何億円の資産を築き、午前だけ株式取引すれば後は自由に悠々自適に過ごすことができ、嫌いな上司もいないと考え、専業投資家になった人もいるかもしれません。しかしながら、そのように投資を専業として生活できる人はほんの一握りなのです。
専業投資家の現実
専業投資家は、主に証券取引所が開く9:00~15:00だけ株式売買を行い、他の時間は悠々自適に暮らすことができ、上司もなくストレスのない生活が送れると考え始めた人も多いかもしれません。また、ブログ、雑誌、本、Twitterなどで○億円稼いだなどもの凄い資産を築いている人もいます。
しかしながら、現実はそんなに甘くないこともあります。
実際には、そういった凄い資産を築いた人はほんの一部です。
兼業投資家は主に会社員などで株式などに中長期で投資します。会社員としての収入源があるため生活費は投資で稼ぐ必要はありません。
一方、専業投資家は他に収入源がない限り、生活費を投資で稼ぐ必要があります。
投資は、想定通り動くこともありますが、動かないこともあります。今のような下がっても結局3万円超えてくる相場状況の良いときは、稼ぐことができると考えるかもしれませんが、このような状況はいつまでも続きません。
そして、個人での売買において、証券会社もアルゴリズム注文などツールの向上に力を入れていますが、1秒間で数千回の売買注文を繰り返すプロのアルゴリズムによる自動高速取引には勝てません。
また、少額で大きな利益を狙おうと考えると信用取引を活用するしかありませんが、大きな相場変動で一瞬で資金がなくなり、さらに追証が求められてしまう可能性もあります。
このような状態になると、自分が投資しない予定の生活に必要な資金にまで手を付けることがあったり、お金のことばかり考えてしまったり、相場変動に一喜一憂するなど資金的だけでなく精神的にも追い詰められてしまうことがあります。
専業投資家での経験を活かしての転職活動
専業投資家の経験は、株式相場での相場観や金融知識があることでしょう。
株式取引は実際に自己資金を使って投資してみないと、その相場変動による感情コントロールは学べないし、自己資金を投資しているから本気でそのために情報収集をします。また、毎日相場に対面することで身につく相場観は一長一短で身につくものではありません。
その投資経験を生かせる場所に就職するのであれば、金融機関でしょう。
株式取引ができるのは証券会社のみです。運用を行う会社なら、投資信託の運用を行う運用会社もあります。
ただし、ここで落とし穴があります。
もし、金融機関に就職後も兼業投資家として投資を継続するのであれば金融機関は向いていません。
金融機関に就職すると厳しい就業規制があるため、投資を自由に行えなくなるためです。規制が証券会社が一番厳しいものとなっています。
以下、各業界の従業員に対する規制です。さらに、それぞれの企業ごとに取引に関する細かい規制があることもあります。
金融機関に就職すれば、まず自由に株式売買やFX取引、仮想通貨取引は行えないと思ったほうがよいでしょう。
- 証券会社
証券会社ではいち早く自社のアナリストによる情報が入手できる環境にあります。アナリストの投資判断引き上げ、引き下げは、当該会社株式の株価を大きく変動させる要因となります。公表前に知り取引をすればインサイダー取引になります。このように、証券会社ではいち早く内部情報を入手できる状況にいるため、従業員による株式取引に厳しい規制があります。必ず働いている証券会社で口座開設をする必要があり、他社での証券口座はすべて閉鎖する必要があります。
もし既に他の証券会社に資産がある場合にはその資産を移管し、株式以外の債券や投資信託で移管できないようなものは売却して口座閉鎖する必要があります。株式は事前に売買申請を行い、インサイダー確認の上許可が下りたらやっと取引が可能になります。そのため、機動的な株式売買はできず、証券取引所が始まる前に注文を出しておくことはできますが、場中に取引することは不可能です。また、その他の金融商品においても証券口座が自社にあるので、自社の商品しか購入できず、債券やIPOなど在庫に限りがある商品については顧客優先で購入することができません。そのため、証券会社に就職するなら短期的な取引はあきらめる必要があります。
また、FX取引や信用取引、先物取引などの投機的な取引は禁止となっています。 - 銀行、生命保険会社、FX業者
証券口座開設は可能ですが、やはりインサイダーによる制約を受け、自由に売買できません。証券会社同様、FX取引や信用取引、先物取引などの投機的な取引は禁止となっています。
就職しても株式取引やFX取引を続けるのであれば、金融機関以外の方が制約がなくおすすめです。
兼業投資家となれば安定的な収入源があるため、給与を生活費や将来必要な資金にあてて、制約なく投資を行えます。
今は、PTS取引など夜間取引やアルゴリズム発注のような自動取引が充実してきているので、専業投資家のように張り付いていることはできないものの会社員でも取引は可能です。
一方、専業投資家として資産は既に築いており、株式取引が自由にできなくても良いということであれば、専業投資家としての経験を生かせる証券会社や運用会社はおすすめです。
証券会社では、顧客にすすめるものが値上がりすれば、売却して再度購入してと取引手数料が収益として入ります。
収益が上がれば営業成績が上がるので営業員としての収入が上がります。そのため、専業投資家としての経験が自分の収入にも通じる職業です。
