「仕事を辞めたい」と思ったときにチェックして欲しい項目
「仕事を辞めたい」と思うことは誰でも1度や2度はあるはずです。場合によっては何度もあるでしょうが、一時の感情で早まって辞めないほうがいい場合と、心と体を守るために一刻も早く辞めたほうがいい場合があります。
そのあたりの判断をつけるのは自分では意外に難しく、たとえば、普段から「辞めたい」と言っていても、それがかえってガス抜きとなっていて、実際は辞めなくてもいいことがある一方、我慢強い性格が災いして、心身が壊れる一歩手前まで我慢してしまい、「辞めたい」と思ったときにはもう手遅れという方もいます。
そこで、客観的な指標として、「仕事を辞めたい」と思ったときに確認すべきチェックリストを20項目挙げてみました。判断のポイントについては後で説明しますが、まずは自分の状態や自分の職場環境に該当するものにチェックを付けてみてください。はっきり該当するといえなくても、「そうかも」と思えるならチェックを付けておきましょう。
「仕事を辞めたい」と思ったときのチェックリスト
① 仕事が大量にあって対応しきれない場面が多い
② 仕事において精神的な疲労が多い
③ 自分の意見が通りにくい職場だ
④ 職場で周りの人とうまが合わない
⑤ 職場の作業環境は良くない
⑥ 自分の仕事内容がやりたいことと合っていない
⑦ なんとなく元気が出ない
⑧ 情緒が不安定になることが増えた
⑨ 倦怠感が取れない
⑩ 常に眠気がある
⑪ 朝、起きられなくなった
⑫ 不安な気持ちになることが多い
⑬ 何か活動をしようとしても気が入らない
⑭ 頭痛や肩こりがひどい
⑮ 腰が痛い
⑯ 動悸や息切れがある
⑰ 食欲がない
⑱ よく眠れない
⑲ 運動や食事制限をしていないのに体重が減った
⑳ 気軽に話せる相手が周囲にいない
以上の20項目のうちチェックを付けた数から、転職を検討すべきところまで心身が追い詰められているかどうか判断できます。
A・チェックを付けた項目が3個以内:ストレスを改善できる可能性が高い
B・チェックを付けた項目が4~10個以内:すぐに辞める必要はないが、転職を検討してもよい
C・チェックを付けた項目が11個以上:今の職場に合っていない可能性が高く、転職を検討すべき
このうちAに該当した方は、転職を検討するよりは仕事や生活の場でストレスを改善する工夫をまず考えたほうがいいでしょう。
次にBに該当した方は、仕事や生活の場でストレスを改善する工夫を試みつつ、1つの選択肢として転職を検討してみてください。
最後にCに該当した方は、仕事や生活の場でストレスを改善する工夫を試みつつも、なるべく早く転職を検討したほうがよさそうです。
厚生労働省では「5分でできる職場のストレスセルフチェック」として、57問の質問で職場のストレスレベルを測定するオンラインサービスを無償提供しています。
その測定結果として、現在のストレスの状態とそれに対するコメントのほか、ストレスの原因となりうる因子について説明されるので、それを参考にして自分にとっての職場のストレスレベルを判断できます。
なお、測定結果のページには「ストレスケアのアドバイス」についてのページへのリンクもあり、そこではストレス対処法や専門機関への相談、医療機関での受診について解説されているのでチェックしてみるのも良いでしょう。
実際に仕事を辞める理由として多いのは?
