わたし達は普段の生活の中で買い物や食事、仕事などで大型商業施設やオフィスビルを利用することがあります。
何気なく当たり前のように出入りして利用していますが、各施設は管理・メンテナンスされていることを知っていますか。
大型商業施設で買い物しているときに、管理やメンテナンスをしている方を見かけることはあまりないので、建物を管理・メンテナンスする仕事があることも知らない方もいます。
建物の管理やメンテナンスをする仕事をビルメンテナンスといい、ビルメンテナンスの仕事を詳しく知らない方からは楽な仕事だと言われることがあります。
ですが、本当に大変さを1つも感じないような誰でもできる楽な仕事なのでしょうか。
それでは、ビルメンテナンスの仕事について、詳しく解説するので一緒に見ていきましょう。
大型商業施設やオフィスビルで活躍するビルメンテナンスの仕事について
ビルメンテナンスとは、大型商業施設をはじめ、オフィスビル、大規模な病院を含むビルを中心とした大規模な建物や設備を管理・メンテナンスする仕事です。
管理やメンテナンスといっても具体的に想像しにくいですが、簡単に言えば訪れる方が快適に利用できるよう環境を維持する役割を担っています。
誰でも簡単にできる仕事というわけではなく、大規模なビルではビル管理法に則って点検項目や検査方法が決まっていて、ビルの所有者に代わってビルメンテナンス業者が専門作業を行います。
法律に則って作業しなければならないため、ある程度の知識が必要になる仕事なのです。
次では仕事内容について詳しく掘り下げていきましょう。
ビルメンテナンスの仕事は大きく分けて3つ
ビルメンテナンスの仕事は大きく分けて3つあり、下の3つを中心に作業しています。
- 清掃
- 警備
- 設備管理(ビルメンテナンス)
清掃は、床面の掃除機かけやトイレ掃除、ゴンドラを使用した窓ふきなどが挙げられます。
警備は、建物の安全を守るために不審者のチェックをはじめ、入館受付けなどを行っています。
設備管理は点検作業がメインとなり、建物全体を点検する作業です。
点検する項目は膨大にあり、その一部を紹介します。
- 電気設備(電球や蛍光灯の交換から、ビル全体の停電時の点検など)
- 空調設備(エアコンの故障や整備など)
- 熱源設備(ボイラーや冷凍機の点検など)
- 消防設備(煙感知器やスプリンクラーの点検など)
- 衛星設備(トイレや洗面台の点検など)
- 給排水設備(水をビル内に送る設備や下水に配水する設備の点検など)
- 建築設備(エレベーターやエスカレーターの点検など)
- 監視業務(監視室で機械を監視する業務)
ざっと見ただけでも、大型商業施設やオフィスビル、大規模の病院などの中にある設備ばかりです。
他にもたくさんの点検項目があるのですから、意外と忙しくて大変な作業もあることがわかります。
ビルメンテナンスの仕事はどうして楽だと言われることが多いのか
ビルメンテナンスの仕事は、こんなにたくさんの点検項目があり、清掃や警備まで行っているのにどうして楽だといわれるのでしょうか。
それは、設備や機械そのものや各点検中に異常が起きたときのみ修繕対応するからで、特に異常がなければ点検のみで終わったり、最悪の場合仕事が無かったりするためとも言えます。
仮に、機械に異常が見つかった場合でも、自分で直せる簡易的な内容なら対応するものの、基本的には機械のメーカーや保守会社に修理を依頼します。
難しい修理や夜通し修理するようなことがないため、肉体的な負担が少ないことも楽だと言われる部分でしょう。
また、1日の仕事はほぼスケジュールが決まっているルーティンワークが中心です。
決まった時間に点検を行って記録を取る流れがほとんどのため、やはり楽だと言われてしまうのでしょう。
ビルメンテナンスの仕事は意外と覚えることが多い! 見た目や印象よりも大変な仕事だった!
