営業と聞くと何かしらの商品を販売するイメージがあるでしょう。しかし、IT業界には商品ではなく、システムを販売する部署があるのです。
それがシステム営業と呼ばれる仕事で、自社のシステムやサービスを他企業などに販売します。
しかし、システムを販売すると言われても、「どのように営業を進めるのか?」「何を売り込めば良いのか?」など分からない点が多々あるでしょう。
また、システム営業を目指すには、どのようなスキルが必要なのかも気になるところです。必要な資格などはあるのでしょうか。
そこで今回は、システム営業とはどのような仕事か解説します。主な業務内容や年収とやりがい、必要な資格などもお伝えするので、ぜひ参考にしてみてください。
システム営業とは
システム営業とは、その名の通り自社で開発したシステムを販売する営業の仕事です。
具体的に販売するのは、ITシステムやコンピューター技術に関わるサービスになります。最初からパッケージ化して販売するケースもあれば、お客様ごとにカスタマイズしたシステムを提供する場合もあります。
そんなシステム営業では、以下の4つの部類に分けられるのです。
- SI営業:企業のシステム構築(システムインテグレーション)に関するシステムを提供
- ハード営業:サーバなどのハードウェアに関するシステムを提供
- ソフト営業:ソフトウェアに関するシステムを提供
- ネットワーク営業:通信機器の設置・構築やセキュリティに関するシステムを提供
導入したシステムは、常に稼働し続けるため、定期的なメンテナンスが必要です。そのようなアフターフォローもシステム営業の大切な仕事になります。
IT業界は常に目覚ましい進歩をしていて、日々新しい技術が開発されています。システム営業になるには、そのような新しい技術への対応もできなければならないのです。
ちなみに、IT営業はIT全般の知識が必要なため、元々はエンジニアとして活躍していた方がなるケースが多くなっています。現在、システムエンジニアやWEBプログラマーなどとして活躍している方なら、比較的始めやすい仕事です。
もちろん、専門知識はエンジニアやディレクターに任せて、自分は営業に専念するという方もいるので、必ずしもエンジニアとしてのスキルがなければなれないわけではありません。
主な業務内容
続いては、システム営業の業務内容について解説します。具体的な業務に関しては一定の流れがあるので、その流れに沿って業務内容を見ていきましょう。
ステップ1.ヒアリング
最初にすべき仕事はヒアリングです。
お客様の課題や悩みが何なのか分からなければ解決はできません。そのため、まずはお客様とヒアリングして、どのような悩みを抱えているのか聞き出す必要があります。
これが、ただ話を聞けば良いのではありません。というのも、お客様自身も何が問題なのか分かっていないケースがあるからです。
お客様が「売上向上」や「業務の効率化」といった漠然とした希望を出してきた時も、深堀して何が売上アップを妨げているのかなどを考える必要があります。
ステップ2.商品紹介
次にすべき仕事は商品紹介です。
自社のシステムの特徴などを伝えたうえで、お客様の課題や問題点をどうやって解決できるのか提案していきます。
また、システムは実体がある商品ではないため、事例やデータなどの絶対的な証拠を提示して説得することが大切です。
あなた自身のシステムに関する知識の深さも試される場面でしょう。
ステップ3.企画の提案
続いての仕事は企画の提案です。
自社のシステムに興味を持ってもらえたなら、実際にお客様が運用したときのシミュレーションやお客様の現状に合わせたオプションの説明をしていきます。
大切なのはシステムに矛盾がない提案をしたり、開発に時間をかけすぎないようにしたりすることです。
また、自社の技術者と相談して、どこまでなら対応できるのかも把握しておく必要があります。できない要望を安請け合いすると、後々トラブルへと発展する恐れがあるので注意してください。
ステップ4.プリセールス
続いては自社の技術者も同伴してプリセールスを行います。
システムやソフトに関する詳しい説明をしていくのです。実際の開発内容や運用手順などの話をするケースもあるので、そのつもりで臨んでください。
システム営業は、お客様と自社の技術者とのパイプ役です。双方の意見や考え方に間違いがないように、しっかりと連絡を取る必要があります。
ステップ5.クロージング
一般的な営業マンと同様に、最後に今一度システムをアピールしてクロージングします。
特に、企業の大規模なシステム変更に関わるシステムの場合、コンペ形式や相見積もりとなるケースも珍しくありません。ただ経過を見守るのではなく、積極的に自社システムのベネフィットを伝えてください。
ステップ6.システムの運用と管理
自主のシステムを採用してもらったら、いよいよシステムの運用を開始します。
また、システムの運用を開始したら終わりではありません。常にシステムが正常動作しているのか確認して、管理する必要があります。
システムの定着率を高めるためには、運用マニュアルを作成したり社内研修を実施したりと、トラブルを未然に防ぐ対策も必須条件です。
システム営業の年収
システム営業と一言で言っても、IT業界の他にも自動車業界や不動産業界など色々あります。そのため、一概に年収がいくらとは言えないのが実情です。
しかし、全ての業界のシステム営業となると年収は400~500万円程度が一般的となっています。
また、インセンティブ(歩合)が含まれるケースが多いため、100~200万円以上が上乗せされるところもあるのです。
優秀な営業マンであれば、かなりの金額のインセンティブが付与されます。
システム営業のやりがい
システム営業は、自身の頑張りが結果として分かりやすいのが特徴的です。顧客へのプレゼンが上手くいき、受注に繋がった時の達成感は大きなものになるでしょう。
会社の売り上げに直接かかわっているという実感も強いので、会社への貢献度が気になるという方にはピッタリの仕事です。
また、お客様の悩みや課題を聞き出して、その解決に取り組む環境は非常に高いやりがいを感じられるでしょう。
ただし、顧客からの要望に臨機応変に対応する必要がある他、自社システム・サービスへの知識の深さやコミュニケーション能力、プレゼン能力などの必要とされるので仕事の大変さは計り知れないものがあります。
しっかりと学んでから仕事に就くことが大切です。
システム営業になるには?
