マルチタスクとは

マルチタスクの意味は、複数の作業を同時にまたは短時間に切り替えながら実行することを言います。語源としては、コンピュータに利用されている言葉で、意味としては同時に複数の作業を処理するコンピュータに関する機能を示します。

英語の意味だけで考えると、マルチが「多くの」で、タスクが「仕事」を意味するので、多くの方がある程度意味を連想できる言葉でもあるでしょう。シングルタスクとマルチタスクの意味の違いは、シングルタスクが一つの物事に集中して行うことです。

普段仕事をしている職場でも、「あなたはマルチタスクなタイプだ」と会話の中で使用されることもあるので、しっかりと意味を把握しておくと良いです。

マルチタスクの本質

マルチタスクは脳のスイッチを高速で切り替えているだけ

マルチタスクは、同時に複数の作業を処理している様に見えますが、実際には複数の仕事に合わせて脳のスイッチを高速で切り替えている状態なので、大幅に全体の処理速度が上がったとは言えないでしょう。

人間は集中することで処理能力を上げられますが、長時間にわたるマルチタスクで高速な処理を行うことは難しいです。人が集中して一つのことを処理している時は処理速度が高い状態を維持できますが、それでも長時間になる時は処理能力の維持が大変です。

人間の処理能力は、脳の処理能力についての解明が全て行われたわけではないので、マルチタスクも含めてどのような処理が最も良いのかは難しいところもあります。

タスク・スイッチングは生産性を40%下げ脳が収縮する原因になると指摘

著者であるデボラ・ザック氏は「SINGLE TASK」の本の中で、タスク・スイッチング(複数のタスクを短時間に行き来すること)は生産性を40%下げるだけでなく、脳が収縮する原因になると指摘しています。

普通に生活している時でも、テレビを見ながらスマートフォンを見ている方もいますが、この行動が生産性を下げて脳に影響があるということは、意外と知られていないでしょう。確かにテレビに集中することで、より様々な情報を把握することができるとも考えられます。

デボラ・ザックは、マルチタスクで短時間に高速でスイッチを切り替えようとすると脳がオーバーロードして、脳内のタンパク質が収縮すると言及していますが、もしも長期間マルチタスクをしていることで脳に悪い影響がある可能性を知っていれば、意識的にシングルタスクに切り替える方も多いでしょう。

参考/Forget Multitasking. Real Productivity Comes From Singletasking

マルチタスクの影響

マルチタスクは複数のことを同時進行するため、集中力が分散する

マルチタスクの悪影響として、複数のことを同時進行する状態なため、1つのことに集中できず結果的に集中力が分散してしまう点があります。

集中力が分散してしまうことで、特に一定時間集中しないとできない作業などについては、特に人間の処理能力が低下することがあるので注意しましょう。

また、マルチタスクは実際は脳のスイッチを高速で切り替えているだけなので、短時間に何度もスイッチを切り替えることで、脳に大きなストレスがかかります。意識しないでいるとマルチタスクで処理をしている方などは、意図的にマルチタスクだけでなくシングルタスクも使用して、仕事などを処理してみるのもおすすめです。

マルチタスクで作業を中断してしまうと集中力が戻るまで時間が必要

元来人間の脳は、同時に複数の物事を処理する様にはできていないため、一度マルチタスクの作業を中断すると集中力が戻るまでに時間を必要とします。

マルチタスクは仕事の忙しさで仕方なくとる手段なので、普段の仕事ではできる限りマルチタスクにならないよう、注意した方が良いでしょう。

マルチタスクの本来の意味と例

マルチタスクとは元々はコンピュータ用語

マルチタスクは元々コンピュータ用語で、例えばネットサーフィンをしながらチャットをするなどといった1台のコンピュータで2つ以上の処理を同時に進行することを言います。

厳密に言うとコンピュータの中には、多くの場合1個の処理を行うCPU(中央演算処理装置)が搭載されているので、一つずつ処理を行っていますが人間からコンピュータを見た時は、それが高速で処理されていることもあり、同時に処理されていると感じます。

マルチタスクは人間が複数のタスクを並行して行うこと全般も意味する

普段使用されているマルチタスクの意味として、コンピュータ上での作業だけでなく、最近では文章の印刷中にメールの返信を行ったり、ある仕事の隙間時間に別の仕事に取り組むなど、複数のタスクを平行して行うこと全般を指すようになっています。

複数の仕事を一緒に行うことをマルチタスクという短い言葉で表現できるので、一般的に忙しい仕事現場などではマルチタスクと言う言葉を使用するケースも多いでしょう。

マルチタスクの意味を詳細に考えてみると、コンピュータであっても本当の意味で平行して処理していないと指摘する方もいますが、マルチタスクはそれでも同時に物事を処理することを意味するので、あまり細かな意味を気にしないで使用すると良いです。

