福利厚生は大きく2つに分類される

福利厚生とは会社側が従業員に対して提供する給料以外の報酬やサービスのことで、従業員の労働環境の改善や家族との生活環境を改善するための支援をするものです。

従業員にとってメリットがあるのはもちろん、会社側にとっても休職者や離職者を減らせるというメリットがあります。

福利厚生は大きく2つに分類され、1つは法定福利、もう1つは法定外福利となります。それぞれ説明しましょう。

法定福利

法定福利とは法律で義務づけられている社会保障制度のことで、健康保険・介護保険・厚生年金保険・労働保険(雇用保険・労災保険)、児童手当拠出金などを指します。

厚生労働省の「平成28年就労条件総合調査の概況」によると、常用労働者(1ヵ月未満の短期バイトなどを除くほとんどの労働者)1人あたり、1ヵ月に平均4万7,693円の法定福利費を会社側が支払っていることが分かります。

法定外福利

一方の法定外福利は、会社側が従業員に提供する福利厚生のうち、法律で義務づけられていないものを指します。

その主なものを表にまとめました。

福利厚生の種類福利厚生の種類
通勤・住居に関するもの通勤の定期券代や家賃・住宅ローンに対する金銭的補助、社宅など
健康・医療に関するもの健康診断や人間ドック費用の負担など
リフレッシュ休暇有給休暇や夏季休暇などとは別に慰労・健康維持などを目的として与えられる休暇
育児支援託児施設やベビーシッターの費用負担、社内保育所の提供など
食事に関するもの社員食堂などの提供など
文化・体育・娯楽に関するもの社員旅行、社員運動会の開催、保養所の提供など
自己啓発関連業務には直結しない講演・セミナー・通信講座等の費用負担など
慶弔見舞金に関するもの結婚・出産・身内の不幸などへの慶弔見舞金付与
財産形成に関するもの社内預金制度や持ち株制度、財形貯蓄奨励金制度の提供など

厚生労働省の「平成28年就労条件総合調査の概況」によると、常用労働者1人あたり、1ヵ月に平均6,528円の法定外福利費を会社側が支払っていることが分かります。

ただし、法定外福利の範囲については法的に明確な定義はないので、この調査における「法定外福利費」のカウントから漏れている法定外福利費があるかもしれません。

福利厚生代行サービスとは?

法定外福利厚生の中には、大企業でないと実施できないものもあります。

たとえば、保養所や社員食堂、社内保育所などはよほど大きな企業でないと設置が難しいはずです。

そこで、中小企業に対して、さまざまな福利厚生を提供する福利厚生代行サービスが登場してきました。

会社側がそうした福利厚生代行サービスと契約して料金を支払うと、従業員は一定の範囲内で、そのサービスから提供される福利厚生を無料あるいは割引料金で利用できます。

保養所を例にとると、そうした福利厚生代行サービスが提携する宿泊施設を、従業員はお得に利用できることになります。

福利厚生代行サービスが従業員側に与えるメリットとしては、会社が独自に用意した場合よりも福利厚生の選択肢が増えることが挙げられ、会社側のメリットとしては、福利厚生施設の建設費や維持費などの出費を回避し、比較的安価に福利厚生を提供できることが挙げられます。

傾向として中小企業よりも大企業のほうで福利厚生は充実していますが、こうした福利厚生代行サービスにより、現在は多くの会社で多様な福利厚生が提供されるようになってきました。

少し前のデータになりますが、「平成19年就労条件総合調査結果の概況」には、法定外福利を従業員に提供している会社における、各福利厚生を導入している会社数の割合を調査したものが掲載されています。

福利厚生制度の種類別企業数割合

 

福利厚生内容

企業割合

住宅関連

住宅手当、家賃補助

48.4%

社宅・独身寮

35.0%

持家援助

8.9%

健康・医療関連

健康診断(がん検診等法定への上積み)

71.8%

メンタルヘルスケア

18.5%

育児・介護支援関連

育児休業(法定への上積み)

40.5%

託児施設

0.6%

育児補助(ベビーシッター補助含む)

2.0%

介護休業・看護休暇(法定への上積み)

30.9%

慶弔・災害関連

慶弔・災害見舞金

94.5%

遺族年金、遺児年金、遺児育英年金

14.6%

文化・体育・レクリエーション関連

余暇施設(運動施設、保養所)

