就職後3年以内での離職率の全体平均は15%程度ですが、証券業界の離職率30%を超えます。
それだけやめる人も多い業界であるといえます。
厳しいと感じたら無理に続けることはないかもしれません。
証券会社の厳しさ
高い営業成績を求められる
証券会社のもっとも精神的にきついところが、この高い営業成績を求められることです。
決算期毎ではなく、毎月それぞれに営業目標が与えられそれをこなさなければなりません。
目標を達成していないと、それに対して上司にどうやって達成するつもりなのか問いただされます。
逆に、月初に目標を達成してしまえば個人的には何も言われずさぼることも可能ではあるのですが、やはり自分だけが達成していても所属する課や支店全体が目標を達成していないことにはまだ営業成績に対するプレッシャーはかかり続けます。
また、営業目標だけではなく、売り切らなければならない商品もあります。
債券、仕組債は期間ごとに発売になりますが支店に与えられた在庫を期限までにさばかなければなりません。このような債券の期限は1ヶ月未満と短いため集中的に営業しなければなりませんが、債券はたくさん販売しても収益が低いことから営業目標達成に貢献できないという側面もあります。
最近では顧客の利益を優先するため、収益目標だけでなく、預かり資産の純増加額の目標に重きを置いている証券会社もあります。収益は、株式を売買するだけでも得られますが、預かり資産増加は新たな資金を預けてもらわなければならず、さらに顧客が入り用で出金してしまえば純増額が減ってしまうという、目標達成の難しさがあります。
このような、月ごとの目標に日々向き合わなければなりません。自分だけ達成しても課や支店を考えるとそのプレッシャーが月末まで毎月続き、さらに月初に目標を達成してもすぐに翌月がやってきます。
顧客に損をさせることがある
証券会社では価格変動のある金融商品を扱っています。そのリスクを理解してもらった上顧客には金融商品に投資してもらい、将来値上がりすると考えておすすめするわけですが、そうはいってもやはり価格変動リスクがあり想定を外れて損をしてしまうことがあります。
自分がすすめた商品であるゆえ、顧客には申し訳ない気持ちになります。そういうときこそ直接会って丁寧な説明が必要となりますが、損が大きいとお叱りを受けることもあり、会う前はナーバスになります。
仕事ができても全てが自分の収入に反映されるわけではない
証券会社では、営業は個人で行うものの1人で仕事をしているわけではありません。
証券投資の参考になるレポートを作成するアナリスト、管理を行う管理業務、窓口や電話対応してくれる事務など様々な職種に支えられています。
そのため、どんなに営業成績が良くてもすべて自分のボーナスに反映されるわけではありません。
また、現在は日経平均が3万円を超え好調な市況となっていますが、リーマンショックのような不況となるとどうしても証券取引は低迷し、会社全体の営業利益も減ったりはたまた赤字になったりすることもあります。そのようなときには、どんなに営業成績がよくてもボーナスがないこともあります。
厳しいと感じたときの対処法
同期と飲みに行く
コロナ禍において飲みに行くのは控えなければならない状況ですが、電話やZOOM飲み会などの方法で一緒におしゃべりを楽しむことができます。
証券会社では、金融知識や金融機関としてのマナーを学ぶために何度か研修があります。
そのような研修で同期と会うことができ、仲良くなることができます。同期は気を遣わない上に、みんな同じことで悩みを抱えているはずです。
一緒に話すことで、解決にはならないかもしれませんが気が紛れることもあるでしょう。
職種を変えてもらう
証券会社には様々な職種があります。どうしても営業は厳しいと感じるのであれば、窓口業務、コールセンター、管理業務などの職種変更も可能です。
逆に無心に頑張る
頑張って結果がでなくても、3ヶ月~半年後に結果がでることもあります。
証券会社は日々のプレッシャーはつらいものの、結果がでてきたときの喜びは他の職業の比ではないでしょう。
頑張るのをやめる
証券会社は正社員なら基本的に辞めさせられることはありません。営業成績を追うことで昇進できることはいうまでもありませんが、そういったプレッシャーから目をそらして、営業成績を達成しなくても自分のペースで仕事に向き合うのも手です。頑張りすぎずないないことが、精神的負担の大きい証券会社で長く仕事を続けられるコツでもあります。
休暇の計画を立てる
証券会社の休暇は長いのが特徴です。コロナ禍では海外旅行は難しいかもしれませんが、国内でも日頃の疲れを癒やしてくれる良い旅先を探して、計画するだけでも仕事のことを忘れられます。
または、趣味を見つけるのもよいでしょう。証券会社は精神的負担は大きい一方で、他の職業より残業が少なく、休みが長い傾向にあります。
その余暇を使って、趣味にどっぷりつかることで日々のプレッシャーを忘れるのも手です。
将来仕事をやめる計画をたててしまう
証券会社の営業は、外交があるため仕事中も自由がきくのが特徴です。さぼっていてもわからないというのが実情です。
ある程度の営業成績を上げて、それ以外は仕事中将来のための資格取得勉強に打ち込んでしまうという方法もあります。ただ、見つかってしまうと何らかの処分をされてしまう可能性もあります。
証券会社をやめてもよい?
