転職は人材不足の業界が狙い目。人材不足業界に転職する際のメリットとデメリットを解説

今の日本における人材不足の業界とは?

今の日本における人材不足の業界とは?

まず、認識しておきたいのは、人材不足は特定の地域・業界だけでなく全国的な傾向として多種多様な業界に見られるということです。

その背景には少子高齢化による生産年齢人口(15歳~65歳未満の人口)の減少があります。

平成28年版 情報通信白書」によると、日本の生産年齢人口は1995年から減少を始め、雇用者数自体は2011年以降増加傾向にありますが、パートやアルバイト、契約社員など非正規雇用の比率が増えている、とされています。

非正規雇用者は正社員より労働時間が短い傾向があるため、多くの会社で人材不足となっており、帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2020年7月)」によると、新型コロナウイルス感染拡大前には約5割の企業で人材が不足していたというデータが出ています。

新型コロナウイルスの影響で消費が鈍ったため、同年4月以降は3割前後で推移していますが、消費が戻ってくると人材不足の会社は再び増えてくるはずです。

2018年に厚生労働省職業安定局が発表した「人手不足の現状把握について」によると、人材不足になっている産業分野として次の5つが挙げられています。

  • 運輸業、郵便業
  • サービス業(他に分類されないもの)
  • 医療、福祉
  • 宿泊業、飲食サービス業
  • 建設業

また、人材不足産業の特徴として、人材不足産業では大企業と中小企業の賃金差が少ないということのほか、医療・福祉分野を除き平均労働時間が長いこと、離職率が高いこと、などが挙げられています。

人材不足の業界は転職しやすい?

人材不足の業界は転職しやすい?

人材不足の産業は常に新たな人材を求めているので、そこへの転職は比較的容易です。

先ほどの「人手不足の現状把握について」によると、34歳以下ではどの産業でも入職率が高い一方で離職率も高いのですが、中でも人材不足産業では特に離職率が高いので、そうした会社では34歳以下の人材を強く求めていると考えていいでしょう。

35歳~59歳に関しては、人材不足産業では離職率も高い代わりに入職率も高くなっており、中途採用に積極的であることがうかがえます。

一般的に30代以上は転職に不利と言われますが、人材不足業界の会社に関してはそれが当てはまらないということです。

企業規模については、人材不足産業のうち大企業では、34歳以下の若手を確保できていますが、中小企業では若手を確保できず、60歳以上の層についても重要な労働力として頼っていることがデータから分かります。

そこで、人材不足産業の諸分野で仕事を求めている方は、年齢が上であるほど大企業よりは中小企業を狙ったほうが採用されやすいと考えられます。

人材不足の業界なら未経験でも転職できる?

人材不足の業界なら未経験でも転職できる?

では、人材不足の業界なら未経験分野の仕事であっても、そこへ転職できるのでしょうか?

一般論として、人材不足の業界は人が欲しいのに十分に集まらない状態になっているので、人材が十分な業界に比べると転職しやすい傾向にあると考えていいでしょう。

再び、「人手不足の現状把握について」を引き合いに出すと、中小企業を辞めて別の中小企業へ転職するケースでは、人材が比較的足りている産業から人材不足産業へ転職する方が多いというデータが紹介されています。

そこで、人材不足産業のうち中小企業に関しては基本的に、その業界の未経験者であっても採用する可能性が高いと考えてよさそうです。

未経験者として中途採用で入社して、果たして仕事で使いものになるのかと不安を覚える方もいるかもしれません。

確かに一般的な会社で中途採用する場合は即戦力となることを期待されますが、人材不足に悩まされている会社ではそうも言っていられないので、中途採用した未経験者にもしっかり教育を施して戦力になるところまで育てようとします。

その教育が中途半端なまま実務に入ってしまうと、仕事がうまくいかず早期に離職する可能性があるので、人材不足解消に本腰を入れて取り組んでいる会社ほど、中途採用した社員への教育に熱心に取り組む傾向があるといえます。

