退職金の有無は働く上で非常に大切です。
たとえば5年契約社員として働き、退職時に60万円の退職金が貰えたとしたら、1ヶ月あたり1万円の給料増加と同じことになります。退職金は税制面で優遇される為、実際はそれ以上に大きいです。
また転職時にも退職金は大きな味方になってくれます。
一般的に更新しない通知は約1ヶ月前に来ます。しかし転職活動の平均期間は2ヶ月。すぐに転職活動を始めたとしても退職までに次に仕事を見つけられるとは限りません。そうなると貯金でを切り崩しての生活を強いられます。
しかししそんな時、退職金がでたならば金銭面での不安はなくなり心に余裕を持って転職活動に望めます。焦りによる転職の失敗ということも起こらないでしょう。
ただ契約社員という立場で退職金を貰うことはできるのでしょうか。
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契約社員の退職金事情
ただそうは言っても契約社員。退職金なんて貰えるの?いや、貰えないでしょと考える人が多いかと思います。
実際のところ、契約社員の退職金事情はどうなっているのでしょうか。
契約社員は退職金をもらえない?
契約社員は絶対に退職金がでないというのは間違った認識です。
契約社員に対してもボーナスを支給してくれる会社があるように、退職金を支給してくれる会社もあります。
退職金制度は法律で義務付けられているわけではなく、それぞれの会社で支給するのかしないのかを決めることができます。
正社員には支給するが契約社員には支給しないといったことを選ぶ会社が多いですが、契約社員にも勤続年数に応じて退職金を支払うということにしている会社も中にはあるのです。
契約社員でも退職金を貰える場合
契約社員に対する退職金は、たとえば以下のような場合に支給して貰えます。
正社員と同様の就業規則を適用している
退職金の支給有無は自由ですが、もし支給する場合には就業規則に記載することが義務付けられています。
労働基準法第89条
常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
3の2. 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
そして就業規則の退職金に関して、正社員や契約社員といった区別を設けずに「従業員」という形にしている場合があります。
この場合であれば、契約社員にも退職金制度が適用される可能性があります。ただし金額では正社員に比べて下がるのが一般的です。
契約社員に退職金規定を作っている場合も
会社によっては正社員とは別に契約社員に適用される就業規則を作っている場合もありますし、退職金制度に関する項目だけを正社員と分けている場合もあります。
ただこの場合であっても、契約社員に退職金制度が適用されるということが書かれているならば正社員に比べて貰える金額は下がるものの多少なりとも支給はされるでしょう。
満了金という形で貰える場合も
名称は違いますが、契約期間を満了した契約社員に対して「満了金」という形で支払われるものもあります。
特に期間工に多いですが、事務職の契約社員に対してこの満了金を導入している企業もあります。
入社当初の契約書の記載有無が重要
退職金に関する事項は、入社前、労働契約通知書等で明示することが義務付けられています。
もし記載がなければ退職金はおそらくでません。
一方で記載があれば、金額の多い少ないはあれど幾分かの退職金はでるはずです。
ただし退職金制度があっても、支給条件(3年以上の勤続)に合致しないとゼロと言う可能性があります。
契約社員でも退職金が貰える可能性がゼロではないが、低い
これまで説明したように契約社員の場合、契約社員を対象とした退職金制度があってその支給条件をクリアしていれば貰えることがあります。
ただ正社員に比べると厳しいというのも確か。
現在、退職金制度がある企業は厚生労働省の「就労条件総合調査」によると80.5%ありますが、その企業のうち大半は正社員のみを対象としています。
転職サイトリクナビNEXTで「契約社員+退職金」というキーワードで求人を探してみましたが、でてきたのは正社員登用後に退職金があるというパターンのみ。契約社員の状態で退職金が出るという会社はほとんどないというのが実情です。
確かに退職金がでた方が先ほども述べたように得するのは確かですが、求人の状況を見るとそれを基準にして選ぶことは困難な状態。
退職金を貰えるかどうかを基準にしてしまうと、選択肢が激減してしまいトータルで見て良い求人を見逃してしまいかねません。
契約社員から無期雇用転換した場合はどうか
契約社員から正社員登用された場合、約8割の退職金制度がある会社であれば退職金を貰うことが可能となります。
では正社員ではないものの、無期雇用転換した場合はどうでしょうか。
労働契約法の改正により、5年を超えて契約が続くと労働者側の申し込みで有期雇用から無期雇用へと転換する義務が生じるようになりました。
ただあくまで正社員として採用されるわけではありません。
もちろん正社員登用してくれる会社もありますが、正社員とは分けて「無期契約社員」といった枠を設ける会社も多いです。
このような枠で働くことになった場合、たとえ正社員に対しては退職金がある会社であってもあなたが貰えるとは限りません。
なぜなら退職金制度は正社員のみに適用されるものであるとし、無期契約社員には適用しないとしている会社もあるからです。
就業規則、そして労働契約時の明示内容次第であり、よく確認しておかなくてはなりません。
契約社員の退職金に関してこんな判例も
2019年、契約社員と正社員の退職金格差に対して初めて違法とし、損害賠償を命じる判決がでました。
労働契約第20条の不合理な労働条件の禁止に該当するという判断です。
労働契約第20条
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。
この判決をを元に、今後契約社員などの有期雇用者に対する退職金の支給状況は変わっていくかもしれません。
ただ今回の判決は契約社員であっても10年前後勤務した人が対象で、「長年の勤務に対する功労報償の性格を有する退職金すら一切支給しないことは不合理」と述べられている上、退職金の額も正社員に対して25%は支払われるべきという判決だったので、たとえば3年働いてまとまった額を貰えるかと言うとそんなこともなさそうです。
ちなみに正社員として3年働いた場合、退職金制度がある会社であれば20万円から30万円程度が平均的な額となります。
3年以上働くなら正社員の方がメリットは大きい
退職金のみならず、ボーナスや昇給といった面でもやはりメリットは大きいです。
もし長くても3年までしか働かないというのであれば、契約社員でも良いでしょう。契約社員には契約社員のメリットがありますからね。
ただもしも3年以上働くつもりであるならば、正社員で働くことをおすすめします。
3年以上たつと正社員であれば退職金が発生しますし、その期間のボーナスも大きいです。昇給だって幾分かはするでしょう。
契約社員との金銭面での差は3年もたつとかなり大きくなります。
また無期雇用や正社員登用を目指すこともあまりおすすめできません。
確かに5年以上働くと無期雇用への転換が可能となりますが、5年まで契約延長してくれるとは限りませんし、もし無期雇用されたとしてもそれは正社員としてではない為、待遇的には契約社員の頃となんら変わりないといったことになります。
正社員登用であれば確かに退職金やボーナスも貰えるようになるでしょう。ただ契約社員から正社員登用される可能性というのは、実際のところあまり高くはありません。
求人票では正社員登用ありとうたいながら、実はここ数年の正社員登用率0%なんて会社もあるのです。リスクが高すぎるギャンブルです。
確かに正社員を目指した転職活動は契約社員のそれよりも難しいです。
ただ現在はかなりの売り手市場。多くの会社で正社員が不足しており転職がしやすい状況になっていますから、ぜひやるだけやってみることをおすすめします。
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