マルチタスクのメリット

飽きずに仕事ができる

マルチタスクのメリットは、単調な作業が続く時に複数の処理を同時に行うことで気分転換になるため、飽きずに仕事ができる点が挙げられます。

単調な作業を一つだけ行った場合と、複数の単調の作業を同時にこなすケースとを比べると、集中力を維持できるだけでなく、全体として仕事の進み具合もマルチタスクの方が早いといえます。

仕事を同時進行する達成感

シングルタスクと比較すると、マルチタスクは仕事を同時進行する達成感が得られるのもメリットの一つです。上手に同時進行すれば、仕事の質もそれほど下げることなく、短い時間でより多くの仕事ができるので満足感を得ながら仕事を進めることが可能です。

同時進行で仕事をすることは、疲れると感じる方もいますが、簡単な業務であればマルチタスクで仕事を行ってもしばらくすると慣れてきて、スムーズに仕事を行えるでしょう。

同じ時間で作業効率を伸ばせる

マルチタスクの他のメリットとしては、同じ時間で複数の作業を効率良く実施できることです。作業の工程で待ち時間のあるものについては、待っている時間に他の仕事をマルチタスクで行うことで作業効率がかなり向上します。

このような意味から、普段の仕事の中でもマルチタスクとシングルタスクを使い分けて処理する習慣があると、同僚や上司にも要領の良い社員だと思ってもらえます。

マルチタスクがどうしても苦手な方でも、どの仕事をどこまで行ったのかメモを取るようにすることで、マルチタスクを行う時のスイッチの切り替えが簡単にでき、同時に複数の仕事もこなせる様になるでしょう。

作業効率が落ちても結果的に多くの結果を得ている

マルチタスクは、作業内容によっては作業効率が落ちてしまうと感じることがありますが、結果的には多くの結果を得ているのもマルチタスクの利点でしょう。

マルチタスクで作業を行っている際に、仕事内容の切り替えを頻繁にやり過ぎると、自分の頭の中で混乱するケースがありますが、落ち着いて作業内容を切り替えながら1つ1つ処理すれば、多くの仕事を限られた時間で行うことが可能です。

マルチタスクのデメリット

生産性を低下させる

マルチタスクのデメリットして、それぞれのタスクに対して集中力が下がり生産性が低下する恐れがあります。これは結果的にタスクに対してミスが起こる可能性が上がることにもつながるので、マルチタスクで作業をする場合は知っておいた方が良いでしょう。

人間はコンピュータとは違った脳の構造をしていて、複数のタスクを同時に処理すると疲れも早く来ます。それを理解した上でマルチタスクの処理をするのも、ミスワークをしないためのポイントになります。

タスク・スイッチングによる余計な時間とエネルギーが必要

タスクの切り替えである、タスク・スイッチングを行う時に余計な時間とエネルギーが必要な点もマルチタスクのデメリットとです。例えば、資料作りからメールの返信にタスクを切り替える時は、メール返信に必要な情報を集めてから取り掛からなければならないため、エネルギーが必要になります。

資料作りに戻る際は、また資料作りに関する情報を思い出すことから始まるので、タスク・スイッチングによるロスが発生します。

マルチタスクによるIQの低下

マルチタスクについては、様々な研究が行われていますが、目の前の作業だけでなく、認知的機能にも悪い影響を与える結果、IQが低下する可能性があることも知られています。

マルチタスクで処理すればIQの高い処理を行っている様に見えますが、実際にはIQを低下させて仕事全体の効率を下げてしまっているのです。

参考/Integrating knowledge of multitasking and interruptions across different perspectives and research methods

シングルタスクの方が集中できて仕事の質が高い

マルチタスクとシングルタスクの大きな違いは、シングルタスクの方がフロー状態(集中した状態)になるので仕事の質が高いことです。シングルタスクでは1つ1つに集中できるため、成果物の質が高くなり自分でも納得のいく業務ができるでしょう。

またシングルタスクは、1つのことを集中して行うので作業時間の短縮につながり、結果的にマルチタスクに比べて多くの仕事ができる場合もあります。

マルチタスクは良くないのか?

デメリットが多く見られるが一概に悪いものだと言えない

実際にマルチタスクは効率が悪いと言う方もいれば、逆に効率が良いと言う方もいます。

良いと感じる方の中には、もともとマルチタスクが得意な方もいるので、簡単にマルチタスクによる仕事の処理が効率が良いか決めるのは難しいでしょう。

仕事の種類によっては、マルチタスクで簡単に処理できて効率アップするケースもあるので、マルチタスクに対する認識は、柔軟性をもって考えるのもポイントです。

自分にあった方法で作業するのがおすすめ

シングルタスク向きか、マルチタスク向きかは、個人によって異なるので自分にあった方法を選択して作業しましょう。

注意点として、マルチタスクは脳に良くない影響を与えてしまうことも事実なので、短時間のマルチタスクとシングルタスクの切り替えであるタスク・スイッチングを頻繁に行うのは避け、計画を立てた上で適度な休憩をはさむ様にすると身体への負荷も少なくて済むでしょう。