日本では管理職の女性はとても少ないと言えます。
それは女性自身が管理職になることをあまり望んでいないこともあるのですが、女性が管理職になりにくい環境があることも事実です。
今回は女性の管理職の割合や管理職に向くのはどのような人か、女性管理職ならではの悩み、そして女性が管理職を目指すためにやるべきことについて紹介していきます。
管理職を目指している、あるいは目指したいけど不安があるという方は、ぜひ参考にしてください。
管理職についている女性の割合
2020年8月28日、安倍晋三総理大臣は辞任を表明し、7年半に及ぶ長期政権に幕を下ろしました。
在任期間中、安倍首相は「女性活躍」を掲げてきました。
しかしその安倍政権の閣僚に女性の数は少なく、彼が所属する自由民主党の衆議院の議員数も22人と男性259人に対して非常に少ないものでした。(2019年3月1日現在)
7年半の長期政権下、6回の国政選挙がありましたが女性議員の数は大幅に増えることはありませんでした。
また、この傾向はどの政党も同じで衆議院全体の女性比率が9.9%、参議院が22.9%となっています。(2020年1月1日現在)
参照サイト:内閣府男女共同参画局「諸外国における政治分野の男女共同参画のための取組」より(最終確認:2020年9月1日)
政治が「女性活躍」と唱える時点で女性が活躍する環境が整っていないことを示しますが、その政治家自体にも女性が少ないことが問題の深刻さを表しているといえます。
このような社会情勢で企業における女性の管理職の割合はどうなっているのでしょうか?
「平成30年度雇用均等基本調査(確報)」の企業調査によると、平成30年度(2018年度)で課長相当職以上の管理職の女性割合は11.8%しかいません。部長相当職が6.7%、課長相当職で9.3%、係長相当職で16.7%です。
管理職も性別に関係なく適性のある人間が就くべきですが、この数値は明らかに女性が低すぎます。
参照サイト:厚生労働省「平成30年度雇用均等基本調査(確報)」より(最終確認:2020年9月1日)
政府は2020年にあらゆる分野で指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度にすることを目標に掲げてきましたが、2020年7月、目標を「2020年代の可能なかぎり早期に」へと後退させました。
これは女性個人の能力ではなく、日本の社会システム自体が女性が管理職になりにくい構造になっていることが原因と考えられます。
しかし、少ないとは言えこのような状況でも管理職に就いている女性はいますし、管理職を目指している女性もいるのです。
それではどのような人物が管理職に向いているのでしょうか?
管理職に向いている人とは
女性に限らず管理職に向いているのはどのような人なのでしょう? 管理職に向いている方の10つの特徴をまとめてみました。
特徴1. 情報収集力や分析力がある
管理職には所属する企業の生産性と利益をあげることが求められます。
そのためマーケットの情報を収集、さらに分析して顧客のニーズを引き出すのです。
その結果から自社製品の改善をしたり、より顧客の要望を満たせるプロジェクトを立ち上げたりしていきます。
特徴2. 課題を整理でき、解決に向かっていける
管理職は自分の会社や部署の課題を整理し、解決に向かわせなければなりません。
ただし課題には様々な内容が含まれ、管理職自身が解決するのではなく、部下により解決させなければならないものも多くあります。
課題を部下に丸投げは論外ですが、何が自分の部署に最適なのかを把握し対処しなければなりません。
特徴3. 決断力がある
トップが決断できないと部下はどう動いていいのか判断ができません。そのため管理職には決断力が必要です。
特徴4. 責任感がある
管理職に限ったことではありませんが、社会人として、さらに人の上に立つ者として責任感は重要です。
ミスや失敗の責任を他人に押しつける人間は、部下はもちろん上司からも信用されません。
また無責任な上司の下では部下もやる気を無くしやすく、生産性を落とすことになりかねないのです。
そのため人一倍の責任感が管理職には求められます。
特徴5. 危機管理能力がある
管理職はリーダーとして様々なトラブルやアクシデントを想定しておかなければなりません。
リーダーがトラブルに落ち着いて対処していれば部下は安心できます。
対処方法をあらかじめ考えておけば円滑な対応、あるいは対応が困難な場合も最悪の事態をさけられる可能性が高まります。
また、すでにトラブルやアクシデントが起った後の危機管理で大切なのは、責任を自分が取るという姿勢を持つことです。その事で部下の信頼が増します。
危機管理能力は責任感と密接に繋がっているのです。
特徴6. 先見性がある
ビジネスでは先を見越すことが大切です。
特に管理職は担当した部署の舵取りをするためとても重要と言えます。
