仕事では繁忙期や急な仕事が入ったとき、終業時間をすぎても仕事に目途が立てられず残業することがあります。

正直なところ早く帰宅したいのに、仕事だからと仕方なく残業する方もいるのではないでしょうか。

残業をすれば残業手当がもらえますが、だからといって好きなだけ残業すれば良いというものでもありません。

企業によっては残業が多め、少なめのところがありますが、月あたり100時間が労働基準法に触れるか触れないかのボーダーラインと言われています。

現在、働いている企業の残業時間は月あたり何時間くらいでしょうか。

年間を通して残業が多いと感じている方は、100時間を超えるかどうかを気にしてみてください。それでは、残業時間と労働基準法違反について詳しく見ていきましょう。

労働基準法にも違反する月100時間の時間外労働(残業)をする人の割合はどれくらいなのか

働きはじめるとほとんどの企業で経験する時間外労働(残業)は、月あたり100時間を超えると労働基準法に違反することを知っていますか。

月あたり100時間というと、すぐにはイメージしにくいかもしれませんが、1ヶ月に20日間出勤するなら1日5時間の時間外労働をしている計算になります。

終業時間が17時の企業なら、22時まで働いていることになります。

一部調査では、調査対象68,853名のうち、月間100時間以上の時間外労働をしている方は12.9%(約8,882名)もいるとしており、想像以上に多くの方が月あたり100時間以上の時間外労働をしていることがわかっています。

労働基準法に違反していることをわかっていても、これだけの時間外労働をしていることは外国人から働きすぎだと言われるのも当然でしょう。

しかし、たくさん働くことが良いというわけではなく、労働時間が長くなれば健康を害するリスクも高くなり、疲れが抜けなくなったり、不眠や鬱病になったりすることも多くなります。

さらに、疲れが抜けない状態で翌日出勤しても、高いパフォーマンスを発揮できなくなっていくでしょう。

それでも、月間100時間以上の時間外労働を黙認する企業が後を絶たないため、働き方改革が成立し労働基準法が改定されました。

参考:6万8,000件の社員クチコミから分析した’残業時間’に関するレポート(最終確認2020年4月10日)

時間外労働の上限規制改正は大企業と中小企業で導入時期が異なる

どのような仕事でも長時間労働は、結構の確保をしにくくなり仕事と家庭の両立が難しくなることから、少子化の原因だと指摘する声もあります。

また、女性のキャリア形成を妨げる要因、男性が家庭に参加して家族で過ごす時間を妨げるとしており、長時間労働は是正する必要があると提案があったのです。

仕事と家庭のバランスが改善されれば女性や高齢者も仕事に就きやすくなり、就労参加率の向上が見込めることから、働き方改革の一環として労働基準法が改正されて、時間外労働の上限が法律に規定されることになりました。

厚生労働省では、

残業時間の上限は原則として月45時間、年360時間とし、臨時的な特別な事情がなければこれを超えることはできません

引用元:時間外労働の上限規制とは

と定めて、大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月からの導入を決めています。

働き方改革が目指すものは何なのか

現在の日本は少子高齢化の影響を受けて、仕事をする人がどんどん少なくなっていることや、これまでと同じような労働スタイルでは働きたくても働けない人が増加するといった課題を抱えています。

そのため、生産性や働く従業員の満足度の向上、これらを実現する環境作りを目指すことを柱として、労働者がそれぞれの事情に応じた柔軟な働き方を、自分で選択できることを目指しています。

さまざまな働き方を選択できるようにすることで、成長と分配の好循環を構築し、一人ひとりがより良い将来の展望を持てることを目指しています。

法改正のポイントを解説

時間外労働(残業)に関する働き方改革に取り組むには、はじめに次ぎのような準備が必要です。

  • 企業が時間外労働(残業)を行うには労働者と企業との間で36協定が必要
  • 労働契約を締結する際には、労働者に対して労働条件を書面などで交付することが必要
  • 労働者が10名以上の場合は、就労規則の作成・届け出が必要
  • 賃金台帳、労働者名簿などを作成・保存する必要あり
  • 非正規雇用労働者を雇っている場合は、正規雇用者と比べて不合理な待遇差がないようにしなければならない

今後は企業が労働者に対して時間外労働をさせるときは、36協定の締結が必要となり所轄労働基準監督署への届け出が必要になります。

この36協定は、時間外労働をする業務の種類や、時間外労働の時間の上限などを決めるもので、36協定を締結していない企業は労働者に時間外労働をさせることはできません。

