中卒は正社員になれないと言われる理由6つ
貧困で高校へ通うことができなかった、高校を中退してしまったなど、理由があって学歴が中卒であると、就職先が限定されたり、資格を取る条件を満たせないなど、様々な困難が立ちはだかります。
平成30年に行われた厚生労働省による調査では、中卒労働者のうち、正社員として雇用されているのは35.4%であり、中卒の非正規雇用者は64%となっており、圧倒的に非正規雇用の方が多いという結果が出ています。
中卒で正社員になることは難しいと言われるのは、どんな理由があるのかを考えてみましょう。
参考:厚生労働省「平成30年若年者雇用実態調査の概況 」P.14
学歴重視の企業があるから
日本では、学生には実力よりも学歴を重視した採用をすることが多いためです。
大学や大学院卒業者がメインの一括採用や採用の条件として高卒以上を挙げている会社が大半であるため、正社員になるための窓口がかなり少なくなっています。
中卒には信用がないから
義務教育は中学卒業までとなっていますが、大抵は高校へ進学するため、中卒で就職をするのは個人の能力に問題があるのではないかと思われてしまうことがあります。
「困難に対してすぐに投げ出してしまうのではないか」「学ぶ意欲や継続的な努力ができないのではないか」という疑念を抱かれやすく、中卒という学歴に対するイメージはあまりよくないことが多いという注意が必要です。
優秀な人材を集めるのに学歴が目安になるから
成長を目指す企業としては、採用するからには優秀な人材を集めたいと考えますが、その目安として利用される一つが学歴です。
会社の立ち位置や目指す像に対して、大学卒業以上、高卒以上というような足きりの水準を設けることで、ある程度の経験をしていたり、自分の考えを持っている社員を受け入れようとします。
義務教育である中学では、基本的な勉強をしていれば卒業できるため、あえて中卒から優秀な人材を集めようという考えを持つことが少ないと考えられます。
専門性がないと判断されやすいから
専門的なことを学べる高校や大学を卒業するのと違い、義務教育の中学校では誰もが学ぶ普遍的なことを身につける場所であり、文系理系などに分かれて学ぶこともなかった中卒では、企業の求める専門性に足りないと判断されやすくなります。
中卒は離職率が高いから
厚生労働省が行った調査によると、平成30年度の中卒の就職後3年以内の離職率は55%となっており、高卒では36.9%、大卒では31.2%であるため、中卒の離職率は高いという結果が出ています。
離職した割合についても、他の学卒者がおおよそ1年目、2年目、3年目で辞める人数が同等であるのに比べ、中卒では1年目に辞める割合が35.8%と非常に高くなっています。
やる気や成長を見込んでせっかく採用したのに1年に満たず辞められてしまっては、採用にかけたお金が無駄になってしまい、中卒への採用意欲も下がってしまいます。
経験がないから
中学生は基本的に働くことを許されていないため、アルバイトなどで築くことのできる社会経験もないとみなされます。
中学では敬語を学ぶことや使う機会ということが少なく、社会に出たときに社会人としての敬語やマナーをいきなり使うことは難しいでしょう。雇う企業も他の社員とのズレや取引先に迷惑をかけてしまうのではないかという心配があります。
年齢を重ねることで身に付く経験や知識も乏しいことが多いため、同じような応募者であれば学歴の高い人を採用するということになりかねません。
中卒が正社員になれないということはない
中卒では正社員になれないのかというと、必ずしもそういうわけではありません。中卒の採用を進めている会社では、どのような理由で雇用をしているのかを確認しておきましょう。
学歴より人柄重視の企業が増えてきた
中卒で正社員になるためには、学歴を重視する会社ではなく、人柄重視で採用している企業や実力主義の業界に応募することが大切です。中小企業やベンチャー企業の中では、学歴よりも熱意や意欲、個性といった人物を重視する会社が増えています。
人柄を採用基準にしている企業では、入社してからどのように成長していくかのポテンシャルを見るところもあるので、中卒で経験は少なくても、これからどのように身につけ、社会で働いていきたいのかということをしっかり訴えることが重要です。
若い人材はどの企業も欲しがっているから
少子化で人口が減りシニア世代が大量に定年となっていく今、大学の新卒採用が売り手市場になっています。
若い人材を育てたいのになかなか採用に応募してもらえないという時、採用の基準を大卒入社から高卒入社に引き下げ、さらに中卒まで窓口を広げるということが考えられないことではありません。
即戦力となるのは難しいですが、経験がない分、吸収の多い時代に仕事を学んでもらい、これからの会社を担ってくれる存在として成長を期待した採用を行う企業を検討してみましょう。
厚生労働省が発表したデータによると、中卒のうち35.4%の人が正社員で働いているから
中卒の就職先の64%が非正規雇用であるという厚生労働省のデータがありましたが、正規雇用で働いている中卒労働者は35.4%いるということになります。
中卒の大多数が非正規雇用であるとはいえ、3分の1以上の人が正社員として働いているため、就職に向けて調査や準備をしっかりと行うことで、正社員として働くことは不可能ではないということがわかります。
参考:厚生労働省「平成30年若年者雇用実態調査の概況 」P.14
中卒でも正社員になれる業種6つ
中卒労働者が正社員として採用される可能性が高い業種は、肉体労働であったり、人材不足であったり、未経験から挑戦することのできる環境であることが多いです。どのような業界で中卒が採用されやすいのかを見ていきましょう。