先見性に関わってくるのが、すでに紹介した情報収集力と分析力です。様々な情報を収集し、それを分析することで今後の展開を予想します。
先見には直感がものをいう場合もありますが、根拠がある方が周りを説得でき信頼を勝ち取れます。
特徴7. リーダーシップがある
管理職は部下をまとめ生産性を上げなければなりません。
しかし、出る杭は打たれるという事になり、部下の才能を潰してしまってはもったいないです。
それぞれの個性を活かしまとめて行ける才能がある人が管理職に向いています。
特徴8. 人に対して愛情(思いやり)がある
人の上に立つ人には思いやりが必要です。
効率重視で相手の気持ちを考えない人に部下はついては来ません。
人を動かすには愛情が必要です。ただし一方的に押しつける愛情は、方向性を間違えるとセクハラやパワハラになりかねないので注意が必要です。
特徴9. 部下の心の掌握ができる
部下の心を把握できればどこで褒めればがんばれるのか、どこで注意すれば自重してくれるのかなど、能力をフルに発揮させることができます。
また、信頼を獲得するためにも部下の考えや気持ちを把握しておくことは大切です。
特徴10. 向上心がある
上司は部下の見本になる存在でなければなりません、それが管理職ならなおさらです。
上司に向上心がないと部下にもそれが伝播してしまいます。
部下に憧れる上司であるためにも管理職には向上心が必要です。
このように管理職に向いている人には様々な特徴があります。
この中でも管理職に一番大切と言える特徴はリーダーシップでしょう。
特徴ではなく能力と言ってもいいですが、会社や部署の長ですからリーダーシップは必要不可欠です。
女性管理職ならではの悩み
ジェンダーレスが叫ばれ続ける中、日本では旧態依然の体質が色濃く残っている職場も少なくありません。
そういう環境の中で女性が管理職に就く場合、女性ならではの悩みもあり、そもそも管理職になりたいという女性は決して多くはないのです。
管理職になりたい女性は19.8%
ソニー生命の「女性の活躍に関する意識調査2017」によると、管理職への昇進の話があっても受けたいという女性は19.8%に留まりました。
その一方でキャリアを積んでいきたいという女性は37%います。
画像元:https://www.sonylife.co.jp/company/news/29/nr_170418.html#sec3
キャリアを積みたいと考えている女性でも半数近くは管理職に就きたくないのです。
女性の管理職には女性ならではの悩みがあり、それが積極的に管理職に就きたいと思わない要因になっていると考えられます。
女性管理職5つの悩み
管理職をしている女性ならではの悩みとはどのようなものか、代表的な5つを挙げて見ました。
悩み1)女性管理職のために周囲が身構えるのを目の当たりにする
女性管理職自体が少ないため部下も上司も接し方に戸惑い、それが見るからに分かる、お互いで気を使いすぎてしまうなど、周囲が身構えてしまうことも少なくありません。
中には女性に使われたくないと考える男性もいますが、反対に差別意識を持つまいと意識しすぎて身構えてしまう人もいます。
悩み2)女性だと思って甘く見られる反面、鉄の女などと言われることもある
悩み1とも通じるところがありますが、女性と思って軽視する人がいるのも事実です。
また、そういう人は実力を示すと、今度は「鉄の女」や「女帝」などと揶揄したりします。
上司になったことで悪口や裏ニックネームで呼ばれるなど、女性にとっては悲しいことです。
悩み3)自分のライフイベントへの対応
結婚・出産により仕事を辞めるか続けるかを悩む方もいます。
これが男性の場合なら結婚するから仕事を辞めるということはほとんどありません。
出産は最近でこそ男性の育児休暇が話題になっていますが、実際に取る人の数は少なく期間も短いです。
そのためこの悩みは「女性ならでは」ではなく、本当は社会構造の問題です。
男性上司は休まないのに、女性上司は休む。または責任ある立場から、休みづらくなるなどといった問題が出てきます。
悩み4)社内に同性の同じ立場の人がいない
多くの企業で管理職に就いている女性の数は少ないです。そのため管理職の男性からは特別視されがちで、部下の女性からも距離があると思われ孤立してしまうことがあります。
悩み5)見本となる人がいない
悩み4にも通じるのですが、管理職の女性が少ないため見本となる人がいない場合が多くなります。
そのため悩みを相談したり、アドバイスを求めたりすることができずに手探りで進む日々が続きます。
管理職の女性ならではの悩みと言っていますが、実際は偏見だったり、社会構造としての問題だったりするものもあります。
しかし悩み4と5については、自身が部下の女性から憧れられる存在になれれば、彼女たちの中から管理職に就く人が出るかも知れません。
