アルバイトやパートでフルタイム勤務と同じくらい働いている方は、勤務先の福利厚生を受けられるか気になるでしょう。

実は福利厚生の中には雇用形態に関係なく受けられるものがあるのを知っていますか。

ここではアルバイトとパートの方が受けられる福利厚生と受けるための条件、企業独自の福利厚生についてまとめてみました。

福利厚生とは

福利厚生については厚生労働省は下記のように定義をしています。

勤労者財産形成促進法(昭和46年法律第92号)第9条において、福利厚生会社とは、「事業主又は事業主団体が、専ら、その雇用する勤労者又はその構成員である事業主の雇用する勤労者の福祉を増進するため、その持家としての住宅の建設又は購入のための資金の貸付けをさせる目的で出資する法人」

福利厚生会社の登録制度-厚生労働省

このことから、福利厚生とは企業(事業主)が従業員の経済生活や心身の安定を維持するために支給される給料以外の報酬や提供されるサービスを表します。

また、厚生労働省「平成28年度就労条件総合調査の概況」を見ると、福利厚生は「法定福利」「法定外福利」に分かれることが分かります。

法定福利とは法律で義務付けられた福利厚生制度で、「厚生年金保険料」「健康保険料・介護保険料」「労働保険料」などの一部、または、全額を企業が負担します。

法定外福利とは法律で義務付けられていない福利厚生関係の費用やサービスを提供することで、家賃補助や社宅、医療保険に関する費用や社員食堂の提供などが該当します。

参考:平成28年就労条件総合調査の概況-厚生労働省

アルバイト・パートが受けられる福利厚生について

福利厚生のうち法定外福利は会社独自のものなので、アルバイトやパートの方が受けられるか否かは会社によって異なります。

法定福利は法律で義務付けられたものなので、条件を満たせばアルバイトやパートの方も原則受けることが可能です。

求人情報に「各種保険完備」と書かれている会社は下記で紹介する「健康保険」「厚生年金保険」「雇用保険」「労災保険」に加入していて従業員に適用されることを意味しているので、安心して働くため、また、病気やケガや出産などで働けなくなった場合のために、働く会社にどのような制度があるかチェックしておくことをおすすめします。

アルバイトやパートも受けられる法定福利の内容と条件を確認しましょう。

社会保険

社会保険とは会社などに雇用されて働く方を被保険者の対象とした、「健康保険」「厚生年金保険」のことです。

健康保険は、労働者やその家族が病気やケガ、出産や亡くなった時などに、必要な医療給付や手当金の支給で生活の安定を図る社会保険制度です。

病院で健康保険証を提示すると窓口負担が治療費の3割となるのは、健康保険に加入しているためです。

厚生年金保険は労働者が高齢となったり病気やケガをしたりして働けなくなった場合や、世帯主を亡くした家族の生活を困窮させないために保険給付を行い、労働者の生活の安定と福祉の向上への貢献を目的とした制度です。

社会保険は下記の2点矯正適用されて適用事業所で働く労働者は加入者となります。

  1. 国、地方公共団体、または、法人の事業所
  2. 一定の業種(製造業、土木建築業、鉱業、電気ガス事業、運送業、清掃業、物品販売業、金融保険業、保管賃貸業、媒介周旋業、集金案内広告業、教育研究調査業、医療保険業、通信保険業など)の常時5人以上を雇用する個人事業所

アルバイトやパート、派遣社員や契約社員でも1日または1週間の労働時間、および、1ヶ月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上であれば加入させなくてはなりません。

2ヶ月以内の期間を定めて働く臨時職員などは対象外です。保険料は会社と労働者が半々で負担します。

アルバイトやパートなどで所定労働時間、および、労働日数が通常労働者の4分の3未満であっても、下記の5要件全てを満たす方は被保険者となることが可能です。

所定労働時間、および、労働日数が通常労働者の4分の3未満の被保険者の条件

  1. 週の所定労働時間が20時間以上
  2. 雇用期間1年以上の見込み
  3. 賃金の月額が8.8万円以上
  4. 学生ではないこと
  5. 従業員規模501人以上の企業

平成29年4月1日から、上記①~④を満たす従業員規模500人以下の民間企業は、労使合意(働いている方2分の1以上と事業主の方が社会保険の加入に同意すること)がなされれば、社会保険への加入が可能となりました。

加入するには、事業主の方が管轄の年金事務所に労基合意を行っている旨の同意書を添えて申し出する必要があります。

健康保険組合に加入している企業は、健康保険組合への申し出も必要です。年金事務所などが事業主からの申し出を受理した日に、アルバイトやパートなどの短時間労働者の方は被保険者となります。

雇用保険

雇用保険とは、労働者が失業した場合に失業等給付で生活の安定と就職の促進を図る保険制度です。

企業規模に関係なく、1週間の所定労働時間が20時間以上で31日以上の雇用見込みのある方であれば、アルバイト、パート、派遣社員、契約社員にも適用されます。

企業は雇用保険制度に加入する義務があるので、労働者はハローワークに自信が適用対象か問い合わせることが可能です。保険料は会社と労働者双方で負担する形になります。

雇用保険に加入していれば、失業してしまった場合は基本手当を受けることができるので雇用保険に入っているかどうかはいざという時に大きく状況を左右する要素となるのです。

基本手当は会社を辞めた日以前の2年間に11日以上働いた月が12ヶ月以上あることが給付の条件ですが、会社の倒産や会社都合による解雇や有期労働契約が更新されなかったといった理由による退職の場合、辞めた日以前の1年間に11日以上働いた月が6ヶ月以上あれば基本手当を受けられます。