先ほどのチェックリストは、どちらかというと自分自身でも気づいていなかったり、あるいはあえて見ないように避けているストレスや不満などを洗い出すものでした。
そうした無意識のストレスや不満などが溜まっている場合、転職をひとつの選択肢として検討することになりますが、最初から仕事を辞めることをはっきりと決められる方やある時点でストレスや不満が溜まっていることに気付き、辞めることを決意した方の多くは「自分が仕事を辞めたい理由」をはっきり自覚しているものです。
一般論として、退職・転職を考えている方、実際にそうした方の多くが理由として挙げるものを次にまとめました。
仕事を辞めたい理由
給与、福利厚生
働いた内容に対して給与が割に合わない、社会保険がなく雇用保険しかかけられていない、休日出勤手当がない、残業代が出ない等
人間関係
上司や部下、同僚との人間関係が良好ではない、いじめとも取れることをされている、社内恋愛をして別れて割り切れない等
仕事内容
同じ作業の繰り返し、やりたくない仕事をやらされている、思っていた業務内容と違った、ノルマが多く結果が出せずストレスを抱えている、仕事量が多く過ぎて精神的に辛い等
労働時間
残業が多い、十分な休憩が得られない、休日出勤を迫られる、仕事とプライベートを分けることができない等
社風
体育会系の社風と自分が合わない、社内規則が厳しく精神的に辛くなる、友人の会社がとてもうらやましくなる等
評価
仕事の成果を正当に評価されない、上司のひいきが目に見えてひどい、評価は上がっているのに給料に反映されない等
ここに挙げたものは、いずれも誰もが一度は感じたことがあるでしょう。我慢強い方なら「そんなことで会社を辞めるわけにはいかない」「そんなことで会社を辞めるなんて軟弱者だ」と思うこともあれば、ある理由にはうなずけても、別の理由にはうなずけないということもあるでしょう。
しかし、ここに挙げたそれぞれを各自がどれくらい許容できるかということには個人差があり、また、同じ理由に見えてもその内容は異なるため、「この理由で辞めるのはいい/よくない」ということは単純にはいえません。
特に、先ほど挙げたチェックリストで、チェックの多かった方は心身が悲鳴を上げているのは確かなので、理由にかかわらず退職・転職を考えるべきでしょう。
仕事を辞めた理由の統計
参考までに、転職した方が前職を辞めた理由の割合についての統計結果をチェックしましょう。
転職入職者が前職を辞めた理由別割合(平成29年・厚生労働省調べ)
理由 | 男 | 女 |
仕事の内容に興味を持てなかった | 5.5% | 5.2% |
能力・個性・資格を生かせなかった | 4.6% | 4.4% |
職場の交友関係が好ましくなかった | 7.2% | 13.0% |
会社の将来が不安だった | 8.9% | 3.5% |
給料等収入が少なかった | 11.0% | 10.5% |
労働時間、休日等の労働条件が悪かった | 12.4% | 14.7% |
結婚 | 0.4% | 2.6% |
出産・育児 | 0.3% | 1.8% |
介護・看護 | 0.6% | 1.8% |
定年・契約期間終了 | 17.8% | 11.5% |
会社都合 | 5.9% | 6.1% |
その他の理由 | 23.4% | 22.9% |
これを見ると、給料や労働時間といった労働条件の部分を理由としての退職が比較的多いことが分かります。「定年・契約期間終了」というのは被雇用者側の理由ではありませんが、これもまた労働条件がらみの理由です。
そのほか、男女で異なるのは、まず結婚や出産・育児を理由に辞める人が女性のほうが多いということです。また、男女の違いで特筆すべきは、男性は「会社の将来が不安だった」、女性は「職場の交友関係が好ましくなかった」が多いということです。これは、男性は将来の給料のことがストレスとなり、女性は会社の人間関係がストレスになりやすいということでしょう。
仕事を辞めると決断する前に考えるべきこと
心身に負担をかけている原因が仕事なら、心身のためにその仕事を辞めたほうがいいのは確かです。しかし、仕事を辞めると収入に関して変動が生じることになり、また、転職先探しや新しい職場に移ること自体もストレスとなることがあります。
