Z世代がすぐ辞めるというのはウソ?どの世代も離職率はそこまで変わらない

どんな年代でも仕事を辞める人はいますが、中でもZ世代と呼ばれる世代は仕事をすぐ辞める傾向があると言われています。

Z世代は新卒から数年と続かずに辞めてしまうため、従来の若い世代よりも簡単に辞めるイメージが定着しているのです。

しかし、若い世代の人が仕事をすぐ辞めることはどの時代でも言われ続けてきたことであり、Z世代に限ったことではありません

今回は、Z世代の人がすぐ仕事を辞めるのは本当なのか、離職率を含めZ世代の価値観や向き合い方を紹介していきます。

そもそもZ世代とは?

そもそもZ世代とは?

近年では世代を区別するためにZ世代・X世代、Y世代などアルファベットを用いた呼び方をするようになりました。

〇〇世代というとアイドルや流行の名称で区別していた時代もありましたが、ここで言うZ世代とは、呼称はアメリカから来たもので1960年ごろから1970年代中ごろまでの世代をジェネレーションXと呼び、アルファベットで区別していたことに由来します。

X世代の次の世代をY世代、また次の世代をZ世代と呼ぶようになり、特に何かの言葉の頭文字ではありません。

ここではどんな人がZ世代の対象になるのか、価値観や働き方に対する考え方などを見ていきます。

Z世代とはどのような人たちが対象になるのか

Z世代の対象となるのは、1990年代後半~2010年代前半ごろの生まれの人で、明確に期間が定められているわけではありません。

あくまでも大体の年代として解釈しておくのがベター、その時代の変化や流れが反映している世代と言った方が無難でしょう。

Z世代の人たちは生まれたときからインターネットが普及していて、パソコンなどのデジタルデバイスが身近にあったことから、デジタルネイティブなどと呼ばれています。

ITリテラシーの高さや、SNSの活用など比較的オープンで自由なコミュニケーションを好み、社会課題に対して関心が強いといったこれまでの世代とは異なる傾向があります。

今どきの若い人たちなどと解釈する方もいると思いますが、Z世代は価値観や働き方に対する考えも他の世代とは異なる世代です。

次では、Z世代の価値観や働き方への考え方について触れていきます。

Z世代の価値観や働き方への考え

Z世代の価値観

Z世代は幼いころからスマホを使いインターネットを使いこなしてきたため、多種多様な情報にアクセスすることが身についています。

そのため、多様性があることが当たり前で、その中で自分らしさを表現し尊重する傾向があります。

デジタルは生活の一部、SNSなどで広く興味・関心のあることに共感するところはまさにZ世代の価値観の象徴的な部分でしょう。

また、物を消費することよりも体験を重視し、ブランドよりもオリジナリティに魅力を感じ、時間を有効活用する効率の良さにも関心が強いです。

加えて、自分自身がリラックスしてまったりできる時間や、自分らしく過ごせる空間なども大切にする傾向があります。

Z世代の働き方への考え

Z世代は、2000年以降、災害を含む不安定な経済状況の中で育ってきたことから、仕事に対して保守的・安定志向があります。

ですがその一方で自分らしさも大切にしたいので、ワークライフバランスも重視しています。

仕事もプライベートも充実させるため、職場での人間関係は職場のみ、プライベートは趣味や自分自身のキャリアアップに費やします。

また、わからないことはすぐにインターネットで調べて解決できる環境で育ってきた影響から、理不尽な指導や指示には納得できないと感じる人が少なくありません。

同時に職場では、問題をすぐに相談したり確認したりできるオープンな環境を好む傾向があり、日ごろからキャリアアップにも意欲的なことも影響して、転職にもポジティブな考え方を持っています。

新卒で入った会社に長く勤めるよりも、自分自身の経験や体験を増やし、安定した収入を確保するために、1ヵ所の会社に固執することなく柔軟な働き方をしたい考えが強いと言えるでしょう。

