短期雇用の中には作業の多い夏の間だけとか季節的に雇用する季節雇用というものがあります。
ここでは季節労働で働いて稼ぎたいという人に、季節雇用の良いところ、悪いところをそれぞれまとめてみました。
季節労働とは
まずは季節労働の定義について詳しく知りましょう。
きせつ‐ろうどう〔‐ラウドウ〕【季節労働】
1 季節によって仕事の量に大きな差のある業種での労働。農業・北洋漁業など。
2 農閑期などに、本業以外の労働に従事すること。
参考:Weblio辞書
このように、本業に時間ができた場合などに、季節間だけの労働をするのが季節労働です。
季節に応じて台風や大雪が発生することで本業ができなくなる期間があるという方は、他の土地で仕事を探すことがあります。
その地元では雪などで働けなくなった出稼ぎ労働者の就労形態が季節雇用の由来だということを覚えておきましょう。
なお、今は通年雇用の対比として、季節の間だけの雇用をするのが季節雇用とされています。
季節雇用のメリット
季節労働が何かを理解しましたら、次は季節雇用のメリットについてチェックしましょう。
決まった期間で一定額稼ぐことができる
お金が必要な短期間の間だけ働くことができるというのは季節雇用の大きなメリットです。
本業もしているけれども、追加でお金が必要になった場合などに、まとまった期間だけお金を稼ぐことができる季節雇用が役立ちます。
収入の計算がしやすい
アルバイトやパートはシフトなどで週に3日だけ働くなどの働き方になりますが、季節労働は毎日働くことになります。
そのため、収入の計算もしやすく「せっかく季節労働をしたのに思ったより稼げていない」という事態は起こりにくくなります。
自分にかかる責任が限られているので精神的に楽
季節雇用は雇用期間が人手が足りない季節だけと短いものになっています。
したがって、任せられる業務も責任も限られたものになっているので、仕事でプレッシャーを負うことがありません。
住まい・食事完備なら余分な心配不要
また、季節労働にて短期間の間の住み込みで働く場合は、住まいや食事の心配をすることがなくなります。
地元で働けないから別の土地で働く場合、住まいと食事が大きな問題になるので、衣食住の食・住が保証されている季節労働ができれば、大きな収入でも手間でもプラスになります。
他の業務に関わり気分転換になる
また、いつもと違う仕事をすることになるのが季節労働ですが、本業とは別の仕事をすることで気分転換にもなります。
さらに、普段とは違う人と関わることになるため、人間関係を広げたり、人生経験を積んだりすることもできます。
国内旅行代わりにもなる
地元が雪に閉ざされたり、観光業をしているけれども人が来ないシーズンになったりした場合、まったく別の土地で働くということもあります。
それによって、仕事をしつつも普段とは違う土地に行くことができるので、実質的に国内旅行での長期滞在をすることが可能ということです。
季節雇用のデメリット
それでは、次は季節雇用のデメリットについても紹介します。
体力的にきつい肉体労働が多い
季節労働は短期間のみの労働が想定されているので、あまり複雑な仕事はしにくいということがあります。
ただ実際に漁業や果樹園・農業・リゾート・土木バイトなど、肉体的・精神的に疲れる仕事が多く、体力に自信がない方には少し厳しいものがあります。
期間中は自分の希望が通らないことがある
部署や労働時間などは会社規定に従う必要があり、寮がある場合は食事の時間や消灯時間などに行動が制限されることもあります。
普段とはまるで違う環境で働くことから、ストレスに苦しむリスクがあります。
雇用保険・社会保険に入れないことがある
短期で働くのが前提とされていることから、雇用保険・社会保険に入れない仕事もあります。
しかし、季節労働は肉体的・精神的に過酷な業務が多いため、契約前に事前に確認しておくのが、何かあった場合に本業へスムーズに戻る上で必要になります。
なお、季節雇用で雇用保険に加入するには資格を満たしている必要があるので、把握しておきましょう。
季節雇用は短期雇用特例をチェック
短期・季節的に働く季節労働者は雇用保険法では「短期雇用特例被保険者」と称されます。
そして、この「短期雇用特例被保険者」は季節的に雇用される人と短期間の雇用に就くことが常態化している人の2種類に分かれます。
季節雇用は前者の「季節的に雇用される人」に分類され、以下の2つの条件を満たすと「短期雇用特例被保険者」になります。
- 4ヶ月以上(1シーズン)以上の期間を定めて雇用される
- 1週間の所定労働時間が30時間以上
この条件を満たすと、雇用保険に加入できるようになります。
季節労働者は、一般被保険者の加入条件である「1週間に20時間以上働き、31日以上雇用されることが予定されている」とは別の条件になることを覚えておきましょう。
季節労働をする上では、この「短期雇用特例被保険者」の季節雇用における条件を満たせるかどうかも注目するのが重要です。
通年雇用について
季節雇用は短期間でガッツリ稼げるものの、それ以外の時期は収入がなくなってしまうというケースがあります。
つまり、季節雇用をメインにしている方は、季節雇用以外の期間が実質無職になるということです。
