ヘッドハンティングは、転職市場で出会えない優秀な人材の確保として有効な手段なので、意外に多くの企業が導入しています。
また、ヘッドハンティングと聞くと経営者や経営幹部だけが対象というイメージがありますが、実際は幹部以外の社員も対象です。
近年では、一般社員がヘッドハンティングされるケースも増えています。
しかし、ヘッドハンティングが増えているとはいっても、まだまだ実態を知らない方が多いので、メリットやデメリットが分からないという方は多いでしょう。
そこで本記事では、ヘッドハンティングのメリット・デメリットについて解説します。ヘッドハンティングの基本知識や種類についてもお話するので、ぜひ参考にしてみてください。
ヘッドハンティングとは?
ヘッドハンティングとは、企業で活躍している優秀な人材に、外部企業から「うちの会社に来ないか」と声をかけて入社(転職)を促す人材確保の方法です。
1930年頃から行われるようになった人材確保の方法で、当初は経営層や幹部層だけが対象でした。
しかし、近年は一般の社員にもヘッドハンティングの声がかかるようになり、多くの企業が優秀な人材確保の手段として活用しています。
ちなみに「ヘッドハンティング=引き抜き」と考えている方もいますが、厳密にはヘッドハンティングは引き抜きとは違います。
ヘッドハンティングと引き抜きの最大の違いは、ビジネスとして成立しているかどうかです。
ヘッドハンティングをサービスとして展開している企業は数千以上あり、リクルーティングサービスとしても確立されています。
だからと言って、転職に関して無法地帯というわけではありません。
憲法22条第1項では、「職業選択の自由」により本人の意思による転職なら問題ないと定義されています。
それと同時に、就業規則で「競業避止(ひし)義務規定」が定められている場合は、ライバル会社への転職が禁じられています。
つまり、同業種の会社がライバル会社から優秀な社員を引き抜くのはダメというわけです。
このように、ヘッドハンティングはビジネスとして成立しているのに対して、引き抜きはビジネスとして成立していません。
ヘッドハンティングの種類
ヘッドハンティングには、いくつかの種類があります。
ここでは、3つのヘッドハンティングの種類について解説します。
| サーチ型 | マッチング型 | 進化型 |
採用方法 | ・調査 ・発掘 ・スカウト | 自社保有のデータベースからスカウト | サーチ型とマッチング型の両方を駆使した方法 |
データベース | 独自ネットワーク | 登録会員データベース | 独自ネットワーク + 登録会員データベース |
人材数 | △ | 〇 | ◎ |
課金方式 | 固定報酬型 | 人材紹介:成功報酬型 求人メディア:前課金型 | 固定報酬型 |
サーチ型
サーチ型のヘッドハンティングとは、転職を検討している人と検討していない人の両方を対象に、企業の条件にマッチした人材を探す方法です。
データベースには頼らず独自ネットワークを駆使して探せるので、様々なタイプの人材を見つけられます。
ちなみにサーチ型には次の3つがあります。
- フルサーチ
業界・職種・階層を問わず、企業が求める人材を探し出します。 - エグゼクティブサーチ(欧州型)
経営層や幹部層といったエグゼクティブ層と呼ばれる人材を探し出します。 - 業界特化型サーチ
IT・医療・広告など特定の業界からのヘッドハンティングに強みを持っています。
マッチング型
ヘッドハンティングをサービスとして提供する求人媒体を使って、条件にマッチしている人材を探す方法です。
対象となる人材は、当然求人媒体に登録している会員になります。
転職を検討している人の中から条件にマッチしている人材を探すので、優秀な人材を見つけやすくなっているのです。
また、ヘッドハンティングのサービスにはハイクラスの人材だけが登録しているものや、業界に特化しているものなど色々とあります。
進化型(サーチ型+マッチング型)
サーチ型とマッチング型の両方の良い部分を併せ持つサービスです。
2つの方法を使って探し出せるので、最も多くの人材に触れられます。
