大手銀行と証券会社はどっちがいいの?年収・働きやすさ・転職のしやすさで比較同じ金融関係に属する銀行と証券会社ですが、顧客に金融商品を販売するという点では共通します。

転職する際に同じ金融業界で銀行か証券にするか迷うこともあるのではないでしょうか。

ここでは大手銀行と証券会社への就職、転職を考えている方に向け、その違いをまとめてみました。

銀行と証券会社の仕事内容の違い

銀行と証券会社の仕事内容の違い銀行と証券会社の業務の大きな違いは、間接金融か直接金融かという点です。

銀行は預金者が預けてくれた資金を利用して、個人や企業等に貸出し、預金金利と貸出金利の利ざやを収益とします。

このように、銀行に預けられた預金が間接的に貸出されることを間接金融といいます。借りた企業は、その借入金を必ず返済する義務が生じ、借りている間は利息を支払います。

一方、直接金融は資金需要のある企業が直接市場から資金を集めることをいいます。

株式発行や債券発行をいい、この業務は証券会社にしか行えません。債券は満期までに返済する義務が銀行からの借入金同様生じますが、株式は返済義務がなく、支払利息も発生しません。

そして、企業はその資金に返済義務がないことから資本金として、会社の純資産とすることができます。

株式を発行して広く資金を集めるには、企業の信用力や将来収益が伸びる見込がないと難しいですが、返済義務がないことから海外進出など大きな新規事業を行うために必要な資金を確保する方法として最適です。

また、企業規模が大きくなれば上場してさらに大きな資金を集め、大きな事業を始めることが可能になります。

上記のような企業に必要な資金を提供する方法には銀行と証券で異なりますが、一方で個人や法人に余裕資金の資産運用方法を提案するという点では銀行も証券も共通しています。

銀行、証券会社において、顧客の余裕資金の資産運用の際に、投資信託や債券などの金融商品の提案を行います。

ただし、株式や仕組債などのリスクの高い金融商品が提案できるのは証券会社のみとなります。銀行にグループ会社として証券会社がある場合には、顧客に同意してもらった上協同で提案することもあります。

銀行の主な業務

  1. 窓口業務
    顧客の預金の入出金、振込、両替、公金納付などの手続を行います。証券会社は現金は一切扱わないため、この業務はありません。窓口の営業時間終了後現金と残高の一致確認作業を行い、1円でも過不足がないか確認します。最近ではオペレーション化がすすみ、この確認作業はなくなっていくかもしれません。
  2. 事務職
    窓口業務の支援を行います。手続確認作業、両替・送金作業等を行います。証券会社では、この業務はありません。似た職種に管理職がありますが、業務内容は異なっています。証券会社では、株式取引等の取引確認は営業同士で行います。
  3. アドバイザリー業務
    証券会社と共通する職種で、顧客に資産運用の提案を行います。法人部門であれば、シンジケートローンなどの大規模な貸出、M&Aなどまで提案します。
  4. アナリスト職
    銘柄分析やマーケット分析を行い。営業職や顧客の投資判断に参考となる資料を提供します。
  5. ディーラー職
    会社の大きな資金を使って、先物取引や裁定取引を行います。自社の営業外損益を左右する大きな利益を追求します。
  6. コールセンター
    手続にかかわる質問に答えます。

証券会社の主な仕事

証券会社の仕事は、主に顧客が株式取引をするときに証券取引所との取次ぎをすることです。

その他に、投資信託、債券などの金融商品の提案も行いますが、銀行でもこのような金融商品の提案は行われています。

また、企業の資金調達として株式を発行、上場させる業務、さらにその上場した株式を営業部門で販売する業務もあります。

そして、発行した株式を使って株式交換による企業買収を行うお手伝いをすることもあります。銀行と協同で行うこともありますが、株式の取次ぎができるのが証券会社であるため必ず証券会社が必要となります。