そのような人を保護するためにあるのが通年雇用助成金です。
助成内容
概要
北海道、東北地方等の積雪または寒冷の度が高い地域の事業主が、冬期間に離職を余儀なくされる季節労働者を通年雇用した場合に助成されます。
主な受給要件
本助成金を受給するためには、次の要件のいずれかを満たすことが必要です。
- (1)季節労働者を冬期間も継続して同一の事業所で就業させた場合(事業所内就業)
- (2)季節労働者を他の事業所で配置転換・労働者派遣・在籍出向により就業させ、冬期間も継続雇用した場合(事業所外就業)
- (3)季節労働者を冬期間も継続雇用し、期間中一時的に休業させた場合(休業)
- (4)季節労働者を季節的業務以外の業務に転換し、継続して雇用した場合(業務転換)
- (5)(1)または(2)を実施する事業主が季節労働者に職業訓練を実施した場合(職業訓練)
- (6)季節労働者を通年雇用するために、新たに新分野の事業所設置・整備した場合(新分野進出)
- (7)季節労働者を試行(トライアル)雇用終了後、引き続き、常用雇用として雇い入れた場合(季節トライアル雇用)
- [1](1)~(6)の場合、指定地域(※1)内で指定業種(※2)に属する事業を行う事業主が対象です。
- [2](7)の場合、指定地域(※1)内に所在し、指定業種(※2)以外に属する事業主が対象です。
- ※1指定地域
北海道、青森、岩手および秋田の全市町村、宮城、山形、福島、新潟、富山、石川、福井、長野および岐阜の一部の市町村- ※2指定業種
1.林業、2.採石業および砂、砂利又は玉石の採取業、3.建設業、4.水産食料品製造業、5.野菜缶詰、果実缶詰又は農産保存食料品の製造業、6.一般製材業、7.セメント製品製造業、8.建設用粘土製品(陶磁器製のものを除く。)の製造業、9.特定貨物自動車運送業、10.建設現場において据付作業を行う「造作材製造業(建具を除く)」、「建具製造業」、「鉄骨製造業」、「建設用金属製品製造業(鉄骨を除く)」、「金属製サッシ・ドア製造業」、「鉄骨系プレハブ住宅製造業」、「建設用金属製品製造業(サッシ、ドア、建築用金物を除く)」、「畳製造業」、11.農業(畜産農業および畜産サービス業を除く)」引用元:厚生労働省「通年雇用助成金」
このように、通年雇用助成金とは、季節労働者ではなく季節労働者を雇用する事業主に対して助成される助成金です。
通年雇用助成金によって、事業主は継続労働者に対して1人あたりに支払う賃金の1/2か2/3を受給でき、休業を実施した場合でも1月〜4月の間に支払った休業手当・賃金の合計の1/3・1/2を受給できます。
他にも、職業訓練を実施した場合も季節的業務なら訓練費用の1/2、季節外業務なら訓練費用の1/3を受給可能です。
このように、季節雇用を通年雇用している事業主にはさまざまな助成金があり、実質的には通年雇用助成金を採用している企業は働く側にとっても安定した収入を見込めるということです。
季節雇用であってもこれを採用している会社に所属すると、季節雇用という短期雇用であっても、収入の安定を望めるので、季節雇用で働く企業を選ぶ際の基準にしましょう。
季節雇用の代表的な仕事例
季節雇用にはどんな仕事があるのか例を参考に見てみましょう。
期間工
組付け・組み立て・取り付け・塗装・溶接・プレス・メンテナンスなどを行います。経験者は優遇、未経験者でもアシスタントや重い荷物の運び入れなどで採用してくれるところもあります。
リゾートバイト
観光シーズンはどうしても対応するスタッフがたりないため、宿泊施設などでのベッドメイキングや食事の運び出し、施設案内などを行います。外国人のお客が多いホテルでは、外国語が話せるバイトを期間限定で設けているところもあります。
農業系
収穫物の選別などをします。稲や果物、野菜により収穫時期が異なってくるため、春から秋にかけて雇用があったり、一種類の作物に特化している農家であれば収穫時期だけ雇用するということもあります。
漁業系
獲った魚の選別や、養殖かごの修理や清掃をします。こちらも繁忙期のみの雇用になるケースが多く、経験者から仕事を教えてもらいながらこなしていくことになるでしょう。
林業
材木カットなどが主な仕事内容ですが、木材の運搬や選別も含まれることがあります。天気や気温の変動があり、高いところへ登ることもあるので、体調を崩しやすいひとや高いところが苦手な人には向いていません。
建設関係
現場の作業員などをしてもらうことが多くあります。配管を埋める場所の穴掘りや足場を組むなど肉体労働がメインです。
イベントスタッフ
会場の設営や撤去、備品の配置、道具の搬入や搬出です。チームワークを大切にしながら進められる仕事です。
季節雇用は一定期間もしくは1~3ヵ月程度の短期間でまとまった収入を得るには良い仕事
通年雇用ではなく、1シーズンのみの季節雇用は普段とは違う環境や職場で働くことができるため予定を立てやすい働き方とも言えます。
なかには定年退職後に春から秋だけ働いて、冬は夫婦で両行を楽しむという人もいれば、仕事のない期間だけを長期休みとして過ごしている人もいます。
お金、体調、これからをはかりにかけ、自分らしく過ごせるように働き方の一つとして知っておくと良いでしょう。