また、ハイクラスの人材だけでなくミドルクラスや一般社員の人材にも対応しているので、若手の中から優秀な人を探すにも適しています。
ヘッドハンティングのメリット
ヘッドハンティングには、企業側(する側)と社員側(される側)の両方にメリットがあります。
ここでは、ヘッドハンティングする側とされる側それぞれのメリットについて解説します。
ヘッドハンティングする側のメリット
まずは、ヘッドハンティングする側のメリットをご紹介します。
転職市場で出会えない人材にアプローチできる
ヘッドハンティングする側のメリット1つ目は、転職市場で出会えない人材にアプローチできる点です。
ヘッドハンティングは、必ずしも転職を視野に入れている人材だけを探すわけではありません。
転職を検討していない人も対象に声をかけられます。
また、現時点で転職を検討していなくても、今より好条件を提示されれば心が揺らぐ方は大勢いるので、転職市場では出会えない人材を確保できる可能性が大いにあります。
業績向上が期待できる
ヘッドハンティングする側のメリット2つ目は、業績向上が期待できる点です。
そもそもヘッドハンティングは優秀な人材確保のための手段なので、獲得できれば会社にとって大きな戦力になります。
また、他の会社で素晴らしい実績を残してきた人材なら、自社では思いもよらない提案をしてくれる可能性があるでしょう。
業績が低迷している企業にとって、大きな変化をもたらす存在になるかもしれません。
水面下で採用活動ができる
ヘッドハンティングする側のメリット3つ目は、水面下で採用活動ができる点です。
普通の採用活動は、求人サイトなどに募集要項を掲載するため、ライバル会社に採用活動している事実がバレてしまいます。
しかし、ヘッドハンティングは自社のデータベースから人材を探せるため、他の企業から採用活動している事実を知られる心配がありません。
水面下で採用活動したい企業には打ってつけの方法です。
ヘッドハンティングされる側
続いては、ヘッドハンティングされる側のメリットをご紹介します。
自分の能力を認めてもらえる
ヘッドハンティングされる側のメリット1つ目は、自分の能力を認めてもらえる点です。
企業側は、優秀だと思ったからヘッドハンティングしています。
そのため、社員側からすると能力を認めてもらったうえで転職ができるわけです。
能力を認めてもらったうえで転職できるので、最初から責任ある仕事を任せてもらえる可能性があります。
周囲の人も頼ってくれるので、働きやすい環境で仕事ができるでしょう。
待遇アップなど新しい環境で働ける
ヘッドハンティングされる側のメリット2つ目は、待遇アップなど新しい環境で働ける点です。
企業が転職を勧めるには、今の条件よりも良くないと意味がありません。
今より良い待遇を提示して転職を考えてもらおうとするので、給与や待遇が今の会社より良くなるのは間違いありません。
逆に、「待遇などが悪くなるなら転職しない」といった伝え方もできるので、交渉する余地があるのもヘッドハンティングのメリットの1つです。
平社員でも転職先で役職に就ける可能性がある
ヘッドハンティングされる側のメリット3つ目は、平社員でも転職先で役職に就ける可能性がある点です。
今まで平社員として働いていた方でも、企業側が優秀だと判断すればヘッドハンティングする可能性があります。
そして、ヘッドハンティングしてくれた企業はその人材を優秀だと考えているので、すぐに役職を与えてくれる可能性だってあるのです。
役職に就けば給与も良くなるので、より良い環境で働けるでしょう。
ヘッドハンティングのデメリット
ヘッドハンティングには、企業側(する側)と社員側(される側)の両方にデメリットがあります。
ここでは、ヘッドハンティングする側とされる側それぞれのデメリットについて解説します。
ヘッドハンティングする側のデメリット
まずは、ヘッドハンティングする側のデメリットを紹介します。
登録型の人材紹介サービスより採用コストがかかる
ヘッドハンティングする側のデメリット1つ目は、登録型の人材紹介サービスより採用コストがかかる点です。
ヘッドハンティングのサービスでは、採用する人材が決まった際に発生する成功報酬の他に、リテーナーフィー(着手金)が発生します。
