基本的には年齢が高くなるに連れて、勤続年数が長くなるに連れて上がっていくはずの給料ですが、様々な理由でその給料が前年に比べて下がってしまうということも少なからずあることです。
ただ、いざ給料が下がってしまったら仕方ないなんて簡単に割り切ることはできませんよね。
不満は感じて当然だし、将来どころか目の前の生活に不安を感じる人も多いと思います。
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辞める前に知識をつけよう
普通に仕事をしているのに給料が下がってしまったら、その仕事を辞めたいと思うのは当然です。
しかし、だからといってすぐに会社を辞めるべきではありません。
まずは、次の部分を確認してから退職を検討してください。
下げられた給料が基本給なのか残業代や手当なのか?
1つ目に確認すべきポイントは、下げられた給料が基本給なのか残業代や手当なのかです。
まず、基本給が下げられた場合は、あなたに告知があったかどうかが重要なポイントになってきます。
告知なしに基本給が下げられたのなら、違法性があるので取り下げてもらえるかもしれません。
反対に、残業代の減額や手当廃止は違法性がないケースが多いため、訴えても受け入れてもらえない可能性が高いでしょう。
減給の理由が何だったのか?
2つ目に確認すべきポイントは、減給の理由が何だったのかです。
給料が下がった場合、その理由が自分にあるケースと会社都合のケースがあります。
- 経営悪化による減給
- 人事異動による減給
- 降格(降職)人事による減給
- 懲戒処分による減給
会社都合による減給の場合、社員に減給する旨を伝えて、社員が合意すれば違法性はありません。
しかし、社員の合意なしに減給のなら違法性があると考えられるため、取り下げてもらえる可能性があります。
また、自分に原因があったとしても、服務規律への違反に対する減給ではなく、ただ「仕事ができないから」といって減給している場合は違法性が考えられます。
減給の理由次第では取り下げてもらえる可能性があるため、すぐに辞めるのではなく知識をつけて慎重に判断してください。
知っておくべき減給のルール
ここで一度、給料が下がった場合に知っておきたいルールをいくつか紹介します。
あなたの現在置かれている状況と照らし合わせて確認してみてください。
基本給が下がる場合
基本給を下げることは労働条件の不利益変更に該当する為、原則として会社が勝手に行うことができません。
もし、合理的理由(給料を下げなければ会社の存続が危うい)がなく社員の同意もなく、一方的に基本給を下げられてしまっているならそれは違法です(*)。
また、給料引き下げに同意しないから会社を辞めさせるなんてこともできません。
基本給を下げるというのは相当なことであり、それなりに大きな理由があるからこそ行われるものなのです。
*参考:平松剛法律事務所「給料カット|会社が一方的に給与カットすることはできません」
ボーナスが下がる場合
基本給と違ってボーナスは会社がその年ごとで自由に決められる場合がほとんどであり、前年に比べて減ることもあれば、カットされることもよくあるものです。
ただし、雇用条件で賞与○○円、賞与は基本給○ヶ月分と明記されて結ばれている場合、会社はそれを支給することが義務となるので、基本給同様に会社の勝手な都合で減らすことはできません。
残業代や手当が下がる場合
残業代は、残業時間が減ったならその分下がるのは当然。
異動等で残業時間が減ったことで、大幅に給料が下がってしまうケースはよくありますが文句は言えません。
ただ残業代支給分に勝手な上限を付けて、本来もらえるはずの残業代を支払わないのは当然違法。
固定残業代○○時間分と決められていても、それを超える残業をした場合はその時間分加算して支払われていなくてはなりません。
ただ役職手当、家族手当、住宅手当といった毎月決まった額を支給している手当を下げる場合は不利益変更に該当する為、合理性と該当者の同意が必要になります。
減給を脅し文句に使われた場合
脅し文句として減給を言われた場合、パワハラの6類型の1つの精神的な攻撃に該当する可能性があります。
パワハラの6類型とは、代表的な言動を6つに分類したものです。
- 身体的な攻撃:殴打、足蹴り、物を投げつけるなど
