証券会社は本当に激務なのか。他の業界と労働環境を比較

残業は少ない? 多い? 労働環境について

残業は少ない? 多い? 労働環境について証券会社で働くことは激務というイメージがあるかもしれませんが、実際はそうではありません。

証券会社の営業職は、メーカーなどのような事務職とことなりチームで働いているわけではないため、一緒に何かを作り上げたり、一緒に発表したりすることはありません。そのため、休むと誰かに迷惑をかけるということが他の企業に比べると少ないです。

つまり、証券会社は激務ではなく休みやすく、帰りやすい職場であるといえます。

残業の有無

残業はあるときはありますが、定時から+1~2時間程度です。課長職や店長のような管理職となっていても、+3時間程度の残業しかありません。

営業は対顧客であるため、法人の営業時間である17時以降や個人のお客様でも遅い時間だと迷惑となるため17時以降はその時間でないと連絡が付かない会社員の方などへの連絡に限られます。そのため、あまり遅い時間まで営業をかけることはありません。

残業の業務内容

17時以降は事務作業をすることが多くなっています。

全ての取引においてリスクを説明したかどうかコンプライアンス上記録を残しておく必要があるため、電話は全て録音されています。

しかし、外交の場合は録音がないため、詳細に取引記録を当日中に残しておく必要があります。また、翌日アポがあれば提案する商品についての資料、おすすめするための投資情報を取り寄せておき、お客様の資産情報についても準備をしておきます。

作業自体は多いですが、遅くても19時には帰社することができます。他企業が帰りが21時になってしまうような場合が多いことを考えると、残業は少ない方だと考えられます。

ただし、IPOやPO、社債(外債含む)のように募集期間が○月○日までと決まっている商品を募集しているときにはそれが売れ残っていると残業が延びることもありますが、最近ではIPOや社債は人気であるため売れ残ることは稀でしょう。

休みも取りやすい

休みも取りやすい証券会社は公共機関に準じる休みで、土日祝日、年末年始の12月31日、1月元旦~3日が休みです。

証券会社は証券取引所において取引が行われている限り営業となるため、証券取引所の営業日が変わればそれに準じることになります。

年末年始やお盆休み

以前は12月30日の証券取引所の取引が半日で終わっていたため、午後には帰社できたり午後は親睦会や神社に行くこともありました。

しかし、証券取引所が終日取引へ変更されてから証券会社も終日営業となりました。

証券会社の休みは証券取引所によりますが、ほぼ公共機関と同じ休みです。そのため、お盆休みがありません。

製造業の場合であれば祝日が休みとならない代わりにゴールデンウィークやお盆・年末年始に休みが長くなるということがありますが、証券会社はお盆休みもなし、その他も暦通りの休みとなります。

休暇の実情は?

他企業に比べると単発の有給休暇も取りづらい環境にあります。

旅行に行きたいから金曜日だけ休むなど制度上は可能ではありますが、証券取引所で取引されている限り急な相場変動の可能性もあり、単発の休みは取りづらくなっています。その代わり、年に2回平日1週間休み土日含む最大9日間のリフレッシュ休暇クリエイティブ休暇というものをとれます。

平日1週間休むのでお盆を避けた時期を指定すれば、海外旅行に安い価格で行くことが可能です。家族がいる方は子どもに合せてお盆に休みをとる人が多くなっています。

一番休みやすい時期はお盆から9月、12月~1月の時期で、決算期にあたる3月、転勤者が来る4月に休む人は少なくなっています。

そんなに休みが現実に本当に取れるのかと疑念を抱くかもしれませんが、本当にとれます。課長以上の管理職となると丸々1週間は取りづらいですが、3日以上は必ず休んでいます。

休暇の融通は利くのか

単発の休みは取りづらいと上述しましたが、体調不良や子どもなど家族の体調不良は簡単に休むことができます。

管理職は顧客を保有していないため、長期休暇や急な休みでも課長等が対応してくれるので、安心して休むことができます。メーカーのようにあるプロジェクトを一緒に進めているというわけではないため、休んで迷惑をかけるという意識は他の企業に比べて少ないでしょう。

また、他企業であれば土日でも事務作業などを行うような見えないサービス残業もあるかもしれませんが、証券会社にはありません。

事務作業である取引記録などは証券会社独自のシステムに入力するため外部から入力することはできません。また、土日に営業を行うことは認められていないため(特別な許可が必要)、土日に出社するということはまずありません。

土日は仕事のことは忘れてリフレッシュしましょう。

勉強時間の確保が必要?

ただ、証券会社は入社後に取得すべき資格が多く、土日は資格取得のための勉強をしなければならないことがあります。

必ず必要な資格は「証券外務員資格Ⅰ・Ⅱ種」「生保一般、専門、変額外貨建」で、どれも選択式で会場のパソコンで試験を受けます。

難易度はそんなに難しいものではなく1ヶ月程度勉強すれば取得でき、そんなに根を詰めて勉強しなくても大丈夫です。だからといって全く勉強しないと落ちます。この必須資格は入社から1~6ヶ月で取得します。証券外務員資格Ⅰ・Ⅱ種は入社直前に受けることもあります。

その後は必須資格はありませんが、FP、CFP、証券アナリストの資格を取得する人もいます。FP、CFP、証券アナリストは簡単に受からないので、土日を勉強に費やす必要は出てきます。

