仕事を続けている方の中には、1度くらいは仕事を辞めたいと思ったことがあるのではないでしょうか。

仕事を辞めたいと思うとき、同時に考えるのが転職することです。

転職は、どちらかというと転職後の活躍に注目が集まりますが、転職前に勤めていた会社の辞め方も見られていることが多くあります。

在職中の転職または、一旦退職してから転職活動をするとしても、社会人としてのマナーを守らず辞めようとすることやそのときの振舞い方によっては自分の評判を落とすことにもつながります。

そうならないためにも、退職はマナーを守って進めることが重要です。

社会人としての常識ある退職を目指すなら、退職願や退職届の違いを知り正しく使えることが理想的ともいえます。

退職願と退職届の違いと、実際の書き方や提出する手順など詳しく見ていきましょう。

退職願と退職届の違いって? たった一文字違いでも内容が異なる書類

退職願と退職届は名前が似ているということもあり、退職を考えた時にどちらを提出すればいいのかわからないという方もいるでしょう。

まずはそれぞれの性質について解説をします。

退職願とは

退職願と退職届は、それぞれ一文字違いの言葉でも、内容は随分違います。

退職願は、会社(経営者)に対して退職を願い出る書類で、退職の意思を伝える意味合いがあります。

また、退職願を出しても場合によっては却下されることがあり、会社が承諾する前なら撤回することもできます。

法的な効果はないもので、あくまでも会社との間の書類になります。

退職届とは

一方、退職届は会社側に退職の可否を問わずに、自分が退職することを通告する書類です。

会社側で受理されればその時点で退職が決定する、ストレートかつ一方的な書類です。

退職届の形式は、民法の定めにそった形式となり、提出してから一定期間が経過すると撤回することはできなくなります。

退職願に比べて退職届は、退職に対する強い気持ちや決意を持って提出する書類です。

では、退職願と退職届は退職時に絶対必要不可欠なものなのかというと、一般的には、直属の上司に口頭で退職の意思を伝えて、会社側から承諾を得て退職届を出すことが多くなっています。

会社によっても対応が異なるため絶対とは言い切れませんが、はじめは退職の意思を口頭で相談することもあります。

もしも、これから円満退社を目指すなら、いきなり退職届を出すのではなく、退職の相談と退職願をできるだけ早い段階で出しておき、退職したい意思を伝えておく方が良いでしょう。

参考:民法 第六百二十七条、第六百二十八条

退職願と退職届は必ず提出しなければならないの?

退職を決意したあとは、退職願と退職届を必ず出さなければならないのでしょうか。

結論から言えば、退職するときにこれらの書類を提出する義務はありません。

退職の意思を伝える方法としては、口頭で伝えるだけでも有効です。

ただ、万が一、退職に関してトラブルが起きたときには、退職届などの意思表示のある書類が残されているかどうかが重要になります。

書類が一切ない状態では、退職の意思を証明できない状況になり、退職できないか退職まで長引く恐れもあります。

退職願と退職届は、退職の意思があることを表すため、退職に関するトラブルを避けるためにも、できるだけ提出しておくことが望ましいでしょう。

また、念のために原本のコピーを保存しておくとより安心です。

退職願と退職届の書き方を紹介

退職願と退職届を書くとき、具体的にはどんな内容を書けば良いのでしょうか。

転職を決意したなら、ひと通り退職願と退職届の書き方をチェックしておきたいものです。

退職願と退職届の書き方を縦書き・横書きの両方を紹介していきます。

それぞれの書類を書くときに用意するもの

退職願と退職届の書き方は実はほぼ同じ文面で、退職の意思と退職する日時以外の情報は書かないことが共通しています。

書類を書くときに用意するものも共通しています。

  • 便箋(B5かA4サイズ、罫線入りならビジネス用を選択)
  • 封筒(白無地で郵便番号枠がないもの、B5用紙に長形4号、A4用紙に長形3号を使用)
  • ペン(油性・水性の黒ボールペンか万年筆)
  • 印鑑(認印または三文判でOKですがシャチハタはNG)

