験担ぎとは?

験担(げんかつ)ぎ、験を担ぐとは、以前によい結果が出たときの行動を繰り返したり、不吉な言葉と読みが同じ言葉を別の言葉に言い換えたり、縁起のいい言葉と同じ読みの食べ物を食べたりすることを指しています。

本来は「縁起を担ぐ」と言っていたものを、「えんぎ」を逆さ言葉で「ぎえん」と言い換え、「ぎえん」が次第に「げん」に変わったという説があるようです。

また、仏教における修行の成果を「験」というので、これも意味的に重ね合わされています。

ジンクスという言葉も似た意味で使われますが、こちらは本来、縁起が悪いことだけを指しています。

例えば、「4」が「死」につながるとして避けるといったことがそれに当たります。

あるアンケートでは、4割の方が験担ぎやジンクスを気にしており、6割は効果を実感しているという結果も出ています。

また、歴史上の著名人、現代の成功者、政治家、スポーツ選手、芸能人なども、験担ぎをする方は多いようです。

著名人の験担ぎ

武田信玄

戦国武将は出陣前に「打ち鮑(うちあわび)」「勝栗(かちくり)「昆布(こんぶ)」を食べたという。

「これは敵を打つ、勝って、喜ぶ」の語呂あわせであり、特に武田信玄はこれを熱心に行っていたそうです。

アワビの煮貝が山梨名物となったのも、武田信玄の験担ぎが発祥といわれています。

また、敵対する上杉謙信と信玄が一騎打ちとなったとき、信玄は九死に一生を得ましたが、そのとき信玄は、謙信が熱烈に信仰する毘沙門天の小さな像を自分の兜の中に入れていました。

これは謙信に斬られないようにするための験担ぎといっていいでしょう。

田中角栄

元首相の田中角栄はお酒を飲むときは「オールドパー」を好んだそうです。

そのボトルを斜めに傾けても倒れないで立ち続けるというのがその理由で、倒れないというところに縁起のよさを感じたのでしょう。

同じく元首相の吉田茂も同じ理由で「オールドパー」を愛飲したといわれます。

ベーブ・ルース

野球の神様と呼ばれた大リーガー、ベーブ・ルースは監督時代に空樽を積んだトラックを選手の前で走らせました。

それは大リーグには「試合前に空樽を見るとヒットを打てる」という験担ぎがあったからです。

前田健太

スポーツ選手には験担ぎにこだわる方が多く、たとえばメジャーリーガ―の前田健太さんは、「試合前日の夕食は豚肉と野菜のあんかけ丼にする」「試合開始の7時間前に起床する」「左足からグラウンドに入り、右足からグラウンドを出る」など20個以上の験担ぎを行っています。

ビル・ゲイツ

マイクロソフト創業者のビル・ゲイツは馬の置物を収集しています。

これは、古来ヨーロッパでは馬が幸運を運んでくると考えられ、馬の蹄鉄(ていてつ)が幸運をもたらすとされたことに関係するようです。

北野武

北野武さんは30年以上もずっと、トイレ掃除を験担ぎにしているそうです。

自宅だけでなく隣家やロケ先のトイレを掃除したこともあるというから徹底しています。

トイレ掃除の験担ぎは北野さん以外にも実践者が多く、開運法として何冊か本が出版されています。

勝俣州和

芸能人の勝俣州和さんは、財布に「1億円札」を逆向きに入れておくというユニークな験担ぎをしています。

「1億円札」とは、1万円札をうまく折り曲げて「100000000円(1億円)」と読めるようにしたもののことで、お金のあるところにはよりたくさんのお金が集まるという考え方を背景にしています。

その他の験担ぎの例

著名人の験担ぎにはその人の経験則なども関わってきますが、ここでは一般的に言われるような験担ぎの例も紹介します。

  • 玄関先に盛り塩を置く
  • 黄色や金色の財布を持つ
  • 番号の末尾が「9」になっている紙幣を財布に逆向きに入れる
  • 赤い下着を身に着ける
  • おからを「大入り」と言い換える(「から」には客が入らない印象があるため)
  • するめを「あたりめ」と言い換える(「する」には賭け事で損をする印象があるため)
  • 靴を右足(あるいは左足)から履く
  • 商売繁盛のたぬき(他抜きに通じる)
  • 契約が水に流れないよう、水曜を定休日にする(不動産業など)
  • 勝負の前にウインナー(Winner=勝者に通じる)を食べる
  • 試験等の前におむすび(結び=良縁に通じる)を食べる
  • 試合等の前にカツオ(勝男=勝利に通じる)を食べる
  • 試験等の前にタコ(おくと・パス=合格に通じる)を食べる

験担ぎには地方や家庭によって様々ありますので、これはまだほんの一部です。

やめておいたほうがいい験担ぎはある?