そうすれば悩み4は解決できますし、悩み5は解決にはなりませんが、自分が見本となる人になることならできます。
管理職を目指す女性がすべきこと
管理職に昇進する話があったら受けてみたいと思う女性は19.8%、内訳を見ると非常にそう思っている人は5.8%で、やや思う人は14%です。
管理職を受けたいと思っている人の中でも積極的になりたい人は3分の1に届きません。
積極的になれないのは先に紹介した「女性ならではの悩み」もあるでしょうし、自分にできるか不安だというのもあるのではないでしょうか。
ここではそんな不安を少しでも払拭するために、管理職を目指す女性がすべきこと7つを紹介します。
すべきこと1. 女性の強みを活かす
女性ならではの女性社員への配慮、周囲への気遣い、短時間勤務でも仕事を早くやる、男性ともフェアに考えることができるなど、女性としての強みを性別に関係ない強みに変えていくことができます。
すべきこと2. 説得力を身に付ける
物事を論理的に考え、相手を説得できるようにします。
これはリーダーシップにも関わってくるのですが、自分の意見や考えに部下を従わせる場合、なぜそうするのがいいのかを理解してくれているほうがスムーズに進めることができるのです。
すべきこと3. 人の意見に耳を傾け尊重する
説得力を身に付けることと対になります。
いくら正しくても一方的に押しつけてばかりでは部下はやる気を無くしてしまいますし、そもそも指示待ち人間になってしまいます。
また自分が間違っていることもあるため、人の話に耳を傾ける習慣を身に付けなければなりません。
必要な場合は考えを修正しつつも、部下の意見を取り入れやる気を出させるなどの気配りも必要です。
すべきこと4. チームとして結果を出し、メンバーを育てる
結果を残すことは何よりも強みになります。
そのために自分が所属しているチームで業績を上げ、メンバーを育て自分が管理職に向いていることをアピールするのです。
すべきこと5. 任せられることは個々に思い切って任せる
自分で全てを背負いこまずに、部下や同僚を信頼し任せられることは任せましょう。
女性だから甘く見られたくないという気持ちはわかりますが、仕事を割り振って任せることでお互いに信頼が生まれます。
相手を信頼することも上に立つ者にとって大切な事です。
すべきこと6. メンバーの目標を知り(あるいは引き出す)、チャンスを与える
目標を達成できると満足感が得られ、さらにやる気を引き出すことも可能です。
また、チャンスを与えられることで人望を得られます。
すべきこと7. 円滑なコミュニケーションを心がける
プロジェクトを進める上で円滑なコミュニケーションはとても大切です。
そのためにはチームの信頼を自身が得るだけでなく、メンバー同士が信頼し合えるように配慮することも求められます。
管理職を目指す女性がすべきこととして紹介しましたが、ほとんどは性別に関係なく管理職を目指す方がすべきことです。
なりたい人が少ない上、職場によっては女性が管理職に就くのを嫌うところもあります。
環境が女性を管理職にするのを拒むようなら管理職をあきらめるのではなく、転職をして管理職になる方法もあるのです。
管理職に就きにくい職場なら転職も視野に
2018年、東京医科大学が女子の合格者を3割以下にするために、入試の点数を女子のみ一律に減点していた事が報じられました。
東京の医大ですら女性に対しこのような差別的な考えを持っています。
ゆるしがたいことですがこれは大学に限ったことではありません。
企業にも当てはまるところはあり、女性というだけで管理職になかなか就けない場合もあります。
これでは本人の能力や成績に関係なく、いくら努力をしても報われません。
こういった場合、女性を歓迎してくれる職場への転職を考えたほうがいいでしょう。
転職サイトでは女性が活躍している職場の特集をしていることがありますし、転職エージェントを利用すれば要望を聞いて自分に合った職場を紹介してくれます。
職場のために自分の夢をあきらめるのではなく、夢のために職場を変えるほうが自分の能力を発揮し、悔いのない仕事ができる場合があるのです。
思い切って管理職を目指して
日本では女性の管理職が極端に少なく、管理職になりたいと思っている女性も2割弱しかいないのが現状です。
これだけ少ないのには女性が管理職をやると様々な悩みが付いてまわり、女性が管理職に就きにくい土壌があるからです。
しかし少ないからこそ管理職に就きたいという女性は貴重です。
ぜひ実力を発揮し夢に向かって突き進んでください。
そして職場の環境が原因で管理職になれないなら、思い切って転職をするのもいいでしょう。
最終的には自身の判断ですが、自分だけではなく後に続く女性たちのロールモデルとなることもできます。
あなたの勇気ある一歩は、あなたと同じ夢を持った人たちに繋がる一歩でもあるのです。