そもそも、最初から未経験者まで採用ターゲットを広げているような会社であれば、自社教育による社員育成に力を入れているはずです。

とはいえ、その例外もたくさんあるので、未経験分野への転職が不安な方は求人広告の中で教育制度の充実をうたっているところを意識的に選ぶといいでしょう。

人材不足産業に転職する際のメリット・デメリット

人材不足産業に転職する際のメリット・デメリット

人材不足産業への転職にはメリットもあればデメリットもあります。それぞれ詳しく紹介しましょう。

人材不足の業界への転職のメリット

まず、人材不足の業界へ転職するにあたり、考えられるメリットを挙げてみましょう。

なお、ここに挙げるのはあくまで一般論であり、実際には会社によって異なってきます。

①採用されやすい

人材が不足しているのですから採用されやすいのは当然です。

そこで、とにかく今の会社を早く離れたいという方にとっては「渡りに船」のような存在となってくれるでしょう。

②未経験者でもOK

普通、中途採用だと経験者が圧倒的に優遇されるものですが、人材不足の会社においてはその業界の未経験者であっても受け入れてもらえることが多くあります。

特に、中小企業に関してはその傾向が顕著に見られます。

③30代以上でも受け入れてもらえやすい

一般的に30代以上になると転職にくくなるといわれますが、人材不足の会社では30代はもちろん、40代以上でも一定のニーズがあります。

④異業種を体験することで仕事の幅が広がる

これまで体験したことのない業界・業種の仕事をすることで、仕事の幅が広がります。

将来そこを辞めた場合にもその「幅」は確かな財産となってくれるはずです。

⑤仕事能力が向上する

人材不足の会社では1人あたりの仕事量が多くなり、必然的に仕事の幅が広がったり作業スピードが上がったりします。

それをうまくこなせたら「仕事のできる人」として一皮むけ、将来のキャリアアップにつながるかもしれません。

⑥出世のチャンスが増える

人材不足の会社では離職率が高いため同僚がどんどん辞めていき、気が付くと数年で古株扱いされていることがあります。そのため、ただ長く在籍しているだけでも、昇進する可能性があるでしょう。

⑦良い環境で働けることもある

人材不足の会社というと、離職率の高い過酷な職場というイメージがありますが、その業界が好景気で仕事量が増えすぎているために人材不足になっているケースもあります。仕事はあるのに人がいない、という状況です。

そうした業界の会社では、採用した社員に定着してもらうため「働き方改革」に積極的で、有給休暇や育休、福利厚生の充実が図られていることがあります。

人材不足の会社というだけで判断せず、そうしたところまでよく見ていくと、良い仕事環境を提供している会社はたくさんあるはずです。

人材不足の業界への転職のデメリット

次に、人材不足の業界へ転職するにあたり考えられるデメリットを挙げます。

これもやはり一般論となりますが、参考にはなるはずです。

①離職率が高い傾向がある

ここまでの説明でも分かるように、人材不足の会社の多くでは離職率が高い傾向があります。

厚生労働省の「人手不足の現状把握について」によると、2014年に入社した方(雇用保険被保険者)について、3年以内の離職率を確認したところ、人材不足産業では34歳以下で59.6%、35歳~59歳で59%の離職率となっていました。これは、人材不足産業以外と比べて高い水準です。

離職理由として、中小企業では「会社の将来性」「給料」「労働条件」の割合が比較的高くなっていますが、34歳以下の方では「職場の人間関係」の割合も高くなっていました。

また、少し前の資料となりますが、独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)の刊行物『ビジネス・レーバー・トレンド(2016年7月号)』によると、人材が不足している会社の労働者の約4人に1人が転職を意識しているとのことです。

これらのことから、人材不足の会社で離職率が高い傾向があるのは明白です。

そして、離職率の高い会社では、どうしても社員の間で会社への帰属意識が薄いため、業務へのモチベーションが低く、良いチームワークも取れず、さらにはモラルの低い社員がいることもあります。

