「まずは3年」に潜む理由
「石の上にも三年」という言葉は、「辛抱すれば、やがては成功するものだ」という例えです。
社会人も「まずは3年」働かないと、仕事の良さがわからないと言われます。
1年目で仕事を覚え、2年目で仕事に慣れ、3年目で会社の利益につながっていく、社会人としての仕事は一筋縄ではいかないものです。
しかし、20代の「3年間」は貴重で短い、3年も座り続けることは必ずしも正解なのでしょうか。
ここでお伝えしたいのは、「3年目」は大きな分岐点であることです。
「3年目」は第二新卒と中途採用の境目にあり、転職の仕方がここでガラリと変わります。
というのも「3年以上」と「3年未満」では、企業側から求められるものが変わってくるからです。
「3年以上」に求められるもの
- 社会人としての基本的なマナーが身についている
- 任される仕事が1人でこなせる
- 会社の良さ・おもしろさが実感できている
- 忍耐力がある
「3年未満」に求められるもの
- 社会人として最低限のマナーが身についている
- 会社の色に染まっていないからこその柔軟性
- 仕事に対する高いモチベーション
- 若さと高いポテンシャル
「3年以上」には、すでに新人としてではなく一社会人としての期待がされているのに対し、「3年未満」には、社会人としてより一個人としての期待が強くなります。
ここが「3年目」が大きな分岐点となる理由なのです。
「3年未満」の離職率は?
以下は、厚生労働省が実施した新卒者の離職率調査の結果です。
最終学歴 | 平成28年 | 平成27年 | 平成26年 |
大学卒 | 32.0% | 31.8% | 32.2% |
短大卒 | 42,0% | 41.5% | 41.3% |
高校卒 | 39.2% | 39.3% | 40.8% |
「まずは3年」とは言え、実際は少なくとも30%、毎年3人に1人が3年未満に離職しています。
短大卒と高校卒に関しては、大学卒を遥かに超える40%に近い結果です。
また同調査の業界別離職率では、「サービス業」「教育・学習支援業」において50%に近い数字を記録しています。
そんな「3年未満」の人々が退職をしてしまう理由は、主に以下の4点です。
20代の主な退職理由
- 労働条件が悪かった
- 収入が少なかった
- 人間関係が悪かった
- 仕事に興味が持てなかった
こちらは、厚生労働省が発表した雇用動向調査における20代の主な退職理由です。
新卒においては、理想と現実のギャップが起きてしまいがちなこともあり、「労働環境」や「仕事そのもの」に対しての不満が大きくなっていることが窺えます。
収入に関しては、以下の平均収入の調査も参考にしてみてください。
全体 | 男 | 女 | |
年代(20-25歳) | 267万 | 284万 | 249万 |
勤続年数(1-4年) | 322万 | 398万 | 244万 |
年代別の年収と勤続年数別の年収を照らし合わせると、男性は284万~398万、女性は244万~249万が相場となっています。
全体の平均としては267万~322万となり、300万前後が目安といえます。
「3年未満」のメリット・デメリット
実際の離職率、退職理由、年収と比べてみて、今のあなたの仕事はどうですか?
「私の年収少ないな。」「意外と離職率高いし、あんまり心配しなくていいかも。」
「思い直してみると、まだ転職しなくてもいいんじゃないか?」など、いろいろな思いが出てきていることと思います。
まだ転職に迷っているあなたに、3年未満の転職のメリット・デメリットを知って頂きたいです。
一つお伝えしたいのは、デメリットは知って落ち込むものではなく、知って克服するものです。
最後にはもちろん、デメリットの解決方法までご紹介いたします。
3年未満のメリット
冒頭にもお伝えした通り、「3年未満」は第二新卒と呼ばれます。
はっきりとした定義はありませんが、一般的に新卒で入った会社を3年未満に辞めている20代中盤の人材のことを指します。
それでは、第二新卒の応募者としてのメリットを確認しましょう。
- 職種、業界を変えやすい
- 新卒採用と選考基準が異なり、学生時代の経験より将来性が重視される
- 第二新卒を積極的に採用する企業が多い
第二新卒は、新卒では目指せなかった業界に挑戦できる可能性を持ち、企業側からも歓迎されている存在です。
第二新卒には即戦力より、将来へのポテンシャルが期待されます。
そのため経験はあまり評価に含まれず、中途採用とは別のフィールドで応募ができるため、自分のやりたいことが明確になった場合、その思いをぶつけやすいタイミングであると言えます。
実際に第二新卒の転職市場における需要は高く、マイナビの採用状況調査では、こんな結果も出ています。
今後1年間の第二新卒採用の見通し | |
---|---|
本年よりも積極的 | 18.1% |
本年も変わらず積極的 | 44.1% |
本年と変わらず消極的 | 12.8% |
本年よりも消極的 | 6.8% |