Z世代はすぐに仕事を辞めると解釈されやすいですが、本当は育ってきた環境による影響や、働くことに安定を求めていることから、自分が納得できる働き方を選択しているとも考えられます。

Z世代の人はすぐ辞めてしまうというのは本当なのか

Z世代の人はすぐ辞めてしまうというのは本当なのか

Z世代の人はすぐ辞めてしまうというイメージが定着しつつある昨今ですが、今は転職するのは当たり前と言える時代であり、仕事を辞めることはZ世代に限ったことではないように感じられます。

しかし、社会人経験が長い方々から見ると、若さは未熟さとして捉えられる部分があり、根性や忍耐力がないからすぐ辞めると思われることが少なくありません。

厚生労働省が発表した新規学卒就職者の離職状況によると、令和2年度の新卒の職後3年以内の離職率は高卒で36.9%、大卒で31.2%とおよそ3人に1人が仕事を辞めています。

また、学歴別就職後3年以内離職率の推移によると、どのカテゴリーでも30~40%の人が就職後3年以内に離職している状態です。

就職後1年以内の離職率に限って見ると高卒は20%前後、大卒は10%強の人が離職しています。

Z世代は2022年現在から見て10代~20代前半の世代を指しますが、この期間でも就職後3年以内の離職率に大きな差はありません。

こうしたことから、Z世代の人がすぐに仕事を辞めてしまうというのは事実とは異なり、他の世代とそう変わらない離職率だと言えるでしょう。

参考:学歴別就職後3年以内離職率の推移新規学卒就職者の離職状況を公表します(最終確認2022/10/05)

「若い人はすぐ辞める」といつの時代でも言われ続けている

「若い人がすぐ辞める」といつの時代でも言われ続けている

「若い人はすぐ仕事を辞める」といいますが、これはZ世代に限ったことではなく、どの時代でも変わらずに発生し言われてきた事実です。

学歴別就職後3年以内離職率の推移を見てもわかるように、過去32年分のデータを見ても就職後3年以内に会社を辞める人は全体を通して30~40%はいる状態です。

Z世代がその中でも特に仕事をすぐ辞めるようなイメージが強いのは若いからではなく、他の世代の人がZ世代の考え方を理解できていないことが考えられます。

企業やその中で働く人たちの考えや価値観がZ世代に追いついていないため、「若い人」というひとくくりにしているとも解釈できるでしょう。

では、企業やその中で働く人たちがZ世代に寄り添えばいいのかというとそうではなく、内容によってはZ世代に寄りすぎると企業の風土がガラリと変わってしまい、どうしても新しい価値観に寄り添えない人が離職するという事態を招きかねません。

場合によっては企業の歴史や伝統を変えてしまう恐れもあるので、Z世代の新しい考え方や価値観を最優先するわけにもいかないでしょう。

ただ、Z世代の考えや価値観による新しい変化が生まれたときは、それを受け入れて対応していく努力は必要です。

「若い人」という差別的な見方をするだけでは企業の未来に影響することも考えられます。

また、Z世代の人も自分たちの考えがすべて正しいなどと盲目的に考えるのではなく、さまざまな人がいることや考え方があることを理解して、その中でバランスを取っていくことも必要です。

