正社員・フリーランスの定義
正社員とフリーランス、どのような違いがあるのかを知っていますか? さまざまな働き方ができる昨今、会社に雇われて働くよりも自分で管理しながら自由に働きたい、という方も増えています。
どちらが働きやすいかは個人の適性によりますが、正社員とフリーランスでは、保険制度などが異なるため、それぞれの特徴とメリット・デメリットを知った上で、働き方を選ぶことは大切です。
では、実際に正社員とフリーランスではどのような違いがあるのでしょうか? それぞれの定義や保険・制度、メリット・デメリットなどを比較し、自分に合った働き方を見つけていきましょう。
正社員とは
厚生労働省が公表している正社員の定義は、「事業所で正社員・正職員とする者」とされています。
つまり、正社員は組織に属していることが大きな特徴であるといえます。
参考:厚生労働省 「平成27年賃金構造基本統計調査 結果の概況:主な用語の定義」
フリーランスとは
フリーランスの定義は、「特定の組織等に属さず、独立して様々なプロジェクトに関わり、自ら専門性などのサービスを提供する」と内閣府は提示しています。
同時に「公的統計では、フリーランスに関する直接的な統計はなく、フリーランスに関しての明確な定義や範囲がない」とも述べています。
そのため、フリーランスの定義ははっきりと定まっているものではありませんが、組織に属さずに独立して仕事をする人がフリーランスであると考えてよいでしょう。
その他のフリーランスの定義
前述でフリーランスの定義ははっきりと定まっていないと記述しましたが、その他にもフリーランスの定義が公表されていますので紹介していきましょう。
一般社団法人 フリーランス協会 22によるフリーランスの定義
一般社団法人 フリーランス協会 22は、フリーランスを以下のように位置付けています。
「特定の企業や団体、組織に専従しない独立した形態で、自身の専門知識やスキルを提供して対価を得る人」
2019年版 小規模企業白書によるフリーランスの定義
2019年版 小規模企業白書はフリーランスについて以下のように定義つけています。
「特定の組織に属さず、常時従業員を雇用しておらず、消費者向けの店舗などを構えておらず、事業者本人が技術や技能を提供することで成り立つ事業を営んでいる者」
厚生労働省・フリーランス協会・小規模企業白書それぞれのフリーランスの定義をみていくと、どれも「特定の組織に属さずに自分のもつ専門性を提供する」という内容が入っています。
そのためフリーランスという働き方は、組織に属さないフリーな環境の中で、自分の持っている専門性を自らの力で仕事にしていく働き方であるといえるでしょう。
参考:「日本のフリーランスについてーその規模や特徴、競業避止義務の状況や影響の分析ー」
正社員とフリーランスの違い
正社員とフリーランスの大きな違いは、組織に属しているか否かであるため、企業に雇用されて働く人が「正社員」、企業に属さずに独立して働く人を「フリーランス」、という区分になります。
では、より正社員とフリーランスの違いを知る為に、保険制度や労働時間などを詳しくみていきましょう。
保険・制度の違い
正社員とフリーランスは働き方だけでなく、保障されている制度なども異なるため、それぞれの保険制度や労働時間を確認しておくことは大切です。今回は「年金制度・加入できる保険・労働時間」の項目を比較していきます。
年金制度
まずは、年金制度の基本的な3つの分類とフリーランス・正社員がどれに当てはまるのか確認していきましょう。
被保険者の種別 | 加入できる年金 | 対象者 |
第1号被保険者 | 国民年金 | フリーランス |
第2号被保険者 | 国民年金・厚生年金 | 正社員 |
第3号被保険者 | 国民年金 | 専業主婦 |
第1号被保険者
日本年金機構では、第1号被保険者の対象を以下のように定めています。
日本国内に住む20歳以上60歳未満の自営業者、農業・漁業、学生及び無職の方とその配偶者の方 (厚生年金保険や共済組合などに加入しておらず、第三号被保険者でない方)
フリーランスは自営業に含まれるため、第1号被保険者に該当します。
また、第1号被保険者の加入できる制度は、国民年金のみとなっているため、フリーランスで働く場合は、将来もらえるお金が厚生年金よりも少ないことを踏まえて、将来のために自分で貯金をしていくことがおすすめです。
第2号被保険者
第2号被保険者の対象は、
厚生年金保険や共済組合などに加入している会社員や公務員の方
となっており、正社員は第2号被保険者に含まれます。
第2号被保険者の加入できる制度は、国民年金と厚生年金となっているため、正社員として働いているとフリーランスより年金が多くもらえるというメリットがあります。
第3号被保険者
第3号被保険者は、
第2号被保険者に扶養されている配偶者の方で、原則として年収が130万円未満の20歳以上60歳未満の方