証券会社には、株式をはじめ資産運用、資金調達のための新規株式上場など多岐にわたる仕事がありますが、証券会社の大部分を占めるのが個人・法人向けの営業です。

次に多いのが営業をサポート、管理する事務職、ごく一部に個別企業の分析、為替、経済分析を行うアナリスト職、会社資金を使って運用するディーラー職があります。

  1. 営業職
    主に、法人または個人に顧客のニーズに合わせて株式、投資信託、債券などの金融商品を提案、取引の発注をします。法人営業では、金融商品の提案だけではなく、M&AやIPO(新規株式公開)などの提案やアドバイスをする部署もあります。
  2. 事務職
    営業職のサポートとして、注文に誤りがないかや適正なコンプライアンスのもと提案されているかどうか管理します。ときには、顧客と営業職の通話記録や提案経過などを見て、不適切な部分があれば営業職に指摘、改善を求めることもあります。
  3. アナリスト職
    銘柄分析やマーケット分析を行い。営業職や顧客の投資判断に参考となる資料を提供します。
  4. ディーラー職
    会社の大きな資金を使って、先物取引や裁定取引を行います。自社の営業外損益を左右する大きな利益を追求します。
  5. コールセンター
    証券取引や手続にかかわる質問に答えたり、取引を取り次いだりする仕事です。ほとんどが外務員資格を持つ派遣社員の方が担っています。

入社のイメージとして、銀行の方が難しく、証券会社の方が就職しやすいように感じます。

これは、証券会社が大量採用、大量離職しているからだと考えられます。証券会社の離職率は30%超となっており、離職を見越して大量採用されています。

また、2021年卒就職企業人気ランキング(日経新聞・マイナビ2022)によれば大手銀行は、21位に三菱UFJ銀行、35位三井住友銀行と50位以内にランクインしていますが、証券では証券業界TOPの野村證券がやっと57位にランクインしているという状態で、証券会社に比べると銀行の方が人気が高くなっています。

仕事内容は重なる部分はある両者ですが、人気は銀行の方が上で、精神的負担も銀行のが軽いといえます。

部門により異なりディーラーならどちらも精神的負担は相当なものですが、同じ営業となると証券会社の方が営業目標に対するプレッシャーが大きくなっています。

また、銀行はもともと信頼性が高い上、預金者の資産金額を知っている上で提案することができます。

一方、証券会社はもともと訪れる機会が少なく信頼性は銀行より劣り、グループ銀行があったとしても銀行にいくら残高があるのか知ることはできないため、その上で提案しなければならないという不利な位置にいます。

その一方で、その不利な状況から顧客の信頼を得る高いコミュニケーションとバイタリティ、強固なメンタルを身に付けることができます。

また、証券会社にしかできない株式取引により、常に株式相場や為替相場の情報が飛び交う環境から誰でも高い相場観を身に付けることができます。これは、離職しても仕事だけではなく、個人の資産運用においても役立つスキルになります。

銀行と証券会社の平均年収はどのくらい違う?

銀行と証券会社の平均年収はどのくらい違う?

金融業界は、業種別の平均年収でみるとメーカーに次いで第2位の年収の高さで、平均年収は448万円です。

男女別にみると、男性が540万円に対して女性は370万円の平均年収となっています。

女性では業界別で見ると第1位の年収の高さです。金融業は他の業界に比べて、職場でも女性の比率が多く役職に就く女性が多数います。

また、女性の比率が高いことから、平等に評価され、仕事もしやすい環境にあることから、業界TOPの年収の高さになっていると考えられます。

金融業の中では、証券会社の平均年収がは531万円、都市銀行が507万円となっています。
証券会社のが年収が高くなっていますが、証券会社の年収は株式市場の相場に大きく左右されます。

現在のような日経平均が高値圏で推移しているような市況が良いときは顧客の株式取引等が活発となり手数料収入が増えるため、会社の業績も良くボーナスが高いため、銀行より年収は高くなります。