企業側も新しい考えや価値観に対応しようとしていることは理解しておきましょう。

こうしたことから、「若い人はすぐに辞める」という差別的な考えで処理するのではなく、双方で寄り添っていくことが大事だといえます。

では、Z世代を採用する企業はどう向き合っていけばよいでしょうか。次は、会社側から見たZ世代との向き合い方を見ていきます。

Z世代の人に対して会社はどう向き合うか

Z世代の人に対して会社はどう向き合うか

Z世代を採用する会社は、これまでのやり方のみではなく新しい向き合い方が必要です。

具体的にどんな配慮が必要なのか紹介するのでぜひ参考にしてください。

価値観を尊重する

Z世代の人は自分の価値観を否定されたり理不尽な価値観を押し付けらたりすることを好みません。

プライベートを含む彼らの価値観を認めて尊重することが大切です。

休日の過ごし方が人生の先輩として口出ししたくなるような状態でも、否定しないことがポイントになります。

対話を大事にする

職場では、Z世代との対話に重きを置くことが大切です。

仕事上の悩みや不安を聞き出すきっかけになり、Z世代ならではの新しいアイディアやヒントをもらうことにもつながるでしょう。

また、対話の際には一方的に話すのではなく傾聴することもポイントです。

Z世代は自分の考えや価値観を大切にしているため、双方にメリットを感じるような対話が望ましいでしょう。

こうした取り組みと同時に信頼関係の構築も意識していくと、より良いコミュニケーションを取れるようになります。

仕事の内容について丁寧に背景なども含めて説明する

仕事の内容について説明するときは、仕事の意味や目的を明確にした説明をすることが必要です。

Z世代は物より体験、時間の無駄を省いて有効活用したい考えがあります。

そのため、説明不足の状態だとその仕事に対し無意味や無価値だと判断し、モチベーションが下がる可能性があります。

むしろ、仕事の意味や目的を順序だてて説明することで、モチベーションアップのきっかけになったり、効率的な作業を考え出すきっかけになったりして、より良い結果を生む可能性があるでしょう。

非効率な作業については見直す

Z世代の人は特に時間のロスや非効率なことを好みません。

いかに効率的に作業や物事を進めるか、時間を有効活用してプライベートに活かすかという感覚をもっています。

そのため業務上、非効率と思える作業は見直して少しでも効率的に進められるよう努力していきましょう。

例えば、すべて手入力していたものをRPAを導入して効率的かつ時短につなげたり、会議はオンラインにしたりすることが挙げられます。

会社としてできる範囲でも良いので向き合い方を考えてみてください。

では、Z世代の立場から見て会社を選ぶ際にはどんなことに気を付けたら良いでしょうか。次は、Z世代の立場から見た会社の選び方を紹介します。

Z世代の人は会社をどう選ぶのが良いか

Z世代の人は会社をどう選ぶのが良いか

Z世代といっても1人ひとりの好みや考えは異なり、一概にすべての価値観が合致するわけではありません。

ここでは、Z世代の若い人が会社を選ぶ際にチェックしたいことを紹介していきます。

会社の求人票以外からも情報収集をする

求人票は大まかな内容を記載していることが多く、基本的には良い内容のみが書かれています。

今は、SNSの活用や口コミサイトなどがあるので、気になった部分は事前に情報収集しておきましょう。

面接をした時の担当者の雰囲気が合っているか

一般に、面接官は会社の顔として対応し、面接を行います。

面接官の対応が自分とは合わない・雰囲気が合わないと感じたときは、会社全体が自分に合わない可能性があります。

変化を恐れない会社かどうか

会社にとって過去の風土や伝統は大切ですが、時代の移り変わりとともに変化していくことも必要です。

変化を受け入れない会社は、若手社員の意見が通りにくく古い体質である可能性が高く、Z世代には息苦しく感じられることでしょう。

必要に応じて変化を加えていける会社は、若手社員の意見や新しい価値観にもアンテナを高くしている傾向が強く、Z世代にとって居心地が良いです。

会社に合わない人は辞める。世代は関係ない

会社に合わない人は辞める。世代は関係ない

「若い人はすぐ辞める」「〇〇世代はすぐに辞める」と見聞きしますが、現実的には仕事を辞めることと世代は全く関係ありません。

過去32年の離職率のデータを見ても大きな変動はなく、入った会社が自分に合わないから辞める人が一定数いる状態です。

近年は1ヵ所の職場で定年まで働く意識が薄くなり、以前に比べて転職に対して寛容な対応が増えています。

企業側も良い人材を確保することに力を入れているので、もしも今勤めている会社が合わないと感じているなら転職を視野に入れてみましょう。