資格は証券会社をやめても自分のものとなり、取得費用は会社が一部負担してくれたり合格すれば報奨金が出たりするので、自己研鑽と考えて積極的に取得をおすすめします。

証券会社では飲み会が多いのですが、このコロナ禍では飲み会もできず、今後も減っていくと考えられるため、仕事以外でのお付き合いも少なくなっていくでしょう。

営業職の1日

営業職の1日

では、実際はどうなのでしょうか。以下が営業職の1日のスケジュールモデルです。

 

5:30 起床

5:45 テレビを見ながら日経新聞朝刊を読む

6:00~6:30 出勤

7:00 ~7:30 出社

8:00~8:30 会議

8:45  寄付前に顧客に電話、受発注を行う

9:00 寄付スタート

9:10~16:00 アポがあれば外交に出るまたは電話営業

17:00  全体会議または課で会議

17:~18:00  取引記録や営業日誌を記録、お客様への手紙を書くなどの事務作業
      この時間に新商品やコンプライアンスの勉強会等が入ることもある

17:00~18:00 帰社

18:00~ アポがあれば外交に出ることもある

帰宅後    日経新聞の朝刊を読んだり、アナリストレポートを読んだりする。

 

日本の株式市場は夜中に行われている米国株式市場の影響を大きく受けるので、朝の情報収集が大事です。

日経新聞朝刊を読むことは必須であるため、早起きが必要です。他企業に比べて早く帰社できる傾向にありますが、その代わり早く起きなければならないということがあります。

また、外国株も扱っているので、米国株式市場が気になり夜中起きてしまうことも人によってはあるでしょう。

労働環境は良いが精神的負担はあり

労働環境は良いが精神的負担はあり前述した通り、土日祝日は完全に休みで、長い長期休暇も取得可能で、急な休みも取れます。また、育児休暇や介護休暇も規定通り取ることが可能です。

しかしながら、精神的負担が大きいことは否めません。

お客様の資産を預かっているので長期間担当者が不在とはできません。そのため、育児休暇や介護休暇など1年にわたる期間休む場合にはお客様を他の担当者へ引き継がなければなりません。

自分がせっかく築き上げたお客様との信頼も他の担当者へ移動してしまいます。復帰してからも稼働しているお客様を預かることができるとは限りません。子どもの体調不良など急な休みがある時期は大事なお客様を預かりにくいという現状もあります。

転勤について

また、証券会社はお客様から大事な資産を預かっているということもあり、定期的な転勤があります。

3~5年程度の転勤で、転居を伴わなければならないことがほとんどです。家族がいる場合には、家族を伴うか単身赴任となってしまうケースもあります。その代わり手厚い住宅補助があり、住居費がかからず資産形成できるというメリットはあります。

なお、地域限定などを選択すれば転勤を伴わない勤務もできます。以前は転勤を伴う総合職と転勤を伴わない職とで収入差がありましたが、最近ではその差もなくなっています。

精神的負担

一方、同じく転勤がある銀行と比べると精神的負担が大きいのが証券会社の特徴です。

証券会社の特徴として、元本毀損リスクのある資産を扱っているということです。

良いと思って提案した商品でも、お客様の資産が結果として減ってしまうことがあります。そういうときでも、そういうときこそ丁寧な説明、訪問が必要となります。また、個人・課・支店毎に営業目標があり、目標を達成しなければならないという責任があります。

営業は休みも取りやすく、実は外交といってさぼってしまうことも可能です。しかしながら、今している努力は翌月または翌年に返ってくるものであるためさぼれば自分に返ってきます。営業成績は自分の評価、昇進、ボーナスに大きく反映されます。

反面銀行でも元本毀損リスクのある商品を扱うことはありますが、株式取引は証券会社のみしかできないため銀行では取り扱っていません。銀行よりも、株式、仕組債などそのリスク性商品が豊富である故、銀行よりも証券相場についてや難しい仕組みの金融商品についても理解している必要があります。

証券会社は人とお金に興味がないと続けられない

証券会社は人とお金に興味がないと続けられない証券会社の営業は、法人営業でも個人営業でも結局は人と人とのお付き合いです。

会社のブランドや商品力で選ぶお客様もいますが、結局は大事な資産を預けることから信頼できるかどうかで数ある証券会社の中で選んでくれるのだと考えられます。

中には、普通なら会えない著名人や有力者と出会えることもあり、貴重なお話を聞くことができます。証券会社の取引を通じていろいろな方に出会えるのは、人生の大きな糧となります。

また、証券会社に入社することで以前は全く株式などの金融知識について詳しくなかったとしても、必ず詳しくなります。

毎日、株式相場を見て、アナリストレポートや周りの先輩方からの情報を得て、新しい金融商品について勉強していれば自ずと詳しくなります。また、株式取引ができない銀行と比べても株式相場についての知識に自負ができるでしょう。

株式相場の知識は資産形成における投資信託をはじめ金融商品のすべてにつながっているため、自己の資産形成においても大きなアドバンテージとなります。

証券会社勤務中はインサイダー防止のためなどにより役職員による取引に規制があります。事前に報告した上での株式取引が必要であったり、購入できない商品があったり、他の証券会社で取引することは家族を含めて原則禁止となっています。

そのため、自由に取引することはできませんが、事前報告すれば一部商品の取引は可能です。

勤務時間や休暇の多さに比べて、株式相場がよければ収入も非常に高いことから、他企業に比べて労働環境は良いといえます。

一方で精神的負担が大きいことから離職率が高いのですが、証券会社で培ったコミュニケーション能力、金融知識、資格は仕事だけでなく、自己の資産形成にも大きく役立つため、働いておいて損はないでしょう。