入社後すぐに有給はあり? 就業規則の3つのチェックポイントと気を付けるべき5つのマナーあなたは入社してすぐに有給休暇を取りたいけど、取得しても良いのか迷っていませんか?

確かに、有給休暇は社員が自由に取得しても良い権利があります。

しかし、入社してすぐに有給を取ると周囲から「もう休むなんて」と白い目で見られるのではと不安になってしまうでしょう。

また、中には「有給休暇って一定期間は働かないと取得できないのでは?」と考える方もいるはずです。

そこで今回は、入社後すぐに有給休暇を取得するのはありなのか解説します。

また、法的に定められた有給休暇に関してもお伝えするので、ぜひ参考にしてみてください。

有給休暇とは? 入社後すぐに取得は可能か?

有給休暇とは? 入社後すぐに取得は可能か?

そもそも有給休暇とは、賃金が支払われる休暇日という意味で、正式名称は「年次有給休暇」と呼びます。

会社によっては、「年休」や「有給」、「年次」など呼び方が異なります。

そして、雇用主は条件を満たした従業員に対して、毎年一定期間の有給休暇を付与することが「労働基準法」によって定められているのです。

では、入社後すぐの有給休暇取得は可能なのでしょうか。

入社後すぐに有給は取得可能なのか?

有給休暇の取得条件について確認してみましょう。

【有給休暇の条件】
 雇入れの日から起算して、6ヶ月間継続勤務していること
 6ヶ月間の全労働日の8割以上出勤していること

この条件を見る限り、入社してから6か月は勤務していないと取得はできない仕組みという訳です。

ただし、絶対に有給の取得ができない訳ではなく、会社が独自に取り決めたルールがあれば、入社後でもすぐに取得が可能となっています。

6か月以内でも有給取得ができるのかどうかについては、勤務する会社の就業規則を確認する必要があります。

具体的にチェックすべきポイントは、以下の通りです。

  • 年次有給休暇の規定
  • 一斉付与や個別付与の説明
  • 年次有給休暇付与の基準日があるか?

これらの部分を確認して、どのような条件で有給が取得できるのか把握しておきましょう。

有給休暇の対象者は正社員だけではない

有給休暇と聞くと、正社員以外の非正規雇用でも取得できるのか気になるところでしょう。

もちろん、前の項目で解説した2つの条件を満たしていれば、派遣社員や契約社員といった非正規雇用でも有給休暇の取得は可能となっています。

というのも、有給休暇の取得条件は2つの条件を満たした「全労働者」だからです。

有給休暇に関しては、労働基準法第39条にて必ず与えなければならない定められています。

  • 労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るとともに、ゆとりある生活の実現にも資するという趣旨から、毎年一定日数の有給休暇を与えることを規定しています。
  • 年次有給休暇は、雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、最低10労働日の有給休暇を与えなければなりません。(第39条1項)

出典元:一般社団法人 金沢労働基準協会「年次有給休暇の労務管理の話」

有給休暇の付与日数は?

労働者とは、正社員だけなく働くすべての人という意味なので、派遣社員・契約社員・アルバイト・パートなどの雇用形態を意味しています。つまり、どのような雇用形態でも有給休暇の取得が可能という訳です。

有給休暇が、どのような雇用形態でも取得できると分かったところで、続いては付与日数がどうなっているのか確認していきましょう。

基本的に、労働者の雇用形態や勤続年数に応じて付与される日数は変動します。

労働基準法で定められた有給休暇における付与の最低日数は以下の通りです。

継続勤務年数

0.5

1.5

2.5

3.5

4.5

5.5

6.5以上

付与日数

10

11

12

14

16

18

20

引用元:厚生労働省「年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています」

上記の表は、労働基準法によって必ず付与しなければならない日数を表しています。

そのため、これ以下の日数は法律違反となる訳です。

反対に、これより多い日数の有給を付与するルールや、入社後すぐに有給を付与するといった仕組みは法律上問題ありません。

あなたの会社が定める就業規則によっては、入社後すぐに有給取得してもOK という訳です。

その他有給休暇に関する基礎知識

その他有給休暇に関する基礎知識

ここでは、有給休暇の基本的な知識について解説します。

  • 有給休暇の付与単位
    付与単位は、基本的に「1日」です。しかし、実際は有給休暇の取得を推進するために、「半日単位」や「時間単位」といった有給の使用も認められています。
  • 有給休暇の繰越期間
    その年に有給休暇を消化できなければ、翌年に繰越ができます。ただし、有給休暇の有効期限は2年間と定められているため、2年間を経過した有給休暇は繰越されず消滅するので注意が必要です。
  • 有給休暇の取得方法
    有給休暇の取得については、労働者が雇用主に対して、時季と呼ばれる季節や具体的な時期を指定することで請求して取得ができます。ちなみに請求とは、何時から何時まで休むという季節を指定する行為です。
  • 有給休暇はいつでも取れるのか?
    有給休暇の制度には、「時季変更権」という権利が用意されていて、請求された時季が事業者の正常な営業を妨げる場合、使用者が他の時季に変更できるのです。
  • 有給休暇は理由や承諾は本来必要ない
    労働者が有給休暇の取得を申請した場合、雇用主が有給休暇を取得する理由を尋ねたり、その理由次第で有給休暇の取得を拒否したりしてはなりません。