そうしたことを考えると、考えなしに仕事を辞めることにはリスクがあり、かえって状況を悪化させる可能性すらあるでしょう。
そこで、まずは最初から辞めることだけを考えるのではなく、部署を異動することなどで対応できそうか、休職という選択肢はあるか、といったところから検討してみるべきです。
また、転職先が決まらないまま退職してしまうと、失業手当などがもらえても支給されるまでに時間がかかり、次の職場に移るまでに給料のない空白期間が生じることがあります。そこで、新たな仕事がなかなか見つからない場合でも、金銭的に数ヵ月間生活していけるのかどうかも考えなくてなりません。
仕事を辞めたい理由がはっきりしているなら、退職を考える前にまず、自分の置かれている状況を変えるために何かできることがないか対策を考えてみたほうがいいでしょう。
仕事を辞めたい理由ごとの対策法
給料が少ない
手当の交渉をする、手当てが付く資格を取る、副業を初めてみるなどを試みてみましょう。ただ給料をあげて欲しいというのではなく、住宅ローンや教育費、奨学金返済といった理由から給料が足りず、副業を考えてみて、どうしても足りない場合にどの資格を取れば手当がつくのかを聞いてみるといった「ここまでやってみたけれど」という誠意を見せるのが大事です。
人間関係が悪い
相手の態度を受け流せる力を身につける、相手の気持ちになって自分の行動を少し変えてみる、話し合いの機会をもってもらうなどで対処してみるのがおすすめです。相手の気持ちを変えるのではなく、自分が相手のために少しだけ変わってあげるという気持ちを持つと優位に動けることもあります。また誤解が生じてギクシャクしているなら、話し合う機会を持ってみるというのも改善策のひとつになりえます。
仕事内容が自分に合っていない
仕事の進め方の改善点を探し改善する、人事異動を願い出る、転職活動をしながら仕事をするなどをしてみましょう。今やっている業務以外にやってみたい部署があるなら人事異動をお願いするのも手です。また転職サイトに登録し、求人を見たり転職活動をしてみたりしながら今の仕事をしていると、見えなかった部分に気づくこともあります。
労働時間が長い
受ける仕事を調整する、業務の効率化を図る、話し合いの機会を持つことを試みましょう。自分はどれくらいの仕事量ならできるのかを知り、受けれる量だけをこなす、またはどうすれば効率よくなるのかを考えて実行してみましょう。同じように労働時間が長いと感じている同僚がいるならば、上司と話し合う機会を持ってみるのも良いです。
誰かが言わなければ、それが当たり前で気づかないということがあります。自分のためでもあり、ひとのためであるという気持ちを持って進めていきましょう。
社風が合わない
会社で決められたことは変えることはできないケースが多いため、時間が解決してくれるのを待ってみる、社風への歩み寄りを試みるのが良いでしょう。ただ明らかに男女差別だったり、誰もがおかしいと思っている社内ルールだったりして耐えられない場合は転職を考えておくのも方法です。
正当な評価をしてくれない
普段からコミュニケーションを心がける、評価の面談を作ってもらう、評価シートを見せてもらって説明してもらうなどがおすすめです。自分はこんなにもやっていると思っていても、上司から見ると的外れなところで結果を出していると思われたり、目標がズレてしまっていたりすることもあります。
そうならないように、面談を持ってもらう、目標設定にブレがないか確認し合うなどの行動が大切になってきます。
ここに挙げた対策法のうち、はっきりと「これは無理」と思えるものもあるでしょう。たとえば、昇給交渉をするといっても交渉の余地があるように思えないとか、人間関係において相手の態度が受け流せるレベルではないというケースもあるはずです。
そのようなケースでは、そのこと自体が会社を辞めるか辞めないかの判断材料となります。とれる対策がほとんどないのなら、どうしても辞める方向に傾かざるを得ません。
また、昇給交渉や人事異動の申し出などに対する反応が判断材料になることもあります。もし、理由や状況も聞かず、一蹴されるようなら、これからもずっと働き続けるのは難しいでしょう。
