男女問わずミドル世代の転職が活発になってきていますが、厚生労働省の雇用動向調査によると、女性の方が男性よりも転職する方が多くなっています。
ここではミドル世代の女性はどのような理由で転職するのか、どのような業種・職種で活躍できるのかと併せて、転職するメリットと転職活動のポイントや注意点をまとめてみました。
そもそもミドル世代とは?
東京都民の雇用・就業支援と東京都内の仕事を探している方を対象に仕事に関するサービスを提供する「東京しごとセンター」では、ミドル世代向けのサービスを30歳~54歳の方へ提供しています。
ただし、30歳~34歳以下の方には29歳以下向けのサービスも一部利用可能としていて、東京しごとセンター以外の求人サービスによっては35歳~44歳をミドル世代と定義づけしていることから、ミドル世代は35歳~44歳のことを指すことが多いでしょう。
東京しごとセンター同様、40代半ば~50代前半の方を含むこともあります。
ミドル世代の転職状況
厚生労働省の平成30年雇用動向調査結果「年齢階級別転職入職率」の30歳~54歳をミドル世代として見ていくと、男性の転職入職率は4.7~8.9%、女性は9.3~13.5%と女性の方が高くなっています。
転職入職者の賃金変動状況の割合は、30~49歳までは増加した方が多いですが、50~54歳になると減少した方が増加した方より多くなります。
前職を辞めた理由を見ていくと、男女共に出向などのその他の理由を除き、30~49歳までは「収入が少ない」「労働条件が悪い」ことを挙げている方が多いですが、50~54歳になると男性は「会社の都合」女性は「定年・契約期間の満了」を挙げる方が多くなることから、40代までのミドル世代は収入アップや労働条件の改善を目的に、50代のミドル世代は収入や労働条件よりも仕事を続けられることを考えて転職していると考えられます。 |
ただし、女性は30代~50代まで「定年・契約期間の満了」で転職している方が一定数いますが、女性はパートタイム労働者が多く、一般労働者よりも契約更新されないリスクが高いことが影響しているでしょう。
また、40~54歳までの方は「職場の人間関係が好ましくなかった」ことを理由に転職していることも特徴です。
エン・ジャパン株式会社が運営するミドル世代のための転職サイト「ミドルの転職」を利用する転職コンサルタントを対象に2019年12月17日~12月22日に行ったインターネット調査で、66%の転職コンサルタントが35歳以上のミドルを対象とした求人が増えると考えていて、増えると考えている方の74%は「若手人材の不足」を理由に挙げています。
2019年の「ミドルの転職」求人掲載数が前年比117%であることも考慮すると、ミドル世代の需要が高まり、転職も活発化すると考えられます。
【参考】
・平成30年雇用動向調査結果の概要|厚生労働省(2020年8月7日調べ)
・2020年「ミドルの求人動向」調査-『ミドルの転職』転職コンサルタントアンケート-(2020年8月7日調べ)
ミドル世代の女性の働き方
ミドル世代になると、これまでの経歴を活かしてさらなるスキルアップやキャリアアップを図りたいと考える方が増える一方、仕事以外も大切にした働き方をしたいと考える方もいるでしょう。
女性にパートタイム労働者が多いということはパートの求人も多いと考えられるので、家族や自分のための時間を確保して働きたいという場合、正社員にとらわれない働き方も選びやすいでしょう。
時間を自由に使える
ミドル世代の女性は家族や自身の健康・体力面などから、毎日決まった時間に働いたり残業に対応したりが難しいと感じる方は多いです。
仕事に割く時間が少なくなれば家族や自分のための時間を確保しやすくなるので、仕事以外の時間を増やす働き方を目指すこともおすすめです。正社員を希望する方は、時短勤務やコアタイム制度やノー残業デーなどのある会社への転職を検討すると良いでしょう。
正社員にこだわらなければパートタイムに限らず、業務委託契約を締結してWebライティングやプログラミングなど、時間も場所も問われない仕事を受注することも可能です。
シフトが自己申告制のパートであれば正社員よりも時間の融通は効きますが、給与は基本的に働いた時間に対して支払われるので、高いスキルのある方や決められた時間内に多くの仕事をこなせる方は、給与に不満を抱く可能性があります。
