通勤時間が長くてイライラ、混雑した電車やバスの通勤が辛いなど、通勤の悩みを抱える方は多いでしょう。

通勤中や通勤時間のストレスの原因はいくつかあり、通勤のストレスは仕事のパフォーマンスや心身にも影響を及ぼすので、上手に対処することが大切です。

そこで、このコラムでは通勤時間のストレスの原因、通勤時間のストレスで懸念されることやストレスの対処法と併せて、日本で働く人が通勤にどれくらいの時間をかけているのかを紹介します。

通勤時間がストレスの方は多い

日本で働くほとんどの方は通勤時間の長さ、駅や車内の混雑など、通勤に関するストレスを感じたことがあるでしょう。

通勤時間や通勤中のストレスは仕事のパフォーマンスに影響を及ぼすだけではなく、心身の不調の原因となることも懸念されます。

通勤時間の平均

スイスの研究者アロイス・スタッツァー氏とブルーノ・フライ氏の研究発表によると、人が幸せに感じる通勤時間は20分、30分以上になるとストレスを感じるということです。

通勤時間が長いことにストレスを感じる方は多いですが、日本で働く方は通勤時間にどれくらいかけているのか、地域ごとに違いがあるのかをNHK放送文化研究所(世論調査部)の「2015年国民生活時間調査報告書」から見ていきましょう。

2015年の調査では、平日の勤め人の往復の通勤時間の平均は1時間19分です。男女別で見ると男性は1時間27分、女性は1時間8分と男女で19分の差があります。

平日往復の平均通勤時間

項目

時間・分

勤め人全体

1時間19分

男性勤め人

1時間27分

女性勤め人

1時間8分

東京圏

1時間42分

大阪圏

1時間26分

30万以上の市

1時間9分

10万以上の市

1時間11分

5万以上の市町村

1時間11分

5万未満の市町村

1時間8分

2015年にオウチーノ編集部が首都圏と近畿圏在住の22~60歳のビジネスパーソン400名(男女200名ずつ)を対象としたインターネット調査でも、女性の方が男性よりも通勤時間が短いという結果になりました。

女性の方が男性よりも朝の身支度に時間がかかる傾向にあること、夜は防犯面から早く帰宅できる方が安心、家事や子育てにかける時間が多いことなどから、優先時間の短さは家選びで重要度が高くなると分析されています。

都市規模別に見ていくと、人口規模5万人未満の市町村でも通勤時間は1時間8分と1時間を超えていて、大阪圏では1時間26分、東京圏では1時間42分と約1時間30分~2時間通勤に時間をかけていることになります。

リクナビNEXTが2015年にビジネスパーソン2,315人を対象としたインターネット調査「通勤についてのアンケート」の全国と首都圏在住者の回答を比較すると、片道の通勤時間が全国では15分未満が20.1%、15分~30分未満が27.5%と30分未満で通勤できる方が50%弱いるのに対し、首都圏では15分以内が9.5%、15分~30分未満が18.9%と30分未満で通勤できる方が30%にも満たないです。

通勤時間2時間以上の方の割合は全国も首都圏も最も少ないことを除くと、30分以上の割合が全国よりも首都圏の方が高くなること、全国では通勤時間30分未満の方と30分~1時間30分未満の方の割合がほぼ同じなのに対して、首都圏では30分~1時間30分未満の方の割合大幅に高くなることからも、東京圏(首都圏)は他のエリア在住者よりも通勤時間が長いと言えるでしょう。

