就活を頑張ているのに求人が少なく、就職が決まらない… といった就職氷河期に大卒を迎えた人たちをロストジェネレーション世代(ロスジェネ世代)と呼び、この世代を支援するために作られたのが就職氷河期支援プログラムです。

今回は、就職氷河期とは何だったのかとその定義、そしてロスジェネ世代の就業状況に加え、就職氷河期支援プログラムの概要を紹介します。ロスジェネ世代で正社員への転職を希望している方は、参考にしてください。

就職氷河期について

『就職氷河期』その言葉が誕生するまでは大学生は引く手あまたで内定をいくつももらい、一番良いところを選んでいました。

ところがある年『内定取り消し』という事態が起ったのです。

就職先が決まったと安心し、残りの大学生活を卒業旅行やコンパなど思い出作りで楽しんでいた学生たちは想定外の事態に混乱が生じ、約束されていた未来が消滅したため、再び就活をしなければならなくなったのです。

それまでは売り手市場だったのが、買い手市場に変わってしまいました。

大手企業ばかりに目が行き、中小企業には見向きもしなかった学生たちが殺到し、採用されなかった学生はフリーターやニートになってしまいました。

これが『就職氷河期』の始まりです。

その就職氷河期が起った原因、どの年齢層が該当するかを見ていきましょう。

なぜ就職氷河期が起こったのか

就職氷河期が起こった原因はバブル崩壊です。

1990年のバブル崩壊がきっかけで景気が大幅に低迷、バブル時代に人員を採用しすぎた企業が一斉に採用数をしぼったのが発端です。

1997年から1998年に向けて有効求人倍率が回復しかけたのですが、消費税の引き上げなどの緊縮財政や不良債権処理の失敗による大手金融企業の破綻が発生。そのため就職氷河期はさらに続くことになりました。

また、金融不安やITバブルの崩壊で雇用環境が悪化した1990年代後半~2000年頃を『超氷河期』と呼ぶこともあります。

就職氷河期世代(ロストジェネレーション世代)とは

1970年から1982年に生まれた現在40歳前後の世代のことを指します。

バブル崩壊後の失われた20年のうち、特に雇用状況がひどい就職氷河期の約10年間に就職活動をした人たちが該当いたします。

大学を卒業してから非正規のまま正規社員なることができない人も多く、企業としてもこの世代の求人を絞ったが故に管理職となる世代の不足が問題として起こり始めています。

就職氷河期世代は40歳前後の方が該当しますが、上記の通り管理職としてのスキルが求められ始める年齢に差し掛かっていても非正規社員だったこともあり、企業の求める求人情報とのマッチングが厳しいという現実も就職氷河期世代を苦しめている要因の一つです。

「35~44歳」世代の就業状態別人口

ロストジェネレーション世代(2018年時点の35~44歳)における就業状態別の人口を2008年と2018年で比較します。

2008年(25~34歳)、2018年(35歳~44歳)

(万人)

 

男女計

男性

女性

2008年

2018年

2008年

2018年

2008年

2018年

就業者

1313

1435

768

804

546

631

正規の職員・従業員

916

915

610

637

306

278

非正規の職員・従業員

315

371

101

65

214

307

内不本意非正規雇用者

 

50

 

21

 

28

参考サイト:総務省統計局

就業者の数が2008年と比べ2018年では全体で233万人増加しているのですが、正規雇用の数は逆に1万人減っています。

つまり増加した就業者は非正規のみということです。その中でも50万人が非正規雇用で働くことを望んでいません。

女性が28万人、男性が21万人と女性のほうが多く正規雇用になることを願っています。

就職氷河期を深刻化させた要因

就職氷河期がこれだけ悪化したのは何もバブル崩壊だけが原因ではありません。

日本の労働者採用システムにも問題があります。

新卒一括採用の弊害

新卒一括採用とは有望な人材を確保するため、大学卒業前の学生に内定を与え卒業したら就業してもらうというシステムです。

付け加えておくと、現在は大学を卒業して3年までは新卒と同等の扱いをしてくれる企業がほとんどです。

大学卒業後3年までを厚生労働省は新卒としているため、その期間内であればフリーターでも新卒者として扱ってくれる企業が多いです。

いわゆる第二新卒と呼ばれる期間です。

しかし、逆に第二新卒の期間も過ぎてしまうと中途入社が難しくなり、就職氷河期では切り捨てやすい非正規雇用者の割合が多くなりました。

さらに非正規雇用が増えた背景には、小泉政権の規制緩和もあります。

小泉政権の非正規社員の規制緩和

2000年代はじめ、小泉政権が非正規社員の規制を大幅に緩和したことで、製造業での非正規雇用を全面的に緩和し、大企業は正社員の採用を大幅に抑え、非正規雇用を増やす雇用構造の転換を進めました。

このようにして新卒一括採用と非正規雇用の緩和が就職氷河期を深刻化させたのです。

現在は政府側の企業に対する働きかけもあり新卒一括採用に対して否定的な動きが強まっていますが、新卒を重視するか中途を重視するかは実際に採用する企業側が決めることでもあるので、すぐに大きく採用状況が変わることは考えにくいでしょう。

就職氷河期の転職・採用する壁

ロストジェネレーション世代は転職をしようとしてもなかなか上手くいかないのが現状です。

なぜ就職氷河期の方は転職がしにくいのでしょうか?