業務委託契約は1案件○円という契約で仕事をすることから、成功報酬制のように仕事に対して報酬が支払われるので、仕事をするほど高い報酬を期待できます。
ワークライフバランスがとれる
仕事中心だったミドル世代も、仕事に慣れてくると仕事以外にも目が向き、ワークライフバランスのとれた働き方を考えるようになるでしょう。
仕事以外の時間を確保しやすいパートへの転職もワークライフバランスをとる手段の1つですが、正社員を続けながらワークライフバランスをとりたいのであれば、これまでのスキルや知識の活かせる会社への転職がおすすめです。
どれほど労働条件が良くても、新しい業界・職種に転職すること、覚えることが多い、慣れない仕事で心身共に疲れるといったことが懸念されるためです。
高いスキルや仕事を継続して受注できる人脈や営業・提案力がある方は、フリーランスとして独立して仕事とプライベートの時間を自分で管理する働き方もできるでしょう。
スキルアップを目指す
収入が少ない、労働条件が悪いことを理由に転職する方が多いということは、収入アップなど自分にメリットの多い条件での働き方を実現したい方もいるでしょう。
労働条件を改善して働くには、スキルアップを続けて良い条件で働ける会社への転職がおすすめです。
また、スキルアップを図れそうな企業への転職もおすすめです。スキルアップを目的に転職すれば、これまでのスキルや知識に加えて新たなスキルなどが身につくので、収入アップの可能性が広がるでしょう。
スキルアップで独立できる可能性も高くなるので、定年退職後も仕事を続けたいなど長く働きたい方にもメリットが大きいです。
ミドル世代の女性が転職するメリット
ミドル世代は「収入が少ない」「労働条件が悪い」といったことを転職理由に挙げていることから、これまでのスキルが活かせる企業やキャリアを評価してくれる企業に転職できると、収入アップや労働条件を改善できる可能性が高まります。
ミドル世代の女性は「定年・契約期間の満了」も転職理由として挙げる方が多いですが、スキルを活かせる仕事やスキルアップにつながる仕事ができると、自分の力で仕事ができるフリーランスとして働き続けることも期待できます。
また、人間関係を理由に転職するのであれば、転職で人間関係が変わることで人間関係の悩みが解消され、より自分の実力を発揮しやすい環境で仕事ができるでしょう。
ミドル世代の女性が転職する際の注意点
ミドル世代には高いスキルや知識と豊富な経験で自社に貢献してくれることを期待されているので、身につけたスキルやキャリアをアピールすることが転職を成功させるのに欠かせません。
ミドル世代と言っても年齢に幅があり、年齢によって企業から求められることは異なるので、年齢に合った求人から働きたい会社や興味のある仕事を見つけることも大切です。
自身の市場価値を把握する
ある程度のキャリアのあるミドル世代には、これまでの仕事で身につけたことで企業に貢献することが求められるので、自身のスキルや知識、得意なことや不得意なことを洗い出し、今の自分にはどのような仕事ができるか、希望年収に値する働きができるかを明確にすることが大切です。
キャリアアップを目標に転職を検討するとなると、興味のある企業で求められているスキルが不足していると気がつくこともあります。
しかし、現在の自分のスキルなどが分かっていれば、足りないスキルを身につけるために必要なことが分かるので、市場価値を高めて有利に転職活動を進めることにつながります。
これまでのスキルとキャリアをアピールする
若手の人材が不足していることもあり、ミドル世代を採用する企業も増えてきていますが、経験豊富なミドル世代に対し、教育コストを抑えてこれまでの経験や身についたスキルで貢献してくれることを企業は期待しています。
よって、どのようなスキルや実績があるのか分かりやすく伝えることが大切です。
ミドル世代になるとアピールしたいスキルや実績は多くなりますが、企業によって求められるスキルなどは異なるので、アピールするスキルや実績の数を増やすより、企業に求められているものに一致することを具体的な数値やエピソードと併せてアピールする方が効果的な自己PRとなります。
転職したい会社に求められているスキルや経験を把握して意味ある自己PRをするには、企業や業界の情報収集が欠かせません。
