雇用でも性別による差別が問題視されています。

性別は問わないものの職業によっては男性が有利であったり、女性が有利であったりするものもあります。

例えば長距離のトラックドライバーは男性が多く働いているイメージがあり、経理職は女性が採用されやすいというイメージがあります。

今回は経理職に本当に男性が少ないかという検証はもちろん、経理職とはどういった仕事をするのか、平均年収、役立つ資格などをまとめました。

未経験者が経理職への転職を有利にするためにはどうすればいいかについて考えていきましょう。

経理職へ転職を考える方で、特に未経験者や男性はチェックしてください。

経理とは?

『経理』と聞くと「給料の計算などお金に関した仕事をする」と考えている方が多いのではないでしょうか。

概要はそれで間違いないのですが、もう少し詳しくいうと「会社経営において『利益』や『資産』を生み出すためにお金を管理すること」です。

ここでは経理という業務をさらに詳しく掘り下げてみます。

経理の具体的な内容

経理の仕事は主に下記の5つです。

  1. 日々の売上管理
  2. 仕入れ管理
  3. 給与・保険の管理や計算
  4. 税金の計算
  5. 決算書の作成

経理の仕事は会計の仕事の一部であり、言わば「家の家計簿をつけるようなお金の管理」をしています。

特に月給制の企業が多いことから月のサイクルや年単位での業務などもあります。

月間の仕事サイクル

  1. 取引先の入金確認
  2. 月次決算書作成
  3. 予算実績管理
  4. 住民税・源泉所得税の納付(毎月10日まで)
  5. 給与計算
  6. 取引先への支払い・請求書作成
  7. 社会保険料の納付

主に1~4を月の前半に行い、後半に5~7の対応をすることが多いようです。

ただ、指定の給料日や取引先との契約内容によって多少変動する可能性はありますので、あくまでも目安として考えてください。

経理の年次業務

年間の業務をまとめると下の表のような流れになります。

4月決算整理
5月年次決算作成、税務申告
6月賞与計算・振込、社会保険の算定基礎届提出
7月労働保険提出
11月中間税務申告
12月賞与計算・振込
1月年末調整、給与支払報告書・法定調書の提出・償却資産税申告書提出
3月実地棚卸

業種や企業の規模により内容は異なるのであくまでこれは一例に過ぎません。

しかし月刊のサイクルをこなしつつ年次業務をしなければならないため、やることが多いのはどこの経理も同様と考えていいでしょう。

お金を扱う職務のため自分のミスが原因で会社の存続問題にまで発展する場合もあるため経理の責任は重大です。

経理職に就くメリット

転職先として総務や経理などの事務職はとても人気がありますが、経理職に就くメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?

経理職に就く5つのメリット

メリット1.経営について理解が深まる

経営を支えるポジションで働くため、経営陣と近いポジションにいることが可能。

将来、起業を考えている方には最適です。

メリット2.キャリアアップの仕方がわかりやすい

正確に素早く書類を作成できる、ミスが少ない、間違いに気づけるなど正しいものを見つけられる、入力できるなどあの人に任せれば安心といった信頼を持たれるなど、正確さにともった信用がキャリアアップに繋がります。

メリット3.転職に強い

経理事務はどの企業でも必要とされる職種のため常に求人があります。

安定感もあるため人気業種なので競争率も高くなっています。

メリット4.収入アップ

勤務年数が長い、正確性がありスピード感があるなどキャリアを積んだり、資格を取ったりすると給料が上がる可能性があります。

メリット5.会計の基礎を学べる

経理職に就くとそこで得た知識や技術は次の転職に役立つものが多いため、派遣で経理をしていても、職場で身に着けたノウハウも役立つ可能性が高く、特に起業を目指しているなら派遣先でのそれぞれの経営状況を知ることもできるメリットがあります。

経理職の3つの苦労

ノルマがある営業職などに比べると経理職は比較的楽な仕事と思われるかもしれません。

しかしまったく苦労のない仕事などあり得ませんし、お金を管理する職なので責任もあります。

経理職の苦労とはどのようなものなのでしょうか?