職務履歴

20代を非正規雇用で働いていたため、キャリア形成ができずに履歴書にアピールできる職務履歴が少ない場合が多いです。

また、少しでも収入を増やすためにバイトや派遣、そして契約社員などを転々としている場合があり、長く勤められないのではと採用されにくくなってしまいます。

年齢と給料

現在40歳前後であるため、年齢と給料が見合うことが難しくやりたい仕事が見つかりません。

就職氷河期に就活をしていた世代は、その後雇用状況が改善してもキャリア面で採用されにくく、給与も希望する金額の職が見つかりにくい状況が続いています。

この世代にとって、就職氷河期はまだ終わっていないのです。

就職氷河期への就職支援『就職氷河期支援プログラム』

就職氷河期支援プログラムとは就職氷河期世代の雇用促進や安定化を目的とした政府による支援計画で、3年の集中支援で30万人の正規雇用化を目指すプログラムです。

内閣府と厚生労働省は主に3つの目的を持ってこのプログラムを進めています。

目的1. 就職相談体制の確立

就職氷河期支援プログラムによる新たな支援策の周知を徹底するために、政府広報と民間ノウハウ、そしてSNSなども活用。

多くの方が利用できることを知ってもらい、様々な支援対象者が利用できる流れを作ります。

目的2. リカレント教育の確立

「リカレント教育」とは、「職業上必要な知識・技術」を修得するために就学と就職を繰り返す教育制度です。

仕事や子育てなどを続けながら受講でき、正規雇用に役立つ資格取得や、職場実習と短期間での資格取得などを組み合わせたプログラム、人手不足の企業や地域のニーズを踏まえた実践的な人材育成プログラムなどを整備。

また民間ノウハウを活用した教育訓練や職場実習などを職業訓練受講給付金の対象として、安心して受講できるように支援します。

目的3. 受け入れ機会増加に繋がる環境整備

採用選考を兼ねた「社会人インターンシップ」の実施を推進し企業への奨励金を強化します。

内閣府と厚生労働省の目的を理解したところで、次に就職氷河期支援プログラムの概要を確認してみましょう。

就職氷河期支援プログラムの概要

概要を内容、実施期間、対象年齢、支援対象に分けて概要をチェックしましょう。

就職氷河期支援プログラムの内容

就職氷河期支援プログラムは4つの内容に分けられます。

1. 本人への直接支援

就職氷河期世代が資格を取りやすくするため、資格学習のサポート、職業訓練の機会提供など当事者が直接利用できる支援です。

さらに「短期資格等習得コース(仮称)」の創設、氷河期世代限定求人、氷河期世代・公務員採用試験の実施などが行なわれます。

2. 支援窓口の強化

ハローワークに就職氷河期世代専門窓口を設置し、地域若者サポートステーションを拡充します。

3. 支援機関への間接支援

対象者を支援する民間企業に成果報酬型の委託事業を提供、就職氷河期世代を採用した企業に助成金を出すなど間接支援で採用を促します。

成果報酬型の民間委託事業の開始や、特定求職者雇用開発助成金「就職氷河期世代安定雇用実現コース(仮称)」などがあります。

4. その他支援

市の自立相談支援機関としてアウトリーチ支援員(仮称)を設置します。

実施期間

2020年4月から本格的に実施をしています。

対象年齢

学歴不問、35~55歳になる方が中心となります。

支援対象

35~55歳の無職・ひきこもり・非正規などの状態で「不本意に感じている」方が対象となります。

このプログラムの対象者が受けられる支援は、資格取得・職業訓練の支援、相談支援、就職・開業の支援で、相談、教育訓練、就職を切れ目なく行ないます。

就職氷河期への就職支援をすることによる企業側のメリット

ロストジェネレーション世代では2018年段階で50万人の方が望まずに非正規で働いています。

この世代を支援することで企業側には2つのメリットがあります。

メリット1. 人手不足の解消

従来の人手不足の解消方法は、女性の離職を防ぐ、シニアが働ける環境整備、外国人の積極的雇用、IT導入を主体としていました。

さらにロスジェネ世代も加えることで人手不足をより解消できます。

メリット2. 助成金

就職氷河期支援プログラムの支援機関への間接支援を利用することで助成金が支給されるため、環境整備や教育費用にあてることで人材の育成が可能です。

ロスジェネ世代を採用することで人材不足の解消や助成金を受けることができるので企業側にもメリットがあります。

特に助成金は企業側の負担を減らして人材育成ができるので大きなメリットと言えるでしょう。

就職氷河期は終わるのか?

今回は『就職氷河期』についてと『就職氷河期支援プログラム』について紹介してきました。

就職氷河期を新卒で迎えた、いわゆるロストジェネレーション世代には、正社員になれず非正規雇用労働者として働いている方が現在も多くいます。

就職氷河期支援プログラムにより全員が希望する職業で正社員になれるほど現実は甘くはありません。

そもそも就職氷河期支援プログラムの目標が30万人の雇用ですが、2018年の調査では50万人が望まずに非正規雇用で働いています。

しかし、チャンスがあることは間違いないのでロスジェネ世代で正社員を望むなら、ぜひ就職氷河期支援プログラムを利用して転職に挑戦してみてはいかがでしょう。

100%希望通りの職や給与を得られなくても正社員になれるかもしれませんし、正社員にはなれなくても資格を取りより賃金の高い仕事をできる可能性があります。

今まで国は充分な支援をしてきたとは言えません。就職氷河期支援プログラムもそうですが、不完全でも自分たちのために利用しましょう。

人生をあきらめず、自分の就職氷河期は自分で終わらせるしかないのです。