現代の教員が抱える問題とは?

現代の教員は、教員不足や多忙化などの問題を抱えています。身をもってそれを実感している方も多いですが、統計的な数字として示されると、より具体的なものとして問題が浮かび上がってくるはずです。

そこで、まずは現状を把握するという意味合いから、文部科学省による統計データを通して教員不足や教員の多忙化について確認してみましょう。

教員が抱える問題① 教員不足

近年、非正規教員の数と教員総数に占める割合は増加傾向にあり、非正規教員への依存度はますます高まってきています。

たとえば、文部科学省の「非正規教員の任用状況について」の報告書には、公立小・中学校の正規教員と非正規教員の推移について調べたデータが掲載されており、それによると、平成17年に8.4万人(教員全体の12.3%)いた非正規教員が、平成23年には11.2万人(教員全体の16.0%)にまで増加していることが分かります。

その平成23年の非正規教員の内訳は、非常勤講師約5万人(7.2%)、臨時的任用教員約6.2万人(8.8%)となっています。

このように非正規教員が増えているのは、雇う側からすると正規教員とほぼ同じ仕事を任せられる一方で、必要がなくなったらいつでも雇用を解除できる、ある意味で都合のいい存在であるからです。

しかし非正規教員の割合が増えてくると、それだけ正規教員の雇用枠が小さくなり、正規教員がどんどん減って非正規教員への依存度が高くなっていくという悪循環に陥ってしまいます。

正規教員と同じように教えられるのなら、生徒にとって問題はないといえますが、文部科学省の同報告では以下の問題が提起されています。

正規の教員採用選考を経ず、体系的な研修を受けていない非正規教員の割合が過度に大きくなることは、学校運営面や教育内容の質の維持・向上の面で問題であり、特に増加が顕著な臨時的任用教員の増加抑制等を講じることが必要である。

つまり、非正規教員が正規教員に対して多くなりすぎると、教育の質に問題が生じてくるということです。

教員が抱える問題② 教員の多忙化

非正規教員が多すぎるからといって、単に減らせばいいという話ではないというのがこの問題の難しいところです。なぜなら、現状でも教員の多忙化が問題となっているのに、教員を減らしてしまうとさらに多忙になってしまうからです。

80年代には、「3K」といって「きつい・きたない・危険」な職業を忌避する傾向がありましたが、現在は「新3K」として「きつい・厳しい・帰れない」といった特徴をもつ職業も疎まれ、教員もそんな「新3K」の仕事の1つと見なされています。

教員がきつい仕事であると広く認識されているのは、実際に多忙な仕事であるからです。

平成29年度の文部科学省委託研究として公表されている「公立小学校・中学校教員勤務実態調査研究」によると、週60時間以上勤務の教諭の割合は、小学校で33.5%、中学校で57.6%となっています。なお、これには自宅に持ち帰った仕事の作業時間は含まれません。

小学校教諭(調査対象者計5434人)

 人数割合
週60時間以上1822人33.5%
週60時間未満3612人66.5%

 

中学校教諭(調査対象者計6420人)

 人数割合
週60時間以上3699人57.6%
週60時間未満2721人42.4%

また勤務時間の内訳によると、小学校では授業準備、学校行事、成績処理に特に時間がとられ、中学校では部活動・クラブ活動、授業準備、学校行事、学年・学級経営、成績処理に時間がとられるという結果が出ています

教員が転職しようとする前に確認すべきこと

こうした「新3K」ともいわれる教員の仕事を辞め、思い切って別の業種に転職したいという方も少なくありません。加えてきついだけでなく不安定な立場に置かれている非正規教員であれば、なおのことそうした気持ちを持ちやすいはずです。

日本の将来を担う子どもたちに、より良い教育環境を提供するということを第一に考えるなら、1人でも多くの教員が必要なところですが、教員も人間なので、あまりに多忙だと心と体をすり減らしてしまいます。

教員の自殺問題

厚生労働省が発表した平成30年中の「自殺の概要資料」によると、教員の年間自殺者93名のうち、41名は「勤務問題」を理由としています。その方々は残念ながら、教員の仕事が原因で、自ら死を選んでしまうほどに心と体に限界を感じていたのでしょう。

