あなたは部下が突然辞めたいと言ってきたとき、どのような対処とりますか。
部下が辞めたいと言ってきたときに、上司なら「なぜ辞めたいと思ったのか?」や「辞めたいと思った理由を解消できないのか?」などを考えるでしょう。
また、会社全体で見ても急に辞められると仕事に穴が開いたり、他の社員にしわ寄せが来たりと不利益を被る恐れがあります。
だからと言って、頭ごなしに「急に辞めるなんて困る」などと伝えても、部下はより辞めたい気持ちが強まって逆効果です。
反対に、上手な引き止め方ができれば、部下が辞めるのを止めることだってできます。
そこで今回は、突然部下が辞めたと言ってきたとの説得術について解説します。
どのような状況なら引き止めた方が良くて、どのような状況なら引き止めない方が良いのかといった線引きも分かるので、ぜひ参考にしてみてください。
部下が辞めたいと言ってきたときに最初にかける言葉
部下が突然辞めたいと言ってきた場合でも、ダイレクトに「辞められたら困る」というのはNGです。
従業員数が少なくて、急に辞めると言われると誰でも引き止めようと必死になるのは当然でしょう。
しかし、部下の話も聞かずに「辞めるな」と言っても、相手の心には響きません。
それどころか話を聞こうとしない態度に、部下はもっと辞めたいという気持ちが強くなる可能性があるのです。
相手の気持ちを尊重しない態度は良くないので、頭ごなしに「この人はダメだ」と決めつけず、まずはしっかりとあての話を聞きましょう。
相手の話を聞いてからでないと、どのように解決すれば良いのかもわかりません。
ちなみに、部下が戸津前辞めたいと言ってきたときのNG対応とOK対応について確認していきましょう。
【NG対応】
✖ 「今辞められると困る」
✖ 「もう少しここで頑張ったら良いんじゃない?」
✖ 「うちと同じ条件で働ける職場はないよ?」
【OK対応】
〇 「急にどうしたの? 何かあったの? 辞めたい理由を教えて」
〇 一旦業務に戻って仕事終わりに「お疲れ様、辞めたいって言っていた件、今からゆっくり話を聞かせて」
とにかく、大切なのは相手の話を聞くという点です。
最初から引き止めるのではなく、どのような原因で辞めたいと思っているのか聞き出して、解決策がないかを一緒に考えてあげましょう。
辞めたいという従業員に対して上司としてどう対処するのが良いか?
従業員が辞めたいと言ってきた場合、その理由は数多くあれど、結局なところは人間関係が絡んでいるのが大半です。
そのため、部下や後輩、同僚などが辞めたいと言ってきた場合は、まず辞めたいと思うような環境に気が付かなかった点をお詫びしてください。
大切なのは、上司自身が今までの対応を反省して変わろうとする意志を見せることです。
また、上司や現場の長における指示の打出し方に問題があるなら、今後改善するという意思をしっかりと伝えてください。
では、具体的にどのような対応をすれば良いのか、実際のやり取りをイメージしながら解説します。
- 従業員:先輩が仕事をしっかり教えてくれません。指示が曖昧なので何をしたら良いかわからず毎日辛いです。
- 上司:そうだったんだな。私も忙しくて気づけなかった。辛い思いをさてしまって申し訳なかった。
- 従業員:○○先輩に指示くださいと言ったら、仕事は見て覚えるものだって怒られたんです。
- 上司:それは良くないよな。○○には私からちゃんと指示を出すように言っておく。今後、○○がそういう態度を取るようなら私に話してほしい。私から話すから。
このように、上司としてしっかり管理ができていなかった点をお詫びしたうえで、今後どのように改善するのかを明確に伝えてください。
また、人によっては上司には話辛いと感じる人もいるので、そういう方には、「私には話辛いかな? 私もバタバタしていたからな。でも、いつでも時間作るから遠慮なく話してほしいな」など、緊張をほぐすような声掛けを心がけると良いでしょう。
もちろん、辞めたいと言ってきた部下に問題がないとは限りません。場合によっては、その部下の言葉遣いや態度:などに問題を感じるケースもあるはずです。
そのような場合には、一旦従業員の話を受け止めて、「私も忙しくて状況を見てあげられなかったのは悪かった。でも、これから相手に意見を言うときは、その時の相手の状況を考えて言うようにしてね。そうすれば、あなた自身も仕事をしやすくなると思うし、別の会社に行っても共通することだからさ。」といった形で、部下の悪い部分を指摘しつつ、最終的にはアドバイスに切り替えて伝えると良いでしょう。
このように、現代人は人との関わりが軽薄になっているので、あまりにも強めに指摘すると委縮する恐れがあります。中には、「自分の考えが否定された」と感じる方や「言い負かされた」ともう方もいるはずです。
現代人に悪い部分を指摘する際は、「こうした方が良いよ」といった見守る姿勢を持ちながら伝えてください。
もちろん、近年は人付き合いが軽薄だからこそ、どのような態度が相手にとって失礼に当たるのかといった部分を知らない若者も増えています。
そのような時には、「そういう言い方は失礼に当たるよ」とはっきり伝えるタイミングも必要です。
基本的には、相手を全面的に否定するのではなく、相手の気持ちに寄り添って悪い部分を指摘します。
そして、あまりのも改善されない場合や態度が悪い場合には、しっかりとダメなものはダメと伝えてください。
辞めたいという従業員を引き留める必要はあるのか?
