に問題があるときの対策
雰囲気を悪くしている当人に注意するか、距離をとった対応をします。
あるいは、その相手の態度を受け流せる力を自分自身が身につけるようにします。
人の悪口や愚痴は聞いていて心地よいものではありませんが、それを口にしてしまう心理にも思いを至らせると嫌悪感が薄れます。
⑥職場の作業環境が良くないときの対策
作業環境の改善を提案してもそれが通らない場合は、自分の作業環境だけでも改善することを心がけましょう。
⑦会社や部署の業績が悪いときの対策
自分にできることをやってなお業績が悪いのなら、あとはできることはありません。
部署の業績が悪いのなら転属届を出せばいいのですが、会社全体の業績が悪いなら転職も選択肢の1つとして検討対象となってきます。
仕事環境の悪い職場は心身に悪影響がある
社内での立場にもよりますが、先に挙げた対策の中には一社員の立場では不可能なものも多いでしょう。
あるいは、対策を試みたことでかえって上司や同僚の反感を買い、状況がさらに悪化するケースも考えられます。
では、何もせず、じっと我慢していればいいかというとそれも違います。仕事環境の悪い職場は確実にそこで働く方の心身をむしばんでいくからです。
次に、仕事環境の悪い職場が心身に与える悪影響について考えてみましょう。
心身が発する危険信号
このような状態に5つ以上心当たりがあれば、心身はすでにかなりのダメージを受けていると思われます。
・だいぶ前から「元気」という感覚がない
・情緒不安定になることが増えた
・寝ても倦怠感が取れない
・よく眠れない
・朝、すっと起きられなくなった
・日中は常に眠気がある
・特に理由なく不安な気持ちになることが増えた
・仕事にも遊びにも気が入らない
・ひどい頭痛や肩こりがある
・腰が痛いことが多い
・動悸や息切れなどがある
・食欲がない、あるいは食事をおいしく感じない
・性欲がまったくない
・便秘、あるいは下痢をしやすい
・体調を崩しやすい
・ダイエットをしていないのに体重が減った
仕事における危険信号
心身に異常をきたすと当然、仕事でも問題が生じます。たとえば、次のようなことが起こりえます。
・仕事の成果が上がらなくなった
・仕事のミスが多くなった
・仕事に集中できず時間ばかりかかるようになった
・仕事中にうたた寝することがある
・仕事中に呆然としてしまうことがある
・会社に行きたくない日が多くなった
・感情をひたすら殺して仕事に取り組んでいる
・衝動的に辞めたくなったり、すべてを捨てたくなったりすることがある
こうした危険信号は決して無視してはいけません。
責任感の強い方ほど、自身の心身の状態を無視して仕事に打ち込む傾向が見られますが、私たちは生きるために仕事をするのであって、仕事をするために生きているのではないということに思い至るべきです。
最悪、過労死の可能性もある
特に問題なのは勤務時間自体が長すぎることで、残業時間が多いほど過労死のリスクが高まるというデータもあります。
厚生労働省の「36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針」によると、残業が1ヵ月45時間を超えて多くなっていくと、仕事と脳・心臓疾患の発症との関連性が見いだされはじめ、1ヵ月100時間を超えるか、2~6ヵ月の平均が80時間を超えると、仕事が原因で脳・心臓疾患が発症することが明確に確認されるとしています。
仕事のために死んでしまって元も子もありません。
そこで、仕事環境の悪い職場のせいで心身が悲鳴を上げているなら、異動・退職・転職などの対処をすみやかに検討する必要があります。
厚生労働省のストレスセルフチェックのすすめ
厚生労働省では「5分でできる職場のストレスセルフチェック」という、57問の質問で職場のストレスレベルを測定するオンラインサービスを無償提供しているので、自身の心身の状態を知る参考にしてみてもいいでしょう。
測定結果では、ストレスの状態とそれに対するコメント、ストレスの原因となりやすい因子についての説明が表示されるので、客観的な視点から職場の環境を判断できます。
また、そこにリンクされている「ストレスケアのアドバイス」についてのページでは、ストレスへの対処法や、専門機関への相談、医療機関での受診について解説されています。
仕事環境を変えられないなら転職等も検討を
