就職後3年以内での離職率の全体平均は15%程度ですが、証券業界の離職率30%を超えています。それだけ、つらい仕事であるといえます。
その理由と、今後のキャリアプランについて一緒に考えていきましょう。
証券会社がつらいといわれる理由
証券会社の離職率が高いのは、ブラック企業で残業が多く長く働くからであるというイメージがあるかもしれませんが、そうではありません。
残業はあっても2時間程度で、週に1回はNo残業Dayを設けている会社も多く、他業界に比べて比較的早く帰ることができます。
また、就業時間中も外交中は特に拘束されることはなく休憩していたとしても、とがめられることはありません。さらに、休暇が長いです。病気や介護、子どもの病気などの理由で随時いつでも休みを取ることができ、その他に1週間土日含めて9日の休みを年2回とることができます。
自分の好きなときに長い休みを取ることはできるので、旅行好きな人であれば価格帯が安い時期に海外旅行に行くことができたり、子どもがいる場合には夏休みや冬休みに長期休暇をとることができます。
制度というだけで実際とりにくいのではと思うかもしれませんが、実際に取得することが可能であり管理職であってもとることができます。仕事は営業なら休み中に仕事することはできませんし、事務作業も基本会社内のシステムでしかできないため、休暇中に仕事を持ち帰ることはなく完全に休むことができます。
このように働く環境としてはすばらしいといえるのですが、その一方で精神的プレッシャーが大きいことがつらいといわれる所以です。
以下の9つが主な理由となっています。
毎月営業目標がある
営業員一人ひとりに営業目標が与えられます。その目標は、収益と預かり資産純増高です。
収益は、株式の取引時、投資信託や債券の販売時に計上されます。
手数料が高いのは、投資信託や仕組債、外国株式、信用取引です。国内株式は手数料が低いものの、頻繁に売買すれば手数料が高くなります。債券は非常に手数料が低くなっています。手数料が高いからといって、投資信託や仕組債ばかりを取引をしているわけにはいきません。
手数料の他に、売らなければならない商品があります。
それは、投資信託新商品と債券、IPO(新規上場株式)です。これらは、募集期間が決められており、期日までに売る必要があります。特に、債券とIPOは売り切らなければならないため、キャンセルが出ればそれを補う必要もでてきます。
めったに遅くまで残業することはありませんが、このような売り切らなければならない商品があるときは残業することがあります。
それでも顧客に迷惑になるので夜中まで残業することはありませんが、その売り切らなければならないというプレッシャーは相当なものとなります。これが、毎月末あるのです。自分の営業目標を達成できたとしても、課や支店の営業目標が達成できていないと、やはりこのプレッシャーは続くものとなります。
最近では顧客の利益を優先するため、収益目標だけでなく、預かり資産の純増加額の目標に重きを置いている証券会社もあります。
収益は、株式を売買するだけでも得られますが、預かり資産増加は新たな資金を預けてもらわなければならず、さらに顧客が入り用で出金してしまえば純増額が減ってしまうという、目標達成の難しさがあります。
収益で同期に負けた
収益や預かり資産純増額は目に見えて数字で提示されるので、ごまかしがききません。評価があまりにも客観的に示されるので、数字が高いと明らかに周りの見る目が変わります。逆に数字が悪いと肩身が狭くなります。
顧客に損をさせることがある
証券会社では価格変動のある金融商品を扱っています。そのリスクを理解してもらった上顧客には金融商品に投資してもらいますが、将来絶対値上がりすると考えおすすめしますが、その通りになるとは限りません。
株式は特に価格変動が大きくさらに信用取引であれば追証も発生する可能性があります。今はネット証券で取引することが増えていますが、証券会社の営業店で取引する人は比較的大きな資金で取引するため、その分損益も大きくなり、申し訳ない気持ちになったり、お叱りを受けたりすることがあります。
最悪訴えられることもあります。顧客との信頼関係を築いていても、損をすればたちまち崩れるわけですから、日頃からきちんと理解してもらえるまでリスクを説明しているかどうかが問われます。
仕事ができても会社の業績が悪いとボーナスが出ない
証券会社では、営業は個人で行うものの1人で仕事をしているわけではありません。
証券投資の参考になるレポートを作成するアナリスト、管理を行う管理業務、窓口や電話対応してくれる事務など様々な職種に支えられています。そのため、収益をどんなに500~1,000万円毎月上げても自分にはほとんど入ってこず、自分のボーナスに反映されるのは一部となります。
また、証券会社の営業職はその精神的負担が大きくても他の業界よりも年収が高いのが特徴ですが、日経平均が下がっているときは顧客の取引も低調になることで会社の業績が悪くなり、最悪ボーナスがないこともあります。
飲み会が多い
その精神的なストレスの大きさからか、飲み会が多い傾向にあります。
証券会社は基本的には転勤者が多いので単身赴任している人も多いので、飲み会やごはんを食べに行くという誘いが多いです。
また、転勤制度により異動が多いので3、4月は歓送迎会が頻繁にあります。そのため、年収は比較的高いもののその割には飲み代や食事代にたくさん使ってしまったり、酒量が多いことで病気になる人も多いです。
勉強することが多い
証券会社では、入社前からずっと資格取得に追われます。
まず、「証券外務員Ⅰ種・Ⅱ種」をとり、その次に「生保一般課程試験(生保募集人試験)」「専門課程」「変額保険販売資格」「外貨建保険販売資格」を取得します。
必須資格はこれだけで、必須資格を取るまでは商品販売もできないため、基本は定時退社することができ、これらの資格の取得はそんなに難しくありません。
