エッセンシャルワーカーとはどんな職業?注目されたきっかけや課題について

エッセンシャルワーカーとは

エッセンシャルワーカーとは

エッセンシャルワーカーとは、社会が活動をする上で重要な仕事をする方たちのことを指します。

エッセンシャルとは「必要不可欠」という意味であり、病気や怪我の治療など、命や健康に関わる医療・福祉従事者、物流に関するドライバーや配達員、スーパーやドラッグストアなどの小売店の販売員、働く両親のために子どもを預かる保育士など、生活の基礎を支えているエッセンシャルワーカーは、細かく挙げれば相当な数の職業が該当します。

エッセンシャルワーカーが注目されたきっかけ

エッセンシャルワーカーが注目されたきっかけ

人々の生活を支える大切な仕事であったにも関わらず、少し前まではあまり注目されなかった職業がエッセンシャルワーカーには多いですが、生活に重要な仕事であると注目を集めるようになりました

新たな病原体が世界中で感染拡大したことによって、各国のトップがスピーチでその働きに感謝を述べたり、マスコミが使用するようになったことがきっかけとなり、一気に広まったと考えられます。

ブルーカラー、ホワイトカラーとの違い

ブルーカラー、ホワイトカラーとの違い

エッセンシャルワーカーという言葉がよく利用させるようになる前には、「ブルーカラー」や「ホワイトカラー」といった職業を分類する言葉を目にする機会が多くありました。

元々は産業革命によって大量生産が現実的となったことで生まれた言葉と言われている言葉ですが、それぞれ何を指しているのかを確認しておきましょう。

ブルーカラーとは

いわゆる現場で働く労働者のことであり、ブルーカラーとは青い襟、すなわち作業服のことを指します。代表的な職業として、建設業や製造業の作業員を思い浮かべる方が多いですが、現場で作業を行う仕事であるため、肉体労働以外にも専門の技能を持っていたり、現場を管理する立場の方も含まれます。

ホワイトカラーとは

いわゆる事務所の中で働く職員のことであり、ホワイトカラーとは白い襟、すなわちワイシャツのことを指します。事務員や経理、営業職など、生産には直接関与しない職種になり、ブルーカラーに比べて労働の負担は少ないと考えられることが多いですが、同じ職場で働く人間が多いことで、対人関係の悩みや長時間労働に発展することが多いです。

エッセンシャルワーカーとの違い

エッセンシャルワーカーにはブルーカラーに含まれる職業が多いですが、ブルーカラーとホワイトカラーという言葉は、業務の分類を示すものです。

エッセンシャルワーカーは現場の労働者にとどまらず、社会全体のインフラ的な業務を支える人全体に使われる言葉として、賞賛と感謝の意味を伴って利用されるようになりました。

エッセンシャルワーカーに該当する代表職業

エッセンシャルワーカーに該当する代表職業

エッセンシャルワーカーは細かく挙げればキリがないですが、代表的な職業の詳細を確認し、それぞれどのような社会的役割を負っているのかを見ていきましょう。

医療従事者

エッセンシャルワーカーと聞いて、一番に思い浮かべる人が多いのは、命を救うことや体調を崩したときに直接関わる医療従事者でしょう。医療従事者とはどこまでを指すのかという明確な定義はありませんが、医療に携わる仕事は幅広いものです。

病気や怪我から命を守る最前線で働く医師や看護師はもちろん、薬剤師、放射線技師や療法士、歯科、鍼灸師などがあります。

仕事内容が直接的に医療に関わるものではなくても、医療事務や院内清掃員、管理栄養士など医療を支える仕事も広義では医療従事者に含まれるでしょう。

スーパーやコンビニの店員

生活のために必要な食料、医薬品、日用品を販売しているスーパーやコンビニ、ドラッグストアでは多くの販売員が働いています。現在はネットスーパーなどもありますが、一般的には店舗で販売しているものを購入することが多く、生活必需品を販売している店の店員は一番身近に接するエッセンシャルワーカーになるでしょう。

介護福祉士

高齢者福祉を行う介護施設や老人ホームなどで働く介護福祉士は、介助や介護の必要な高齢者と直接触れ合うことを避けられない仕事であり、認知症など症状によってはマスクの付けられない方もいるなど感染防止策も難しい介護現場で、感染リスクに立ち向かっているエッセンシャルワーカーです。

保育士

こどもの健やかな成長を親と共に見守ってくれる保育士もまた、高い感染リスクに脅かされながら働いているエッセンシャルワーカーです。幼児はマスクをすること自体が危険であったり、マスクを管理できずに却って不衛生になってしまう可能性が高いなど感染症への対策を行うことは難しい年齢でもあります。

愛着形成が大事なこどもたちと密接に触れ合いながらもこどもたちの命を預かり、社会を支えています。

教育関連

幼稚園や義務教育機関、高校、大学などの教育機関は、感染症の拡大や災害などの異常事態によって一時的な閉鎖があったとしても、長期的にこどもの教育を中断するということはできません。

これまではほとんどが対面で行われていた授業もオンラインの導入が進んでいきましたが、学校は授業を受けるだけの場ではなく、こども同士や教育者とのコミュニケーションなどを通して社会を学ぶ場です。

オンライン化が進んだとしても、リアルな関わりをなくすことは考えることの難しいエッセンシャルワーカーです。

ドライバー

国内だけではなく、輸出輸入業も活発に行われることが当たり前の現代では、トラックのドライバーや郵便配達員、宅配ドライバーなど、物流に関わる仕事は欠かすことができません。