時間

全体

首都圏

15分以内

20.1%

9.5%

15分~30分未満

27.5%

18.9%

30分~1時間未満

35.1%

43.3%

1時間~1時間半未満

13.9%

22.0%

1時間半~2時間未満

3.0%

6.0%

2時間以上

0.4%

0.4%

通勤中を苦痛に感じる要因

通勤時間が長くて疲れるため、通勤で利用する電車が混雑していて辛いためなど、通勤に関して特にストレスを感じることは人によって異なります。

上記のリクナビNEXT「通勤についてのアンケート」では、「通勤を苦痛に感じているか」「最も苦痛に感じることは何か」についても調査しています。

これらも全国と首都圏で比較すると、通勤時間の長さとストレスの関連が分かるでしょう。

通勤を苦痛に感じているか尋ねたところ、全国では46.4%が、首都圏では56.0%が「感じる」または「やや感じる」と回答していることから、通勤時間の長さや長時間の通勤中の環境がストレスの要因となっていると推測されます。

通勤時間を苦痛に感じるか

項目

全体

首都圏

感じる

18.3%

24.0%

やや感じる

28.1%

32.0%

あまり感じない

33.6%

29.7%

感じない

20.0%

14.3%

最も苦痛なことを尋ねると、全国では「早起き」、首都圏では「満員電車」が最も高い割合を占めました。

通勤で最も苦痛に感じること

項目

全体

首都圏

満員電車

30.4%

48.5%

早起き

47.9%

36.5%

長時間の移動

18.6%

13.2%

暇つぶし

1.6%

0.8%

その他

1.5%

1.0%

通勤時間が長くなるほど早く起きる必要があるため、通勤時間が長い人ほど早起きを苦痛に感じている可能性があります。

職場と自宅の距離があるほど帰宅にも時間がかかり、職場と自宅が近い人と比較すると就寝時間が遅くなりやすいです。就寝時間が遅くなれば睡眠時間が短くなり、睡眠不足で早起きを辛いと感じるでしょう。

満員電車でも通勤を辛いと感じる方が多いですが、平成30年に国土交通省が発表した調査を見ると、定員乗車の混雑率を100%とすると三大都市圏主要区間の平均混雑率は東京圏は161%、大阪圏は125%、名古屋圏は131%で、ピーク時における東京圏の主要31路線のうち11路線は180%を超えていて、中には200%に近い路線もあることから、都市圏の混雑度合いの高さが分かります。

三大都市圏主要区間の平均混雑率

三大都市圏

混雑率

東京圏

163%

大阪圏

125%

名古屋圏

131%

混雑率180%を超えている主要11路線

個別路線

混雑率

東京地下鉄東西線

199%

東京都日暮里舎人ライナー

187%

東急田園都市線

185%

JR東日本総武緩行線

197%

JR東日本横須賀線

196%

JR東日本南武線

189%

JR東日本東海道線

187%

JR東日本京浜東北線

186%

JR東日本埼京線

185%

JR東日本中央快速線

184%

JR東日本総武快速線

181%

混雑率100%で座席や吊革やドア付近の柱につかまることができる程度、150%で新聞を広げて楽に読める程度、180%で新聞を折りたためば読める程度、200%で身体が触れ合い強い圧迫感があるが週刊誌なら読める程度が目安なので、混雑率が高くなるほど心身共に疲れてストレスを感じるでしょう。

混雑率の目安

混雑率

状況

100%

定員乗車、座席につく、吊革につかまるか、ドア付近の柱につかまることが出来る

150%

広げて楽に新聞を読める

180%

折りたたむなど無理をすれば新聞を読める

200%

体が触れ合い相当圧迫感があるが、週刊誌程度なら何とか読める

250%

電車にゆれるたびに体が斜めになって身動きができず、手も動かせない

国土交通省 国土交通政策研究所「交通の健康学的影響に関する研究Ⅰ第2章平成15年度調査について(鉄道利用時における通勤ストレス調査)」で混雑率が150%を超えるとストレスを「少し感じている」「強く感じている」という回答が増えることから、平均でも150%を超えていて180%を超える路線がいくつもある首都圏では、通勤で最も苦痛なのは満員電車という方が多いことと共通します。