- 精神的な攻撃:人格を否定するような言動など
- 人間関係からの切り離し:仕事から外して長時間別室に隔離するなど
- 過大な要求:教育を行わずレベルの高い業績目標を課すなど
- 過小な要求:管理職に対して雑用ばかり押し付けるなど
- 個の侵害:職場外でも継続的に監視するなど
減給を脅し文句に使うと、精神的な攻撃とみなされてパワハラに認定される可能性があります。
失業保険について
給料が下がったという理由から退職する場合、退職を決断したのが自分の意思であっても失業保険上の扱いは会社都合となる場合があります。
その条件は、「残業代を除いた賃金が85%未満になった」場合。
会社都合の退職となれば、失業保険の待期期間3ヶ月がなくなる上、受給最大期間ものびるというメリットがあります。
ただし以下の場合は給料が85%未満になったとしても会社都合の退職とはなりません。
- 給料が下がることが予想できていた場合(事前に通達があった場合など)
- 給料が下がることに合意した場合
よくある減給の理由3つ
続いては、よくある減給の理由を3つご紹介します。
自分のミス(懲戒処分・降格・査定など)
1つ目の減給の理由は自分のミスです。
規律違反や問題行動など重大な行為があった場合、減給される可能性があります。
例えば、遅刻が多かったり無断欠勤を繰り返した場合です。
また、セクハラやパワハラなどの言動も懲戒処分による減給の可能性があります。
ただし、あまりにも大幅な減額をされた場合は、裁量権の濫用や逸脱が認められるケースがあります。
会社の業績不振
2つ目の減給の理由は会社の業績不振です。
会社が業績不振に陥れば、当然、社員に給料を支払うのが難しくなります。
そして、会社を守るために減給するケースがあります。
もちろん、会社の将来性に不安を感じるなら転職を考えた方が良いでしょう。
労働条件の改定
3つ目の減給の理由は労働条件の改定です。
何かしらの理由から労働条件の改定が行われて減給になるケースがあります。
ただし、労働者側の同意が得られない限り有効ではありません。
労働契約法 第九条
使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。
もし、あなたの同意なしに労働条件の改定が行われたなら、その会社は労働契約法に違反しているというわけです。
転職する前に考えておくべきこと
減給されたからといって、すぐに転職するのは良くありません。
まずは、次の3つの点について考えるようにしてください。
すぐ辞めて家計に問題がないか
1つ目のチェックポイントは、すぐ辞めて家計に問題がないかです。
仕事を辞めれば、給料がなくなります。
失業保険があるとはいえ、働いていた時より生活が苦しくなるのは避けられないでしょう。
退職後の生活を想像し、生活が苦しくなるようなら勢いで辞めるのは避けてください。
訴訟を起こせば減額を取り下げられないか
2つ目のチェックポイントは、訴訟を起こせば減額を取り下げられないかです。
あなたに同意なしで労働条件が改定されたなど、会社側に違法性がある場合は、訴訟を起こして減給を取り下げてもらえる可能性があります。
他にも、明確な理由がないまま減給されたなら違法性があるかもしれないので、すぐに辞めずに訴訟を検討してください。
転職によって年収アップできそうか
3つ目のチェックポイントは、転職によって年収アップできそうかです。
転職によって年収が上がらないなら、今の仕事を辞めるのはもったいないでしょう。
そのため、仕事を辞める前に転職活動を始めて、年収が上がりそうか確認してみてください。
年収が上がりそうだと確認できたら、今の仕事を辞めてもOKです。
慎重に考えて決断しよう
複数ある選択肢の中から、「今の会社に居続けるべきか」「すぐに辞めてしまうか」「少し辛抱してから転職するか」のどれを選ぶべきかは人によって違います。
ただ、転職時の年収は直近の年収を参考にされる可能性があります。
給料が下がってしばらくしてから転職する場合、参考にされる額が低くなり不利になる可能性があるので注意してください。
減給された状態で働く場合、モチベーションを保つのは大変だけれど、自分の優先度を考えて焦らずに決断するようにしましょう。
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