ビルメンテナンスの仕事内容をざっと見ると、世間で言うように点検で異常がなければ楽な仕事だという印象を受けます。
ですが、これはあくまでも仕事内容に対しての話で、見えない部分ではとても大変な苦労がある仕事なのです。
はじめのうちは覚えることが多い
ビルメンテナンスの仕事は覚えることがとても多いことで知られています。
工具や道具の使い方をはじめ、点検のやり方や記録の付け方なども覚えなければなりません。
資格はなくても仕事は可能。だけど待遇面で大きく差が出る
業務上で資格がないと扱えない機械があり、同じく資格がないとできない点検作業があります。
また、資格を取得しないと昇給できないため、ビルメンテナンスで食べていくには多くの資格を取得する必要があります。
人間関係で悩むことがある
どんな仕事でも人間関係の悩みはよくありますが、ビルメンテナンスの仕事には変わった方も多いと言われています。
担当する建物によっては24時間の宿直勤務もあり、苦手な方や変わった方との宿直の場合は精神的にきついこともあります。
苦手な方との宿直勤務がたまに順番が回ってくる程度なら良いでしょうが、宿直のたびに一緒だと我慢もいつまで続くかわからないでしょう。
場合によっては、大きなストレスを感じるようになるケースもあります。
意外と汚れ仕事が多い
トイレやその他の排水管の詰まりを除去する作業、天井裏に上って作業することがあります。
日ごろの点検作業でも、普段は人が出入りしないようなところに入るので、予想以上に汚れる仕事が多いです。
高所作業もある
作業の中には、電球の交換や機械の上部の点検などがあります。
一般家庭では使わないような、大きな脚立を使うことも多いです。
大型商業施設などの電球交換ともなれば、一般家庭より明らかに高い天井のため危険も伴う作業となります。
不規則な生活になりやすい
ビルメンテナンスの仕事は、日勤・夜勤・宿直・夜勤明けなどのように、さまざまな勤務パターンがあります。
シフト制といっても1週間交代で日勤と夜勤が続いたり、数日おきに宿直勤務があるなど過酷なシフトが多いため、若い世代の方でも体力的にきついでしょう。
そのため、サラリーマンのように月曜から金曜まで働いて、土日に休むような規則正しい生活は期待できません。
そのほかでもきつい現場が多い
多くのお客さまが来店する大型商業施設、厨房が複数あるホテル、電気的なトラブルが生命にかかわる病院などでは、万が一にでも間違いがあってはならないので、点検作業といえども一切手を抜くようなことはできません。
ビルメンテナンスの仕事には複数のビルを巡回することや、築年数の多いビルを担当することもあり、場合によってはオーナーと一緒に点検しながら回ることもあります。
同じ敷地内に複数の建物がある場合も、同じ作業を繰り返し行わなければならないので、建物の種類や数によりきつい現場も多くあるのです。
ビルメンテナンスの仕事への転職ポイントを紹介
ビルメンテナンスの仕事は一見楽そうに見えても、資格取得が必要で大変な作業や現場が多いです。
それでもビルメンテナンスの仕事をやりたい! 転職したい! という方は、いくつかのポイントを押さえておくことをおすすめします。
ビルメンテナンスに必要な情報収集と資格を取得しておこう
ビルメンテナンスの仕事に転職を希望する方は、事前に情報収集をすることが必要です。
現在は、インターネット上でもビルメンテナンスに必要な情報を集めることができるし、転職サイトでも紹介しています。
転職する前に情報収集することは、転職活動をする上でも重要なステップで、転職を希望する業界研究はどんな業界に転職するとしても必要不可欠なことです。
そういった意味も含めて、しっかり情報を集めておきましょう。
また、転職する前でも取得できる資格は、なるべく取得しておいてください。
ビルメンテナンスで必要になる資格の中には、1週間程度の勉強で取得できる資格もあります。
1つでも役立つ資格を持っていれば、転職時の履歴書や面接でもアピールすることにつながります。
転職サイトを良く見てビルメンテナンスのホワイト企業を把握しておこう
ビルメンテナンスの会社にもホワイト企業とブラック企業があります。
せっかく転職するのだから、ホワイト企業を見極めて応募したいものです。
ホワイト企業とブラック企業を見極めるには、いくつかの項目をチェックすることがおすすめです。
転職サイトをいくつかチェックして、この企業は大丈夫そうだなどのように、ホワイト企業に目星をつけておくと良いでしょう。
インターネット上の転職サイトを利用するなら、ホワイト企業と思われる求人に対して「気になる」「キープ」「お気に入り」などの機能を使ってチェックするとわかりやすいです。
ホワイト企業の特徴
- 年間休日120日以上
- 諸手当がある
- 有資格者の数
ブラック企業の特徴
- 年間休日100日以下
- 自社のHPがない
- 管理物件がわからない
履歴書と職務経歴書を作成して面接対策も忘れずに
転職する前にじっくりと作り込んでおきたいのが履歴書と職務経歴書です。
履歴書は、ビルメンテナンスに役立つ資格を持っている方はしっかりと記載して、強く自己アピールできるようにしておきましょう。
資格がない方は、性格や前職での経験を踏まえた自己アピールを記載して、ビルメンテナンス会社で働きたい意思を伝えるようにしてください。