専門性の高い仕事ができることに加えてマネジメントもミドル世代に企業が期待することなので、役職に就いた経験やプロジェクトリーダーになってチームを引っ張った経験などもアピールに有効です。
身についたスキルや知識を活かせる環境を目指す
あらゆる知識や経験が組み合わさると新たな仕事が生まれると考えて他業種・職種の経験者が評価されることもあります。
熱意やポテンシャルが評価されるのは、どの業種・職種にも共通のスキルと最低限のビジネスマナーが身についている第ニ新卒までで、ミドル世代は20代よりも年収が高いことから、これまでの経験を活かして即戦力となれることが評価される傾向にあります。
「ミドルの転職」を利用しているコンサルタントにミドル世代に求める上位3つのスキルをうかがったところ、最も多かったのは「高いレベルでの業務遂行能力」66%で、「業界に適応できる高い専門性」49%、「目標や課題を自ら設定し、解決策を考える能力」36%と続くことからも、経験のある業種・職種への転職でスキルや専門性が評価され、年収アップなど良い条件で働ける可能性も高くなります。
身についたスキルや知識や実績がどのような仕事・会社で活かせるか分析しながら情報収集することで、さらに活躍できる企業が見つかるでしょう。
50代前半ならシニア向けの求人も検討する
企業や求人サービスによってミドル世代の定義が異なることから、30~34歳や50歳以上といったミドル世代に当てはまらないこともある方は、ミドル世代に限定せず求人情報を探すことで、興味のある仕事・企業が見つかる可能性が広がります。
30歳になると20代や第二新卒専門の求人サービスは対象外となるので、特に年齢に縛りのない大手のサービスをチェックする方は多いですが、専門性の高さを活かして働けるよう特定の業界や職種に特化したサービスへの登録もおすすめです。
50歳になったら転職市場では55歳以上をシニア世代と定義づけしていることから、シニア世代の求人もチェックすると良いでしょう。
シニア世代向けの求人はフルタイム以外の求人が増えますが、軽作業のような体力の負担が小さい仕事や専門性の高い仕事など、体力が落ちてきたので体への負担が少ない仕事をしたい、スキルを活かして高度な仕事に携わりたいなど、理想の働き方を実現できる求人を見つけやすくなります。
ミドル世代の女性が狙い目の職種・業種
「ミドルの転職」利用コンサルタントにミドルを対象とした求人が増えると見込まれる業種と職種を複数回答可でたずねると、業種は「IT・インターネット」(49%)「建設・不動産」(43%)「流通・小売・サービス」(42%)「メーカー」(40%)に回答が集中しました。
上位3位の職種は「営業系」(48%)「経営企画・事業企画」(45%)「技術系(IT・Web・通信系)」となりました。
この調査結果を参考にしながら、自身のスキルと実績を活かせる業種・職種を見つけるのも良いですが、IT・インターネットやWeb系など平均年齢の低い傾向にある業種・職種は若手の転職希望者からの応募も殺到し、採用難易度が上がることに不安を感じる方もいるでしょう。
しかし、45歳以上の女性が多く活躍している業種・職種であれば、年齢で不利になることは起こりにくいでしょう。
そこで、「日本の統計2019」から女性の平均年齢45歳以上の職種が分かるので、ミドル世代後半になっても続けやすい職種選びの参考にしてみてください。
〈女性の平均年齢45歳以上の職種〉
- ビル清掃員…55.5歳
- 准看護師…49.7歳
- 介護支援専門員(ケアマネージャー)、調理師見習…49.6歳
- ホームヘルパー…48.7歳
- 保険外交員…47.1歳
- 看護補助者…46.2歳
- ミシン縫製工…45.0歳
【参考】
日本の統計2019(2020年8月8日調べ)
ミドル世代の女性は転職で多様な働き方ができる
ミドル世代の女性は、仕事に限らず家庭や自分のことにも目を向けるゆとりが出てくるので、働き方を見直して転職したいと考える方も多くなります。
自由な時間を確保する働き方もスキルアップの可能性が広がる働き方も可能ですが、メリットの多い条件で転職するためには自身のスキル・知識・実績が転職してどのように活かされるのかアピールすることが大切なのは共通です。ミドル世代を求めている業界・職種やミドル世代の女性も多く活躍できる職種も多いので、自分のスキルなどと転職の目的を明確にし、働きやすい環境への転職を目指しましょう。