が対象となっており、専業主婦などがそれに該当します。
また、第3被保険者が加入できる制度は、第1被保険者と同様で、国民年金のみとなっています。
雇用保険と労災保険
正社員とフリーランスはではそれぞれ加入できる保険が異なるため、生活においての補償内容も異なります。働き方を選ぶ際には、加入できる保険を確認し、家計にどのように影響するかを知っておくことが大切です。
では、正社員とフリーランスのそれぞれが加入できる保険についてみていきましょう。
正社員の加入できる保険
正社員の求人広告をみると、ほとんどの求人で「社会保険完備」と記載されています。
「社会保険」とは、健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険の4つのことをいい、会社が社会保険に加入していると、この4つの保険を会社が負担してくれます。
フリーランスの加入できる保険
フリーランスは基本的には自分で保険に加入する必要があります。また加入できる保険によって、自分で払う税金の額や生活の中で受けられる補償が異なるため、フリーランスで働きたい方は、自分が加入できる保険を確認しておくことがとても大切です。
まずフリーランスの方が加入できる保険は「国民健康保険」です。「国民健康保険」は一般的に「国保」と呼ばれており、市区町村や国保組合が運営しています。
国民健康保険に加入していないと、病気やけがをしたときに医療費を全額負担しなければならないため、フリーランスで働くことを選択した際には、お住いの地域の区役所・市役所にて国民健康保険の加入手続きをするようにしましょう。
また以前に正社員として働いていた場合は、勤めていた会社で加入していた保険を最長2年間、継続することができます。
ただし、正社員の時には会社が負担してくれていた分も自分で全額負担しなければならないため、保険料が高くなることは覚悟しておかなければなりません。
扶養家族が多いなどの理由がない限りは、フリーランスになった時点で国民健康保険に切り替える方が保険料の負担が減るためおすすめです。
また、もしフリーランスで国民健康保険以外の保険に加入したい場合は、民間や業界団体の保険に加入する手もあるため、自分のライフスタイルに適した保険を選ぶとよいでしょう。
労働時間
次は、正社員とフリーランスの労働時間の違いについてみていきましょう。
まず、正社員は労働基準法が適用され、労働時間は1日8時間、1週間に40時間以内と定められています。
それに対して、フリーランスは労働基準法の適用外となるので、労働時間の限定はなく、自分で働く時間を自由に決めることができます。
では、正社員とフリーランスでは労働時間の長さにはどれくらいの差があるのでしょうか?
2018年の正社員とフリーランスの月の労働時間を比較してみましょう。
〈労働時間が140時間以下の割合 比較〉
正社員 | 全体の33.1% |
フリーランス | 全体の48% |
正社員とフリーランスで140時間以下の労働の割合を比べてみると、フリーランスの方が48%と半数近くが140時間以下で働いていることがわかります。
フリーランスで働く人の年収や労働時間は人によって違うためばらつきがありますが、労働時間については、平均的に正社員よりもフリーランスの方が短時間労働の傾向があるといえるでしょう。
参考:フリーランス白書2018
正社員のメリット・デメリット
では、ここからは具体的に正社員のメリット・デメリットについて確認していきましょう。
正社員のメリット
各種保険が完備されている
ほとんどの企業で、正社員は社会保険に加入ができるようになっています。労災保険・健康保険・雇用保険・厚生年金などの保険を一部会社が負担してくれるため、保険料が大きく減額されます。
特に扶養する家族がいる方は家族も一緒に加入できるので、社会保険完備は非常にメリットが大きいでしょう。
社会的な信用度が高い
正社員は組織に属し、給料や雇用が安定していることから、社会的信用度が高い特徴があります。例えば、カーローンや住宅ローンなどを組む際にも、給料が安定している正社員は審査に通りやすい傾向にあります。
収入が安定している
正社員の一番のメリットは収入が安定していることです。基本的に正社員は月給制なので、月々の支給額に大きな差がありません。そのため家計のやりくりがしやすく、安心して生活を送ることができるでしょう。
すべての仕事を一人で抱え込む必要がない
正社員は組織に属しているため、一人ですべての仕事を抱え込む必要がありません。それぞれに役割が与えられ、チームで動き、休みの日も安心して休むことができます。
またすべての仕事を管理する必要もないので、精神的にも余裕を持って働くことができるでしょう。
正社員のデメリット
自由度が低い
