住宅手当があれば自分で支払う住居費の負担が軽くなるため魅力的な手当てのひとつです。

しかし、住宅手当は給与所得なので課税対象となり、支払う税金が多くなるデメリットもあります。

このページでは住宅手当の仕組み、メリット・デメリット、最近の住宅手当事情を紹介します。

会社の手当とは

住宅手当の特徴をチェックする際に手当てとはどのようなものなのかを知っていると、住宅手当をより理解できるでしょう。

そこで、住宅手当の特徴をチェックする前に、手当そのものの仕組みをまず理解することが大切です。

手当とは給与所得と同じ

手当とは、役員や従業員に支給される給与所得のことです。

住宅手当の他に残業手当、休日出勤手当、職務手当、地域手当、家族(扶養)手当なども給与所得に含まれます。

手当は給与所得なので課税対象ですが、一定金額以下の通勤手当や宿直・日直手当、転勤や出張などのための旅費のうち必要と見なされるものは非課税です。

役員や使用人に支給する手当は、原則として給与所得となります。

具体的には、残業手当や休日出勤手当、職務手当等のほか、地域手当、家族(扶養)手当、住宅手当なども給与所得となります。

しかし、例外として、次のような手当は非課税となります。

給与所得となるもの|国税庁

このようにしっかりと給与の一部としてみなされれるので「ただ会社からもらえる福利厚生制度」というわけではありません。

住宅手当とは

住宅手当とは福利厚生の一つで、社員の家賃や住宅ローンなどの住宅にかかる費用の一部を会社が負担する制度です。

費用を負担する対象が賃貸住宅の場合は、家賃補助と言われることもあります。

住宅手当は①給与に手当を上乗せして支給するもの②手当適用後の金額を給与から天引きするものの2種類あるので、もし自分の会社に住宅手当がある場合はどちらの方法方で支給されるか確認をしましょう。

上乗せ支給の場合、支給額が1万円であれば毎月の給与に住宅手当1万円を上乗せして支給されます。

また、天引きは会社が契約している物件を借りる場合に適用されることが多く、毎月の給与から一定の賃料が天引きされます。

住宅手当を受けられる条件は企業によって異なりますが、一般的には会社から住宅までの距離が指定範囲内、住宅が賃貸または持ち家であること、該当社員が世帯主か物件の契約者であることが条件となります。

住宅手当の平均額

住宅手当が支給されると住居費を抑えることができる一方、引かれる税金が増えることでお金の使い方や貯金の設定金額が変わることが想定されるので、住宅手当の支給額は気になる方もいるでしょう。

平成27年就労条件総合調査の概況によると、全ての調査対象の企業の住宅手当の平均支給額は17,000円となっています。

企業規模別の住宅手当平均支給額は、従業員1,000人以上の企業は19,333円、従業員300~999人の企業は17,818円、従業員100~299人の企業は15,832円、従業員30~99人の企業は14,359円なので、企業規模によって多少の差があることが分かります。

平成27年住宅手当平均額

企業規模

住宅手当平均支給額(円)

1000人以上

19,333

300~999人

17,818

100~299人

15,832

30~99人

14,359

平均

17,000

【参考】

平成 27 年就労条件総合調査の概況 – 厚生労働省(2020年3月25日調べ)

大手に慣ればなるほど住宅手当を支給しているところは増えて、中小企業になると支給していないところの方が割合としては多くなるので、30~99人規模で住宅手当を支給している会社は補償制度が比較的厚いと考えても良いでしょう。

住宅手当のメリットとデメリット

支給される住宅手当は企業規模によって異なりますが、毎月17,000円程度あれば住居費の負担は軽くなります。

確かに手当が上乗せ支給であれば、給与の総支給額が増えるというメリットがあります。

しかし、給与所得が増えれば税金が増えるので、お得に感じない方もいるでしょう。

住宅手当のメリットとデメリットを確認し、自身にとって住宅手当は必要か否か考えてみましょう。

住宅手当2つのメリット

住宅手当を受けられると、住居費の負担が軽くなる、給与の総支給額が増えるので支出が減り金銭面のゆとりが生まれることとなります。

住居費の負担が軽くなる

家賃や住宅ローンといった住まいに関する費用は生活費の中で高い割合を占め、食費や水道光熱費のように節約が難しい費用なので、17,000円程度でも負担は軽減するでしょう。