ここまで、辞めたいと言ってきた部下に対する話し方について解説しました。
しかし、そもそも辞めたいと言っている部下を引き止める必要性はあるのでしょうか。
実は、上司として大切なのは引き止めでは、相手に“気付きを与える”という点の方なのです。
というのも、人間というのは誰しも他人に厳しく自分に甘いものなので、人には平気で傷付けるような発言をするのに、自分が言われることには敏感になるという方が大勢います。
相手が、どのような発言で嫌な気持ちになるのか気が付いていない方は意外に多いので、まずは、言われる側の立場や気持ちを考える必要があるのです。
そして、相手の気持ちに気が回るようになると、自分自身にも改善の余地があると分かります。
一般的に、人は自分で気が付いた事柄は自分で改めようと考える傾向があるので、その心理を上手に利用した方が事態は良い方向に動きやすくなるのです。
また、部下が現状から逃げたいという気持ちだけで辞めたいと言っている場合は、課題と向き合うように促すと良いでしょう。
「やりたい仕事と違うから辞めたい」など、はっきりとした辞めたい理由が分からない従業員には、「何が気に入らないのか?」や「どうしてほしいか?」などを聞き、本当の辞めたい理由を明確してください。
もしも、改善できる内容であれば、アドバイスと上司としての改善の意思も伝えて、部下に気付きを与えると効果的です。
このように、辞めたいと言っている部下に気付きのタイミングを与えて改善できれば良いでしょう。
そして、気付きを与えても気が付かない方や改善されない方であれば、無理に退職を引き止める必要はないと考えてください。
部下が仕事を辞めたいと思う理由とは?
ここまで、突然辞めたいと言ってきた部下の話を聞いて、気持ちを理解する必要があると解説しました。では、部下が仕事を辞めたいと思う理由にはどのようなものがあるのでしょうか。
厚生労働省が行った調査「仕事をやめた者の退職理由」によると、退職の理由には以下のようなものが挙げられるようです。
- 給与・報酬が少ないから:7%
- 事業や会社に不安を感じたから:7%
- 労働時間が長かった・給与が少なかったから:9%
- 能力・実績が正当に評価されなかったから:1%
- 人間関係が上手く行かなかったから:8%
このように、職場の待遇の悪さに嫌気がさして辞めるという方が多いようです。このような理由の場合、上司1人の力で解決するのは難しいのが実情でしょう。
しかし、ある調査によると「退職で本当の理由を伝える人は半数以下」というデータもあります。
例えば、本当には人間関係が上手くいかずに辞めたいと思っているのに、それを伝えるのに抵抗があるから「給料が安い」などの適当な理由を付けているという訳です。
やはり、会社を批判してギスギスした気持ちで退職したくないと考える方が多いのでしょう。
もしも、部下が辞めたいと言ってきたときに理由を聞いたとしても、それが本当の理由だと簡単に受け入れない方が良いのです。
「本当は別の理由があるのかも」と考えて、しっかりと相手の話を聞いてください。
部下も、親身になって話を聞いてくれる姿を見ると、心を開いて真実を打ち明ける可能性が高まります。
辞めたいと言われたらまずはその理由をよく聞くことからはじめよう
部下が仕事を突然辞めたいと言ってきた際は、その理由をよく聞くことからはじめましょう。
退職を引き止めると聞くと、「説得しなければ」と気負ってしまいます。
しかし、人間というのは自分の思い通りに動かせるものではありません。
そのため、説得という方で相手に思いをぶつけても、部下は反発心を強めるだけで逆効果です。
それよりも、相手の話をしっかり聞いて従業員自身が自ら気付いて行動するように促す方が良いでしょう。
実際、部下や従業員の多くは、“自分を理解してほしい”や“自分を認めてほしい”といった欲求を持っているのが大半なので、話を聞いて相手の気持ちを受け止めてあげてください。
ちなみに、辞めたいと言っている部下に対しては、以下の方法で対応すると効果的です。
- 辞めたい意志があることを内密にしてもらう
辞めたいという意思を他の同僚などに話されてしまうと、本人も後になって「やっぱり辞めません」とは言いにくくなって、辞めざるを得なくなる可能性があります。「あなたのような優秀な人材を失いたくないから、もう少し時間が欲しい」と伝えつつ、他言無用にしてほしいと話してください。 - 入念に相手の話を聞く
仕事を辞めたいと考えるのはよほどの理由があるはずです。そのため、簡単には本当の理由を打ち明けてはくれないでしょう。入念に相手の話を聞いて、本当の理由を聞き出してください。 - 当該社員が抱える問題をいち早く解決する
辞めたい本当の理由が判明したら、早急にその問題点を改善してください。改善前には、部下に対して「すぐに解決するから」と伝えておきましょう。
これらのポイントをしっかりと抑えたうえで、辞めたいと言っている部下に対応してください。
相手の話をよく聞いて問題点を洗い出し、その問題が改善されれば、部下も「もう少しここで頑張ってみようかな」と思ってくれるはずなので、焦らずに対応してみてください。