あなたは出版業界への転職を希望している気持ちがありつつも「未経験でもOKなのか?」「どのような能力が求められるのか?」など、不明点が多いゆえに転職すべきか迷っていませんか?
出版業界と言えば華やかなイメージが強いため憧れる方は多いでしょう。
また、資格や専門スキルがなくても就職できそうな印象もあるので、未経験だけど出版業界に転職したいと考える人が多くなっています。
その一方で、「全くの未経験でもスタートできるのか」や「どんなスキルが必要なのか分からない」といった悩みもあり中々転職活動に踏み出せない、という方もいるはずです。
そこで今回は、出版業界に転職したいあなたに向けて、必要なスキルや具体的な仕事内容などを解説します。
また、転職を成功に導くためのコツやポイントもお伝えするので、ぜひ参考にしてみてください。
出版業界について
出版業界とは、雑誌や書籍名といった出版物の制作と流通を行う業界を意味しています。
大きく分けると2つの会社があるのです。
- 出版社:主に出版物を企画・制作する企業(例:講談社・集英社・小学館・KADOKAWA)
- 出版取次会社:出版された本を本屋に流通させる(例:トーハン・日本出版販売)
出版業界として最も知名度が高い講談社、集英社、小学館の3社は、出版社に該当します。
また、同じ出版社であっても、どのようなジャンルの書籍を得意とするのかといった点に違いがあるのです。
- 講談社
小説や雑誌などに強みを持っていて、有名作家を多く輩出している実績もあります。 - 集英社
漫画に強みを持っている出版社で、中でも週刊少年ジャンプは漫画雑誌の中で常にトップの売り上げを誇ります。ここ最近では「鬼滅の刃」という漫画が記録的な大ヒットを飛ばしたと話題です。 - 小学館
児童書や幼児書、図鑑、辞典などに強みを持つ出版社です。
このように、出版社と言っても取り扱うジャンルが異なるので、転職する際はその点も理解しておく必要があるでしょう。
出版社の現在の状況
現段階で、出版業界全体の景気は良いとは言えないのが実情です。
というのも、近年はスマホやタブレットによる電子書籍の人気が高まっていて、紙媒体での売り上げが停滞しているのです。
これからは、電子媒体やWEBでの収益に移行できるかどうかが、生き残れるかどうかの分かれ目になります。
では、転職する際の難易度はどうなっているのでしょうか。確認していきましょう。
転職難易度
出版社の転職難易度と一言で言っても、希望する会社の規模によって大きく変わってきます。
一般的には、大手出版社と中小企業では以下のような違いがあるとされています。
- 大手出版社:新卒採用が多い
- 中小企業:即戦力が求められるので経験者は転職しやすい可能性が高い
では、未経験でも入れるのかについて考えていきましょう。
中小企業はもちろん、新卒採用が活発な大手出版社であっても、中途採用は実施しています。
しかし、未経験でもOKかといった点については、年齢による分かれ目が大きいと言わざるを得ません。
例えば、新卒はもちろん第二新卒に該当する25~27歳くらいの年齢であれば、未経験という枠で採用されるケースが多くスキルや経験がなくても転職できる可能性が高いでしょう。
それ以外の方になると、やはり社会人としての経験やスキルがあると考えられるため、即戦力が求められるケースが多くなっているのです。
資格や出版業に関わる仕事で経験を積むことをおすすめします。
出版業界の平均年収&出版業界の年収ランキング
続いては、出版業界のおける年収について確認していきましょう。
まず、出版業界全体の平均年収は610万円となっています(*1)。
日本における平均年収は441万円なので(*2)、他の業種と比べるとかなり高い金額であると理解できるでしょう。
また、出版業界の年収ラインキングを見てみると、上位は900万円を超える金額になっているのです。
第1位 | ベネッセHD | 945万円 |
第2位 | 学研HD | 934万円 |
第3位 | インプレスHD | 847万円 |
第4位 | カドカワ | 791万円 |
第5位 | SEホールディングス・アンド・インキュベーションズ | 699万円 |
参考:業界動向 SEARCH.COM「出版業界 平均年収ランキング」
第5位の出版社であっても、日本の平均年収である441万円を大きく超える金額です。
出版業界は、全体的な景気が良くないとは言われていても、やはり収入が多いという点では現在も変わらないという結果でした。
ただし、今後の電子書籍などの普及によって年収が下がる可能性は非常に高く、今から出版業界に転職しても上記のような年収には届かない恐れがあります。
その点をよく理解したうえで転職を検討してください。
*1:就活の未来「【出版業界の平均年収と生涯賃金】主要25業界と比較してわかりやすく解説!」
*2:国税庁「平成30年分民間給与実態統計調査結果について」
出版社の仕事内容とそれぞれに必要な能力
出版業界の現状や年収などの実態が分かったところで、続いては具体的にどのような仕事をするのかについて確認していきましょう。
どのような能力が必要なのかについてもお伝えするので、ぜひ参考にしてみてください。
制作企画・管理
仕事内容は、出版物の制作企画・管理を担当します。
具体的な仕事の流れとしては以下の通りです。
- コンテンツを企画
読者の好みや作者の能力、志向などの要素を考慮しながら企画を考えていきます。 - 出版スケジュールを決定