システム営業になるために必要な資格はありません。未経験者でも歓迎してくれる企業があるので、比較的チャレンジしやすい職業でもあります。
ただし、自社商品・サービスの知識・技術が必要とされるため、ITに関する知識を身に着けるのは大切です。特にIT業界の進歩はスピードが速いので、顧客のニーズをつかむためにも積極的な情報収集が重要となります。
システム営業で有利になる資格
システム営業に必要な資格はないものの、持っていると就職が有利になる資格はいくつかあります。
- 営業士検定
日本営業士会の資格検定制度です。初級・上級・マスターの3段階に分かれています。初級はL基本的な営業業務の遂行能力、上級は営業管理業務と営業指導の能力、マスターはマネジメントやマーケティング能力があると証明できます。 - セールスレップ資格認定制度
日本セールスレップ協会が主催する資格認定制度です。企業内における営業従事者としての能力開発の研究や試験を通して、販売業務に関する高度な応用能力を備えた「営業のコーディネータ」を育成します。 - 基本情報技術者試験
経済産業大臣が行う国家試験です。この資格を持っていれば、「高度 IT 人材となるために必要な基本的知識・技能をもち、実践的な活用能力を身に付けた者」と証明できます。 - ITパスポート試験
経済産業大臣が実施する情報処理技術者試験の一区分である国家試験です。この資格を取得すれば、「職業人が共通に備えておくべき情報技術に関する基礎的な知識をもち、情報技術に携わる業務に就くか、担当業務に対して情報技術を活用していこうとする者」という証明ができます。
以上がシステム営業になるのに有利となる資格です。絶対に必要ではないものの、持っていれば就職が有利になったり年収がアップしたりします。
システム営業に必要なスキル
システム営業になるには、以下の4つのスキルが必要とされます。
- プレゼンテーション能力
お客様に対して、自社のシステムがいかに優れているのかアピールする必要があります。また、お客様によって理解度が異なるので、その点を見極めて適切な説明ができるかが成功のカギです。
一方的に説明するのではなく、相手の悩みや課題を聞き出す必要もあるため、ただ話し好きというだけでは不十分でしょう。
シミュレーションやデモトレードなどを入れながら絶対的な証拠を示すことも重要なポイントです。 - ヒアリング能力
プレゼンテーションや交渉を成功させるには、まず相手の悩みや課題を聞き出す必要があります。もちろん、ただ悩みを聞き出そうとしても駄目です。お客様も何が問題なのか分かっていないケースがあるので、どんな些細な点でも気になる部分がないか聞き出すことがカギになります。 - サービスの説明力
お客様のニーズを満たすためには、自社のシステムをどのように活かせば良いのか説明する必要があります。
また、商品を売り込むにはニーズの合致が必須なので、お客様の立場に立ったうえで何が必要なのか一緒に考えるという姿勢を持ちましょう。 - 問題・課題解決力
システム営業をしていると、お客様から「こんな機能はないのか」や「こんな動作が欲しい」などと要望されるケースは非常に多いでしょう。その場合、あなたの考えだけで「できます」と言っては駄目です。自社の技術者と連携を取って、問題・課題解決ができるか精査する必要があります。
また、時には要望に応えられないケースもあるので、その際はしっかりと「できません」と伝えなければなりません。この点も含めて問題解決力が試されるのです。
以上がシステム営業に必要なスキルです。
このように、システム営業は未経験でもチャレンジしやすい仕事ですが、全く知識が無くてもできるわけではありません。専門的な知識を身に着ける必要はあります。
時代の流れやITの進歩にも常にアンテナを高くし、学ぶ姿勢を貫き通すことも大切です。
また、顧客の課題や問題を解決したり、受注を取ったりした際の達成感は、普段の努力の分だけ高まる仕事です。
もし、あなたがやりがいある仕事がしたいなら、IT系や専門知識を学んでシステム営業の仕事に就いてみてはいかがでしょうか。その際は、就職に有利となる資格の取得も検討してみてください。