正社員は会社の社員であるため、会社から指示されたことには基本的には従う義務があります。働く時間や場所を会社から指定されており、自分のやりたい仕事以外もこなす必要があるため、このような自由度の低さは正社員のデメリットといえるでしょう。
拘束時間が長い
正社員は原則的にフルタイム勤務となります。1日7~8時間労働・週休2日が一般的ですが、パートやフリーランスに比べると圧倒的に拘束時間が長いので、プライベートの時間を作りたい方は正社員に向いていないでしょう。
フリーランスのメリット・デメリット
一方、組織に属さないフリーランスは自由度が高くなります。こちらのメリット・デメリットについても確認していきましょう。
フリーランスのメリット
自由度が高い
フリーランスの一番のメリットは、自由度の高さです。正社員は組織から指示されて動くことが多くありますが、フリーランスは働く時間や場所、仕事のやり方などすべて自分で決められるので、生産性が高く、仕事の満足度も高い傾向にあります。
やりたいことを実現できる
フリーランスは、自分の専門性を存分に活かせる働き方です。「~をしてはいけない」「~のようにしなければいけない」という型がないため、自分のやりたいことを実現していくことができます。
人脈が広げやすい
フリーランスは組織に縛られずに仕事ができるため、正社員よりも人脈が広がりやすい傾向にあります。仕事において人との出会いは予期しない発展へとつながることもあるため、人脈が多いことはやりたいことを実現していく上でも大きなメリットといえるでしょう。
フリーランスのデメリット
社会的な補償が少ない
フリーランスで働く場合には、正社員のように社会保険や福利厚生がないため、万が一病気をして働けなくなった時や妊娠・出産となった場合などに休暇や給料の補償がないデメリットがあります。
収入が安定しない
フリーランスは自分で仕事を管理できるメリットはありますが、給料も自分次第のため、収入が不安定であることは覚悟しておく必要があるでしょう。
社会的な信用度が低い
フリーランスは収入が不安定なため、正社員と比べて社会的信用度が低い傾向にあります。例えばローンを組んだり融資を受けたりする場合、審査に通りにくいことがあります。
フリーランスの向き・不向き
正社員とフリーランスは、それぞれ働き方や働く環境が大きく異なるため、向き・不向きがあります。働き方が自分に適していれば、無理なく続けることができますし、不向きであればだんだんと無理がかかってきてしまいます。
自分に合った働き方を見つけるためにも、フリーランスに向いている人・向いていない人のポイントを押さえておきましょう。
向いている人
・自分のやりたい仕事を自分のペースで進めたい ・特定の高いスキルがある ・自己管理が得意 |
フリーランスは、高い専門性を持っていて自分のやりたい仕事がある人に向いています。
特にやりたい仕事や専門的なスキル・経験がなく、自由に働けることだけでフリーランスを選んでしまうと、仕事の目的も働き方もうやむやになってしまう恐れがあります。専門的なスキルや仕事においての目標を持っている人の方が、フリーランスでいきいきと働くことができるでしょう。
またすべてが自己管理となるため、自己管理が得意であることはフリーランスで働く上でとても大事なポイントです。
向いていない人
・自己管理、スケジュール管理が苦手 ・指示された方が楽、自分に合っている ・営業、仕事、入出金管理など複数の仕事をすることが苦手 ・誰かと相談しながら仕事を進めたい |
フリーランスに向いていない人の一番のポイントは、自己管理が苦手であることでしょう。
フリーランスは自分で働く時間や環境、仕事のことすべてを管理していかなければなりません。そのため、自己管理・スケジュール管理や複数の仕事をこなすことが苦手な人はフリーランスには向いていません。
また組織の中で、誰かと相談または役割分担しながら働きたい人や決まった環境と時間の中で働きたい人は、フリーランスではなく正社員の方が適しているでしょう。
自分に合った働き方を選ぼう!
一昔前の日本は正社員で働くことが一般的でしたが、近年は正社員だけでなくフリーランスとして働く人も増えてきています。
フリーランスは「自由な働き方」と思われがちですが、今回の記事で解説してきたように、フリーランスは、組織に属さずに自分のスキルや専門性を仕事としていく働き方です。
正社員のような時間や環境の縛りはありませんが、すべてを自分で管理し築き上げていく必要があるため、やりたいことを実現できるメリットがあります。ただし、すべてが自己管理となるので、それ相応のやる気と根気がいる働き方でもあります。
一方、正社員は、時間や環境の縛りはありますが、収入が安定しており、社会保険や福利厚生なども会社が負担してくれるため、生活の安定という非常に大きなメリットがあります。
このように、フリーランスと正社員の特徴とメリット・デメリットを踏まえた上で、自分に合った働き方を選ぶことが大切です。