実に62%以上の企業が、積極的に第二新卒を採用していることがわかります。
「3年未満」に辞める第二新卒は、企業にとって不足している人材なのです。
3年未満のデメリット
次に、第二新卒のデメリットについても確認しましょう。
- 忍耐力がないと思われる
- 即戦力を求めるような求人には採用されにくい
- 合わない場合は、またすぐに転職される可能性があると思われる
即戦力については、転職希望先の企業で求められているか、事前に確認することが必要です。
入りたい企業が第二新卒を募集していない場合、その道は狭き門となってしまうかもしれません。
結果的にどの企業でも懸念されるのは、やはり忍耐力と定着があるかどうか。
しかし、このデメリットはよく理解することで克服できます。
「3年未満」の転職対策ー2つのポイント
対策方法は至ってシンプルで、「長く働きたい」という意思をしっかりと伝えることです。
そのためには、以下の2つのポイントをおさえる必要があります。
辞めた理由と、その改善策を明確にする
最初に入った会社の退職を明確にすることは、非常に大切です。
辞めた理由を明確にすることは、次の会社に求める基準を明確にすることと同じになります。
一度会社に入ったからこそ見えてきた「本当にやりたいこと」「理想の働き方」「仕事への価値観」があるはずです。
それらを軸に会社選びをすることで、失敗を繰り返す可能性は低くなります。
しかし、実際に面接で理由を話すときはネガティブになりすぎてはいけません。
具体的には、「もう絶対に○○がしたくないので転職しました」ではなく「私は○○がやりたいから転職します!」と伝えることです。
明快で前向きな理由を述べることで、「忍耐力がないのではないか」と懸念する採用側への説得力もぐんと上がります。
意欲、熱意を伝える
そして、若手になにより求められる「意欲」や「熱意」です。
最初に入った会社で失敗を経験しているからこそ、「次こそは!」と仕事へのモチベーションは上がっているはずです。
辞めた理由をもとに、「自分はこんな風に変わりたい」「成長したい」という強い思いを持つこと、それを真摯に伝えることは、「また転職されてしまうのではないか」という採用側の懸念を払拭することにつながります。
「3年未満」の企業選びー自分に合った選択を
最後に、企業の選び方についてお伝えしていきます。
第二新卒に限らず、まず転職において重要になるものは軸です。
「ワークライフバランス」「研修制度」「社会への貢献度」「収入」「社風」など、軸は人の数だけ無数にあります。
これは先程述べた「辞めた理由と改善策」につながるもので、最も疎かにしてはならない部分です。
その理由として、同じ業界、職種でも、企業によって仕事のスタイルや社風は全く異なるからです。
例えば「営業は絶対にしたくない」という軸を持っていたとしても、営業にも新規営業やルート営業があり、業界によって営業の仕方やノルマも変わってきます。
ここで大切なのは、固定観念は捨てること。
社会人としての経験が少ないと、どうしても業界や職種のイメージに左右されがちですが、固定観念を捨てることで視野はぐっと広がり、幅広い情報を得るきっかけになります。
その中で、気になった企業のHPや採用情報を見てみましょう。
もしも情報が少ないときは、実際に選考を受けて判断してみるという手もあります。
「強い企業」を選ぶ
では、もう一つ違う切り込み方もしてみましょう。
それは、どんな時代でも活躍できる企業を選ぶことです。
昨今の情勢は著しく変化しており、好景気・不景気がいつどのように訪れるか予測できません。
転職するならば、どんな逆境でも生き残る「強い企業」を選ぶに越したことはないはずです。
「強い企業」には、いくつか特徴があります。
- 新しいテクノロジーに追いついている企業
- 不況でも、それを「チャンス」と捉えている企業
- 不況でも、採用を続けている企業
例えば、テクノロジーにおいてはオンライン事業やリモートワークの定着、チャンスにおいては、新規事業や新市場の開拓などが挙げられます。
この判断には、採用データや企業の業績を調べたり、実際に選考を受けた際に、直接質問として投げかけてみたりするのも良いかもしれません。
また、最新情報が載っている新卒向け採用ページも有効活用できるでしょう。
分岐点を見極めよう
かくいう筆者も、実は新卒で入った会社をたった2ヶ月で辞めています。
新卒の会社では営業をしていましたが、巡り巡って今こうしてこの記事を書くに至りました。
私は3年未満どころか半年も在籍していませんでしたが、今となっても後悔の一つありません。
転職は人生の一大イベント。
転職しない、ということも一つの選択肢になります。
転職にはかなりの勇気と労力を要しますが、その分成功できたときの喜びはひとしおです。
ここまで長々と書きましたが、これらの情報を参考に、ぜひ自分の道を探してみてください。
転職はあなたの人生を決めるもの、慎重にまっすぐ向き合ってください。