あなたは働かないおじさんという言葉を耳にした経験はありますか?
働かないおじさんとは、決して無職というわけではなく、しっかり会社員として企業に所属していながら、社内で仕事をしないおじさんを意味しています。社内失業などとも呼ばれています。
これだけ聞くと、本当に働かないおじさんなる社内失業は存在しているのが疑問でしょう。
しかし、実は多くの企業に社内失業に該当する働かないおじさんが存在しています。
そこで今回は、働かないおじさんと呼ばれる社内失業について解説します。
実際、どのくらいの企業に存在しているのか、発生する理由、発生させない対策についてもお伝えするので、ぜひ参考にしてみてください。
社内失業や働かないおじさんとは?
社内失業とは、その名の通り労働者が正社員として会社に在籍しているものの、実際に仕事をしていない状態を意味しています。
そして、社内失業に類似する言葉として以下のものがあるのです。
- 働かないおじさん
- 働かない社員
- 社内ニート
- 窓際族
ちなみに、年代に関係なく社内失業している働かない社員というのは存在します。
しかし、社内失業になる社員の多くが中高年層となっていることから、働かない社員という言葉よりも「働かないおじさん」という言葉の方が有名になっているのです。
他の社員からしてみると、「自分は一生懸命仕事しているのに何であいつは働かないんだ」という憤りの気持ちから、「おじさん」という揶揄する言葉が使われるようになったと考えられます。
社内失業や働かないおじさんの実態・現状
社内失業状態となっている働かないおじさんというのは、意外に多くの企業が抱えている問題でもあります。
特に、社員1人がさぼったくらいでは影響が出ないような中堅企業~大手企業によく見られます。
反対に、社員ひとり一人の頑張りが経営状態に直接影響するような中小企業やベンチャー企業では、社内失業や働かないおじさんという存在はあまり見られません。
では、どのくらいの企業に社内失業状態となっている働かないおじさんは存在するのでしょうか?
ここでは、「エン・ジャパン株式会社」が調査したアンケートを基に見ていきましょう。以下のアンケートでは、「現在、社内失業状態の社員はいますか?」という質問をしています。
【業種別】
業種 | いる | いる可能性がある | いない | 分からない |
メーカー | 10% | 22% | 55% | 13% |
流通・小売関連 | 0% | 18% | 62% | 21% |
サービス関連 | 8% | 29% | 51% | 12% |
広告・出版・マスコミ関連 | 0% | 18% | 82% | 0% |
IT・情報処理・インターネット関連 | 6% | 22% | 58% | 14% |
不動産・建設関連 | 10% | 16% | 63% | 10% |
商社 | 17% | 17% | 50% | 17% |
金融関連 | 0% | 0% | 100% | 0% |
その他 | 13% | 16% | 67% | 4% |
全体 | 9% | 20% | 60% | 12% |
【企業規模別】
社員数 | いる | いる可能がある | いない | 分からない |
1~49名 | 5% | 15% | 72% | 8% |
50~99名 | 5% | 19% | 57% | 13% |
100~299名 | 9% | 19% | 61% | 12% |
300~999名 | 18% | 27% | 41% | 14% |
1,000名以上 | 7% | 40% | 33% | 20% |
全体 | 9% | 20% | 60% | 12% |
*出典:エン・ジャパン株式会社「300社に聞く「社内失業」実態調査―『人事のミカタ』アンケート―」
業種全体で見てみると、「いる」と「いる可能性がある」と回答した合計は29%にも及びます。約3割の会社で働かないおじさんがいる可能性があるというわけです。
また企業規模別で見てみると、「いる・いる可能性がある」と回答した会社の合計は以下の通りとなっています。
- 1~49名:20%
- 50~99名:30%
- 100~299名:28%
- 300~999名:45%
- 1,000名以上:47%
最初にお伝えした通り、社員数が多い企業ほど「いる・いる可能性がある」と回答した会社の割合が増えています。
やはり、ひとり一人の社員の働きが直接影響しない大企業の方が、社内失業や働かないおじさんの存在は増えるというわけです。
では、なぜ社内失業や働かないおじさんが発生するのでしょうか。次の項目で詳しく見ていきましょう。
なぜ社内失業や働かないおじさん問題が発生するのか?