そうしたこともあり、自分の心と体を守るという観点から、教員を辞めて転職することも選択肢の1つとなってきます。

ただし、教員が他業種へ転職しようという場合、その前に確認すべきことがいくつかあります。次にそれを説明しましょう。

確認すべき4つのこと

本当に教員を辞めてもいいのか

一般的に、教員になっている方は「教師」「学校の先生」になることを夢見て教員免許をとり、教師になったというケースがほとんどですが、なかには学生時代に素晴らしい先生に出会ったことがきっかけになった方もいることでしょう。

そうした思いがあった上で、さらに、長い時間をこの職業に就くために費やしてきたわけですから、辞めてしまった場合には自分自身のショックも大きいと考えられます。

過去に関わった生徒への思いや、現在接している生徒たちにどう説明すればいいかという葛藤を生むかもしれません。

「簡単にあきらめず、根気よく取り組み続けることの大切さを教えてきたのに、自分が教員を辞めてしまったら生徒たちはどう思うだろう?」

「今、関わっている生徒たちは自分たちが見放されたように感じないだろうか?」

「これまで関わってきた生徒たちとの思い出を捨ててしまうことにはならないだろうか?」

など、考えれば考えるほど悩みは深まっていきます。

つい、考えることから逃げたくなるかもしれませんが、教員にとどまるにせよ辞めるにせよ、よく考えて結論を出さないと後で悔やむことになるはずです。またよく考えることにより、辞めるという選択をしたとしても生徒たちに伝えるべき言葉が見えてきます。

給料は安定しているか

もう一点、教員を辞めてもいいかどうか考えるときのポイントとなるのが給料の安定性です。

公立校であれば教員は公務員ですから、給料が安定しているというメリットがあります。しかし、教師を辞めて民間企業に転職した場合、給料が安定しない可能性もあり、そこに不安を覚えるかもしれません。

正社員であれば不安定になる可能性は低いといえますが、それでもなお、公務員という立場に慣れていると、民間企業に移ったときに給料の面で不安を感じるかもしれません。そこで、自分はそこをどう受け止めるのかということをあらかじめ考えておく必要があります。

明確な目的を持った転職かどうか

教員の転職には明確な目的が必要です。目的とは何のための転職かということであり、目的が定まっていれば転職から生じる変化を受け止める覚悟も自ずと定まります。

厳しい現実を言うと、教員は民間企業の就業経験やビジネスの経験がないため、利潤追求や生産性といった点での能力が未知数であり、あまりいい評価を出さない企業もあります。

しかも、中途採用ということになると即戦力を期待しての採用となります。即戦力とは会社にどれほど貢献できるかということですが、教員の場合は基本的に過去の実績がないため、よほど人材不足の企業を除いて、中途採用には大きなハードルがあります。

一方、学校に退職の意思を伝えるのにもハードルはあります。担任を持っている場合、退職は容易ではなく転職時期の調整が難しいのです。

以上のことから一般論として教員の転職は難しいといわれており、その困難をクリアしていくには転職に対するしっかりとした目的意識が必要です。目的意識があいまいな場合、企業側にはそこのところを見透かされ、学校側には退職の意思がそこまで強くないと思われて強く慰留されることになります。

自分は何が得意なのか? どんな職種に合っているのか?

客観的な自己分析により、自分は何が得意なのか、どんな職種に合っているのかを把握しておきましょう。具体的な転職活動に踏み出す前に行うべきで、それは転職の成功にもつながります。

また自分の得意分野をより伸ばし、仕事に活用できそうな知識やスキル、資格を習得しておくのも転職を有利にすることにつながります。

教員から民間企業に転職するメリット・デメリット

公務員と民間企業にはさまざまな違いがあり、転職前にその違いをよく認識しておく必要があります。具体的にメリット・デメリットについて確認していきましょう。

2つのメリット

給料が上がる可能性がある

教員は時間に応じた残業手当は発生しませんが、民間企業では労働時間に応じて残業代が発生します。そのため、給料の総額が上がる可能性があります。

帰宅時間が早くなる可能性がある

民間企業の多くは労働時間をコントロールしているため、教員をしていたときよりも早く帰宅できることがあります。また土日・祝日休みの会社であれば、休日出勤はほぼないので予定を立てやすかったり、体を休ませたりすることができます。