退職願と退職届を書くときは縦書きと横書きがあり、どちらも内容は同じですが書き方や文言が少しずつ異なります。

退職願の書き方を縦書きと横書きについて

退職願の縦書きの書き方

  1. 1行目に「退職願」と記載
  2. 2行目の最下部に「私事」または「私儀」と記載
  3. 本文として、「(この度)一身上の都合により」と記載、続けて企業と決めた退職年月日を記載、退職願は退職を願い入れる書類なので「お願い申し上げます」と締める
  4. 本文の次に、自分の所属部署と氏名を記載、捺印する
  5. 最後に退職する企業名と代表者名を記載、企業名は略式ではなく正式名称で記載し、代表者名には「様」または「殿」を必ず付けて、自分の名前よりも代表者名が上になるように調節する

退職願の横書きの書き方

  1. 1行目に中央寄せで「退職願」と記載
  2. 2行目に提出する日付を記載
  3. 宛名として、退職する会社の正式名称と代表者名を省略しないで記載
  4. 次の行に自分の所属部署と名前を記載、捺印する
  5. 名前の行から2行改行して、行の最後に「私事、」と記載
  6. 次の行から縦書きと同じ文面で本文を書き、最後の行に右寄せで「以上」と締める

退職届の書き方を縦書きと横書きについて

退職届の縦書きの書き方

  1. 1行目に「退職届」と記載
  2. 2行目の最下部に「私事」または「私儀」と記載
  3. 本文として「一身上の都合により」と記載し、企業と決めた退職年月日を記載、退職届は退職の意思を一方的に告げる書類のため、「退職いたします」と締める
  4. 本文の次に自分の所属部署と氏名を記載し、捺印する
  5. 最後に退職する企業名と代表者名を記載し、自分の名前よりも上になるように調整する

退職届の横書きの書き方

  1. 1行名に中央寄せで「退職届」と記載
  2. 2行目に提出する日付を記載
  3. 宛名として退職する会社の正式名称と代表者名を省略しないで記載
  4. 自分の所属部署と氏名を記載し、捺印する
  5. 自分の名前から2行改行して、行の最後に「私事、」と記載
  6. 次の行に縦書きと同じ内容の本文を書き、最後に右寄せで「以上」と締める

縦書きと横書きはどちらが良い?

縦書きと横書きどちらでも退職の意思を表明するには代わりはありませんが、縦書き一般的となります。

日本語は元々縦書きが基本の言語ということも影響ありますが、退職願・退職届は縦書きで書くのが無難です。

もし外資系の会社などの場合は上記のような日本語ならではの書式などに縛られることは少ないですが、慣習によっては外資系でも縦書きの方が一般的な企業もあるため、もしどちらが適切か不明の場合は人事の方に一度相談をしてみるというのもいいでしょう。

退職する理由は具体的にかかなくてもいいの?

退職する理由は、一般的に「一身上の都合」として書きます。

一身上の都合というのは、広く自己都合という意味合いで使われるので、退職の理由が社内の人間関係や転職のためでも使いやすい表現です。

本来ならもっとネガティブな理由があって、本当のことを全部書いてしまいたいと思っていても、書類上でそれをしてしまうのはNG行為です。

どのような理由でも書類上では一身上の都合としておくのが良い方法です。

日付は和暦? 西暦? どちらを使うのが正解なのか

退職願と退職届には日付や退職日を書くところがありますが、実際には西暦・和暦のどちらでも良いとされています。

インターネット上で見る退職願や退職届のサンプルでは、和暦を使用したものが多いですが、特に決まりはないので、縦書きは和暦、横書きは西暦などのようにしても間違いではありません。