長時間移動は、通勤ストレスの要因として全国・首都圏共に早起きと満員電車には及びませんが、国土交通政策研究所の鉄道利用における通勤ストレス調査で通勤時間40分以内は通勤ストレスを「あまり感じていない」「どちらとも言えない」という回答が最も多いですが、40分を境に「少し感じている」が最も多くなり、60分以上になると「強く感じている」という回答者が増えることから、長時間の通勤はストレスの要因であると言えるでしょう。

【参考】
混雑率の推移-国土交通省
報道発表資料:東京圏で混雑率180%超の路線が12路線から11路線へ ~都市鉄道の混雑率調査結果を公表します~-国土交通省

長時間の通勤が心身に与える影響

通勤に関する2つの調査の結果だけでも、通勤中の環境や通勤時間がストレスの原因となっていることが分かります。

国土交通省の調査では生物学的指標の分析も行っていて、電車に乗る時間が長いほど疲労が慢性化しやすいという結果が出ていることから、長時間の通勤が心身に影響を与えることが考えられます。

そこで、長時間の通勤で心身に起こり得る影響をチェックしましょう。

ストレスホルモンの分泌

不快・不安といったネガティブな感情を抱く状況になると、ストレスホルモンとして知られる「コルチゾール」の分泌量が増えます。

長期にわたるコルチゾールの過剰分泌は、脳の海馬の萎縮や炎症のコントロールの悪化、うつ病などを引き起こすリスクが疑われています。

満員電車に長時間乗って不快な感情や疲れが長く続けば、コルチゾールの分泌も過剰に続くので、心身への悪影響が懸念されます。

【参考】ストレスホルモンを測る|労働安全衛生総合研究所

睡眠不足による不調

通勤に時間がかかるほど朝は早く起きなければならず、帰宅は遅くなるので睡眠不足になりやすいです。

睡眠不足が解消されないと、日中の強い眠気、意欲低下、記憶力減退といった仕事のパフォーマンスに影響を及ぼしかねない不調に加え、体内のホルモン分泌や自律神経機能にも影響します。

健康な人が4時間睡眠を2日間続けただけで、レプチンという食欲を抑えるホルモン分泌が減少してグレリンという食欲を高めるホルモン分泌が増加して食欲が増すと言われています。

慢性的な睡眠不足の方は、糖尿病や心筋梗塞や狭心症などのリスクが高いことも明らかにされています。

【参考】三島和夫「睡眠と生活習慣病との深い関係」(e-ヘルスネット)厚生労働省

集中力の低下

睡眠不足による日中の強い眠気や意欲の低下などは、集中力にも影響を及ぼします。

長時間通勤で遅く寝て早く起きるのが習慣化することで、眠くて頭が働かない、不調で何もできないといった状態になり、十分な睡眠で心も身体も元気な時よりも仕事に集中して取り組むことが難しくなります。

長時間通勤は体力の消耗が激しく、通勤だけで疲れてしまい、注意力が散漫になりやすいです。

精神面の不調

長時間通勤は身体的に疲れやすくなるだけではなく、会社の近場に住んでいる方よりも電車の遅延などで遅刻のリスクが高いので、通勤自体に様々な不安を抱きやすいです。

混雑した車内で体調不良にならないか、電車が止まって会社に遅刻しないか、電車が遅延しても会社に間に合うようにもっと早く家を出た方が良いのではなど、通勤そのものがストレスとなりやすく、通勤中にトラブルが生じたら不安がより強まります。