ここでは、社内失業や働かないおじさんが発生する原因について解説します。
採用時に正しく能力を評価できていない
1つ目の原因は採用時に正しく能力を評価できていないことです。
人には適材適所というものがあり、どんなに優れたスキルを持っていても、そのスキルが活かせない仕事をしていては力を発揮できません。
自社に必要な機能が何なのか把握したうえで、最適な人材を選ぶ必要があります。
しかし、それができていないと、その会社に不要なスキルを持った社員を採用してしまったり、不適切な部署に割り当ててしまったりして、結果的に仕事ができない社員が生まれてしまいます。
当然、その社員は仕事ができないのでやる気を失い、働かないおじさんへと変貌するのです。
採用時に正しく能力を把握すれば、社内失業や働かないおじさんの発生は防げるでしょう。
教育制度の不備
2つ目の原因は教育制度の不備です。
どんなに優秀な人材でも、基本的にはただし教育が必要となります。そのため、若手社員の教育が行き届いていないと、その社員は仕事が覚えられず、結果的に仕事ができない社員になってしまいます。
当然、仕事ができなければ作業を任さる頻度が減るのはもちろん、社員自身もやる気を失ってしまうため、最終的には社内失業や働かないおじさんになってしまうわけです。
職場関係の悪化
3つ目の原因は職場関係の悪化です。
職場の人間関係が悪くなると、当然他の社員とのコミュニケーションが少なくなります。しかし、仕事は他の社員とのコミュニケーションが大切です。
例えば、上司と部下が良好な関係を築けていないと、仕事を任せられなくなったり、分からない点を質問できなくなったりします。
その結果、社内失業や働かないおじさんが生まれるわけです。
また、他人とのコミュニケーションを避けているだけでも印象が悪くなって、仕事していないように見える可能性があります。
加齢による生産性の低下
4つ目の原因は加齢による生産性の低下です。
確かに、働かない社員というのは20代でも存在しますが、決して多くはありません。やはり、働かない社員というのは中高年層になって急激に増えてきます。
実際、「社内失業=働かないおじさん」と認識されているのは、中高年層にそのような社員が多いからでしょう。
そして、中高年層になると働かなくなるのは、加齢による生産性の低下が考えられるのです。
人間は年齢が上がるにつれて、思考能力が低下したり記憶力が下がったり、さらには動作スピードが遅くなったりします。
このような状態になれば、当然仕事のスピードは著しく落ちるでしょう。その結果、周囲の人から見ると「あの人は働かない」と思われてしまうのです。
また、本人も昔のように作業が進められなくなり、やる気を失っている可能性があります。
社員自身が新しい仕事を学ぼうとしない
5つ目の原因は社員自身が新しい仕事を学ぼうとしないことです。
仕事はできないと退屈なものでしょう。反対に、仕事ができるようになれば楽しさややりがいを感じられるようになるので、積極的に働くようになるはずです。
そのため、社員自身に新しい仕事を覚えようとする意欲がないと、その社員はやる気が出ずに仕事しなくなってしまいます。
また、会社自体に成長意欲の低い社員に対する教育制度が整っていないと、働かないおじさんはいつまで経っても社内失業状態にあります。
社員の成長意欲を掻き立てて、しっかりサポートする制度が必要になってくるでしょう。
社内失業や働かないおじさんを発生させない対策6つ
最後は、社内失業状態にある働かないおじさんを発生させない対策について解説します。
社内コミュニケーションを大切にする
1つ目の対策は社内コミュニケーションを大切にすることです。
社員同士が密なコミュニケーションを図っていれば、自然に仕事の効率が上がったり、社員ひとり一人に適した仕事が割り振れたりします。
また、コミュニケーションを取っていれば、「自分が作業を進めないと迷惑がかかる」という意識が強くなります。
仲間のために頑張るという意識が芽生えて、自然に社内失業や働かないおじさんの発生を抑制できるでしょう。
自社に必要な能力やスキルを明確にする
2つ目の対策は自社に必要な能力やスキルを明確にすることです。
どの作業にはどのような能力が必要なのか明確にすれば、仕事の割り振りが適切にできるようになって、仕事に馴染めないという社員が減ります。
与えられた仕事が円滑に進められれば、社員はやる気を出すため、社内失業や働かないおじさんの発生を抑制できるでしょう。
採用試験で自社にマッチした人材を見つける
3つ目の対策は採用試験で自社にマッチした人材を見つけることです。
まず、採用試験の段階で自社の仕事に合った人材を見つければ、その後の対応が多少おろそかになっても、社内失業や働かないおじさんが発生するリスクは軽減します。
自社にはどのようなスキルが必要なのか明確にしたうえで、採用活動では、そのスキルを持ち合わせているのか確認できる試験を導入してください。
社員に専門性やスキルを磨いてもらう
4つ目の対策は社員に専門性やスキルを磨いてもらうことです。
やはり、どんなに会社が設備を整えても、最終的に仕事するかしないかは社員の自主性にかかっています。そのため、社員には専門性やスキルを磨いてもらうように促してください。
目的があれば社員もやる気が出るので、働く意欲もアップするでしょう。
もし、どうしてもスキルアップを促すのが難しいなら、社内で研修制度を整えたり、資格取得によるボーナスを支給したりしてください。
公平な評価をする
5つ目の対策は公平な評価をすることです。
頑張って仕事していても、公平な評価をしてもらえなければやる気を失います。反対に、自分が頑張っているという事実を認めてもらえれば、社員は「もっと頑張ろう」という気持ちになるでしょう。
各社員に対しては、上司の個人的な好みで決めるのではなく、公平な評価に基づいて判断してください。
明確な評価基準を作成して、それに基づいて評価すると社員も公平性を感じてくれて、不満を抱きにくくなるでしょう。
適切な給与体制を設ける
6つ目の対策は適切な給与体制を設けることです。
結局のところ、多くの社員のモチベーションはお金なので、仕事を頑張っても給与が変わらなければ、当然やる気は出ないでしょう。
反対に、頑張れば頑張った分だけ給与が増えれば、会社が促さなくても積極的に業務に取り組んでくれます。
もちろん、仕事しなければ給与が下がってしまうのであれば、収入低下を避けるために働きます。
適切な給与体制を設ける対策は、最も効果的な方法と言えるでしょう。
以上のように、多くの会社に存在する社内失業や働かないおじさんは、適切な対策を講じれば十分に解消できます。
もし、あなたの会社に働かないおじさんや社内失業状態の社員がいる場合は、本記事を参考にして対策を講じてみてください。