このように、少し紹介しただけでも、さまざまな験担ぎがあることが分かります。

しかし、効果のあるなし以前に、問題を生じる可能性のある験担ぎはやめておいたほうがいいでしょう。

一例として次にいくつか挙げておきます。

飲酒、喫煙がらみ

たとえば、普段お酒を飲まない方には先に紹介した「オールドパー」の験担ぎはおすすめしません。

喫煙を伴うような験担ぎも同様です。

普段からタバコをたしなんでいるなら別ですが、験担ぎのためにわざわざ飲酒や喫煙をするようなことは、健康を第一に考えて避けましょう。

食事の験担ぎによる偏った食生活

入試や就職、試合などで「勝つ」ということで、カツ丼やカツカレーを験担ぎで食べる方も多いですが、毎日のように転職の面接を受けているような方が、その度にカツを食べるのは健康上おすすめできません。

毎日ではなく勝負の節目などに絞って食べるのがおすすめです。

もし、ひんぱんに食事で験担ぎをしたいなら、カツは時々にして昆布(喜ぶ)やレンコン(見通しがいい)などを交えるといいでしょう。

身だしなみにかかわる験担ぎ

「試験前に爪を切らない」といった験担ぎがありますが、整えられていない爪は、面接で身だしなみが悪い印象を与えます。

また、爪の間が汚れやすくなり感染症の一因となる可能性も言われています。

同様に、着崩しを伴う験担ぎも周囲にマイナスの印象を与えることがあります。

回りに迷惑をかけてしまう場所への訪問

神社や景勝地など公に開かれている開運スポットならいいのですが、私有地や公道上など、人が集まることが迷惑になるような場所への訪問はマナー違反となるので避けるべきでしょう。

動作を伴う験担ぎは周囲に注意を

「建物に入るときには必ず右足から」といった験担ぎをしている場合、建物の入り口で一瞬立ち止まることがあります。

自宅なら問題なさそうですが、出かけた先でこれを行うと突然立ち止まったところに、他の方がぶつかってくる可能性もあります。

これ以外にも、何らかの動作を伴う験担ぎをするときには周囲に迷惑をかけないよう注意が必要です。

危険を伴う験担ぎ

以前、ある宅配便トラックの車体に描かれたシンボルマークに触れると幸せになれるという験担ぎが広まったため、交通事故の可能性もあるとしてシンボルマークを別のものに変更するという出来事がありました。

このように、常識的に考えて危険を伴うような験担ぎについては絶対に行うべきではありません。

験担ぎは科学的に効果が証明されている?

こうした験担ぎは、学問の世界では宗教的な文脈で研究されることが多いといえます。

験担ぎのように、似たものや言葉にあやかってよい結果を願う行為は専門的な言葉では「類感呪術」と呼ばれ、世界中で見られるからです。

また、日本では言霊(ことだま)という考え方も験担ぎに関係しています。

これは、言葉に霊的な力があるという思想のことで、験担ぎの多くが語呂合わせになっているのはこれに関係します。

では、そうした宗教的な意味合いは別として、実験などで客観的・科学的に検証した研究はあるのでしょうか? 次のその一例を紹介しましょう。

験担ぎの科学的研究

ドイツ・ケルン大学の研究チームが、パターゴルフを使った実験で験担ぎの効果を検証しています。

実験では集めた参加者たちにパターゴルフをしてもらうのですが、参加者の半分には「このボールは幸運なゴルフボールです」と言ってボールを渡し、残りの半分には「このボールは普通のゴルフボールです」と言って渡します。

その上でパターゴルフを行ってもらったところ、「幸運なゴルフボール」と言われた参加者のほうが明らかにパットの成功確率が高かったのです。

つまり、「このボールは幸運なゴルフボールだ」という思いがパットの成功確率を挙げたことになります。

ここからは、自分で行うことに関しては、思い込みでもいいから「うまくいく」という思いを持っていたほうが実際にうまくいく可能性が高くなることが分かります。

これはいわゆるポジティブシンキングにも通じます。自分自身についてポジティブな自信を持てない場合は、験担ぎでポジティブな思いを持つことで似た効果を得られるということです。