その後、管理職を目指すなら「内部管理責任者」をとります。任意ですが、AFP、CFP、CMAをとりますが、証券外務員とは比にならないほどの勉強量が必要で、本格的に仕事が始まるので勉強時間を確保するのが難しくなります。
これ以外にも、毎日モーサテ(経済ニュース)、日経新聞の購読、アナリストレポートの読み込みが必要になってきます。
常に勉強はつきまとうので、勉強が苦手な人は苦痛になるかもしれません。
朝が早い
就業時間は早く残業も少ないのですが、証券会社の朝は早いです。
まず、始業時間が8:00台であることがほとんどです。証券会社で働くと、まず5:45から始まるモーサテをみて前日の米国市場の相場状況を確認し、その後日経新聞を確認し出社します。
出社は7:30~8:00で、8:00すぎから朝の会議でコンプライアンスや営業目標に関する事項を確認します。
8:30~45から寄付(9:00の証券取引所で株価が約定したときの値)前の板寄が始まるので、その板寄の価格を見て顧客に連絡し、場合によっては注文をとります。
このように、証券取引所の始まる前8:45には顧客に連絡しなければならず、それ以降は電話連絡や外交で営業員はいないことが多いのでその前の会議があるため、必然と朝が早くなります。
朝早く起きるのが苦手な人はつらいかもしれません。
上司の圧がすごい
課長は支店長から支店長は本部から営業目標の達成を求められています。その分、今度は営業員にも毎週、月末には毎日営業目標を達成できるかどうか詰められます。
昔は、物がとんできたり、物が蹴られたりととんでもないパワハラがありましたが、現在はあまりないでしょうがその圧力は他業種では見られないほどすごいものがあります。
転勤がある
証券会社には転勤があり3~5年で異動しなければなりません。しかも、異動命令が引越ししなければならない1~2週間前と突然であることが多く、引越し作業、それに伴う事務手続は大変です。
また、家族がいれば単身赴任になるか、一緒に異動するとしてもついていく家族も大変です。
仕事の辛さを和らげるためにしたいこと
同期と飲みに行く
コロナ禍において飲みに行くのは控えなければならない状況ですが、電話やZOOM飲み会などの方法で一緒におしゃべりを楽しむのもいいでしょう。
証券会社では、金融知識や金融機関としてのマナーを学ぶために何度か研修があります。
そのような研修で同期と会うことができ、仲良くなることができます。同期は気を遣わない上に、みんな同じことで悩みを抱えているはずです。一緒に話すことで、解決にはならないかもしれませんが気が紛れることもあります。
つらい状況にある仲間は結束力が強く、やめても良い友情関係が続くこともあります。
職種を変えてもらう
証券会社には様々な職種があります。どうしても営業は厳しいと感じるのであれば、窓口業務、コールセンター、管理業務などの職種変更も可能です。希望が通るかどうかはその職種の空き状況によりますが、希望を出してみましょう。
逆にすごい頑張る
頑張って結果がでなくても、3ヶ月~半年後に結果がでることもあります。
証券会社は日々のプレッシャーはつらいものの、結果がでたときの喜びは忘れられないものとなりますし、結果を出せば周りの見る目が変わったり、褒められたり、本部から表彰されたりします。何も考えず無心で頑張るのもありです。
頑張るのをやめる
証券会社は正社員なら基本的に辞めさせられることはありません。
営業成績を追うことで昇進できることはいうまでもありませんが、そういったプレッシャーから目をそらして、営業成績を達成しなくても自分のペースで仕事に向き合うのも手です。頑張りすぎず周りのプレッシャーからの鈍感力も重要な能力です。
休暇でおもいっきりリフレッシュする
証券会社の休暇は長いです。海外旅行、ゲーム、買物など仕事を忘れて思いっきりリフレッシュしましょう。
このご時世ということもあり、遠出は難しいかもしれませんが、近場を開拓してみるのも楽しみ方の1つではないでしょうか。
将来仕事をやめる計画をたててしまう
証券会社の営業は、外交があるため仕事中も自由がきくのが特徴です。さぼっていてもわからないというのが実情です。
ある程度の営業成績を上げて、それ以外は仕事中将来のための資格取得勉強に打ち込んでしまうという方法もあります。
ただ、見つかってしまうと何らかの処分をされてしまう可能性もあります。
どうしても辛いなら転職を検討しよう
証券会社をやめても資格のおかげで再就職には困らない
証券会社で取得する「証券外務員一種」「証券外務員二種」は、銀行等で投資信託などの金融商品を販売する場合に役立ちます。
また、「生保一般課程試験(生保募集人試験)」「専門課程」は、銀行や保険会社に転職する場合に役立ちます。これら2つは、離職後2年以内に生命保険募集人登録を行えば復活できます。一方、「変額保険販売資格」「外貨建保険販売資格」は引き継げず再度講習と試験を受けなければなりません。
また、FP、CFP、CMA資格は金融関係に転職するなら、転職に有利な資格です。
このように、金融関係への転職なら証券会社で取得した資格は大いに役立ちます。
新卒ではエントリーをしなかった運用会社、信託銀行、独立系FP事務所、保険相談窓口などに目を向けてみるのもありでしょう。
また、金融機関以外での転職でも、証券会社で培われた営業としての高いコミュニケーション能力の高さや丁寧な言葉遣いや姿勢は、他の業界でも必ず高く評価されるはずです。
他の業界は楽に感じるはず
証券会社を早くやめてしまうことで、会社員として自信をなくしてしまうこともあるかもしれません。証券会社の営業成績に対する精神的プレッシャーは、特殊で他の業界の比ではありません。
他の業界で就職したらとても楽に感じるはずです。
他業界をリサーチしてみることも、一つの手ではないでしょうか。