また、証券会社でもディーラー職があり、日々目標に向けて収益を上げますが、もし専業投資家として相場のストレスからやめることを考えたのであれば、ディーラー職はさらに大きな資金を使って取引をするのでさらなるストレスと責任がかかるためおすすめできません。
そして運用会社は、投資信託など大きな資産について、経済分析や銘柄分析を行い売買、銘柄選別を行います。営業もあり、営業は販売してもらう証券会社や銀行などの営業員向けに商品説明をすることや、年金や基金など運用担当者向けに運用を提案することを行います。
生活が厳しくなったら転職も検討を
「生活費がなくなってしまった」「証拠金支払のために借入金をつくってしまった」という場合は、就職することが急務となっており、安定的な収入源が必要です。逆に、損を取り戻すために信用取引やリスクの高い商品に手を出してしまえば損失を大きくして、もとの生活に戻れなくなる危険性があります。専業投資家になれるのは才能のあるほんの一握りと見切りをつけて、就職を検討しましょう。
稼げている方でも専業投資家には社会的な肩書きがないことから、同年代で会社に勤めている人が昇進で社会的地位を築き、専門的な知識や技術を身に付けているのに対し、専業投資家はそのような地位や技術は身につかないことに焦りを感じるかもしれず、年齢が高くなるほど取り返しがつきません。
また、誰かと一緒に働きたいとか、相場変動で資産が大きく変動するなど精神的な浮き沈みから離れるために就職を考える人もいます。今後も生活に不安を感じるようであれば早めに仕切り直して就職活動を始めるのがおすすめです。
以下に当てはまるなら就職を検討しましょう。
- 生活費がなく、貯金を切り崩している
- 損を取り返すために倍率を上げた
- 相場変動で情緒不安定になっている
- お金のことばかり考えてしまう
- 同級生が昇進したと聞いて不安になってきた
- 家族ができた
- 元手がなくなった
- 十分な資金を稼いだので、一部の銘柄しか残していない
効率的に転職活動をするためには
転職活動を効率的に進めるには、転職エージェントを利用するのがおすすめです。
転職エージェントとは、転職を検討している人と採用を考える企業の間に立って転職を支援するサービスで、求人動向や転職ノウハウに精通したアドバイザーが、転職活動をサポートしてくれます。
転職エージェントは、優秀な人材がほしい企業側からの紹介手数料を収益源としているため、転職を考える求職者は無料で利用できます。
登録しても必ず就職する必要もなく、転職についての相談だけでも大丈夫です。
また、転職サイトには掲載されていない転職エージェントだけが持つ非公開求人情報から、適した転職先を紹介してもらえます。
転職エージェントはキャリアアドバイザーと双方向で転職先を探すイメージと思っておくのが良いでしょう。
似たようなところで転職サイトがありますが、転職サイトは登録した転職サイトに条件を入れて自ら企業を検索して、希望企業にエントリーしていくという形になります。こちらも利用料は無料で、自ら転職先の企業や情報を探していく一方向の転職探しになります。
一方向で転職先を探していくので、サポートは受けられないものの、職探しに気軽に参加でき、他の意見に惑わされずに自分で転職先を決めることができるというメリットがあります。
転職エージェントのメリット
- 転職成功のためのサポートが受けられる
自己分析による履歴書や職務経歴書を記入するのは、誰でも困難です。経験豊富なキャリアアドバイザーによるサポートで、希望の企業への転職を成功させることができます。 - 転職先の相談
専業投資家としては難しくても兼業投資家として今後投資を続けたい場合には、金融機関以外の就職がおすすめです。金融機関以外の場合専業投資家としての経験は生かせません。転職先について自分は何が適性があるのか悩むなら、転職エージェントに相談することで適性が見つかるかもしれません。 - 効率的な就職活動
転職サイトに希望企業にそれぞれ多数エントリーして、落ちたり受かったりすると膨大な手間と時間がかかります。転職エージェントを利用することで自分に適した企業にのみ応募できるので、手間や時間を削減することができます。また、キャリアアドバイザーは直接人事担当者とつながっているため、紹介された企業への転職は成功しやすくなっています。 - 非公開情報を持っている
転職サイトに載せていない非公開求人や特殊ポジションに関する情報を紹介してもらえることがあります。
転職エージェントデメリット
- わずらわしさがある
転職エージェントでは、おすすめの企業を紹介してくれたり、転職に関して相談に乗ってもらえたりします。ただ、自分一人で就職活動をやっていきたいと考える方にはわずらわしさを感じるでしょう。 - 転職エージェント担当者の力量のばらつき
転職エージェントのキャリアアドバイザーも、社員であり、力量や経験にはばらつきがあり、どの担当になるかは運次第と言うことになります。複数の転職エージェントに登録するのも手でしょう。
効率的に就職するために転職エージェントの活用を
転職エージェントに登録すると、さっそく求人情報を紹介してもらえます。まだ、希望先が定まっていない場合はキャリアアドバイザーと相談しましょう。求人情報にはできるだけ目を通して、感想や希望、なぜ希望と合致しないのか伝えてきます。そうすることで、自分に適した求人情報をより効率的に紹介してもらえます。
また、履歴書や面接についても積極的に相談し、アドバイスをもらうことで希望企業に転職できる確率を上げていきましょう。