ハローワークに求職申し込みをして離職票(労働者が会社を辞める際に会社に発行義務があるもの)が受理された日以後、失業の状態にあった日が通算7日間経過した後に給付が始まりますが、自己都合の退職や自身の責任による重大な理由で解雇された場合の給付日はさらに3ヶ月後となります。

失業理由が会社都合によるものか自己都合によるものかによって、給付開始日が異なるだけではなく給付期間も異なります。

会社都合で退職したにもかかわらず自己都合による退職扱いにしてしまうと、基本手当の給付で不利になるので、会社から離職票を受け取ったら必ず退職理由を確認し、理由が異なる場合は会社に申し立てましょう。

労働基準法第22条で労働者が解雇を予告された日から退職までの間に退職や解雇の際に使用期間や退職・解雇の事由などの証明書を会社に請求した場合、会社側は退職日までに交付しなければならないことが定められているので、退職や解雇の理由を確認するために証明書の交付を依頼しておくこともおすすめです。

ハローワークでは各種手続きの他、手当についての問い合わせにも対応しているので、疑問点等あればハローワークに相談してみてください。

労災保険

労災保険とは、労働者が業務を原因とした病気やケガ、通勤途中の事故や業務災害による死亡などの場合に会社に代わり国が補償や給付を行う公的制度です。

会社に余裕がない時や大規模な労働災害が起きた場合など、会社側の支払いが難しい可能性がある時でも、労働者と家族が補償を確実に受けられるために制度があります。

労働基準法第75条と76条で、労働者が仕事で病気やケガをした場合、会社は療養費と働けない期間の休業補償、第79条と80条で労働者が死亡した場合は会社が遺族に平均賃金1,000日分の遺族補償、葬祭を行う方に対して平均賃金60日分の葬祭料の支払いが義務付けられています。

労災保険は基本的に労働者を1人でも雇用する会社に適用され、保険料は全て会社が負担します。

雇用形態に関係なく全ての労働者が給付対象で、会社が加入手続きをしていなくても給付を受けることができます。各種受け付けは労働基準監督署が行います。

参考:知って役立つ労働法-厚生労働省

アルバイトやパートの方にも福利厚生を手厚くしている企業

法定福利は法律で義務付けられた制度なので、条件を満たせばアルバイトやパートでも受けることができ、労災保険に至っては全ての労働者が受けられます。

一方、法定外福利は会社独自のものなので、アルバイトやパートの方は利用できないこともあります。

しかし、アルバイト・パートの方にも充実した法定外福利を設けている企業はあります。

そこで、アルバイトやパートの方でも法定外福利を受けられる企業を3社取り上げて制度の内容を見ていきましょう。

セブンイレブン

セブンイレブンではセブンイレブン加盟店共済会クラブオフという福利厚生サービスを設けています。

セブンイレブン加盟店共済会クラブオフとは、セブンイレブン加盟店共済会の保険に1つでも加入している店舗で働く全ての従業員が利用できるサービスで、サービスの種類は多岐にわたります。

たとえば全国の日帰り温泉施設や国内外ホテル、レストランやデリバリー、レジャー施設やスポーツジムの利用料金に割引が適用される、映画館やプレイガイドのチケットを特別価格で購入できるといったサービスを利用できます。

IKEA

イケア・ジャパンでは契約勤務時間数に関係なく、全ての労働者が様々なライフステージに合う福利厚生を受けられます。

社会保険、イケア生命保険・長期療養保険、企業型確定拠出年金に加え、労働者個人の年金への拠出金として積み立てを行うイケア独自の個人年金制度「Tack! 」など、保険制度が充実しているので安心して働けます。

イケアの福利厚生は様々な休業・休暇制度があるのが特長です。

所定休日、有給休暇、慶弔休暇、産前産後休業、育児休業はもちろん、父親のために有給の産前産後休暇「パタニティー休暇」があります。

介護休暇、介護休業、子の看護休暇も設けられているので、家族の介護や看護がある方にも働きやすい環境が整っています。休暇制度として私傷病休暇やボランティア休暇もあります。

その他には時短勤務制度、社員割引制度、食事補助、クリスマスプレゼントといった制度を利用できます。

株式会社リンガーハット

リンガーハットでは社会保険はもちろん、有給休暇制度も整えられています。

勤務時間前後1時間と休憩中には60%割引で、休みの日にはリンガーハットグループ店舗で1度に5名まで20%割引で食事ができます。

飲食店では福利厚生として店舗のメニューやまかないをお得に利用できることは多いですが、リンガーハットでは食事がお得になることに加えて、全国の保養施設を特別価格で利用可能という制度も設けています。

アルバイトやパートでも受けられる福利厚生は多い

福利厚生は法律で義務付けられた「法定福利」と会社独自の「法定外福利」に分かれますが、法定福利は条件を満たせばアルバイトやパートでも受けられることはもちろん、労災保険のように全ての労働者が受けられるものもあります。

法定外福利は休業・休暇制度の他に、全国の宿泊施設やエンタメ施設をお得に利用できる、自社製品に割引が適用されるなど、会社ごとに様々な制度を設けています。

今回紹介した企業以外にも、雇用形態に関係なく法定外福利を受けられる企業はいくつもあります。

法定福利を受けられると安心して働くことができ、法定外福利を受けられると働きやすい職場で仕事ができる、家族のための時間を確保できる、趣味やレジャー費用を抑えながらプライベートを充実させられるといった満足感を得られます。

働きがいのある職場でアルバイトやパートをするのであれば、福利厚生の適用範囲の広さもチェックすると良いでしょう。