作者・デザイナー・イラストレーターに依頼したり、出版までの進捗を管理する業務を請け負っています。 - 編集
原稿を添削することや、作者との打ち合わせが主な仕事です。
【求められる能力】
✔ 基礎的な知識や教養
✔ 柔軟性
✔ 発想力
✔ 交渉能力
✔ 管理能力
制作企画・管理という仕事は、書籍が完成するまでの全体をしっかりと把握する必要があります。
そして、全体のバランスを取りながら効率良く作業が進むように調整する必要があるので、高い管理能力が必須とされるのです。
営業・宣伝
仕事内容は、出版物の売り込みや書店でのフェア、イベント等の企画です。
例えば、出版物を書店などに売り込む仕事も営業・宣伝の役割になります。
また企画を考える際には、読者の年齢や性別、好みなどを分析して、どのようなアプローチをすれば良いのかについて考える必要があるのです。
【求められる能力】
✔ コミュニケーション能力
✔ 地道に粘り強くやりきる力
✔ 分析力(例:企画などでどのような読者層にアプローチすべきかを分析する力)
✔ 体力
営業と言えば、顧客とのコミュニケーションが必須です。
また、毎日外回りをしてコツコツと契約を積み重ねる必要があるので、粘り強さや体力といった部分も大切になります。
デザイン
仕事内容仕事は、その名の通り表紙や帯といった本の外観のデザインを担当します。
具体的には、写真の配置やフォントを決め、読みやすいデザインを作成するのが仕事となっています。
本の内容は全く一緒でも、デザインが変わるだけ売り上げに大きく影響を及ぼすケースがあるため、非常に大切な仕事の1つです。
【求められる能力】
✔ 即戦力(デザインの経験がある程度求められる)
✔ 分析力(どのようなデザインやフォントがそれぞれの読者層に効果的かなど)
✔ ありきたりではない着眼点やセンス
デザインはただ見た目の綺麗さやおしゃれさにこだわるだけではダメで、どのようなデザインやフォントがそれぞれの読者層に効果的といった分析をしながら、最適なデザインにブラッシュアップする必要があります。
また、ありきたりなデザインでは他の書籍に埋もれてしまうため、たくさんある本の中から手に取ってもらえるだけのセンス溢れるデザインを目指すことが大切なのです。
版権(ライツ)
仕事内容は、主に版権と呼ばれる「出版物を複製・販売する権利」を取ることです。加えて出版物の版権を他の企業が使用する際の仲介をしたり、グッズ・ゲーム・映像作品などメディアミックスのライセンス管理といった業務を担当します。
この権利に関する問題は、時折ニュースなどでも取り上げられるほどシビアな部分なので、会社がトラブルに巻き込まれないためにも重要な役割となっているのです。
【求められる能力】
✔ コミュニケーション能力
✔ 交渉力
権利の獲得がメイン業務なので、交渉力とコミュニケーション能力が重要です。
もちろん、コミュニケーション能力と言ってもただ話好きというだけではなく、相手を説得するテクニックが大切になります。
出版社に転職する際のコツ・ポイント
最後は、出版社に転職する際のコツやポイントについて解説します。
まず、新卒ではなく転職として中途採用を受ける場合、即戦力が求められるケースが多いので、知識や経験を身に付ける必要があるでしょう。
「実務経験がないのに知識や経験なんて身に付けられない」と思ったあなたは、まずは資格の取得を目指してみてください。
出版社で役立つ資格としては、以下の4つが挙げられます。
- DTPエキスパート認証試験
DTP(Desktop Publishing)とは、原稿作成や編集、デザインなどの作業をパソコンで行い、印刷会社へデータにて入稿までできる方法です。そして、この業務に関する知識や技術があると証明するのがDTPエキスパート認証試験になります。 - 校正技能検定
校正とは、執筆者が作成した文章を確認して、誤字脱字などがないかチェックする仕事です。この校正のスキルがあると証明できるのが校正技能検定になります。 - 書籍製作技能検定
書籍の編集に関する知識やスキルがあると証明できるのが、書籍製作技能検定です。 - Google広告認定資格
その名の通りGoogleが主催する資格の1つです。この資格を得ると効果的なディスプレイ広告の戦略を立案してキャンペーンを作成し、特定のマーケティング目標を達成する能力があると証明できます。
これらの資格を有していても、出版業界は実力主義なので決してすぐに仕事で活躍できるとは限りません。しかし、全く経験がなくアピールできるものがないなら、資格は取得しておいた方が良いに越したことはないのです。
また、今までの仕事の中からでも出版業界で活かせる業務はあります。
- WEBマーケティングのスキル
- ライター
- 編集
- 営業スキル
あなたが以上の業務経験があるなら一度洗い出して、どうアピールすれば良いのか考えてみてください。
まとめ
今回は、出版業界の現状や年収、具体的な業務内容について解説しました。
近年、書籍はデジタル化が進み紙媒体の書籍は売れにくい傾向があります。
そのため、現段階では年収こそ高いものの、今後は生き残りをかけた厳しい競争が起きると考えられるでしょう。
それでも、電子書籍などの形で多くの人々から必要とされる書籍は、今後もなくなることはありません。
出版業界で働けば、長く勤められる可能性が高いので、転職をしてみるのは非常におすすめです。
資格取得などは大変ではあるものの、やりがいのある仕事なのは間違いないので、興味がある方はしっかりと準備をして転職活動を進めてみてください。