ただ、逆に不景気となると、どんなに個人で営業成績が良くても会社の業績が減益、赤字となり、ボーナスが非常に少なくなります。

このように、証券会社は年収が日経平均と同じように変動し、日経平均が高いときは銀行をも超す年収となりますが、日経平均が低いと年収は減り銀行より少なくなります。一方で、銀行は証券会社に比べると比較的安定した年収となります。

(参考:dodaエージェントサービスに登録した人のデータ)
【96の業種別】平均年収ランキング 最新版 |転職ならdoda(デューダ)

銀行と証券会社の離職率をチェック

銀行と証券会社の離職率をチェック銀行の離職率(3年以内に離職する率)は、メガバンクで10%弱程度、地方銀行で10%超となっています。
離職率の全体平均が約15%となっているとから、低い離職率であるといえます。

一方、証券会社の離職率は30%程度で、銀行、全体と比べても非常に高い離職率であるといえます。
やはり、営業成績の高い精神的プレッシャー、上司から営業目標に達成するよう求められる圧力など証券会社特有の仕事のきつさから離職率が高いと考えられます。

銀行から証券会社、証券会社から銀行への転職について

銀行から証券会社、証券会社から銀行への転職について

銀行→証券会社

銀行で取得する「証券外務員一種」「証券外務員二種」「生保一般課程試験(生保募集人試験)」「専門課程」を証券会社でも活用できます。

ただし、保険関係の資格である「生保一般課程試験(生保募集人試験)」「専門課程」は離職後2年以内に生命保険募集人登録を行わないと失効します。なお、「変額保険販売資格」「外貨建保険販売資格」は引き継げず再度講習と試験を受けなければなりません。

なお、銀行特有の資格や「損保一般試験(損保保険募集人試験)」は、証券会社では使うことがありません。

証券会社において、FP、CFP資格、証券アナリストは有利な資格となります。

証券会社→銀行

証券会社に入社すると入社前と入社後半年は資格を取り続けます。「証券外務員一種」「証券外務員二種」は、銀行でも継続して使えます。

また、「生保一般課程試験(生保募集人試験)」「専門課程」も銀行で使うことができますが、離職後2年以内に生命保険募集人登録を行わないと失効します。なお、「変額保険販売資格」「外貨建保険販売資格」は引き継げず再度講習と試験を受けなければなりません。

また、証券会社では扱っていないこも多い「損保一般試験(損保保険募集人試験)」の取得も必要になります。

さらに、銀行員特有の銀行業務検定法務、銀行業務検定財務などの銀行特有の資格を取得する必要があります。

また、FP、CFP資格、証券アナリスト、簿記2級は銀行に転職するときに有利な資格となります。

証券会社から銀行への転職は、メガバンクの場合難しいかもしれませんが証券会社で培われた専門性とコミュニケーションスキルは銀行でも役立ちます。

銀行をグループに持つ証券会社は、証券会社から銀行へ出向することができます。銀行では顧客の資産運用として、金融商品の販売に力を入れており、金融商品に対して専門的な知識を持つ証券会社職員が出向することがあります。

逆に、銀行から証券会社に一般社員が出向することはあまりなく、銀行幹部職が証券会社役員などの役職につくことはあります。

結局大手銀行と証券会社どちらが良いの?

結局大手銀行と証券会社どちらが良いの?どちらとも金融に関する専門的な資格が必要となり、金融商品を販売し、厳しい営業目標があるという点では共通しています。

しかしながら、銀行は年収が安定的で、証券会社に比べれば精神的プレッシャー少ないものと考えられます。

一方、証券会社は年収が大きく変動するものの銀行より高い年収を狙えることもあります。その反面精神的なプレッシャーは銀行に比ではなく離職率が高くなっており、精神的なタフさが求められます。

自分の性格はどちらに向いているか、よく自己分析をした上で就職を決めましょう。

銀行も証券会社も資格取得に対する費用負担、合格後報奨金があるなど資格取得制度が充実しており、離職後もその資格を生かせることからもし離職したとしても人生の糧になるでしょう。