仕事の休みが少ないと感じるのは、土・日、祝日にまとめて休みがとれない、給与が安い割に勤務日数が多いなど、業種の特徴や働き方と関係があります。
休日をどのように定めているかによって年間休日数は異なり、仕事の性質上、土・日、祝日を必ず休みにすることが難しい場合があります。仕事の休みの少なさは、プライベートの時間を確保できない、給与を安く感じるなど、様々な不満と原因となり、転職を考えるきっかけとなることが多いです。
このコラムでは働き方による年間休日数の違い、休みが少ないとされる仕事、休みが少ないと感じることで懸念されることなどを紹介するので、自身の仕事は休みが少ないのか、休みが少ないのであれば転職をした方が良いのかなど、キャリアプランを考える参考となるでしょう。
目次
年間休日の平均日数は?
毎週2日(主に土・日)と祝日は必ず休みで、夏季冬季休暇があれば、1年間で約120日間は休みがとれることになります。求人情報の休日に「完全週休2日制」と明記されていることが、年間休日120日の目安です。バースデー休暇といった企業独自の福利厚生で特別な休暇を取得できる場合、平均以上の年間休日数の取得を期待できます。
第1・第3土曜日のいずれかと第2・第4土曜日のいずれかが出勤日といった「隔週週休2日制」を導入している場合、毎月の休日数は約6日、年間で約72日となり、年間約17日の祝日と夏季冬季休暇で合計約105日の休暇となります。
「休みが少ない」はどれくらいの日数?
仕事の大変さや勤務時間・日数に見合う給与が支給されていると思うか否かで、休みの感じ方は変わってくるでしょう。労働基準法で1日の労働時間に対する休憩時間、1週間または1ヶ月あたりの休日日数が明記されているので、まずは労働基準法で定められた休憩時間や休日日数と自身の休憩・休日を照らし合わせると、休みが少ないか否か客観的に知ることができます。下記が労働基準法の労働時間や休日に関する内容です。
労働基準法に明記された法定の労働時間、休憩、休日
- 使用者は、原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけません。
- 使用者は、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければいけません。
- 使用者は、少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。
【引用】
労働時間・休日|厚生労働省
労働基準法の原則に従うと、1日8時間労働では週に2日は休日にしなければならないので、最低でも年間約108日は休日を取得できることになります。1日の労働時間が短くなれば、労働時間に併せて最低年間休日数も少なくなります。
繫忙期と閑散期は労働基準法の基本的な労働時間や休日に則るのが難しいこともあるので、労使協定または就業規則等の定めで一定期間(1ヶ月単位、1年単位、1週間単位いずれか)を平均して1週間あたりの労働時間が法定の労働時間を超えない範囲内で、特定の日、または、週に法定労働時間を超える労働が認められる「変形労働時間制」を導入している業種や企業もあります。
変形労働時間制では、繫忙期と閑散期はもちろん、シフトの内容によっても休日の曜日や日数の多い・少ないが変わってきます。
【参考】
労働時間・休日|厚生労働省
休みが少ない仕事
納期が厳しい時や繁忙期に休みが少なくなることはありますが、人の命に関わる仕事や専門的な仕事で代わりがきかない、年中無休でサービスを提供しているといった業種は特に休みが少ないとされています。休みが少ないと言われる仕事について見ていきましょう。
医師・看護師・介護職
医師や看護師や介護職は人命にかかわる仕事なので、自分の都合で休みを取得しにくいです。責任感や体力や高度な知識を必要とする仕事の割には給与が安く、人手不足に陥っていることから、限られた人数で医院や介護施設の方の健康や命を守る幅広い業務をこなさなければならず、結果として労働者の休みが少なくなります。
公務員