28.6%

文化・体育・レクリエーション活動支援

34.6%

公的資格取得・自己啓発(通信教育等)支援

47.3%

(再掲)リフレッシュ休暇

12.4%

財産形成関連

財形貯蓄制度

57.3%

社内預金、持株会

25.5%

個人年金など(従業員拠出)への補助

8.2%

その他

社員食堂・食事手当

38.0%

その他

3.6%

この表から慶弔・災害見舞金や健康診断は比較的どの企業でも採用していることが多く育児関係の補助は手が回っていないということがわかります。

その他で採用の割合が多いものだと、住宅手当、資格取得支援、財形貯蓄制度などは企業文化によって採用するかどうかで分かれてくるもようです。

人によってどのジャンルの福利厚生を重視するかというのは異なりますので、自分の会社にはどこまで福利厚生があるのか、また転職を考えているのなら転職先では福利厚生はしっかりしているのかなどを確認しましょう。

アルバイト・パートは福利厚生を受けられる?

大企業だけでなく中小企業でも会社によっては充実した福利厚生を受けられることが分かりました。

では、アルバイトやパートの方は福利厚生を受けられるのでしょうか?

まず、法定福利について、社会保険、雇用保険、労災保険の順に説明していきましょう。

社会保険

健康保険と厚生年金に関しては、一定条件に該当する事業所・労働者については加入が義務となります。保険料は事業所と労働者で半々の負担となります。

社会保険加入が義務となる条件は次の通りです。

  1. 国、地方公共団体、法人(会社)の事業所か、個人事業所でも一定の業種(製造業・土木建築業・運送業・清掃業・物品販売業など)で常時5人以上を雇用する事業所で働く労働者。
  2. ①のうち派遣社員・契約社員・アルバイト・パートでは、労働時間・日数が通常の労働者の4分の3を超える労働者。

この条件で考えると、法人になっていない事業所であっても、5人以上が常時働いていて、アルバイトやパートとして、1週間に20時間以上勤務、月収88,000円以上、雇用期間が1年以上の見込みであること、学生ではないことなどが社会保険加入対象になっています。

半々の負担となるため払いたくない方もいるかもしれませんが、将来のことやいざ病気になったときのことを考えると絶対に加入したほうがいいのは確かです。

そして、加入前提で考えると、雇用者側が半分負担してくれることは大きなメリットだと分かるはずです。

なお、上記の条件を満たさない場合でも、別の条件を満たすことで加入対象となることがあるので、詳しくは勤めている会社や年金事務所などに問い合わせてみましょう。

雇用保険

雇用保険は、労働者が失業した場合に、生活の安定と再就職促進を目的として失業等給付金が支給される保険制度です。

これは、勤め先の規模にかかわらず、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上雇用される予定の方なら、派遣社員や契約社員のほかパート・アルバイトも含めて適用対象となり、保険料は労働者と会社の双方が負担します。

雇用保険への加入は会社の責務なので、自分が雇用保険制度へ加入できるかどうか分からない場合はハローワークに問い合わせてみましょう。

労災保険

労災保険とは、業務中のケガや病気、通勤中の事故に関して、会社に代わり国が給付を行う公的な制度です。

基本的に労働者を1人でも雇う会社であれば適用され、パートやアルバイトも含むすべての労働者が対象となります。

保険料は全額会社負担となりますが、仮に会社が加入手続きをしていない場合でも給付を受けられます。不明な点があれば労働基準監督署に問い合わせましょう。

求人情報誌・サイトなどに「各種保険完備」と書かれていれば、その会社では基本的に従業員にこれらの制度が適用されると考えていいでしょう。

アルバイトやパートを探すときは、給料だけでなくそうしたところにも目を向けるべきです。

アルバイト・パートは法定外福利も受けられる?

アルバイトやパートの方であっても、法律の定めに従い法定福利(各種保険)を利用できるケースがあることが分かりました。

では、法定外福利についてはどうでしょうか?

法定外福利は法律で義務付けられていない福利厚生のことを指しますが、実はこれに関係する法律はあり、アルバイトやパートの方への適用についても触れられています。次にそれを紹介しましょう。

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

この法律の第11条には、「事業主は、通常の労働者に対して利用の機会を与える福利厚生施設であって、健康の保持又は業務の円滑な遂行に資するものとして厚生労働省令で定めるものについては、その雇用する短時間労働者に対しても、利用の機会を与えるように配慮しなければならない」とあります。

さらに、この法律の施行規則第5条に、「法第11条の厚生労働省令で定める福利厚生施設は、次に掲げるものとする。一 給食施設 二 休憩室 三 更衣室」とあります。

厚生労働省:短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

つまり、福利厚生として社員食堂や休憩室や更衣室を正社員に提供している場合は、アルバイトやパートの方にも利用の機会を与えるよう配慮しなければならないということです。