建設業
建設業は力仕事が多く、若い内から経験を身につけていくという職場環境が整っているという土台があり、高齢の世代が抜けていき人材不足が予見されることからも、学歴も経験も不問で若者を歓迎している企業も多いです。
現場で経験を積んでいくことで、将来は施行管理で働くことを目指すなどのキャリアプランを立てることもできます。
生活関連サービス業、娯楽業
縫製工場やクリーニングなどの生活関連サービスや、ゲームセンターやパチンコなどの娯楽施設での仕事は、学歴不問であることも多く、経験がなくても働きやすい仕事があるため、中卒で正社員の募集を見つけることができます。
縫製やクリーニングなどの技術を身につけることのできる職種では、経験を身につけることでキャリアアップを目指すこともできます。
情報通信業
IT関連ではベンチャー企業も多く、発展段階にあり人手不足の企業もあるため、学歴不問で採用を募集している会社があります。
プログラマーやエンジニアなどの技術が必要な仕事でも、実務を担当できるレベルのスキルを身につけているのであれば、中卒という学歴よりも実力を買って正社員として採用するということもあります。
鉱業、採石業、砂利採取業
鉱石や石油などを採取、生産する鉱業、採石業、砂利採取業では、重機の運転や工場での作業などの職種で、中卒でも正社員として募集している会社があります。派手さはありませんが、需要がなくなることはないため、安定した職場といえます。
都市部での求人はほとんどありませんが、実家から離れたくない方や地方で働きたいという方には向いている仕事です。
卸売業、小売業
チェーンのコンビニやスーパー、ドラッグストアでは、中卒でも採用を行っている会社があり、入社はアルバイトだったとしても、正社員登用のある大手チェーンなどでは正社員を目指して働くこともできます。
小売業では学歴よりも販売実績や社内の試験で評価が得られることが多いため、中卒で就職してもハンデを感じにくい職場といえるでしょう。
介護業務
介護福祉士は資格保有者となりますが、そのサポートを行う介護助手には資格は必要なく、多くは学歴不問となっています。
介護業界は慢性的に人手不足であり、未経験でもやる気があれば正社員としての求人も見つけることができ、中卒から長く働くことができます。
実務経験が3年以上になることで国家資格である介護福祉士の受験資格を得ることができるため、中卒でもキャリアアップをしていくことができます。
中卒が正社員になるための方法5つ
中卒から正社員になるためには、正社員の求人を見つける方法、就職試験を突破するための対策をする必要がありますが、中卒が正社員で就職するために必要なものを確認していきましょう。
ビジネスマナーを身に付ける
中卒でも働き始めたら社会人となり、取引先がいれば仕事相手となるため、ビジネスマナーを身につけ、相手に失礼のないように振る舞わなければなりません。社会人の第一歩として、まずは面接でのビジネスマナーを身につけ、上手くいかなくても敬語で会話をすることで、面接官に熱意を伝えることができるでしょう。
アルバイトなどで経験を積む
どうしても正社員の求人が見つからない場合や就きたい職種が正社員の募集をしていない場合、アルバイトから正社員を目指すという方法があります。正社員登用制度のある会社でないと、いつまで経っても社員になることができなかったり非正規雇用で不安定な生活が続いてしまうということも考えられます。
アルバイトでは給料が上がらず、キャリアとしてカウントされず、ダラダラ続けてしまうと正社員で働くことがさらに遠ざかってしまうことがあるので、注意が必要です。
ハローワークを利用する
ハローワークには年齢制限などはなく、求職者であれば誰でも利用することができます。就職のあっせんだけではなく、就職の相談や履歴書などの書き方を教わることができ、セミナーなどに参加して就職の準備も行うことができます。
ハローワークは掲載料が無料であるため、ブラック企業などの労働環境のよくない会社や詐欺などの犯罪集団が求人情報を出しているという可能性が全くないわけではないため、中卒で経験が少ない方は騙されないように特に注意が必要です。
ハローワークの職員を頼るだけではなく、企業のサイトや条件をしっかり見て、面接での話や契約内容に嘘や矛盾がないかどうかをチェックしましょう。
求人サイトを利用する
求人サイトに出てくる中卒から応募できる求人は少ないですが、だからこそ頻繁にチェックしておくことで、自分の希望に沿ったものを見落とさないようにする必要があります。求人サイトは登録無料で利用できるものが多く、会社によって掲載している企業が異なる場合もあるため、複数の求人サイトに登録をしておきましょう。
就職支援サービスを利用する
就職支援サービスには、中卒向けのものもあり、他のサービスに比べて求人の質が高かったり、キャリアアドバイザーが求人の紹介や選考の対策を練ってくれるサービスが用意されていることもあります。経歴に自信がない方ほど、自分の就職に親身に相談に乗ってくれる就職支援サービスの活用は有益なものとなります。
フリーターの人は正社員への転職を得意とするサービスを利用しよう
通常の転職サイトでは一人で転職活動をするしかなく、転職エージェントであれば信頼して相談することができ、充実したサポートを受けることができます。
ハローワークではブラック企業を見抜く力が必要となるなど、中卒から正社員を目指すにはコツが必要となったり、民間企業ほどのサポートを充実することができないという公的な限界があるのが事実です。
なるべく早く転職を決めたいと考えている人は、転職エージェントでのしっかりとしたサポートを利用して、さっと正社員へ転身してしまいましょう。