請求した時季によっては、他の時季に変更しなければならないケースもあります。

ただし、原則は「時季指定権」が用いられるのが一般的で、「時季変更権」は例外的に認められる権利です。

また、有給休暇は法律上の権利なので、承諾を得たり理由を述べる必要はないとされ手いますが、実際は有給取得の際に理由を聞かれるケースがあります。

会社によってルールが違うので、トラブルを避けるためにも、基本的には会社の取り決めに従った方が良いでしょう。

このように、有給休暇には基本となるルールが数多くあります。中には、あなたが有給休暇を取得する際に知っておいた方が良いものもあるので、今一度基本的な知識を学びなおしてみてください。

また、入社後すぐに有給休暇が取れるのか、取得時に理由を伝える必要があるのかなどについては、各会社の就業規則によって異なるので、自分の会社のルールが知りたいなら改めて就業規則を確認してみましょう。

新入社員が有給を取得する際のマナー

新入社員が有給を取得する際のマナー

新人社員の場合、有給休暇の取得経験がないので、どのように申請すれば良いのか分からないでしょう。

そこで、最後は有給休暇を取得する際のマナーについて解説します。

有給休暇の取得方法

まは、有給休暇の基本的な取得方法について確認してみましょう。

  1. 計画を立てる
    会社や仕事のスケジュール、顧客の予定を考慮に入れながら、取得できそうな日程を考えましょう。
  2. 同じチームの人に相談
    自分自身で迷惑がかからない日程か考えたうえで、有給休暇を取得したい旨をチームに相談し、迷惑がかからない日程か再度確認してください。特にチームで仕事をしている場合は、人数が抜けると業務に穴が開く可能性があるので必ず相談しましょう。
  3. 上司に相談
    有給休暇の取得は労働者の権利であり、必ず上司に伝える義務がある訳ではないものの、やはり上司に有給休暇の許可を得るのがサラリーマンとしてのマナーです。有給取得後も居心地良く仕事をするためにも相談はした方が良いでしょう。
  1. 正式に有休取得手続き
    上記で解説した流れが完了知って、チームや業務に迷惑がかからないと分かったら、ようやく有給の手続きを進めていきます。

基本的には、以上のような流れで有給休暇の取得をします。

ちなみに、会社によっては従業員の有給休暇をスムーズに受理・管理できるように、申請書類がフォーマット化されているところがあります。そのような企業の場合は、フォーマットに沿って申請してください。

トラブルを避けるために社内の状況を把握する

有給休暇は、原則いつでも取得可能ではあるものの、周囲の方に迷惑をかけてしまう場合は評価に影響が出てくる可能性があります。

また、その後の職場での居心地の悪さにもつながるため、以下の場合は取得を避けた方が良いでしょう。

 職場が多忙な時期
 各種のイベントなどが組まれている場合

加えて、伝えるタイミングにも気を配った方が円滑に取得ができます。

伝えるタイミングとしては、休みたい日のなるべく1ヵ月前には伝えてください。

最低でも5~7日前までには伝えるのがマナーとなっています。

有給休暇は、基本的にはいつでも取得可能です。

しかし、周囲の人との関係や仕事の状況などを考えると、会社が忙しくない時期や閑散期、もしくは自分の仕事が少ない日に有給を使用するのが一般的となっています。

もしも、あなたの有給休暇によって仕事に影響が出る場合は、自分の仕事を請け負ってくれる人への引継ぎをしっかり行う必要があるでしょう。

クライアントとのやり取りなど、必要事項をしっかりと伝えておかなければ大きなミスに繋がる可能性も低くなります。

当日に有給休暇を取得する場合

先でもお伝えした通り、有給休暇の取得は、基本的に休む1か月前に取得する必要があります。

しかし、自身の病気や法事などによって、どうしても当日に休まなければならないタイミングはあるでしょう。

万が一、終業時刻を過ぎてから連絡した場合は、当然その日に有給休暇が適用される訳ではありません。会社が事後の請求として認めるという形になります。

しかし、すべての会社が当日の有給休暇の申請を認めるとは限りません。中には、無断欠席となり給料が発生しない休みとという扱いになるという会社だってあるのです。

あなたの会社が、当日でも認めてくれるのか、それとも認めてくれないのかについては、事前に知っておいた方が良いでしょう。

ただし、当日の請求を認めてくれるとは言っても、原則は1か月前までに申請してください。あくまでも、急な用事による理由に際してだけ利用するようにしましょう。

まとめ

まとめ

今回は、入社後すぐであっても有給休暇の取得が可能なのかという点について解説しました。

その結果、有給休暇の取得には以下のような条件があると分かりました。

 雇入れの日から起算して6ヶ月間継続勤務していること
 6ヶ月間の全労働日の8割以上出勤していること

つまり、この決まりだけをみると、入社後すぐの有給取得はできないという訳です。

しかし、会社の就業規則によっては、入社後すぐであっても有給の取得は可能だと理解できたでしょう。

また、原則として有給休暇の取得はいつでも可能ですが、周囲への配慮を全くせずに自分本位に取得するのは社会人として良くありません。

自身の仕事の進み具合や、繫忙期なのか閑散期なのかといった点に気を気張りながら、周囲に迷惑がかからないタイミングで取得するようにしてください。

有給休暇は、働く人の権利ではあるものの、周囲への配慮なくして取得は難しいという点をしっかりと理解しておきましょう。