住居費の負担が軽くなれば生活費にゆとりが生まれ、交際費や趣味といった自分の楽しみのための費用や貯金を増やしやすくなります。

給与の総支給額が増える

自由に使える費用や貯金を増やすには、支出を抑えるだけではなく収入を増やすことも有効です。

給与に上乗せして住宅手当が支給される場合、給与の総支給額が増えるので、収入アップと同じ役割と言えるでしょう。

住宅手当3つのデメリット

住宅手当があれば生活にゆとりが生まれますが、住宅手当は給与所得と見なされるので、支払う税金が増えるというデメリットもあります。

また、引っ越しを自由にしにくい、住宅手当の支給対象外の方は手当を受けられないといったこともデメリットに挙げられます。

支払う税金の金額が増える

税額が増えることは住宅手当のデメリットと感じる方が多いでしょう。

住宅手当で税額が増える理由は、住宅手当は給与所得に含まれるので所得税の課税対象となるためです。

基本給が変わらなくても住宅手当を支給されれば、給与所得が上がったのと同じ扱いとなるため、住宅手当がない場合よりも税金の負担が増え、生活費を抑えられるメリットよりも、損をしたというデメリットを強く感じるかもしれません。

住まいの状況によって手当額が異なる場合が多い

従業員本人が世帯主か契約者で、賃貸、社宅、持ち家(住宅ローンを支払っている場合)のいずれかに住んでいれば住宅手当を受けられますが、住宅形態によって金額に差があることが多いです。

手当の支給額によって税額が異なるので、支給額が高いことが必ずしもお得とは言えません。

しかし、住居費を安く抑えることを重視している方の中には、住宅形態が変わることで手当が少なくなるのであれば、理想の住宅への引っ越しを躊躇する方もいるでしょう。

また、会社から住宅までの距離や家賃によって支給額が変わる場合、住宅手当を優先して理想の物件を諦める懸念があります。

手当額の差や手当の有無で不公平さを感じやすい

住宅形態の違いで手当額に差が生じるだけではなく、実家暮らしの方、ルームシェアや同棲をしている物件の契約者でない方は、手当の対象外となるケースが多いです。

基本給が同じで業務内容に違いがなければ、住宅手当を受けられない方には不公平と感じるでしょう。

住宅手当は課税対象 ただし非課税となることも

給与に上乗せ支給される住宅手当は給与所得扱いなので、課税対象です。

社宅や寮の賃料が天引きされる場合、物件の賃貸相当額に対する自己負担の割合で課税か非課税が異なります。

また、社宅や寮に住む際に賃貸料相当額50%以上の自己負担があれば、天引き分は非課税となります。

たとえば、1万円の社宅に住む場合、1万円(賃料の全額)住宅手当として給与から天引きされたら、自己負担がないので1万円全てが課税対象となるということです。

住宅手当として6,000円天引きされたら、自己負担は4,000円と賃料の50%未満なので、住宅手当6,000円が課税対象ですが、住宅手当で4,000円天引きされたら自己負担は6,000円と賃料の50%以上を負担しているので、手当は非課税となります。