外出自粛をきっかけに、ネット通販やデリバリーが増加しており、宅配の仕事は生活により大きく関わるようになっています。

公共インフラ関係

電気やガス、水道などのライフラインに関わるものは、災害などの非常時でもいち早く復旧できるように対応することが求められる緊急性の高い仕事です。

自粛やリモートワークが増えたことによって家庭ゴミも増加し、ゴミ収集員の仕事も注目を浴びるようになりました。ゴミの中には感染者が使ったマスクやティッシュなど汚染リスクのあるものや、爆発などの危険のあるものが混ざっていることがあります。

また通信事業などの通信インフラも現在では電話やインターネット以外の様々なものに使われているため日々に欠かせないものとなっており、障害が起きたときには物流や金融業や、救急の通報ができないなど、社会に大きな影響を及ぼしてしまいます。

日常不可欠であり、リスクを伴うことも多い仕事でありながら、人々が安心して暮らすことができるように生活を整えてくれるエッセンシャルワーカーです。

金融業

生活をしていくためにはお金が必要となり、個人や企業の金銭取引の窓口となる銀行や信用金庫などの金融業も生活には不可欠な仕事であり、事情によっては窓口での取引が必要となる場合があります。

公務員

役所の職員や、消防士、警察官などの公務員も社会生活に欠かすことのできないエッセンシャルワーカーです。

インターネットやコンビニで手続きのできる行政サービスもありますが、窓口以外でも日々の生活にまつわる問題や未来に関わる仕事を行っており、政策や災害によってイレギュラーなことにも対応が必要となり、有事には大きな責務を担っています。

エッセンシャルワーカーの課題

エッセンシャルワーカーの課題

安全で健康的な社会生活を続けていく上で、エッセンシャルワーカーの存在は必要不可欠であることは明確です。

しかし、エッセンシャルワーカーに注目が集まると共に、その職業についての課題も浮き彫りになっています。日常に不可欠なエッセンシャルワーカーは、どのような点を改善すべきと考えられているのか、詳細を確認しておきましょう。

エッセンシャルワーカーの課題

給料や待遇が悪いケースが有る

エッセンシャルワーカーは日常に不可欠な仕事であり、高い専門性も求められる仕事が多いことから、本来なら安定した生活を送ることのできる職業であるべきですが、残念ながら給料や待遇が悪いというケースがあります

保育所不足や介護福祉士の処遇改善が報じられるなど、忙しさに比べて低すぎる給料であったり、仕事にやりがいがあっても続けることができないなど、給料や待遇によって仕事を続けていくべきか、続けられるのかと悩む声が多く挙げられています。

常に人材不足が起きている

給料や待遇が悪いエッセンシャルワークの中には、離職する方も多く、常に人手不足となってしまっている業種があります。

人手不足になると在職している方が激務になることで労働環境が悪くなり、ますます離職率が上がるという負のスパイラルに陥ってしまうことがあります。

エッセンシャルワークが人手不足によって上手く回らなくなってしまうと、社会活動に大きな影響を及ぼすことや、人々の安全や命が脅かされることにも繋がります。

人材確保のために賃上げの政策や、資格を持っているのに現在は職に就いていない潜在看護師や潜在保育士の復職支援を行うなどのさまざまな対策が取られています。

待機児童問題で新規事業者の参入しやすいビジネスとなったことで保育所が増加し、保育士の需要が上がったことで待遇が改善されつつあるというデータもありますが、まだ多くの現場で人材が不足しています。

また、ネット通販などの需要が増えたことによる宅配ドライバーの人手不足など、人々の生活様式の変化によって新たな課題が顕在化するということもあり、人手不足が解消されることは容易ではありません。

ストレスの負荷が多い職種が多い

エッセンシャルワークには、医療現場や介護、保育といった命を預かる仕事や、生活を支える仕事であることで人との触れあいを欠かすことのできない仕事が多くあります。

コミュニケーションはストレスの原因になりやすく、コミュニケーションの多いエッセンシャルワーカーがストレスのはけ口にされてしまうこともあります。

感染症の拡大によって除菌作業などの仕事が増えることで、さらにストレス負荷が高くなっていることが増えています。

また、感染症によってテレワークが増える中でも現場に出ざるを得ない、職場で感染者が出ると仕事の割り振りの負担が増えたりシフトが上手く回らなくなる、感染リスクが高い仕事であるなど、生活に欠かせない仕事であるからこそストレス負荷が高くなってしまうことがあります。

すぐに解決することが難しい問題は多いですが、解決できる課題に取り組むべきだという声も段々高まっています

エッセンシャルワーカーは社会にとって欠かせない存在

エッセンシャルワーカーは社会にとって欠かせない存在

世界中に拡大した感染症によって、日々の生活を支える仕事で働いている人々の存在に関心が集まり、これまでは光が当たることの少ない職業も話題に上ることが増えました。

欠かせない仕事に従事している労働者という意味の「エッセンシャルワーカー」という言葉を、各国の首相や大統領などが敬意を込めて用い、マスコミも続々と利用し始めたことがきっかけで日本でも定着してきています。

注目を浴びるようになったことで、エッセンシャルワーカーの低賃金や労働環境の悪さ、人手不足などの課題も浮き彫りになり、日常に不可欠な仕事であると関心を集めたのも事実です。これまで当事者のみが声を挙げていたような課題も広く提起されるようになり、解決に向けた対策が急がれています。

エッセンシャルワーカーはその言葉の通り、人々の生活にとって欠かせないものであると共に、社会活動を支える基盤となる重要な存在であるということを忘れてはいけません。