パラリーガルとはどんな仕事なのか

弁護士や検事が主役であったり弁護士事務所を舞台としたドラマは、普段は取っつきにくい法律がわかりやすく扱われていることや裁判などの勝敗にドキドキハラハラと惹きつけられるように作られており、人気の高いジャンルとなっています。

そんなドラマやニュースなどでも耳にすることが多い「パラリーガル」とは、「法律事務職員」と位置づけられ、専門のアシスタントとして弁護士を支える仕事として年々注目度が上がっています。

パラリーガルの主な業務は弁護士秘書よりも専門的な知識が必要とされる裁判所へ提出する文書の作成や依頼案件の調査など、法律に関する業務に携わる仕事です。

パラリーガルに資格はいらない?

パラリーガルに用意されている資格には、日本弁護士連合会の実施する「事務職員能力認定試験」や、一般社団法人日本リーガルアシスタント協会の実施する「パラリーガル認定資格制度」があります。

日本弁護士連合会の「事務職員能力認定試験」は法律事務所で一定以上の実務経験が必要となりますが、「パラリーガル認定資格制度」は未経験者から受験することができます。

試験や資格制度は用意されていますが、必ず取得しなければ職に就けないというものではありません。

大学の法学部や専門学校などで学んでいなければいけないという条件もないため、司法書士や弁護士を目指している方が勉強のために働くだけではなく、一般的な事務職をしながら法律の知識を高めていくことでパラリーガルになるということもあります。

資格などがなくてもなることのできるパラリーガルですが、法律の知識はもちろん、幅広い知識や能力を持っていることが必要となり、仕事に役立てていくことができるのも特徴です。

パラリーガルの職場は、弁護士事務所や司法書士事務所・行政書士事務所・社会保険労務士事務所だけでなく、一般企業の法務部や行政の法律関係の部署で働くという選択肢もあり、通常の企業や職種と同じように、転職サイトなどから探すことができます。

雇用形態も正社員だけではなく派遣社員・パート・アルバイトなど様々な働き方が用意されているため、子どもが小さい間は短時間勤務もできるパートやアルバイトとして働くなど、自分の生活に合わせた働き方を選ぶことができるのも良いところでしょう。

パラリーガルの具体的な仕事内容

パラリーガルは弁護士のアシスタントですが、大きく分けて「秘書業務・一般業務」と「法律業務」の2つの仕事内容があります。

秘書業務・一般業務

  • 電話や来客の対応
  • ファックスや郵便物の送信・受領・処理
  • 契約書の作成補助
  • コピー取り
  • 弁護士のスケジュール管理
  • 銀行・郵便局・裁判所などへの外出
  • 書類や備品・個人情報などの管理

法律事務所もある意味企業なので、一般的な会社と同様に事務仕事は常に発生します。

書類に関しては依頼者からの資料や関係各所へ送付するための資料など、取り扱う種類が多いため大きい事務所では書類周りの業務を専門に行う方を配置する時もあります。

電話対応や契約書の作成補助に関しても中にはある程度の法律知識がないと対応に困るケースも多いこともあり、一般企業の事務作業とは少し特殊性があると言えます。

法律業務

  • 法律や判例など各種調査や資料の収集
  • 戸籍や住民票や弁護士法第23条照会による書類の取り寄せ
  • 法務局や裁判所への同行や書類提出
  • 裁判所に提出する訴状や裁判記録・遺言書の作成・確認
  • 商業登記・不動産登記などの申請手続き
  • 支払督促
  • 強制執行
  • 法務監査の補佐
  • 議事録の作成

パラリーガルの方は法律家(行政書士・司法書士・弁護士)の補助業務がメインとなります。

例として挙げた業務内容を見るとかなり幅広く行っていることがわかりますが、実際にこれら全てを行うかどうかは事務所の取り扱う案件次第になります。

幅広く案件を受けている事務所もあれば、特定の案件(離婚・過払い・自動車事故・特許など)に絞って受けている事務所もあるので、後者の事務所であれば行う業務の幅は少し狭くなります。