借り上げ社宅も課税か非課税かは同様に考えます。

ただし、社宅の家賃補助として現金を支給している場合や入居者が契約者となっている場合は社宅と見なされず、給与所得として課税されます。

看護師や守衛といった勤務場所を離れて住むことが難しい従業員に社宅や寮が無料で提供される(住宅手当で賃料を全額まかなえる)場合なども、非課税となる場合があります。

【参考】

使用人に社宅や寮などを貸したとき|国税庁

従業員側の税金と企業側の税金について

住宅手当は支給形態や金額によって従業員は支払う税額が、企業は負担する保険料などが変わってくるので、住宅手当の課税率や税額を抑える方法を知っておくと良いでしょう。

従業員側の税金

従業員が受け取る住宅手当は、給与所得として扱われて課税されます。

住宅手当が支給されると所得税だけではなく、住民税、年金や健康保険などの社会保険の算定基礎額も増えます。

上乗せ支給か天引きかによって手取り額と税金や社会保険料が変わるので、それぞれのケースをチェックしましょう。

保険料と所得税は住宅手当以外の手当や賞与を合わせた年収、また、地域によって異なるので、下記の数値はおおよそのものになります。

給与30万円住宅手当5万円上乗せ支給されるケース

健康保険厚生年金雇用保険所得税
15,000円28,000円1,500円9,000円

上記の保険料や税金から35万円が引かれる形となるので、最終的な手取りは29万6,500円となります。

給与30万円から家賃として5万円天引きされるケース

健康保険厚生年金雇用保険所得税
12,000円23,000円1,200円7,000円

手取りから上記の保険料や税金、更に住宅手当分(50,000円)が引かれるため、最終的な手取りは26万6,800円となります。

この例のように基本給と住宅手当の金額が共通でも支給方法で所得税が異なるように、住宅手当が同じ金額でも所得税率が変わるほど年収に違いがあれば、税額は変わります。

住宅手当1万5,000円、手当を除いた年収を200万円と350万円と過程して所得税を計算します。

年収200万円のケース

・年間の住宅手当額1万5,000円×12=18万円
・課税所得200万円+18万円=218万円

こちらの金額がベースとなります。

課税所得に対する税率は10%、控除額9万7,500円なので、所得税は218万円×10%-9万7,500円=12万500円となります。

年収350万円のケース

・年間の住宅手当額18万円
・課税所得350万円+18万円=366万円

年収350万円の場合の基準となる金額は上記の金額です。

税率20%、控除額42万7,500円なので、所得税は366万円×20%-42万7,500円=30万4,500円となります。

【参考】

全国件健康保険協会:令和2年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(2020年3月26日調べ)

厚生労働省:平成31年度の雇用保険料率について(2020年3月26日調べ)

事業者側の税金

給与所得が増えるほど社会保険料が高くなるので、同じ住宅手当額でも天引きよりも上乗せ支給の方が企業の保険料の負担が多くなります。

そのため、企業が住宅手当を支給する際には、給与に上乗せする代わりに社宅や寮を提供する方が、保険料の負担を少なくすることが可能です。

給与からの天引きであれば従業員にも保険料や税金が上がらないというメリットがあります。

最近の住宅手当事情

住宅手当にはメリットもデメリットもありますが、企業の支給方法と自身の希望住居が一致すれば、税金が増えたとしても住居費を抑えられるメリットを感じるでしょう。

住宅手当は福利厚生の一つなので、企業が支給できれば働きやすさ向上を期待できます。

企業は住宅手当を上乗せ支給ではなく天引きにすれば、保険料の負担を抑えたり非課税にしたりも可能ですが、企業が何かしらの負担が必要なことは変わらないので、業績悪化などで手当の費用を捻出することが難しくなったとして廃止する企業が出てきています。

また、基本給と業務内容や成績が同じでも、住居によって手当が安い・受けられないことに不公平に感じるという意見が多くなっていることで、廃止にする企業も増えています。

手当で支給されるよりも基本給が高い方がボーナスを多く支給されることから、手当よりも基本給が高いことに魅力を感じる方が増えています。

能力に応じて報酬が支給される、昇給しやすいといったことも重視されるようになってきたことから、従業員も住宅手当の有無をそれほど気にしていないでしょう。

デメリットも多い住宅手当にこだわらないが吉

住宅手当は給与への上乗せか天引きで支給されますが、形態に関係なく支給されれば住居費を抑えることが可能なので、生活にゆとりが生まれるのが大きなメリットです。

しかし、住宅手当は給与所得と見なされて原則課税されるので、税金の負担が大きくなります。

居住形態によって支給額が異なる、支給対象外となるケースも多く、従業員間に不公平さを生じさせないために住宅手当を廃止する企業が増えています。

住宅手当がなくても基本給が高い、能力の評価による報酬の支給や昇給がある企業であれば納得できる収入を得ることは可能なので、企業を選ぶ際には住宅手当の有無はそこまで気にしなくても良いでしょう。