別の指針(事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての指針)には、「事業主は、短時間労働者法第8条及び第11条に定めるもののほか、医療、教養、文化、体育、レクリエーション等を目的とした福利厚生施設の利用及び事業主が行うその他の福利厚生の措置についても、短時間労働者の就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮した取扱いをするように努めるものとする」と書かれています。

これは、先に挙げた福利厚生のほか、多種多様な福利厚生を正社員に提供しているのなら、アルバイトやパートの方にも、その勤務状況に応じて相応の利用機会を与えるよう努めなければならない、ということです。

これらのことから、法的な義務ではないとしても、アルバイトやパートの方にも正社員と同じように法定外福利を受ける機会を与えるよう推奨されていることが分かります。

アルバイト・パートの福利厚生が充実している企業

では、実際にアルバイトやパートの方にも、さまざまな福利厚生(法定外福利)を提供している企業はあるのでしょうか? 

ここで、いくつか代表的な企業を紹介しましょう。

セブン-イレブン

セブン-イレブンでは「セブン-イレブン加盟店共済会クラブオフ」という福利厚生サービスが提供されています。

セブン-イレブンでは加盟店のオーナー向けに「加盟店共済制度」を提供し、そこではオーナー自身やその配偶者のほか、加盟店の正社員に万一のことがあった場合の弔慰金、病気やケガの見舞金、将来に備える積立金などの保険商品を用意しています。

そして、オーナーがその保険にどれか1つでも加入している場合、その店舗のすべての従業員は「セブン-イレブン加盟店共済会クラブオフ」が提供する20万種以上のお得な福利厚生メニューを利用できます。

福利厚生メニューには、国内の宿泊施設、ホテル・レストラン、レジャー施設、グルメ、エンターテイメント施設、ショッピング、ライフサポートなど、さまざまな分野のものが用意され、具体的には次のようなものが挙げられます。

  • 全国約700ヵ所の日帰り湯施設最大60%オフ
  • 国内リゾートホテル・ビジネスホテル最大80%オフ
  • レストラン最大50%オフ
  • 全国約700ヵ所以上のレジャー施設最大65%オフ
  • 映画鑑賞1,300円~

宿泊やレジャーを主とした割引サービスがメインとなる福利厚生サービスであり、アルバイトやパートでも使えるというのが大きな特徴となっています。

IKEA(イケア・ジャパン)

イケアでは、平等な賃金、平等な労働条件をモットーとしており、それは福利厚生についても当てはまります。

その考えに基づき、日本のイケア・ジャパンでは短時間労働者(アルバイト・パートなど)も含め、契約勤務時間数にかかわらず、さまざまな年齢層に向けた次のような福利厚生を提供しています。

  • 社会保険
  • イケア生命保険・長期療養保険
  • 企業型確定拠出年金
  • TACK!(イケア従業員向け個人年金制度)
  • 産前産後休業、パタニティー休暇(お父さんのための有給産前産後休暇)
  • 育児休業
  • 子どもの看護休暇
  • 介護休暇・介護休業
  • 食事補助
  • クリスマスプレゼント
  • One IKEA(ワン・イケア)ボーナスプログラム(成果型ボーナスプログラム)

IKEAの福利厚生制度は育児や介護などの分野で手厚い傾向があります。

リンガーハット

「長崎ちゃんぽん リンガーハット」「とんかつ濱かつ」「長崎卓袱浜勝」を運営するリンガーハットでは、アルバイトやパートに対しても、社会保険のほか有給休暇制度を提供しています。

さらに、勤務前後1時間と勤務休憩中は60%オフで食事できるほか、休みの日でもリンガーハットグループの店舗での食事がすべて20%オフになります(1度に5名まで可)。

そのほか、全国の保養施設を格安で利用できるなど、アルバイト・パートも利用できるものとしては非常に充実した福利厚生が提供されます。

アルバイト・パート選びは福利厚生にも注目を

アルバイトやパートを選ぶとき多くの方は、正社員として入りたい会社を選ぶときとは違い、社風や福利厚生よりも時給ばかりを気にしてしまう傾向があります。

しかし、腰を落ち着けて長く働けるバイト先・パート先を探しているなら、福利厚生にも目を向けるべきです。

それは、給料以外のメリットがあるというだけでなく、正社員とアルバイト・パートが区別されず、ともに福利厚生を受けられるような会社は、上下関係がそこまで厳しくない、風通しのいい職場環境であることが多いからです。

そのように、その会社の福利厚生のあり方から社風まで推測できるので、従業員を大切にしてくれる会社を選ぶ上で参考にしてみてください。