パラリーガルはあくまでも補助となるので実際の方針を最終決定する際や法律家でないと違法行為になる業務に関してはする必要はありません。

ただし、そこに至るまでのプロセスで携わる部分は多く、案件によっては殆どパラリーガルが進めて大事な部分だけ法律家の方が登場するという場合もあります。

この業務量が多いほどパラリーガルとしては実務経験が詰まれていく反面、かなり多忙になっていくので、入所前にその事務所の方針などをしっかり確認することが大切です。

パラリーガルの待遇

パラリーガルの年収

パラリーガルの仕事に就いたとき、給与やボーナスなどは所属する弁護士事務所などによって大きく異なりますが、一般的な相場を確認しておきましょう。

正規雇用のパラリーガルの場合は200万円~500万円程度、外資系の法律事務所や専門的な案件を扱う法律事務所のパラリーガルでは、600万円~800万円ほどになる場合があります。

契約社員の場合は200万円~350万円程度、アルバイトは時給1,000~1,500円程度が相場となっています。

パラリーガルからのキャリアアップ

パラリーガルを経験したあと、キャリアアップのために転職をしたいと考えたとき、またはキャリアアップをするためにパラリーガルを経験しておいたほうがいい職業といったものは、特にありません。

決まったキャリアアップはなく、より深い知識を得ることのできる法律事務所や企業の法務を取り扱う部署へ転職してスキルアップを目指すことや、より高度な法律業務に携わりたい場合には、法律を学び直し、行政書士や司法書士・弁護士などの資格取得を目指すという選択肢が考えられます。

パラリーガルは全くの未経験者だと転職に苦労をする可能性がありますが、一度パラリーガルになるとその後の転職は比較的やりやすくなります。

パラリーガルという職種自体がかなり特殊というこもあり、法律に対する専門知識だけではなく扱う案件に関する慣例を理解しているかというのは採用する法律事務所から見て評価が高くなるからです。

個人の事務所だと教育コストをかけられないこともあり経験者で即戦力のみ募集をすることが多いですが、大きい法律事務所では一般企業のように教育担当もついて未経験でも少しづつ知識をつけることができます。

未経験者ほど大きい事務所を中心に探すと成功率は高くなります。

パラリーガルが向いているのはどんな人物か

資格が必ず必要なわけではないパラリーガルの仕事ですが、法律の知識のほかにどんなものを備えているといいのでしょう。

コミュニケーション能力の高い方

弁護士のアシスタントや秘書としての役割のほかにも、外部の方やほかの職員と協力して業務を進めていく必要があるため、コミュニケーション能力の高さが必要となります。

クライアントの中には強い不安や深い悩みを抱えた方もいるため、顧客対応の際にも相手を気遣って接することが必要となります。

勉強が嫌いでない方

法律の知識はもちろんですが、人や企業間での諍いに関する仕事をおこなう弁護士事務所では、幅広い知識や社会情勢について、日々学んでいく必要があるため、勉強をすることが身についている方や嫌いではないという方が向いていると言えるでしょう。

新しい判例が出たらその内容が今後の案件を左右する可能性もあるので、日々関係法律や判例に対するアンテナを張っていることが大事です。

人のサポートが好きな方

弁護士やクライアントを助ける仕事であるため、誰かの力になりたい・誰かの役にたちたいという強い気持ちが必要です。

指示された仕事だけではなく、細やかな気配りや弁護士が今何を必要としているかなどを自ら考えて主体的におこなっていくことが必要となります。

常に周囲への気遣いを忘れず、どうすれば業務がスムーズに進んでいくのか考えることが大切です。

事務能力の高い方

法律事務所では、個人情報や人の人生を左右しかねない書類を取り扱うことが多いため、ケアレスミスも許されない高い正確性と迅速な処理スピードなどの、高い事務処理能力も必要となります。

法律家の方によっては事務業務が全くできないという方もいるので、そのような方のサポートをする場合はほぼ全ての事務業務を行う必要があります。

そのためマルチタスクで業務を進められる人が向いている傾向があります。

パラリーガルになるには、志望動機の書き方が重要

パラリーガルの仕事は、専門性が高くやりがいのある仕事であるため、就職希望者も多いため、志望動機で自分が事務所に貢献することができる人材であるとアピールすることが大切です。

  • 法律事務所の特徴:事務所の規模や取り扱う分野など
  • 法律事務所事務職の適性:自分の得意分野や特長など
  • 応募する法律事務所の運営方針:事務所のビジョンや顧客への姿勢など

このようなことをしっかりと抑えた上で、どのような志望動機を書けばいいのかを検討しましょう。

志望動機に書くべきことは?