その他の内容も併せて準備した上で、労働基準法の法改正のポイントを見ていくと、

  • 時間外労働(残業)の上限は月あたり45時間、年間360時間
  • 原則として臨時的な特別な事情がない限りは上限を超えることはできない
  • 臨時的な特別な事情がある場合で、労働者と合意があるときでも、時間外労働(残業)は年720時間まで
  • 時間外労働(残業)+休日労働の合計は、月に100時間未満、2~6ヶ月の平均が80時間以内
  • 原則の月45時間を超えられるのは年間6ヶ月まで
  • 法律違反の有無は、「所定外労働時間」ではなく「法定外労働時間」の超過時間で判断する

と、複雑ですが時間外労働の上限がしっかり明記され、特別な事情がある場合でも年720時間、月あたり60時間までと決められています。

これを受けて企業側は労働者にたくさん働いて欲しくても、改正後の新体制に則って手続きを行い、時間外労働の限度を厳守しなければならなくなります。

労働基準法の時間外労働の上限規制改正内容を解説

労働基準法で新しく定めた時間外労働の上限規制改正で最も注目すべきは、時間外労働の上限が定められたことと、これまでの労働基準法では行政指導レベルだったのに対し、改正後は罰則や法的強制力があることです。

これまでは行政からの注意や指導が行われる程度で、そのときだけ反省しておけば良いと言う考えの企業もいたでしょう。

ですが、これからは労働基準法で細かく定められているため、手順を踏んでしっかり手続きしなければ、自社の労働者に時間外労働をお願いすることもままならなくなります。

そこで、時間外労働の上限規制改正内容について、詳しくみていきましょう。

時間外労働の上限が罰則付きで法律に規定される

これまでの時間外労働は、厚生労働大臣の告示によって定められることがほとんどで、特別な事情がある臨時的な時間外労働が必要なときは36協定を締結すれば、所定の限度を超えて時間外労働をすることが可能でした。

ですが、法改正後は企業が労働者に時間外労働をしてもらうために、はじめから36協定の締結が必要となりその内容も細かく決めることになったのです。

 

加えて、厚生労働大臣の告示により決められていた時間外労働の上限が、今後は罰則付きの法律に規定されたことにより、曖昧さがなくなりこれまでよりもずっと厳しい条件となったのです。

つまり、企業側は時間外労働に対して適当なことは一切できなくなり、労働者側は時間外労働の上限の範囲でのみ時間外労働をするようになります。

通常業務では月あたり45時間、1日あたり約2時間半までの平均残業時間となります。

臨時的な特別な事情があっても上回ることはできない上限を設置できる

業務上では繁忙期や急な仕事が入って時間外労働をせざるを得ない状況もあります。

例えば、何らかの事情で自社の製品をこれまでの2~3倍も製造しなければならないとなれば、時間外労働をすることは避けられない流れになります。

ですが、こういった臨時的な特別な事情があるときでも、改正後は年間で720時間が上限になります。

 

月あたり60時間まで、1日あたり3時間までが上限となる計算です。

加えて、月間の時間外労働と休日労働の合計時間が100時間未満という新しい決まりもできたため、休日を返上して働くとしても労働時間の合計には注意が必要になります。

なお、臨時的な特別な事情があるときの時間外労働の時間と、休日労働の合計時間は、2ヵ月平均・3ヶ月平均・4ヶ月平均・5ヶ月平均・6ヶ月平均のすべてで80時間以内ということも重要です。

例えば、時間外労働が月あたり44時間でも、休日労働が57時間といったように100時間を超えれば法律違反になります。

2ヵ月以降の時間外労働の合計も同じ考え方でで、さらに、月あたり45時間の時間外労働を超えられるのは年間で6ヶ月が限度となります。

 

これらに違反したときは6ヶ月以内の懲役か、30万円以下の罰金が科せられることがあるので注意してください。

仮に罰則を受けた企業のうち、程度によっては厚生労働省が企業名を公開することもあります。

以前の厚生労働大臣の告示のみのときに比べると、細部まで細かく計算された内容になっていることがわかります。

新制度の目的は労働者の過労死を防ぐこと! 過労死ラインは単月100時間

新しい労働基準法は、労働者の過労死を防ぐために改正されたもので、国が定める過労死ラインは単月100時間の時間外労働だとしています。

また、複数月が100時間未満でも80時間以上の時間外労働が続くようであれば、同じく過労死ラインと判断することもできます。

今後、どのような企業で働くとしても、過労死ラインで体力的にもきつい仕事をしないように、時間外労働については自分なりにチェックすることも必要でしょう。

なお、文章のみだと複雑でわかりにくい新旧の労働基準法の違いを表にまとめました。

それぞれの違いを見ても、新法律の方が労働者が働きやすい環境となるよう配慮があります。

旧法律と新法律の違い

 

