残業150時間超えの実情とそのブラック企業で働き続けた人の体験談

あなたは最大でどれくらいの残業をしたことがありますか?

まともな会社であれば、めったなことがない限り100時間、いや50時間を超える残業ですらさせるようなことはありません。

ただいわゆるブラック企業と呼ばれる会社だと、労働者の健康なんて無視で100時間超えは当たり前。それどころか150時間を超えるような残業をさせているよう場合もあるのが現実です。

もしあなたがそれほど多くの残業をせざるをえなくなっているなら、すぐに転職しなくてはなりません。

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残業150時間の実情、労働基準法的にはどうなの?

残業150時間の実情、労働基準法的にはどうなの?

今回着目するのは残業150時間。その実情について、まずは法律等の観点から見ていきましょう。

残業150時間の働き方

まずは残業150時間の働き方はどんな風になるのか見てみましょう。

月8日休みで稼働日数が22日とした場合、1日平均6.8時間。毎日6~7時間程度残業することになります。

所定労働時間が9時から18時とした場合、仕事が終わるのは24時から25時。そんな毎日が続くのですから相当異常であることは容易にわかります。

1日8時間の休日出勤を4日続けた場合だと、平日の残業時間は5.4時間程度。毎日5~6時間程度に抑えることができます。

ただそれでも仕事が終わるのは23時から24時。さらに週に1回しか休みがなくなるので、異常なまでにしんどいことには変わりありません。

労働基準法上の問題は?

このように残業150時間もしていれば、プライベートの時間なんてほぼなく睡眠時間も少なくなる為、まともな生活なんてできません。

では、こんなまともではない働き方は、法律上どうなっているのでしょうか。

今までの法律

今までの法律では、この異常な残業時間でも即座に違法とはなりませんでした。

まず残業をさせる為には労働基準法第36条の元、労使間で36協定を結ばなくてはなりません。

第36条  
  1. 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第32条から第32条の5まで若しくは第40条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。ただし、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、一日について二時間を超えてはならない。
  2. 厚生労働大臣は、労働時間の延長を適正なものとするため、前項の協定で定める労働時間の延長の限度その他の必要な事項について、労働者の福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して基準を定めることができる。
  3. 第1項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者は、当該協定で労働時間の延長を定めるに当たり、当該協定の内容が前項の基準に適合したものとなるようにしなければならない。
  4. 政官庁は、第2項の基準に関し、第1項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者に対し、必要な助言及び指導を行うことができる。

ただ通常の36協定を結んだだけでは、残業の上限は1ヶ月45時間、1年間360時間まで。

しかし、以下を記載した特別条項付きの36協定を結べば、この上限を超えても問題なかったのです。

  • 原則としての延長時間(限度時間以内の時間)
  • 限度時間を超えて時間外労働を行わせなければならない特別の事情
  • 一定期間途中で特別の事情が生じ、原則としての延長時間を延長する場合に労使がとる手続
  • 限度時間を超える一定の時間
  • 限度時間を超えることができる回数

あらかじめ150時間でも残業は可能としていれば、おかしな残業時間でも労働者にさせられました。

参考:厚生労働省「時間外労働の限度に関する基準

法改正後

2018年に可決された働き方改革関連法案によって、残業の上限時間は以下のように定められました。

  • 原則月45時間かつ年360時間
  • 繁忙期は100時間未満(休日出勤を含む)
  • 2~6ヶ月の平均で80時間以内
  • 年720時間以内(休日出勤を含まない)

これは大企業に対しては2019年4月、中小企業に対しては2020年4月に施行されました(自動車運転業務、建設事業、医師等は5年の猶予期間有)。

すなわち、これまで合法的に残業150時間超えをさせていた企業も、法改正によってできなくなったわけです。

参考:厚生労働省「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案の概要

残業150時間行った場合の残業代

ここで残業を150時間行った場合の残業代について参考までに計算してみましょう。

前提条件は以下の通りにします。

  • 所定労働時間8時間、月間勤務日数22日
  • 深夜勤務(22時から5時)が60時間(割増25%)
  • 割増賃金は60時間まで25%、60時間を超えた分は50%(※1)