苦労1.集中力を保たなければならない

大きな金額を扱うため、集中して仕事に取り組まなければなりません。

また、働く以上どんな職種にも責任は伴いますが、ひとつのミスが会社の存続を危うくする場合もありえるのです。

そこまで大問題でなかったとしても、給与の計算や入力ミスで本来入る収入が足りなければ確実に迷惑をかけてしまいます。

そのため気を抜かず集中し続けなければなりません。

苦労2.肩こりなどの職業病

長時間椅子に座ったままパソコンでの入力作業が多く、肩こりや腰痛などの病気になりやすいです。

苦労3.決算書の数字が合うまで帰ることができない

月末の月次決済、年度末の年次決済は長時間の残業になることがあります。

経理という仕事をする以上1円でも間違いがあってはならないため、そのプレッシャーは受け止めなければなりません。

また苦労というよりは今後の不安になりますが、会計ソフトやAIの発達により経理を人がやらなくなる可能性があります。

つまり経理職自体が無くなり、最悪の場合リストラで職を失う恐れもあるのです。

経理の平均年収

経理職に転職を考えている方にとって仕事内容と同じぐらい重要なのが給与の額です。

ここでは正社員の平均年収と、派遣の時給を計算した1年間の収入を比較してみていきましょう。

経理の平均年収

契約形態

平均年収

経理(正社員)

499万円

※2018年9月~2019年8月まで『doda』調査による。

経理(派遣)

(1,700×8)×(365-129)=約320万円

※時給1,700円、実働8時間、完全週休2日制の会社、年間休日129日と仮定。

※時給は『リクナビ派遣』の東京都23区×経理の派遣求人を参照。

正社員の方が150万円以上高い結果となりました。

この結果は平均年収と仮定の時給を計算し比較したシミュレーションなので実際の職場とは大きく異なる可能性があります。

あくまで参考にと考えてください。

経理に有利な資格

これから経理職を始めようとしている方はもちろん、すでに職に就いている方も資格を取得することはステップアップになります。

そのために資格を取ることはおすすめですが、どのような資格があるのでしょうか?

今回は経理をする上で有利になる資格をまとめてみました。

経理に有利な9つの資格

資格1.日商簿記検定

即戦力を求められている場合、簿記は必要不可欠です。

通常の経理事務なら3級程度、2級から原価計算、1級から会計学が必要となります。

日商簿記検定がないよりもある方が印象は良いでしょう。

資格2.MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)

Excel、Word、PowerPoint、Access、Outlookの5教科があり、経理で一番利用されるExcelを取得するのがおすすめです。

MOSはMicrosoft Officeのヴァージョンに合わせ、それぞれの科目で2010,2013,2016があります(2020年2月現在)。ExcelとWordには一般レベルと上級者レベル(エキスパート)があり、最初からエキスパートを受験することも可能です。

資格3.文書情報管理士

文書の管理能力を示す資格で、社外秘や個人情報が書かれた文書を取り扱うことがある経理職でも有利になる資格です。

資格4.給与計算実務能力検定

経理で重要な仕事のひとつが給与計算なのでこの資格も有用です。

資格5.FP(ファイナンシャルプランナー)

税金や投資、不動産などお金にまつわる知識を持ち、経理だけでなく人事や銀行業務も有利になります。

資格6.経理・財務スキル検定(FASS検定)

経理や財務部門の人材育成のために設定された検定試験です。

資格7.電子会計実務検定

会計システムの導入や会計情報の分析を把握するための知識を証明できます。

資格8.秘書技能検定

税務管理の中で秘書のような役割を担うことがあるため、ビジネスマナーを身につけることができます。

資格9.日商PC

MOSに似ていますが、ビジネス向けの知識や実技があるのが特徴で、日本商工会議所が行っています。

資格はあくまで転職に有利であって、転職時になくとも転職先で働きながら取得していきたいという前向きな気持ちを見せるのも良い印象を与えます。

次に転職・再就職を考えている方におすすめの資格取得方法を見ていきましょう。

職業訓練で資格が取れる

転職活動中の方で条件に当てはまれば職業訓練で資格を獲得することも可能です。

職業訓練とは

主に失業保険を受給できる方向けの『公共職業訓練』と、失業保険を受給できない方向けの『求職者支援訓練』があります。

事務系の職業訓練もある

失業保険や職業訓練受講給付金などを受け取りながら講義を受けられます。

地域によって内容の違いや、申込を受け付けている期間などもあるので確認にしておきましょう。

特に未経験で経理職に転職を考えているなら資格を取っておくほうがいいでしょう。

即戦力を求められる場合が多いためそれでも経験者のほうが有利ですが、派遣では登録しやすくなります。

経理職は転職しやすい

経理職からの転職を考えていても、今まで培ったスキルや経験が他の職場でも通用するのか心配で踏み切れない方もいます。

職場の環境や給与、そして待遇など転職することで大きくプラスに変わる可能性もありますが、失敗すれば元の職場に戻ることも簡単にはできません。

実のところ経理職は事務職の中でも転職しやすいと考えられています。どうしてしやすいのでしょうか?