旧法律

新法律

強制力

行政指導レベル

法的強制力あり

残業延長のための手続き

(36協定)

定める必要あり

延長可能回数

6回

延長可能時間

上限なし

・1か月100時間未満

 (休日労働を含む)

・2~6ヶ月平均80時間以内

 (休日労働を含む)

・1年720時間以内

 (休日労働除く)

延長可能な場合

突発的・一時的な業務が生じた場合のみ

健康・福祉確保措置

言及無し

定める必要あり

もしも100時間の時間外労働をしていたらどうすればいい?

転職先がブラック企業、またはブラック企業ではないとしても限りなくブラックに近いグレーな企業だった場合、100時間近い時間外労働を強いられる可能性があります。

はじめのうちは新人だからこんなものかと思っていても、徐々に疲れが抜けなくなり、業務上のパフォーマンスが落ちてミスが増えて、注意されることが増えると鬱状態になりやすくなります。

自分がもしも、100時間近い時間外労働をしていた場合、どうすれば良いのでしょうか。

まずは労働基準監督署に相談しよう

労働基準法は良く見聞きすると思いますが、労働基準監督署は知っているでしょうか。

労働基準監督署は労働者を守ることが目的の組織で、主に法律に基づいたアドバイスをしてもらえます。

企業側が悪質だと判断したときは、企業に対して調査や指導をしているため、実際に相談してみて、企業側に改善が見られないときは、転職することも視野に入れておきましょう。

なるべく早く退職するように働きかけるのが大事

時間外労働は、年間平均月80時間以上、単月100時間以上ともなると医学的にも有害だとしています。

給与をもらうため、生活のためといっていつまでも我慢しているよりも、体を壊す前に早めに退職・転職する方が良いでしょう。

念のために過労死基準と労災認定基準を確認しておこう

現在、時間外労働が多い職場で働いている方は、自分の状況を振り返ってみてください。

直近2ヶ月ほどの時間外労働は何時間程度あったでしょうか。

万が一、次のような時間外労働をしているなら医療機関の受診をおすすめします。

<過労死基準>

  • 健康障害を発症する2~6ヶ月前の平均時間外労働が月80時間越え
  • 健康障害を発症する直近1ヶ月の時間外労働が100時間越え

また、不眠や鬱状態に陥るなど、精神状態に負担はないでしょうか。

万が一、何らかの精神疾患があるときは労災が認定されます。

労災は業務上に被ったケガや病気に対する保証制度です。

労災認定の基準もチェックしておきましょう。

労災認定の基準

  • 労災認定の対象疾患を発症していること
  • 対象疾患の発病前6ヶ月間に強い心理的負担が認められること
  • 業務以外に対象疾患を発病する原因がないこと
  • 医師の診断書があること

残業代の未払いがあるときは労働関連の実務経験豊富な弁護士に相談するのがベスト

社会人として働く以上、どんな仕事でも残業が全くないと言いきれないもので、時には時間外労働をしなければならないこともあります。

時間外労働をすれば、その分手当がもらえて給与が増えますが、だからといって月に100時間も余分に働くことは時と場合によって過労死を招くことがあるため危険です。

現在の日本では、働きすぎて過労死を招くようなことがないように労働基準法が改正され、法的強制力がある者へと進化しています。

労働者の健康や家庭を守る観点からもとても重要なことで、今後の働き方についてよく考える良い機会だともいえます。

 

もしも今、時間外労働が多い職場で働いている方は、1度、時間外労働について振り返ってみてください。

あまりにも多く働いているようなら、退職や転職の準備が必要です。

また、時間外労働をすると残業手当などの名称で手当てがもらえますが、この手当の未払いがある場合はどうしたら良いでしょうか。この件について、自分から社長に直談判することは、自分に不利になることも考えられるため、労働関連の実務経験豊富な弁護士に相談するようにしましょう。

労働関係の経験豊富な弁護士なら、しっかりと未払い分を支払うように解決してくれるはずです。