ただ、1枚の書類の中では和暦か西暦のどちらかに統一するようにしましょう。

封筒の書き方と入れ方を確認しよう

退職願と退職届のそれぞれの書類を書いたあとは、準備していた封筒に入れて渡すようになります。

封筒には、表面の中央に「退職願」または「退職届」とはっきり書きましょう。

裏面の左下には、差出人の所属部署と氏名を行頭をずらして明記します。

中に入れる書類は長編を3つに折り、便箋の右上方が封筒の裏面に来るように封筒に入れ、封入口にのりを付けて「〆」と書いて封入します。

これで退職願と退職届の書類は完成となります。

次では、どんなタイミングで渡せばいいのか、心構えなども含めて退職願と退職届を渡す手順を紹介します。

退職願と退職届を渡す手順とタイミングについて

退職願や退職届を出すときは、自分の気持ちの整理や決意、各書類を渡すタイミングも重要です。

これは円満退職を目指すならなおさら気を付けたいところなので、はじめに流れを見ていきましょう。

退職願・退職届を渡す流れ

退職願と退職届を渡すまでの流れは細かくすると下記のような形になります。

  1. 退職する意思を固める(決意する)
  2. 退職願を作成する
  3. 退職希望日を決めて記載する
  4. 直属の上司に退職の意思を伝えて、退職願を手渡す
  5. 退職が承認されたら正式な退職日を決める
  6. 会社の決まりに添って退職届を提出する
  7. 社内・社外での業務の引き継ぎや退職の挨拶をする
  8. 退職する

ずっと前から仕事を辞めたいと考え、ある日突然に、思うがままに辞めてしまうことは自分の悪評を高めてしまい、社会人としての常識も疑われることになります。

そのため、辞めたいと一時的に思っても一旦冷静になって考え直してみて、それでも辞めたいと思うなら退職する決意を固めましょう。

退職する意思を固めたあとは、タイミングよく直属の上司に退職願を手渡すことができるように、事前に退職願を作っておいてください。

同時に、退職する理由を別の業界で学びたくなったとか、やってみたいことができたなど、いつ聞かれても返事に困らないように準備しておくと良いでしょう。

直属の上司に退職の意思を伝えるときは、できるだけ周囲に人がいないときを選んでください。

大勢の中で発表するようなことは避けて、上司の手が空いているようなときに「ご相談したいことがあるのですがお時間よろしいでしょうか」などのように声をかけて、はじめは相談という形で伝えていきます。

このときに、退職する理由を聞かれたなら、前もって用意していた退職する理由を利用しましょう。

いくら本当のことでも、人間関係が原因などのネガティブな理由を伝えてしまったのでは円満退職は難しくなるからです。

その後、退職が承認されたとしてもすぐに退職できるわけではなく、正式な退職日を会社側と相談しながら決めます。退職届は退職願と違って1度提出したら撤回できない書類です。

提出する前に今一度、自分の退職への決意を確認して、退職する決意にブレがないなら提出するようにしましょう。

退職届を提出したあとは、社内・社外での業務の引き継ぎなどが行われます。

この段階でも、気を抜かずにこれまでの信頼関係を大切にするよう心掛けましょう。退職の挨拶も丁寧にしておく方が良く、これまで勤めた会社に迷惑にならないように配慮するとより良い流れになります。

退職願と退職届は似ていても異なる意味を持つ書類! 書き方や出し方にも注意しよう

退職願と退職届は、どちらも1文字違いの書類です。

ですが、見間違えてしまいそうな名称でも書類としての意味は異なり、出し方によっては取り返しのつかないことになるものです。

退職願はあくまでも会社に退職を願い出る段階の書類で、一定期間内なら「やっぱりこの会社に残りたいです!」と言って撤回することもできます。

一方、退職届は、出したあとに撤回することはできない書類です。

退職届は一方的に退職する意思を告げるようなニュアンスがあり、相談よりも強引な雰囲気を持っています。

書き方にも違いがあり、退職願は「お願い申し上げます」なのに対し、退職届は「退職いたします」と断言するように書きます。

やはり、退職届の方が強い意味を持っているため、よく似ている2つの書類でも用途や内容を確かめながら提出することが重要です。

また、実際に退職するときは、これまで働いてきた会社に迷惑をかけないことや、信頼関係を壊すようなことにならないように十分気を付けてください。

1度、壊れた信頼関係を回復させることはなかなか難しいことで、次の転職先にも悪い噂や悪い影響を与えるようでは元も子もありません。

全く別の会社だと思って転職しても、社員の中に知り合いがいたり、知り合いの知り合いや先輩・後輩がいたりすることもあります。

世の中広いと思っていても、悪い話はすぐに広まるものなので、退職するときはできる限り円満退職を目指すようにしましょう。