経理からの転職がしやすい2つの理由

理由1.他の事務職に比べ、積み重ねた実績やスキルの汎用性が高く、どんな企業でも活用できる

理由2.実績を数字や共通語でアピールできるので求人応募の面接にも対応できる

この2つの理由から他の事務職に比べると転職しやすいのですが、その分注意も必要です。

経理から転職する際の3つの注意

注意1.大企業ではキャリアアップが遅い場合がある

大企業の大きな部署では多くの仕事が分業制のため受け持つ範囲が狭くなり、実績として認められづらいのでキャリアアップが遅れる場合があります。

注意2.中小企業ではキャリアアップの範囲が狭い場合がある

中小企業経理、子会社や非上場の小さな会社では大企業ならある連結決算や開示書類の作成など、専門性が高い業務が無いこともありえます。

その場合はキャリアを積むことができません。

注意3.日系企業と外資系企業では経理の仕事内容や給与に違いがある場合も

日系企業と比較すると、外資系企業では残業が少なく給料が高い傾向があります。

また外資系は業務の分担が明確にされている場合が多く、幅広いスキルを身に着けることはできないかもしれません。

経理職から転職する場合はあらかじめ転職先の情報をできるだけ収集して自分の目的に合うのか確認が必要です。

未経験から転職をする時に評価されやすい項目

どの業種にもいえることですが新卒採用以外だと「実務経験者」が雇用されやすく、経理職も例外ではありません。

中途採用は即戦力が求められるのでどうしても未経験者の転職は難しくなってしまいます。

しかしあきらめてしまっては自分が望む職にいつまでも就くことができません。

そこで未経験をカバーするためにできることを考えてみましょう。

未経験を補う3つのこと

1.年齢(若い方が良い)

経理職への転職は若いうちに実行する方が有利です。

しかし安易に現職を辞めるのもリスクがあり、転職するならしっかりと計画を立てなければなりません。

2.資格(簿記を筆頭に経理に有利な資格を取っておく)

職業訓練を上手く利用すると簿記やMOSなど取りやすくなります。

3.実務経験を積むために、再転職を考えて転職する

いきなり正社員は難しくても派遣で経験を積む方法もあります。

面接を受ける際には未経験であっても前職で経理に活かせる部分を探し、それをアピールしていくことも大切です。

またパソコンスキルは必須になるため、特に30代以上の方はExcelなどの資格を取得し実務経験者との差を埋めるようにしましょう。

それでも即戦力となる実務経験者のほうが有利なのは変わりません。

いきなり正社員が無理なら開き直り、長期計画を立てるという方法もあります。

職業訓練を利用するなどして資格を取り、派遣で経験を積んでから自分の要望に合う経理職に就くのです。

この方法だと時間はかかりますが焦って就職に失敗して転職を繰り返すより、最終的にいい結果をもたらす可能性があります。

経理職に男性は就きにくい?

経理をしている職場には女性が多いイメージがありますが実際はどうでしょうか?

経理の男女比率

マイナビAGENT』による調査では、女性46%、男性54%とそれほど差はありません。

この数値から人数の割合で経理職はジェンダー差がないと考えられます。

イメージとは異なり経理は男性の需要もある職種です。

経理で採用されやすい年齢

『MS-Japan』の調査では「経理・財務」の転職者希望の年齢は一番多いのが40代で次いで30代となっています。

しかし未経験者向けの経理求人で採用されるのは女性だと20代前半が多く、男性は26歳くらいまでです。

男性は30代以降、実務経験がない場合は経理職への転職は難しくなっています。

経理職は性別による採用割合の差は確認できませんでしたが、年齢による壁は存在します。

30代以降の転職の際はそれを考慮に入れて臨む必要があります。

経理職への転職を少しでも有利にするために

経理職は企業では必要な部署で求人が絶えることはないのですが、それ以上に希望者が多く未経験で特に30代以降だと採用が難しくなります。

少しでも有利にするためには面接で前職の経理に役立ちそうなところを強調するのはもちろん、資格を取っておくことがおすすめです。

さらに長期計画で望めるなら、派遣で経験を積みキャリアアップするという方法もあります。

経理に限ったことではありませんが転職に焦りは禁物です。

しっかりと計画を立て目標を達成していきましょう。