通勤時間が長ければストレスやマイナスの感情が長く続くことになり、不安を感じやすい、イライラしやすいなど、精神が不安定となり精神的にも疲れやすくなります。

身体の不調

通勤に長い時間がかかることでプライベートの時間が短くなる、車内で長時間同じ姿勢で過ごさなくてはならないなどで身体を動かす機会が少なくなります。

運動不足は様々な身体の不調や疾患の原因となる肥満、筋力の低下、筋肉量の減少などにつながります。

また、長時間同じ姿勢でいたり立ったままでいたりすると、血行不良になりやすいです。血行不良はむくみ、冷え性、肩こり、腰痛、関節痛などのリスクが高くなります。

【参考】
身体活動・運動不足|生活習慣病とその予防|一般社団法人 日本生活習慣病予防協会
血行不良|健康ひとくちメモ|大協薬品工業株式会社

通勤時間のストレスの対処法

通勤中に好きなことをすると、混雑で感じるイライラを紛らわすことを期待できます。

また、長い通勤時間を有効活用する、早起きを通勤のためではなくて通勤中に好きなことをするためと捉えるなどでも、辛い気持ちが和らぐでしょう。

通勤自体がストレスであれば、少しでも混雑を避けられる車両にする、通勤時間帯を変えるなど、通勤ストレスの原因に対処する必要があります。

通勤時間のストレスへの対処に有効な方法を試し、心身の不調を予防しましょう。

心と時間に余裕を持つ

通勤中の不安やイライラは、時間に余裕がないために遅刻しないか不安になる、電車が時間調整で止まって混雑の悪化や遅刻の可能性が高くなってイライラしてしまうといった状態です。

早めに出かければ、通勤中にトラブルが生じても時間に余裕があるおかげで、遅刻しないか不安になったりイライラしたりする前に、遅刻を回避するための正しい対処法を選択することが可能です。

通勤中のマイナスの感情で精神的な疲れを予防するために、時間に余裕を持って通勤することを心がけましょう。

自分なりの楽しみを見つける

長時間の通勤や満員電車でも自分の好きなことができれば、通勤中の辛さを感じにくくなるでしょう。

音楽を聴く、本を読むこと以外にも、立ったままできるトレーニングをする、ポイントサイトのアンケートに回答してポイントを貯めるなど、時間を有効活用できることに取り組むのもおすすめです。

スマートフォンを出したり吊革に掴んだりできないほど混雑しているのであれば、近くにいる人の趣味や性格を想像してみる、欲しい物や出かけたい場所を考えるなど、混雑している状況に注意が向かないように楽しくなることを考えて過ごしましょう。

空いている車両に乗る

自宅から会社が遠ければ、通勤ラッシュを避けるために早起きして出かけるのに限界があり、混雑によるストレスを感じない代わりに、早起きによるストレスを感じるようになることが考えられます。

ラッシュ時に電車に乗らなくてはならない場合、ラッシュ時でも比較的混雑度が低い車両に乗ることで、混雑によるストレスを感じにくいでしょう。

一般的に駅中央に階段やエスカレーターのある駅が多いことから、車両前方や後方は空いている傾向にあるので、少しでも混雑しにくい前方や後方車両をおすすめします。

通勤時間帯をずらす

上記で参照したNHKが2015年に実施した調査の報告書によると、朝の出勤のピークは7時45分~8時ということなので、この時間帯を避けて通勤すれば通勤時の混雑を避けやすいでしょう。

早朝にスキルアップのための学習や情報収集を行う、お気に入りのカフェでモーニングをするなど、早起きの目的があると通勤の混雑によるストレス緩和のための早起きをしやすくなるのでおすすめです。

【参考】国民生活時間調査 – NHK

意識を変える

通勤自体がストレスであれば、通勤をポジティブに捉えられる時間に変えてみましょう。

気に入ったファッションをして明るい気分を保てるようにする、出勤ルートを変えて新しい発見や新鮮な気分を楽しむなど、出勤が楽しくなることを取り入れてみてください。

通勤時間のストレスを上手に対処して心身ともに健康を維持する

通勤をストレスに感じる方は多く、通勤時間の長さ、満員電車、通勤のための早起きなどが原因となっています。

通勤時のストレスは仕事のパフォーマンスに限らず心身にも影響を及ぼすので、混んでいる時間や車両を避けて通勤する、好きなことをしながら通勤するなど、ストレスの原因を上手に取り除くことで、心身の健康を維持しながら仕事をこなしていけるでしょう。