このリテーナーフィーはヘッドハンティング会社の活動費になります。
しかし、ヘッドハンティング会社はクライアントが求める人材を探すのに、全労働市場の中からターゲットとなる人材を公開情報や独自ネットワークなどを駆使して探し出すため、採用コストが高めです。
人材紹介サービスより採用コストがかかる点は、大きなデメリットと言えるでしょう。
採用まで時間がかかる
ヘッドハンティングする側のデメリット2つ目は、採用まで時間がかかる点です。
転職意思がない方もヘッドハンティングの対象としているため、場合によって説得のために何度も面談を重ねる必要があります。
また、転職の意思があってもヘッドハンティング会社を通して採用活動をスタートさせると、内定までに4~6か月程度の期間を有します。
普通の採用活動なら1か月程度で内定が決まるケースもあるので、それと比べると採用までに時間がかかってしまうのです。
すぐに人材確保したい会社にとっては大きなデメリットとなるでしょう。
対象者の勤め先とトラブルになる可能性がある
ヘッドハンティングする側のデメリット3つ目は、対象者の勤め先とトラブルになる可能性がある点です。
日本では、憲法第22条第1項で「職業選択の自由」が認められていると解説しました。
そのため、ヘッドハンティングで転職しても問題はありません。
しかし、それでもヘッドハンティングはトラブルに発展する可能性があります。
実際、ヘッドハンティングによって対象者の勤務先から訴えられたケースがあるのです。
例えば、ヘッドハンティングきっかけに有能な社員が同業他社へ転職し、既存の大口顧客も持っていかれたことから売上が減ったといった事例があります。
法律上は問題なくても、トラブルにならないわけではないので、その点をよく考えたうえでヘッドハンティングする必要があります。
ヘッドハンティングされる側のデメリット
続いては、ヘッドハンティングされる側のデメリットを紹介します。
ヘッドハンティング後の職場で人間関係のトラブルに遭う可能性がある
ヘッドハンティングされる側のデメリット1つ目は、ヘッドハンティング後の職場で人間関係のトラブルに遭う可能性がある点です。
どんなに会社が優秀だと思って採用していても、他の社員が快く受け入れてくれるとは限りません。
場合によっては、転職先の会社に馴染めず人間関係でトラブルに発展する可能性があります。
前の会社より給与は良くても、居心地が悪くなって転職を後悔するケースもあるでしょう。
希望した業種・職種に付けない可能性がある
ヘッドハンティングされる側のデメリット2つ目は、希望した業種・職種に付けない可能性がある点です。
採用した企業側は、転職者の能力や実績などから担当できると判断した職種を選んで配属します。
しかし、それが転職者の希望通りの職種とは限りません。
場合によっては、本人が希望していない部署に配属される可能性があるので、転職者は内定前の面談の時点で配属される部署のすり合わせをしっかりする必要があります。
いきなり役職を与えられてプレッシャー感じる可能性がある
ヘッドハンティングされる側のデメリット3つ目は、いきなり役職を与えられてプレッシャー感じる可能性がある点です。
企業側は、転職者の能力などを高く評価しているため、平社員だった方にも役職を与えてくれる可能性があります。
それをメリットと感じる方もいれば、プレッシャーに感じて苦痛に感じる方もいるでしょう。
ヘッドハンティングは、転職者への期待が大きく、責任ある仕事を任される可能性が高いと理解したうえで受けるかどうか判断してください。
ヘッドハンティングされても浮かれずに誰かに相談して決めよう!
ヘッドハンティングされた場合、あなたの能力が高いと判断されている証なので純粋に喜んで良いでしょう。
しかし、嬉しいと思う気持ちだけで転職を決めてはいけません。
ヘッドハンティングによる転職で労働環境が悪くなるケースもあるので、その点は頭に入れたうえでヘッドハンティングを受けるか考えてください。
また、1人で考え込むのではなく、直属の上司や同僚などに相談してから決めるのも大切です。
ヘッドハンティングされても浮足立つのではなく、しっかり周囲と相談して決めるようにしてください。