※1:1ヶ月の時間外労働を超えた場合、割増賃金は1.5倍以上にしなくてはなりませんが、中小企業では現在これが猶予されており、通常の1.25倍でもOKとなっています。ただし2019年4月から中小企業の猶予措置が廃止されます。

基本給20万円の場合

まずは基本給が20万円とした場合。

所定労働時間、月間勤務日数から1時間あたりの賃金を計算すると1,136.4円となり、それぞれの手当は以下の通りになります。

  • 60時間までの残業代:85,230円
  • 60時間超え分の残業代:153,414円
  • 深夜勤務手当:17,046円

合計すると255,690円になります。

基本給30万円の場合

次に基本給が30万円とした場合。

所定労働時間、月間勤務日数から1時間あたりの賃金を計算すると1704.5円となり、それぞれの手当は以下の通りになります。

  • 60時間までの残業代:127,837円
  • 60時間超え分の残業代:230,107円
  • 深夜勤務手当:25,567円

合計すると383,511円になります。

基本給のおよそ1.28倍

基本給20万円で255.690円、基本給30万円で383,511円の手当。

およそ基本給のおよそ1.28倍となります。

基本給が40万円だとざっと51万円にもなりますね。

手当だけで基本給を上回り、相当な高給となるはずです。

サービス残業となる場合が多い

ただ残念ながら、残業を150時間やっていてもそこまで給料は高くないという人は多いです。

なぜならその残業のほとんどがサービス残業となっているせい。

残業代がつくのは30時間までという謎の上限が設定されていたり、ひどい会社だと全く残業代を貰えないという場合もあります。

もちろん全ての会社がそういうわけではありません。

ただ労働者の生活・健康なんて無視しているわけですから、残業代も出さないブラック企業がどうしても多いのが現実です。

過労死ラインとの比較

ニュースでもよく言われているので「過労死ライン」という言葉を耳にしたことがある人は多いと思います。

これは労働災害認定で長時間労働と労災の因果関係を判定する為に用いられているもの。

ようするに、これだけ長時間労働をしていれば仕事のせいで体を壊してもおかしくはないという数字です。

そしてその数字は以下の通り。

  • 発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働
  • 発症前1か月間におおむね100時間

残業150時間ともなれば、当然この過労死ラインを大幅に超えているので、体を壊してもおかしくはありません。

残業150時間超えのブラック企業で働き続けた人の体験談

残業150時間超えのブラック企業で働き続けた人の体験談

150時間を超える残業は、あまりにもきついものであり、体を壊す事態になっても何らおかしくはありません。

実際、その働き方を続けた人に話を聞くと、相当大変な目にあったようです。

ここでは一つの事例としてその体験談を紹介します。

毎月残業は150時間超え

私が以前勤めていたのはIT系の中小企業です。

新卒で入社したその会社が、あまりにもひどい労働環境でした。

毎日深夜まで勤務、土日休みのうち必ずどちらかは出勤で有給休暇も使えず、家に仕事を持ち帰る日もしばしばありました。

残業時間は150時間をゆうに超える状態だったのです。

繁忙期だけがそうなのではなく、それが毎月続いていました。

人が足りていないのに「もうすぐ人材を増やす」と言いながらいつまで経っても人は増えず、上司は「若いんだからそれくらいはやって当たり前」と言うだけだったのです。

私の体力はどんどん削られていきました。

残業代は月2万円

それだけ残業しているのに、残業代はたったの月2万円です。

「固定残業代制だから」と言われ、いくら残業しようとも2万円以上の残業は出ませんでした。

とんでもない量のサービス残業で、とんでもないブラック企業でした。

生活は荒れ、何もできない毎日

その会社で働いていた頃の私の生活は、どんどん荒れていきました。

最初の頃はできていた休日の遊びが徐々にできなくなり、食生活もめちゃくちゃになっていったのです。

ストレスから食べまくって太り、お酒の量もかなり増えました。

部屋を片付ける元気もなくなり荒れ放題です。

毎日睡眠不足だったため、少ない休日は寝て過ごすだけでした。

「人として真っ当な生活ができていなかった」といま振り返ると思います。

逃げ出したくても逃げ出せない現実

そんな会社に対して、いま考えればさっさと辞めれば良かったと思います。