証券会社をやめても資格のおかげで再就職には困らない
証券会社に入社すると入社前と入社後半年は資格を取り続けます。「証券外務員一種」「証券外務員二種」は、銀行等で投資信託などの金融商品を販売する場合に役立ちます。また、「生保一般課程試験(生保募集人試験)」「専門課程」は、銀行や保険会社に転職する場合に役立ちます。
保険関係の資格は離職してからすぐ転職しない場合は失効して再度受け直さなければならないことがあります。
具体的には、離職後2年以内に生命保険募集人登録を行えば「生保一般課程試験(生保募集人試験)」「専門課程」の復活を行うことができます。「変額保険販売資格」「外貨建保険販売資格」は引き継げず再度講習と試験を受けなければなりません。そうはいっても全く新しく受けるよりは、勉強はたやすいでしょう。
また、FP、CFP資格は金融関係に転職するなら、転職に有利な資格です。
証券会社では金融関係で働くのに必要な資格を幅広く取得しており、証券会社を退職した人では、保険会社や保険の相談窓口、銀行など他の金融関係に就職する割合が高いです。
また、証券会社で培われた営業としての高いコミュニケーション能力の高さや丁寧な言葉遣いや姿勢は、金融関係に限らず、他の業界の営業としても高く評価されます。
他の業界が楽に感じる
証券会社の営業成績に対する精神的プレッシャーは、他の業界の比ではありません。
営業には販売目標があり、目標に対しうるプレッシャーはどの業界でもありますが、証券会社で働いていた経験に比べれば楽に感じるかもしれません。
証券会社をやめてよかった4つのこと
精神的負担から解放された
毎月目標があり、常に目標数字に対する責任が伴います。そのプレッシャーは決算期だけでなく毎月末にやってきます。
そのようなプレッシャーから解放されます。また、おすすめする金融商品は元本保証ではなく、値上がりすると考えてすすめたものでも損をさせてしまう可能性があります。他の金融関係に就職しても元本保証のない金融商品を取り扱うことはありますが、そのリスクは証券会社のみが扱う株式、外国株式、仕組債等に比べれば小さいものとなります。
病気にならなくてよかった
証券会社での仕事による精神的プレッシャーや上司からのパワーハラスメントから、精神的に追い詰めらられたり、うつ病を発生したりすることもあります。最近は、ハラスメントに対して厳しく処分されることから目立ったハラスメントをする上司は少ないですが、過去には四季報を投げる、売れるまで遅くなっても電話をさせられるなどの証券会社では数々のパワハラが日常としてみられていました。
現在の管理職はそのパワハラを受けた経験がある人が多く、その経験からも自らも厳しく部下にあたる人も中にいます。
また、証券会社はそのストレスから飲み会が多いのも特徴です。現在は、顧客に対する接待はほとんどありませんが、土日にゴルフに誘われることもあります。その中で、飲酒量が多くなり、糖尿病、肝硬変、痛風などを患う人も多いです。
一番大事なのは健康であり、やめたことで病気にならなかったのなら幸いなことです。
朝が遅くても良い
証券会社は他の業種に比べると遅い残業はない傾向にあり、残業がない日も設けられています。
その代わり、始業時間が早く、朝早く起きなければなりません。まず出社前に5:45から始まるモーサテ(経済ニュース番組)と日経新聞を読んでおかなければなりません。
9:00に証券取引所の取引が開始となりますが、その15分前から板寄が始まるのでその板を見て注文を行う必要があります。
そのため、その前の時間である8:00~8:30朝の会議が始まります。したがって、7:30~8:00には出社している必要があるため、遅くとも6:00~7:00には出勤する必要があり、ほとんどの人がモーサテの始まる5:30~5:45に起きなければなりません。
証券会社以外であれば就業時間は9時ぐらいで、その前の7時から8時までに起きれば良いことを考えると、証券会社勤務だと約2時間も早起きしなければなりません。
また、証券取引所が開いている9:00~15:00は基本顧客対応できる必要があるため、フレックス勤務も実質不可能です。
顧客を損をさせることがない
顧客を損をさせようと思ってすすめる営業は誰もおらず、上がってほしいと願っています。
また、値上がりして売却すれば、売却時に取引手数料が入り、新たな商品を買ってもらうこともできます。
そのため、顧客の資産の値上がり値下がりはすごく気になってしまいます。
特に、それが米国市場であれば日本時間の夜中に行われるため、夜中気になって価格を見て寝不足になることもあるでしょう。
このように、証券会社で働く限り、相場状況や顧客の保有資産に対して常に気にしてしまうという状況が続くことになります。
証券会社を退職しすれば、そうやって気にする必要もなく、自分がすすめた商品で顧客の資産が損をしてしまう恐れはなくなります。
これをしておいてからやめるとよい
よく3年は働いた方が良いといわれますが、仕事が合わない、すごくつらいと感じるなら3年以内でもやめても大丈夫です。
3年以内にやめても、良い会社に転職している人はたくさんいます。また、証券会社であれば、しょうがないとわかってくれる人事も多いでしょう。
証券会社に入社すると資格をたくさんとりますが、証券外務員と保険関係の資格を取るまでは責任をともなう目標を与えられることはありません。
資格をとらないとそもそも商品を販売、説明することもできないため、資格取得勉強が優先され、基本的には定時に退社できます。
そのため、資格を会社負担で取得できてからやめるのがおすすめです。
他にもFPやCFP、証券アナリストの資格は、金融関係に就職するなら転職に有利となります。
また、証券会社は精神的負担が大きいところではありますが、相場観を養うには証券会社でしかできません。
株式を取引できるのは証券会社のみとなっており、株式、為替などの情報の最先端にいます。その情報を入手できるのは証券会社だけです。各々のパソコンにはQUICKなどの株式相場や経済ニュースがリアルタイムで入手でき、アナリストによる情報やバブルやITバブルなどを経験した上司の相場観はとても勉強になります。これは次の職だけではなく、自分の資産運用においても参考になるので、ある程度の相場観が養われた後にやめるのも手です。