公務員の中でも警察官や消防士や自衛隊といった人命にかかわる仕事をしている方も、夜勤があったり休みの日でも呼び出されることがあったりなど、十分な休みを取得しにくいのが現状です。
教員や保育士といった教育関連の公務員は、残業が多い傾向にあるので、普段から休みが不足しがちです。運動会や文化祭といった学校行事には休日出勤の必要がありますが、代休がないことも珍しくなく、一般企業の労働者と比較すると休日の休みは少ないと言えるでしょう。
飲食・販売・サービス業
飲食や販売といった接客サービス業の中には、年中無休で営業している店舗があります。年中無休の店舗では改装や店舗の入った建物のメンテナンスなどを除き、長期休暇や深夜も店舗を開けておかなくてはならず、休業時間や休業日を設けている店舗と比較すると休みは少なくなります。
飲食・販売・サービス業は休みの方が多い土・日、祝日や大型連休が稼ぎ時なので、土・日、祝日はもちろん、大型連休にまとめて休みを取得できないことがあります。
運送業
運送業はトラック業界、バス業界、タクシー業界などがありますが、どれも夜間や深夜業務があり、人手不足も影響して休みを取得しにくいのが共通しています。
平成28度厚生労働省委託「過労死等に関する実態把握のための労働・社会面の調査研究事業報告書」第3章「運送業における労働時間と働き方に関する調査」から、運送業の休みの少ない実態を知ることができます。
「時間外労働協定(36協定)」の時間外労働協定を締結していると調査で回答した639の企業の1日の時間外労働は平均6.3時間、1ヶ月平均84.2時間、休日労働に係る労使協定を締結していると回答した507の企業の1ヶ月以内の休日日数は平均2.6日ということから、休みの少なさを確認できます。
時間外労働協定(36協定)とは、労働者の過半数で組織する労働組合か労働者の代表者との労使協定で時間外・休日労働について定め、行政官庁に届け出た場合は法定の労働時間以上の時間外労働や法定の休日の休日労働を認めるとしたものです。
【参考】
・第3章「運送業における労働時間と働き方に関する調査」
システムエンジニア・IT関連
システムエンジニアは専門性の高い仕事と、トラブルが発生した際にはすぐに対処することが求められます。トラブルは深夜でも休日でも起こり得るもので、エンジニアの仕事は誰もができるわけではないので、いつでも仕事が発生する可能性がある点で休みが少ないと考えられます。また、プロジェクトの納期が厳しく、休みを削って納品することも珍しくありません。
建設関連
「平成30年分民間給与実態統計調査結果について」によると、全業種の平均給与が約440万円のところ建設業は約500万円と給与水準が高いことが分かりません。給与の高さは魅力的な建設業ですが、天候によっては仕事ができず、納期に遅れそうであれば休日返上で働かなくてはならないので、仕事ができない期間が多くなるほど休みが少なくなる可能性が高くなります。
国土交通省の資料「建設産業の現状と課題」によると、建設業全体の4週あたりの休暇日数は平均4.6日、年間出勤数は全産業が平均224.4日のところ建設業は平均251.3日という結果から、建設業は休みが少ないことが分かります。
仕事の休みが少ないことの弊害
希望の会社に入社できた、休みは少なくてもやりがいのある仕事ができているなど、現在の仕事の良い面を見て休みが少ないことを気にしないようにして仕事を頑張ろうと考える方もいるでしょう。しかし、休みが少なければ心身の疲れがとれにくい、仕事の大変さに対する給与の安さに不満を抱くようになるなど、デメリットが大きくなる可能性があります。
仕事自体への不満につながることが懸念される、休みが少ないことで起こり得ることを紹介します。
疲れがとれず健康面に悪影響を及ぼす
毎日残業が当たり前になっているが毎週2日は必ず休める、週6日出勤することもあるが残業はないという場合でも、残業が滅多になくて年間休日120日程度の方と比較すると疲れはとれにくいでしょう。