ビルメンテナンスの仕事は、基本的には機械を相手にする仕事が多いのですが、ビルに入っているテナントとのコミュニケーションも大切です。
そのため、コミュニケーションスキルが高いことや、学生時代は何らかのスポーツでキャプテンだったなどの経験もプラスに作用するでしょう。
ビルメンテナンスで必要になる資格についておさらい
ビルメンテナンスの仕事は、実際に働き始めてから取得しなければならない資格がいくつもあります。
転職時はもちろんのこと、会社の中で昇給するときや、大手ビルメンテナンス会社にさらなる転職をする際にも資格が重要なアピールポイントになります。
そこで、ビルメンテナンスで必要になる資格のうち、代表的な入門資格5つを紹介します。
ビルメンテナンスで働くなら取得しておきたい! ビルメン入門資格5つ
ビルメンテナンスで働く上で、最初に取得を目指したい資格は全部で5つあります。
どれも、ビルメンテナンスで働くなら取得するのが一般的なので、取得しやすいものからでも良いのですべて取得するようにしましょう。
- 危険物取扱者乙種4類
- 2級ボイラー技士
- 第二種電気工事士
- 第三種冷凍機械責任者
- 消防設備士
危険物取扱者乙種4類は重油など危険物に関する資格で、主にガソリン、アルコール類、灯油、軽油、重油、動植物油類などの引火性液体を扱うことができる資格です。
2級ボイラー技士は国家資格で、暖房に使用されるボイラーに関する資格です。ビルメンテナンスで働く上でも需要の高い資格となっています。
第二種電気工事士は、建物の600ボルト以下で受電する設備の工事に従事できる資格で、ビルメンテナンスの業務上ではコンセントの交換や蛍光灯の安定器の交換業務に必要不可欠な存在です。
5つの資格の中でも必ず取得した方が良いと言われています。
第三種冷凍機械責任者は、1日の冷凍能力が100トン未満の冷凍設備がある建物に必要な資格で、主に冷凍に関わる高圧ガスを製造する施設で保安業務を行います。
大型ビルを管理するビルメンテナンスには必須の資格のため、冷凍機の知識は十分学んでおくようにしましょう。
第三種冷凍機械責任者は、入門編の5つの資格の中でも難易度が高めなので、早めに勉強を始めるのがおすすめです。
ここまでの4つの資格のことを、ビルメン4点セットなどといいます。
5つめの消防設備士は、ビルの消防に関する重要な資格です。
ひと口に消防設備士といっても実は次のように細かく分かれています。
消防設備士の資格
- 甲種特類:特殊消防用設備等
- 甲・乙種第1類:屋内消火栓設備、スプリンクラー設備など
- 甲・乙種第2類:泡消火設備
- 甲・乙種第3類:ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備など
- 甲・乙種第4類:自動火災報知機、ガス漏れ火災警報設備など
- 甲・乙種第5類:救助袋、緩降機
- 乙種第6類:消火器
- 乙種第7類:漏電火災警報器
消防設備士の資格は、取得した資格の範囲でのみ点検や整備を行うことができます。
また、乙種は点検と整備が可能、甲種は点検と整備、工事まで行うことができます。
なお、ビルメン4点セットに消防設備士の資格を加えて、ビルメン5点セットと呼ぶこともあります。
長くビルメンテナンスで働くなら取得したい! 高難易度の資格3つ
ビルメンテナンスで長く働いていくには、入門編の資格のほかに難易度の高い資格も狙うことがおすすめです。
取得が難しいと言われる資格には、下記の3つがあります。
- 建築物環境衛生管理主任技術者(ビル管)
- 第3種電気主任技術者
- エネルギー管理士
建築物環境衛生管理主任技術者は通称ビル管とも呼ばれる資格で、面積3000㎡以上(学校は8000㎡以上)の建物には必ず有資格者を選任しなければならない資格のため、大きな建物に携わるなら需要が高い資格です。
ビルメンテナンス会社で長く働こうと思う方は、取得しておきたい資格です。
第3種電気主任技術者は、5万ボルト未満の事業用電気工作物を扱うときに有資格者を選任しなければならないため、こちらも需要が高い資格です。
大型ビルのビルメンテナンスの所長などを目指すなら、必ず取得しておくようにしましょう。
エネルギー管理士は、エネルギーを消費する設備の維持や、エネルギーの使用方法の改善や必要に応じて監視を行うことができる資格です。
ビルメンテナンス会社でワンランク上の立場で働くなら、この3つの資格は必ず取得しておくようにしてください。
また、この3つの資格はビルメン3種の神器ともいわれており、この3つの資格を持っていればビルメンテナンス業界どこでも活躍できると言われています。
ビルメンテナンスへの転職を考えているなら資格取得も重要
ビルメンテナンスの仕事は、世間では楽な仕事だと言われていますが、実際には汚れ仕事が多くて資格もたくさん必要になる厳しい仕事です。
ですが、仕事のきつさを乗り越えて資格をどんどん取得していけば、昇給や昇進も期待できることが魅力です。
ビルメンテナンスへの転職を考えている方は、まずはビルメンテナンス業界について情報収集を行い、取得できる資格はどんどん取得するようにしましょう。
資格の中には難しい資格もありますが、じっくりと勉強を重ねていけば取得できる資格がほとんどです。
ビルメンテナンスの仕事への転職で成功するためにも、さまざまな資格を取得していきましょう。