4つのデメリット

民間企業は業績によって給与が変動してしまう

会社の業績がいいときは給料やボーナスが上がる一方、業績が悪化するとその逆にボーナスが下がったり、なくなったりします。また、給料も減らされる可能性があります。

未経験の職種に転職した場合は年収が下がってしまう

民間企業から民間企業への転職でもそうですが、未経験の職種に転職した場合は当然、年収が下がることを覚悟しなければなりません。

業種によっては教員の時よりも残業が増えてしまう

「新3K=きつい・厳しい・帰れない」ともいわれる教員の仕事ですが、民間企業にもそうした業種は数多くあります。教員のときよりも残業が増えてしまうこともあるでしょう。

利益を出すこと、ノルマを達成することが求められる

民間企業では利益を出すことが必要であり、社員それぞれには一定のノルマを達成することが強く求められます。

社会貢献などの理念を重視する会社はありますが、それでも利益は重要であり、理念だけで仕事はできません。

教員の経験を生かせる転職先

どうせ転職するのなら、教員の経験を活かし、給料やそのほかの待遇面で少しでもメリットのある転職を目指していきませんか。教員の経験を活かせる転職先としては次のようなものが挙げられます。

おすすめの転職先

学習塾、予備校の教師、家庭教師

仕事内容が教員に近い仕事のため転職は比較的容易です。高学歴であればあるほど、よい条件で転職できるでしょう。人材の必要性が高い業界のため、積極的に求人を行っています。

公立校から私立校への転職

公立校の教員が私立校の教師に転職することは比較的容易です。ただし、私立校では非常勤講師の募集が多く、経営状況によっては賞与カットの可能性もあります。

さらに公立校と違い、転勤がなく退職するまで同じ人間関係が続くので、よりコミュニケーションスキルを求められるという側面もあります。

学童保育など

児童支援や学童保育など子どもを対象とした仕事では、教員としての経験を生かせるため、重宝されやすいでしょう。

事務職

教員として培ったパソコンスキルを生かすことができるほか、教える能力の高さを期待され、新入社員に仕事を教える担当になるケースも多いようです。

営業職

コミュニケーション能力が生かせるという理由で営業職に向いている可能性があります。ただし、過去の営業成績といった実績がないので、営業職への転職に有利とまではいかないでしょう。

地方公務員・国家公務員

公務員として働いた経験は、教員以外の公務員の仕事にも生かせるはずです。しかし教員から市役所に転職するといった場合、これは異動ではなく再就職となります。

地方公務員になる場合は公務員試験への合格が必要で、各自治体によって試験内容が異なりますが、市役所職員を目指すなら「行政職」を受験する形となります。

また公務員は職種によって年齢制限があるので、そこにだけは忘れずに確認しましょう。

民間企業から教員に転職はできる?

では逆に、民間企業から教員に転職はできるのでしょうか?

教員免許は小・中・高と分かれており、免許を取得するには「教員資格認定試験」を受ける必要があります。その取得後、教員採用試験に合格すると晴れて教員として働けます。

しかし、民間企業から教員を目指す場合、働きながら教員資格認定試験と教員採用試験に向けた勉強を進めていくことになり、実際問題として非常に高いハードルとなります。かなりの根気と努力が必要なので、本当に心の底から教員を目指しているのかどうかが重要な鍵となってきます。

後悔のない転職のために

教員からの転職に限らず、職を移るということは人生の一大転機となる大きなイベントです。教員というある種特殊な仕事から一般の仕事へ、公務員から民間企業へ、という転職であれば、なおのことその変化は大きなものとなります。

どのような形の転職であれ、よく考えて後悔のない転職にすることが大切です。

教員は誰でも簡単になれる職種ではありません。そのことは就職活動をした自分自身がよく知っていることでしょう。だからこそ、続けるという価値もあり、教員の経験を活かして転職するということにも価値があるのです。

転職をするのであれば、急いで探すのではなく、転職エージェントに登録するなどしてじっくりと探していきましょう。