残業が当たり前で、隔週週休二日制や休日出勤が多い企業で働いていると、休みはさらに少なくなります。休みが少なくなるほど疲れは蓄積されていきます。疲れが蓄積されれば体力が落ちる、頭が回らないといった状態になり、仕事のパフォーマンスに影響を及ぼします。作業効率の低下で仕事の進みが遅くなり、残業や休日出勤がさらに増えるという悪循環に陥ることが懸念されます。
疲れていると新しいことをする気力も湧きにくく、新しいビジネスチャンスを逃す恐れがあります。また、イライラしやすくなるので、仕事関係の人に強く当たったことが原因で人間関係が悪化し、業務を円滑に進行することが難しくなるということも懸念されます。
プライベートの時間がない
休みが少なければプライベートの時間も少なくなり、趣味、友人や家族と過ごす、スキルアップやキャリアアップのための学習など、自身がやりたいことをするための時間ができず、ストレスの原因となります。休みが少ないほど仕事が忙しければ仕事自体もストレスになり、仕事のストレスを解消できないことも相まって大きなストレスを感じるようになるでしょう。
少ない休みをやりたいことのために使いたいと考えていても、疲れが蓄積され過ぎて休息をとることで休みが終わってしまう方もいます。せっかくの休みを趣味や学習時間に充てられないことでやりたいことを諦めてしまう、友人や家族と過ごす時間がなくなることで関係が希薄になるなど、仕事のモチベーションにもつながることを失いかねないので、モチベーションを維持して仕事をするためには、ある程度のプライベートの時間は必要でしょう。
時給に換算すると給料が安い
休みが少ないのは残業や休日出勤をしているためなので、残業代や休日出勤手当が支給されているはずです。休みが少なくても残業代や手当が支給されていれば、基本給よりも給与を多くもらっている気がしますが、給与を労働時間で割って時給換算してみると、給与が割に合わないと思うでしょう。
休みが少ないことを理由に転職を検討しても良い
休みが少ないことは仕事に影響を及ぼしたり、給与が見合わないと感じたりするので、仕事に不満を抱く可能性があります。また、プライベートの時間がとれないので、自分のやりたいことができる休みの日が足りないと感じるようになるでしょう。
休みが少ないことで仕事に嫌気がさしてきた、もっと休みが欲しいといった気持ちを抱きはじめたら転職を考えることをおすすめします。
下記の表を見ると、その他の理由を除き男性が前職を辞めた理由で最も多いのは「定年・契約期間満了」で、次いで「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」ですが、女性が前職を辞めた理由は「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」が最も高いことから、男女共に休日などの労働条件の悪さを理由に転職している方は多いと考えられます。
平成29年転職入職者が前職を辞めた理由別割合
理由 | 男 | 女 |
仕事の内容に興味を持てなかった | 5.5 | 5.2 |
能力・個性・資格を生かせなかった | 4.6 | 4.4 |
職場の交友関係が好ましくなかった | 7.2 | 13.0 |
会社の将来が不安だった | 8.9 | 3.5 |
給料等収入が少なかった | 11.0 | 10.5 |
労働時間、休日等の労働条件が悪かった | 12.4 | 14.7 |
結婚 | 0.4 | 2.6 |
出産・育児 | 0.3 | 1.8 |
介護・看護 | 0.6 | 1.8 |
定年・契約期間終了 | 17.8 | 11.5 |
会社都合 | 5.9 | 6.1 |
その他の理由 | 23.4 | 22.9 |
【参考】
仕事の休みが少ないことで悩むのであれば転職した方が良い
仕事の休みが少ないことで疲れやストレスが蓄積され、心身の不調を引き起こすリスクがあります。休みが少なくても給与が高い、専門的なスキルが求められたり身についたりする仕事もありますが、休みが少ないことに加えて仕事の大変さに対する給与が割に合わない、仕事を続けてもキャリアアップが見込めない、休みが少ない以外にも仕事や会社に不満があるといった場合には、心身の健康を維持するために転職をおすすめします。