①どうしてパラリーガルという職につきたいのか

法律の知識で社会に貢献をしたい・誰かを助けるたいという弱者救済や社会貢献、または将来弁護士や司法書士などになるために法律の実務を学びたいという方が多いでしょう。

しかし、必ずしもそれを動機に掲げなければいけないというわけではありません。

企業の法務を取り扱う「ビジネス弁護士」や海外との折衝を専門とする「渉外弁護士」の業務を目指しているなど、飾らずに率直な志望動機目指すパラリーガル像を伝えるようにしましょう。

②どうしてその組織で働きたいのか

パラリーガルになれるならどこでもいい、というのではなく、「なぜその事務所なのか」という点を伝えることが大切です。

法律事務所にはそれぞれ強みや取り扱う分野があり、刑事事件・債務整理・労務問題・相続問題・離婚相談・集団訴訟など様々なジャンルがあります。

その事務所がどういった案件に力を入れているのかを調べることや、クライアントの相談に対する姿勢や所長の理念に感銘を受けたなど、自分がその事務所で働きたいという理由を、同業他社との比較を織り交ぜながら訴えることが大事です。

③その組織で働くパラリーガルとして活かせるスキルは何があるのか

志望動機には、パラリーガルとしてその事務所で働きたい理由だけではなく、どれだけ組織に自分が貢献することができるかということも忘れずに訴える必要があります。

いかにアシスタントとしてのサポートをすることができるのか、どのような事務処理能力があるのか、自分のどのような点がパラリーガルという業務の中で発揮することができると考えているのかということをアピールするようにしましょう。

ただ「私はこういう人物です」と訴えるだけではなく、実際の経験具体的な出来事を挙げることで、言葉だけでは曖昧なイメージをしっかりと伝えることができます。

パラリーガルに向いているという要素をアピールの中に交えていくことが大事であり、コミュニケーションスキルやサポート能力といった、アシスタントとして重要な素質があるということをしっかりと伝えることが大事です。

大きい規模の法律事務所では、人事担当など、組織の運営をおこなっている担当者が面接などの採用業務を担当している場合がありますが、小規模な法律事務所では所長や担当弁護士が直接採用を担当していることがあります。

弁護士にとってパラリーガルは自分の役目を果たすために信頼して仕事を任せられる人物であることが大事です。

事業の規模が小さくなるほど弁護士とパラリーガルの距離は縮まるため、面接では受け答えによって相性を見極めていることにもなります。

パラリーガルは経験や知識を豊かにしてくれる仕事

2004年の新司法試験制度が始まったことで、弁護士の数が増加し、早期に独立する弁護士も増えており、パラリーガルの需要も高まっています。

最初の動機は「ドラマなどを見て憧れた」というものであっても、「自分はどのようなパラリーガルになりたいのか」「どのような事務所で活躍していきたいのか」ということを具体的に定めていくことが大切です。

弁護士のアシスタントという立場であるため、法律の知識だけではなく、正確な事務処理能力や周囲へのコミュニケーションや気配りなどの目に見えない技術などが重要な仕事となります。

資格がないと始めることができないというわけではなく、最初から法律の深い知識を身につけている必要もないため、未経験からパラリーガルを目指す方も多いです。

そのため、まずは認定試験の勉強をしてみることや一般事務として法律事務所へ入り、身近に法律を感じながら学んでいくということを検討してみてもいいでしょう。

パラリーガルの経験はどこでも活かされる

パラリーガルの経験はいずれ弁護士などの士業になることを目指しているという方にとっても、実務を学ぶことができるので将来に役立てることのできる得がたいものとなります。

また、日本は法治国家なので法律の知識があるか無いかではいざという時に大きく差として現れます。

仮に将来法律家になる気はないという方でもパラリーガルという経験を一度すると法律に対する知識や意識が強くなり、日常生活で役に立つ場面が多く現れてくるはずです。