仕事環境を変えるのが難しい場合、心身を守るために自分の身の振り方を考える必要も出てきます。
具体的には部署の異動のほか、退職・転職などが考えられますが、いずれも大きな変化となるので、実際のアクションを起こす前にいったん立ち止まることも必要です。
では、立ち止まって何をすればいいのでしょうか? 次にそれを考えてみましょう。
異動・退職・転職の前にやるべきこと
まず心身をよく休める
疲れていると正常な判断ができないので、まずは有給休暇を消化するなどして、心身をよく休めるべきです。
有休をとれなくても実際に体調がすぐれないのであれば、病欠扱いで休んでしまってもいいでしょう。
ストレスが強いと、うつの傾向も出てくるので、その場合は健康保険から傷病手当などをもらいながらしばらく休養するという選択肢もあります。
気持ちを整理する
心身が休まって冷静さと気力を取り戻したところで、改めて仕事環境と自分の心身の状態について振り返り、これからの決定に関して後悔のないよう自分の気持ちを整理していきます。
信頼できる相手と話をする
1人だけで考えていると視野が狭くなり追い詰められた心境に陥りやすいので、家族や友人など信頼できる相手に話を聞いてもらうのが助けになることがあります。
その際、必ずしも相談という形である必要はありません。ただ話を聞いてもらうだけでも自然に気持ちが整理されてくるものです。
もし、上司や同僚の中に心置きなく何でも話せる相手がいるなら、助言を仰いでみてもいいでしょう。
ただし、相手の価値観が自分と違いすぎるとかえって自分の気持ちが分からなくなってしまうので、自分と近い価値観でありつつ、どこか違う視点を持つ相手を選んだほうがいいでしょう。
このようにいったん立ち止まって考えた結果、次のステップに進むことを決めた場合は、次のことに意識を向けるといいでしょう。
社内での部署異動を検討する場合
いったん立ち止まって考えた結果、部署異動を試みるという選択肢を選ぶ方もいます。
部署を変えることで仕事の環境の悪さに対処できるのなら、できるだけその道を選らんだほうがいいでしょう。
なぜなら、疲れ切った心身にとっては退職・転職という大きな変化自体がストレスになってしまうからです。
退職・転職を検討する場合
心身にまだ多少の余裕があるなら、現在の仕事を続けながら転職先を探すといいでしょう。
新たな職場も決まらないまま辞めてしまうと、収入源を失った不安感からかえって心身に異常をきたす可能性もあるからです。
転職先が決まらない状態で退職すると、失業手当の支給が始まるまでは無収入となり、支給期間が終わると次の職場での最初の給料日まではやはり無収入となります。
この無収入という状態はそれなりのストレスになるものです。
また、退職してから新たな仕事を探す場合、焦ってよく考えずに選んでしまい、これまでよりさらに仕事環境の悪い職場に入ることになるかもしれません。
そうした可能性があるため、現在の仕事を続けながらじっくり慎重に転職先を探したほうがいいのです。
ただ、十分な貯えがあってすぐに仕事を再開しなくても大丈夫な場合や、あるいは、現在の職場で極度なストレスがあり心身が悲鳴を上げているような場合は、まずは急いで退職してから後のことをゆっくり考えてもいいでしょう。
自分の置かれている状況を正しく見極めて判断を
仕事環境の悪い職場で働くことにデメリットが多いのは当然ですが、「そのくらいで辞めるべきではない」という意見があるのも事実です。
確かに、ストレスのまったくない職場というのはほとんど存在しないわけですから、多少のストレスで辞めていては仕事自体ができなくなってしまいます。
また、筋トレのように、負荷を乗り越えていくことで心が強くなっていくという側面もあるでしょう。
仕事環境の悪さをものともせず、自身の目標達成や課題克服へ集中できたなら、その人は職業人としてだけでなく、人としても大きく成長できるはずです。
とはいえ、大きすぎる負荷ではどんなに強い心や体でもつぶれてしまいます。
また、個々人の許容量の違いも考慮しなければなりません。
そこで、先に挙げたような「心身が発する危険信号」「仕事における危険信号」にいくつか該当するようなら、やはり、異動や退職・転職を検討したほうがいいでしょう。
そのように、自分の置かれている状況を正しく見極めて、後悔のない判断をすることが何より大切です。