必然的に社内には殺伐とした雰囲気となり、そうした仕事環境では仕事上での自身の成長も望めません。

面接らしい面接もなく、希望者全員が採用されているのではないかと思えるほど簡単に採用された場合、その会社では離職者がたくさんいると考えるべきでしょう。

選考を「ザル」にしなければならないほど、人材不足がひっ迫しているのです。

ただ、先にも触れたように、その業界が好景気で大量の人材を求めているケースもあるので、安易に判断せず、その業界の動向や入社しようとしている会社の直近数年間の業績についてよく調べてみることをおすすめします。

②1人あたりの仕事量が多すぎる傾向がある

人材不足ということは1人あたりの仕事量はその分多くなります。

自社で対処できない仕事を外部の会社に委託していることもありますが、いずれにせよ1人で担当する仕事は多いと考えておいていいでしょう。

仕事量が多すぎて残業続きといったことになると、ストレスで気分が滅入り疲労が抜けないだけでなく、過労死のリスクまで高まります。

厚生労働省の「36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針」では、残業が1ヵ月45時間を超えた頃から、仕事と脳・心臓疾患の発症との関連性が見られるようになり、残業が1ヵ月100時間を超えるか、あるいは2~6ヵ月の平均残業時間が80時間を超えると、仕事が原因となって脳・心臓疾患が発症することがはっきり確認されるとされています。

③給料が仕事量に見合っていない傾向がある

人材不足の会社では業務がうまく回っていないため十分な給料がもらえない可能性があります。

もしくは給料が安いから社員が定着せず、常に人材不足になっているのかもしれません。

いずれにせよ、そうした会社では給料が仕事量に見合ってなかったり、ボーナスが出なかったり、各種手当がなかったりする可能性があります。残業はすべてサービス残業という会社もあるでしょう。

④社内の人間関係に問題が生じやすい傾向がある

③で挙げたような労働条件の上の問題がある会社では、ノルマを達成できないと上司から高圧的に叱責されたり、同僚同士でライバル視しあって仲が悪かったりといった人間関係の問題が生じがちです。

1人あたりの仕事量が多いことによるストレスや焦りも、人間関係の問題に火を注ぐことになるでしょう。

⑤働きやすい制度が充実していない傾向がある

先に説明したように一部に例外もありますが、人材不足の会社では福利厚生の充実や勤務形態のフレキシブルさ(時短勤務、リモートワークなど)などはあまり期待できません。

そうした制度があれば、ほかの労働条件が多少悪くても離職者はそこまで多くないでしょう。

⑥社員教育が行き届かない傾向がある

人材不足の会社では社員が目先の業務に追われているため、入社後の社員研修やOJT(職場内訓練)に対応するだけの十分な人員がおらず、教育が十分行き届かないまま「習うより慣れろ」とばかりに、入って間もない社員が実務に投入されるケースがあります。

器用な方はそれでもうまく対応できるでしょう。

しかし、ほとんどの方は慣れない仕事で失敗を繰り返してしまい、自信を失って早々に離職することにもなりかねません。

人材不足の負のスパイラル

以上、見てきたように、人材不足の会社でありがちなデメリットとは、人材不足が原因で起きてくるものであると同時に、それ自体、人材不足状態がなかなか解消しない要因にもなっています。

これは目先のことだけを考えた場当たり的な対策をした結果です。

人材不足が新たな人材不足を生み出すという点で、これを「人材不足の負のスパイラル」と呼んでもいいでしょう。

そうした「負のスパイラル」が生じている会社を避け、根本から人材不足を解消するための長期的ビジョンに基づいた対策を施している会社を選ぶことが、人材不足産業への転職を成功させるコツとなります。

転職エージェントの利用も1つの方法

転職エージェントの利用も1つの方法

先にも触れたように、人材不足の業界への転職を希望する際には、業界の動向をよく研究し、その会社の直近の業績から将来性を考えた上で転職先を総合的に判断するのが望ましいといえます。

実際の仕事量をよく確認して、給料とのバランスに納得できるかどうかが判断の肝となるでしょう。

自分で判断できなければ、転職エージェントを利用するのも1つの方法です。

転職エージェントは各企業の動向や、求人情報には表れない実際の労働条件・環境などについて詳しいので、人材不足による入社の容易さと働きやすさを両立する職場を探す上で力になってくれるはずです。