ただ、逃げたいと思いながら中々逃げ出せない現実がありました。

  • 貯金がないから辞めたら生活できない
  • 3年未満で辞めたらまともな会社に転職できない
  • プライドが許さない

「辞めたい」「逃げたい」と思いながらも、次々と辞められない理由が出てきて限界まで働き続けてしまったのです。

限界がきてとうとう逃げ出した

しかし、なんとか2年くらい働き続けた私にとうとう限界がきました。

仕事のミスを上司から責められた私は、何も考えずその場から逃げ出し、それ以降会社に行くことを辞めたのです。

いわゆるバックレというやつですね。

もちろんそれからが大変で、何の引継ぎもなく退職届すら出さずメールで「もう辞めます」と言っただけだったため、上司から大量の電話が鳴る状態でした。

ただ、「色々あるけどもう行かない」「もうこのまま辞める」と決めたら、それだけで気がかなり楽になったのです。

もちろん今後の不安もありました。

退職後のこと

その後、結局一度上司と会って正式に退職した私。

めちゃくちゃ文句を言われたものの、労働基準法違反を繰り返していたのは会社の方だったので、面倒な事態にはなりませんでした。

それどころか、残っている有給休暇分の給料も貰えたのです。

おそらく、辞めた後で労働基準監督署に告げ口されたくなかったのだと思います。

このような経緯で退職した私でも、次の転職は意外になんとかなりました。

残業時間が多かったので失業保険は待期期間なしで貰えたうえに、転職先も2ヶ月ほどで見つかったのでバイト等で食いつなぐ必要もありませんでした。

働くメリットは何もない

辞めたいま、「あんな会社で働くメリットは何もなかった」という思いしかありません。

身も心も削ってギリギリまで働いても貰えるのはわずかな給料だけです。

本当に「何のために仕事していたんだろう」と思います。

転職先は月20~30時間程度の残業です。

残業代が出るため前の会社より給料が良くて、最初はほんと天国かと思いましたがこれが普通なんですよね。

もし、いまそういった会社で働いている人がいるなら、絶対にさっさと辞めるべきです。

何もできない1日でいいのか!?周囲はもっと充実している

何もできない1日でいいのか!?周囲はもっと充実している

残業150時間では、プライベートな生活はほぼなくなるでしょう。

心身ともにボロボロな状態になるのに、充実感は一切得られないのが実情です。

では、周囲の人々はどれくらい残業しているのかご紹介します。

厚生労働省が発表した「毎月勤労統計調査 令和3年9月分結果確報」によると、所定外労働時間の平均は9.4時間です。

残業時間が少ない分、周囲の人はプライベートな時間を充実させています。

あなたが残業を頑張っている間、周囲の人がどのような時間の使い方をしているのか見ていきましょう。

趣味の時間を楽しむ

プライベートな時間は、心身をリフレッシュさせるのが最高の過ごし方なので、趣味の時間を楽しむ人が多くなっています。

  • ジムに行く
  • 買い物を楽しむ
  • 食事やお酒を楽しむ
  • 映画や美術館に行く
  • 勉強や習い事

もちろん、これ以外の趣味であっても残業時間が少なければ思う存分楽しめます。

家族との時間を過ごす

パートナーと一緒に食事をしたり子供と遊んだりして、帰宅後や休日の時間を過ごす人は多くなっています。

家族と過ごす時間が増えれば、パートナーや子供との絆が生まれるので、心が癒されて仕事にも精が出るようになるでしょう。

副業に取り組む

残業が少なければ、まだまだ頑張る力が残されているでしょう。

休日だけでなく帰宅後の時間を使って投資の勉強をしたり、アフィリエイトに取り組んだりする方がいます。

副業で収入が得られるようになれば、趣味に使えるお金が増えるのはもちろん、心にも余裕が生まれて本業にも力が入るようになるでしょう。

残業150時間超えは確実にブラック企業、すぐに転職を

残業150時間超えは確実にブラック企業、すぐに転職を

残業150時間というのは、はっきり言って異常です。

そんな会社は、どんな理由があろうと超ブラック企業以外の何物でもありません。

従業員の健康、それこそ命すら気にしていない可能性だってなくはありません。

プライベートな時間を一切取れず、仕事だけの人生になってしまうため、そのまま続ける意味はありません。

体を壊す前に、まずは転職サイトや転職エージェントに登録して転職活動を始めてください。

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