ただし、験担ぎによって実力以上の成果を出せることはありません。あくまでも、本来の実力を発揮しやすくするためのツールと考えるべきでしょう。

験担ぎとルーティン

験担ぎに近いものとしてスポーツ選手の多くが行う「ルーティン」があります。

ラグビーの五郎丸選手のキック前の動きや、スケートの羽生結弦選手の演技前の十字を切る動作などがその一例ですが、試合中の行動だけでなく、イチローさんが毎朝カレーを食べるといったこともある種のルーティンといっていいでしょう。

試合に勝ったときと同じ動作をルーティンにすることが多く、試合などのときにいつもと同じ動作・行為をすることで心を落ち着け、いつも通りの実力を発揮することが主眼となっています。

もしかすると、気づかないうちに自分なりのルーティンを持っている方もいるかもしれません。

何か落ち着かないときでもこれをやると落ち着ける、という動作や行為があればそれがあなたのルーティンです。

特に心当たりがない場合は自分なりのルーティンを作ってもいいでしょう。

やり方はいろいろありますが、たとえば、1日のうちで最も心と体のコンディションがいい時間帯に、毎日同じ時間、同じタイミングで決めた動作・行為を繰り返し行うと、それがルーティンになっていきます。

いったんルーティンになってしまうと、今度はその動作・行為を行うことで心身を最善の状態に持っていけます。

ただし、人前でやりにくい動作・行為にしてしまうと肝心のときに実行しにくいので、その点には気を付けましょう。

転職を成功させる験担ぎはある?

では、転職を成功させたいならどんな験担ぎをすればいいでしょうか? ケース別に考えてみたいと思います。

転職を成功させたい時の験担ぎ

緊張しやすいなら

緊張しやすい方は自分なりのルーティンを見いだし、ベストな状態で面接に挑むといいでしょう。

簡単なものだと面接をする前に深呼吸を3回するなどでも効果的です。

また、前日や当日の朝に自分の気持ちがポジティブになることをするのがおすすめです。

悲観しやすいなら

物事をつい悪いほうへ考えてしまう方は、評判のいいお守りや、験担ぎにつながる食事などで前向きな気持ちへ切り替えていきましょう。

自分に自信がないなら

身に着けるもので験担ぎを行うと自信を持てるかもしれません。

身だしなみを整えるというのは当然のことですが、験担ぎとして特定の服装やアクセサリーを着けることも広く行われています。

ただし、いずれの方法も、本来の実力を発揮するための心理的な効果を狙ったものですから、本来の実力以上の仕事へ転職できるといった「奇跡」は期待しないほうがいいでしょう。

それを前提にした上で、転職を成功させたい方へおすすめの験担ぎをもう1つ紹介しましょう。

営業マンの験担ぎを転職に応用するというものです。

営業マンの験担ぎ

一部の営業マンが行う験担ぎに、営業に行った先の近くの神社にお参りしてから商談に行くと、よい結果を出せるというものがあります。

商売するにあたり、その土地を治めている神様にご挨拶するという意味合いがありますが、これについても理にかなった説明ができそうです。

商談の前に神社へ寄るには現地に早く到着する必要があり、時間の余裕がある分、商談前に気持ちの余裕もできてきます。

また、多くの神社は木々に囲まれており、そこにお参りすることでしばしの間、自然に囲まれて静かな心境になれそうです。営業に行くたびに毎回行っていれば、これ自体がルーティンとなるでしょう。

以上のことから、この験担ぎにはそれなりの意味があると考えられます。

営業ではなく、転職の面接に行くときにもこれは使えます。

時間にちょうど間に合うように行くのではなく、神社にお参りできるだけの時間の余裕を持って現地へ向かい、ゆったりとした気持ちで神前で手を合わせてみると、静かに落ち着いた気持ちで面接へ向かうことができるでしょう。

最後に繰り返しとなりますが、験担ぎ自体にはやはり「奇跡」を起こす力はありません。しかし、自分をベストな状態に置くツールとして上手に活用できれば、転職をより有利に運ぶことに役立てられるでしょう。

験担ぎだけで上手くいくわけではないが、精神状態が変わることは影響する

験担ぎをするだけで全部上手くいくことはありませんが、験担ぎをすることで自分の精神状態が良くなったり、冷静になることで物事を上手く進めることはできます。

転職をするようなタイミングは人生の分かれ目となるので験担ぎで気持ちが上向くなら積極的に取り入れるのもいいでしょう。

ただ、決めた験担ぎができない時にストレスを感じないように、「できたらやる」くらいの気持ちで行うのがおすすめです。