会社を辞めると決断する前に、なぜ辞めたいかを冷静に分析してみることも必要でしょう。次に、分析が必要な理由を挙げてみます。
辞める決断の前に分析が必要な理由
仕事選びの失敗を今後の人生で生かせる
今の会社を辞めたいと思っているなら、過去にこの仕事を選んだあなたの判断は間違っていたということです。その判断がどこでどう間違っていたのかをはっきりさせないまま、次の会社に入社したとしても、同じような悩みで辞めたくなってしまう恐れがあります。そこで、今の会社のどのようなところが嫌で、どんな環境なら頑張れるかを整理しておくべきです。
辞めないで済む方法を探す心の余裕ができる
「仕事を辞めたい理由ごとの対策法」に重なりますが、辞めたい理由が部署や職務内容が自分に合わないという場合、仕事を辞めず異動することで解決できることもあります。解決策を模索する心の余裕を作り出すためにも、まずは分析が必要です。
分析により気持ちを整理できる
退職理由を整理していくと自分の気持ちと向き合うことになり、最終的にどういう結論を下したとしてもよく納得した上のことになるので後悔が少なくなります。
ここまでのところで挙げた対策を試みたり、分析を行ったりしてもなお、手詰まり感があるなら、とにかく仕事を休むことを検討しましょう。仕事を休むことには次のような効能があります。
仕事を休むことを考える
まずは心身を休める
焦って仕事を辞めてしまうのではなく、まずは仕事を休んで心身をゆっくり休息させることで冷静な判断ができます。たとえば、有給休暇を利用して会社を休んでみるといいでしょう。
冷静になってきたら「本当に辞めていいのか」を考える
心身が休まって気持ちが冷静になってきたら、その辞めたいという気持ちが一時的な感情の乱れではないか、なぜ辞めたいと思ったのか、など自分の気持ちに向き合って冷静に考えてみます。
このとき、自分だけで悩むのではなく、家族や友人など周囲の方にも相談して意見を聞くといいでしょう。あるいは信頼できる上司がいるなら相談してみてもいいでしょう。
ただし、自分と価値観が違い過ぎる相手に相談するのは、かえって気持ちを乱してしまいかねないので、自分と近い価値観だけれど違い視点から物を見ている相手を選んだほうがいいでしょう。
本当に辛かったらまず退職という選択肢もある
精神的な余裕があるなら現在の仕事をしながら転職先を探すというのがベストです。しかし、もしそのような精神的な余裕がないなら、いったん退職して心が落ち着いてから次の職場を探すというのも1つの選択です。
ストレスが強い状態だと、うつの傾向も出てくるので、場合によっては健康保険から傷病手当などをもらいながらしばらく休養することも考えてみましょう。
次に退職する前に試みるべきこと、準備しておくことをまとめておきます。
退職する前に試みるべきこと、準備しておくこと
打てる手はすべて打っておく
たとえば、辞めたい理由が部署異動により解決するなら、まずは部署異動願いを出してみるべきです。それが通らないようなら、いよいよ退職を考えればいいでしょう。
資格取得
仕事を辞めるまでに時間的な余裕がとれそうなら、その間に仕事に有利な資格を取得しておくと、よりよい条件での転職が可能となります。
就業規則をしっかり確認する
一般的には退職を申し出てから1~2ヵ月後でなければ退職できない会社が多いため、就業規則でその期間をきちんと確認しておきましょう。就業規則に沿わない形での退職は後々問題になることがあります。
退職届を用意する
口頭では証拠が残らないため、書類として退職願・退職届を用意しておきましょう。
退職するかどうか悩んだらまず相談を
先に触れたことにも重複してきますが、退職するかどうか悩んだときは1人だけで考えていると視野が狭くなってしまいがちなので、家族、友人、上司、同僚など周囲に仕事について話せる信頼できる方がいるならまずは相談をしてみることです
特に上司への相談は職場環境が大幅に改善するきっかけにもなり得ます。ただ、職場の環境が改善したとしても、自分がしたい仕事は別にあると思えるなら転職を検討するといいでしょう。