「年長者は敬うもの」と教えられてきた私たちにとって、年上の部下は扱いにくい存在だといえます。

では一体、どうすれば円滑なコミュニケーションを取れるのでしょうか。

今回は年上部下の増えている背景や、今すぐに使える接し方のテクニックについて紹介していきます。

年上部下が増えている理由

一昔前の日本であれば「年上部下の扱い方がわからない」という悩み自体がレアなものでした。

なぜこのような状況が増えているのか、まずは4つの背景について知っておきましょう。

1.年功序列から成果主義の時代に

1つ目は、出世の基準が年齢ではなく成果傾向になったことです。

若者でも仕事のできる人はどんどん出世でき、良くいえば「平等」に評価されるようになったといえます。

しかし一方で、年上部下のような難しい関係を生む要因にもなっているのです。

2.終身雇用の崩壊

2つ目は、終身雇用の崩壊です。

終身雇用でなくなることは、ずっと同じ会社で働き続ける人の減少を意味し、30代後半~40代といったミドル層での転職者が増えることにつながります。

転職後すぐに役職へ就くことは滅多にないので、年上部下×年下上司の形ができやすくなるのです。

3.定年後の再雇用者の存在

昨今は定年後も働き続ける人が多く、中でも同じ企業で雇用され続けることを「再雇用」といいます。

再雇用者は定年前より責任の軽い仕事に就いたり、アルバイトや契約社員などの非正規となったりする場合が多いので、必然的に年下のもとで働くケースが増えてくるるのです。

4.問題の多い人が未経験部署に飛ばされる

4つ目は、他部署で厄介者扱いされている人が飛ばされてくるパターンです。

たとえば、何年も同じ部署で働いていた人が、自分の苦手な仕事を他人に押しつけるといった問題行動を続けていたとしましょう。

会社側も簡単に解雇することはできませんから、未経験部署に飛ばして何とか事を治めようとするわけです。

そうなると、その人は必然的に他部署で年上部下というポジションに就くことになります。

それでも、年齢に縛られる必要はない

日本企業は海外と比較しても、かなり年齢に束縛される文化が根付いていることは事実です。

しかしどんな理由であれ、あなたは会社側に認められた「上司」という立場。これは素直に認める必要があります。

年上部下との上手な接し方

ここからは具体的な接し方について、5つのテクニックを紹介していきます。

1.言葉遣いは敬意で

部下とはいえ、やはり年長者であることに変わりはありません。

なので彼らのプライドを傷つけないためにも、タメ口は控えましょう

ちなみに、初めから誰にでも敬語を使うようにしておくと困らないのでおすすめです。

私の知り合いでも、そういった意味でアルバイトにも必ず敬語を使っている人がいました。

2.遠慮しすぎて曖昧な指示を出さない

年上に指示を出すのは、どうしても気が引けることですよね。

でも変に曖昧な指示を出すとトラブルのもとになったり、言った言わなかったで食い違いが起きたりして、後々厄介なことになります。

実際に年長者は経験豊富なので、具体的な依頼をしつつも解決策は本人にゆだねるようにすると上手くいきやすいでしょう。

3.プライドを傷つけない

年下上司には、これまでの仕事を通して培ってきた持論をもっている人が多いです。

なので指示をするときは「○○しないように」と否定的な言葉を使わず、「○○するように」と肯定的に指示すると良いでしょう。

またプライドを傷つけないように、もし注意するときは人前で言わないことをおすすめします。

4.適切なポジションに割り振る

長く仕事をしてきているからこそ、どんな役割が適切かわかりやすいともいえます。

本人と対話してどんな仕事をしたいか直接聞いてみたり、これまでどんな仕事をしていたか周りの人に確認してみるのもいいでしょう。

積極的に役割を与えることは、本人のモチベーションUPにもつながるはずです。

5.たまには相談を持ち掛けてみる

どんな人であれ、頼られて悪い気はしないはず。特に年長の人ほど、年下に相談を持ち掛けられるのは嬉しいことです。

たまにはこちらから心を開いて、年上への敬意を示してみてはどうでしょうか。

仕事のできない年上部下はどう扱えばいい?

年上部下が増えている理由の4つ目にも挙げた通り、必ずしも仕事のできる人が部下になるとは限りません

ただでさえ扱いにくい年上部下が仕事のできない場合、どう対処すればいいのでしょうか。

とにかく本人と話す場を設ける

まずは年上部下がいったいどんな性格の人なのか、詳しく知る必要があります。

たとえば、こだわりの強い職人気質の人であれば黙々とこなせるな仕事を割り振ってみる、目立ちたがりな人であればプレゼンなどの人前に立つポジションに置かせる、といったところです。

対話を通して本人の強みを引き出すことができれば、あなた自身のマネジメント力向上にもつながります。 

できるだけ具体的な指示を出す

マイルールがあってなかなか言うことを聞かない人であれば、誰よりも具体的な指示を出すように努めましょう。

何を、何のために、どうやって、いつまでに、と細かく伝え、さらに保険をかけるならメモに残すといった方法も取ってみてください。

いろんな仕事を割り振って様子をみる

本人の情報を集めてもイマイチわからない、仕事へのモチベーションも低いようなら、あらゆるタイプの仕事を割り振ってみるしかありません。

根気のいるマネジメントにはなりますが、何かしら1つはハマるものがあるはずです。

それでも難しいようなら、最終的に人事や他の上司仲間に相談してみましょう

年上部下の存在は人間力を高めるチャンス

日本人の性格として、年上部下との距離感を保つのは難しいもの。

今回紹介したことを1つ1つ意識していくのはめんどくさいかもしれませんが、上手く接することができればあなたの成長にもつながり、年上部下の存在が大きな味方になるかもしれません。

また仕事のできない部下の扱い方は、生涯を通して役立てられるテクニックにもなります。

ハズレくじを引いたと悲観せず、チャンスだと思いながら向き合ってきましょう。